ビクセンSXP赤道儀 インプレッションVol.04

ビクセンSXP赤道儀 インプレッション Vol.04 「ビクセンアドバンスユニット その2」

天体望遠鏡

スターブックTENコントローラーのアドバンスユニットは、ビデオガイド機能があることで天体写真ファンに人気があります。今回は、前回使用したビクセン製のカラーCCDカメラC0014-3Mに代えて、より感度の高いWATEC製のカメラWAT-100Nを使ってみました。そのレポートをお届けします。


アドバンスユニットについて

CCDビデオカメラ 前回のアドバンスユニットのレポートでご紹介したとおり、 この拡張ユニットをビクセンのスターブックTENコントローラーに挿入すると、オートガイド撮影(ビデオガイド撮影)が可能になります。 他のオートガイダーと異なりパソコンが不要なため、本格的な天体撮影を手軽に楽しむことができ、 特に天体写真ファンに人気のある機能です。

アドバンスユニットのビデオガイド機能を使うには、ガイド星の動きを監視するアナログビデオカメラが別途必要となります。 このカメラの感度によって、ガイドに使用できる星の数が変わってくるので、 できるだけ感度の高いカメラを使うと快適にビデオガイドを楽しめます。 前回使用したビクセン製のカラーCCDカメラC0014-3Mに代えて、今回、より感度の高いWATEC製のカメラWAT-100Nを使用したのはそのためです。


WATEC製カメラの感度

メーカーの仕様によれば、WATEC製WAT-100Nの最低被写体照度は0.001ルクス(lux)。一方、前回使用したビクセンのカラーCCDカメラは、0.012luxとなっています。単純に数値を比べると、WAT-100Nの方が数段優れているように見えますが、最低被写体照度の測定方法は、メーカーによってばらつきがあるという意見もあります。そこで、星の写り具合を実際に撮り比べてみました。

テストに使用した望遠鏡は、口径76mmの屈折望遠鏡ボーグ76EDです。これにそれぞれのCCDカメラを取り付け、はくちょう座γ星付近を自宅から撮影してみました。下の画像がその結果ですが、WAT-100Nの方が暗い星まで写っていることがわかります。カメラの機能が異なるので、シャッター速度以外は全く同じ設定にすることはできなかったものの、設定をいろいろ変えて試しても、WAT-100Nの方がより暗い星まで認識できることがわかりました。なお、CCDチップは1/2インチセンサーを持つWAT-100Nの方が広いので、全く同じ写野でないことはご了承ください。

ガイド星の様子ガイド星の様子

(※画像をクリックすると拡大画像で星の等級をご覧になれます。)


WATEC製WAT-100Nを使って撮影

撮影システム このWAT-100Nをガイドカメラに用い、アドバンスユニットを使って実際に星空を撮影してみました。今回の撮影に使用した全体の天体望遠鏡システムは、右写真の通りです。

ビクセンSXP赤道儀マルチプレートDXを取り付け、その上に撮影鏡筒のビクセンED103S望遠鏡とガイド鏡のボーグ76EDを載せています。ガイド鏡はガイド星を探す時に独立して動かす必要があるため、低重心ガイドマウントを介してプレートに取り付けています。撮影に使用したカメラはAstro60Dです。こちらは、ビクセンED103S望遠鏡にレデューサーを介して取り付けています。

撮影対象として、アンドロメダ大銀河を選びました。アンドロメダ大銀河の近くで輝くアンドロメダ座のν星でキャリブレーションを行った後、赤道儀を動かしてアンドロメダ大銀河を構図の中央に導入します。この後にガイドマウントを使ってガイド星を探しましたが、WAT-100Nは感度が高いのでガイドマウントを少し動かしただけで適当なガイド星を見つけることができました。

下が今回のシステムで撮影したアンドロメダ大銀河の写真です。当初600秒露出の予定が、途中で雲が出てきたため515秒露出となってしまいましたが、淡い渦巻まで綺麗に写ってくれました。全体画像の下に中央の切り抜き拡大画像を載せましたが、こちらをご覧いただくと、ガイドが良好だったことがおわかりいただけると思います。

アンドロメダ大銀河

中央部拡大


撮影の手順

ビクセンアドバンスユニットを使ってガイド撮影する際に、私が実際に行っている手順をご紹介します。
一つの例としてご参考いただければ幸いです。

(1)機材の準備を整え、いつでも撮影可能の状態にします。極軸を合わせ、赤道儀のアライメントも行っておきます。
(2)ガイド鏡にまず低倍率アイピースを取り付けます。
(3)赤道儀を動かして、撮影用望遠鏡のカメラファインダー中央に明るい星を導入します。
(4)ガイドマウントを動かして、それと同じ星がガイド鏡の視野中央に入るようにします。 これにより、ガイド鏡と撮影鏡筒を同じ方向に向けることができます。
(5)ガイド鏡のアイピースを取り外して、CCDビデオカメラを取り付けます。
(6)CCDビデオカメラのピントを合わせます。
(7)撮影対象の近くにある明るい星を選んで、スターブックTENで自動導入します。
(8)その星がCCDビデオカメラに写ったら、アドバンスユニットのキャリブレーションを行います。
(9)赤道儀を動かして撮影天体を導入し、コントローラーを使って撮影望遠鏡の構図を合わせます。
(10)構図が合ったら、ガイドマウントを動かして、撮影対象付近の明るめの星をCCDビデオカメラの画面に表示させます。
(11)その星を選んでビデオガイドを開始します。
(12)ビデオガイド開始後しばらくしてガイドが安定するのを待って、静かにカメラのシャッターを切り撮影を開始します。

毎回同じ機材で撮影する場合は、全ての撮影が終了した後に(4)の作業を行って、撮影鏡筒とガイド鏡が同じ方向を向くようにしておけば、次回撮影するときに(1)から(4)の手順を省略することができます。また、CCDビデオカメラのピント位置をガイド鏡にマークしておくと、次回のピント合わせが楽になるでしょう。


まとめ

前回、カラーCCDビデオカメラを使ってガイド撮影を行ったときは、ガイド星を探すのを面倒に感じましたが、WATEC製のWAT-100Nカメラに代えるとガイド星を捜す作業がかなり楽になりました。ハイビットで感度の高い冷却CCDタイプのオートガイダーには敵わないと思いますが、これなら都会の空でもアドバンスユニットを使ったガイド撮影を手軽に楽しめるでしょう。

今回使用したWATEC製のモノクロタイプのCCDビデオカメラは、以前より高感度のアナログカメラとして広く知られています。しかし、純正の安心感を求めるユーザーも多いと思いますので、ビクセンからもアドバンスユニットに適した高感度CCDビデオカメラを是非発売して欲しいところです。パソコンいらずの内蔵型オートガイダーは、これから本格的に天体撮影を楽しもうと考えている人にとって大きな魅力があります。新しいSXD2赤道儀も発売されましたので、より使い易く進化していって欲しいですね。

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レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

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