SXD赤道儀インプレッション 3.【コンパクトデジカメで月を撮ってみよう】

コンパクトデジカメで月を撮ってみよう

天体望遠鏡で月を狙う

「星雲や銀河の撮影はちょっと敷居が高い・・」という方には、月の写真から始めるのがお勧めです。
月は大変明るいので、大都会の真ん中でも明るく輝いています。それに、月は私たちの地球から最も近い天体で人類がたどり着いた唯一の天体です。今回は天体望遠鏡とコンパクトデジカメを使って、その月を手軽に撮影してみましょう。


まずは望遠鏡で月を観望してみよう

まずは天体望遠鏡の視野の中に月を入れてみましょう。月は大きいですから、ファインダーがしっかり調整できていれば、すぐに天体望遠鏡の視野の中に入ってくるはずです。まずは月の全景が見渡せる50倍ぐらいのアイピースを使って、月面を観望してみましょう。10センチくらいの天体望遠鏡をお使いですと、明るく輝く月が目にまぶしく感じられるかもしれません。その場合はもう少し高い倍率のアイピースに変えてみてください。

月はどの月齢でも見応えがあるものですが、半月の頃が見やすくクレーターも美しく見えます。この月齢の頃は、小さな天体望遠鏡でも欠け際のクレーターが立体的に見えて、迫力ある月の姿を楽しめます。

月の全景で気になるクレーターや山脈があったら、高倍率のアイピースを使って詳細に観察してみましょう。空の状態が良ければ、切り立つ山脈や小さなクレーターが見えてくるはずです。月面ガイドブック片手に、クレーターの名前と特徴をチェックしながら、月面観望するのも楽しい時間です。

写真のクレーターは、コペルニクスと名付けられた大きなクレーターです。
大変見ごたえがするクレーターですので、天体望遠鏡を購入したら一度は観望してみましょう。

コペルニクスクレーター


デジカメを使って手持ちで撮影

まずは、月の全景写真を撮ってみましょう。撮影自体はとても簡単です。月の全景を観望した後、自分の目の代わりにコンパクトデジカメのレンズをアイピースに押し当ててシャッターを切るだけです。
「そんなので撮れるの?」と疑ってしまいますが、本当にそれだけで月の写真を撮れてしまいます。

手持ち撮影の様子

と言ってもコツがあります。
まず気をつけたいのは、コンパクトデジカメの測光モードです。測光モードというのは、被写体のどの部分の露出を測るかを決定する方式のことです。普段の日中の写真撮影では、マルチモードがよく使われています。
このモードは、光が十分ある時の撮影では便利ですが、月の撮影には不向きです。なぜかと言えば、月自体は明るいですが月の周りは真っ暗の宇宙だからです。ですのでマルチモードで撮ってしまうと、月は露出オーバーになってしまいます。

撮影前にはこの測光モードをまずは変更しましょう。変更方法は、カメラの説明書をご覧になってください。
きっとスポット測光や中央重点測光というのがあるはずです。スポット測光があればそれに、なければ中央重点測光を選択しましょう。そして月がカメラモニターの中央に入るよう気をつけながら、静かにシャッターを押してください。

下は、ビクセンのED103S天体望遠鏡とカシオのコンパクトデジカメを使って、カメラ手持ちで撮影した月の写真です。観望したときの記念撮影にもなりそうですね。

三日月の写真


デジカメアダプターを使おう

デジカメを手持ちで撮影してみると、なかなか上手くデジカメのモニターに写らず、いらいらしてしまうことがあります。これは、望遠鏡の中心軸(光軸)とカメラレンズの軸がずれているためです。それを改善するために、デジカメアダプターを使ってみましょう。

ビクセンのデジカメアダプター

デジカメアダプターには様々な種類がありますが、ここでは汎用性の高い、ビクセンのデジタルカメラクィックブラケットを使ってみましょう。
このアダプターなら、カメラにフィルターネジが切られていなくても簡単に使うことが出来ます。 もちろんその他にも、ねじ込みタイプから微動装置が付いたアダプターまで、様々な製品がありますので、カメラの型番をメモしてお店で聞いてみるとよいでしょう。

このビクセンのアダプターの取り付けは簡単で、クランプで望遠鏡の接眼部を挟み込み、デジカメをステーに載せるだけです。クリック感があるステーは、横に回転させることができるので、観望から撮影へと素早く移ることができます。月の観望を楽しみつつ、コンパクトデジカメで月面写真を撮ってみたいという方に最適なアダプターでしょう。

このアダプターを使って撮影した月面の拡大写真を下に載せました。使った天体望遠鏡やデジカメは上の写真と同じものです。アダプターを使うと安定して撮影できるようになるので、こうしたクレーターの拡大撮影も楽しめます。

アルフォンススとプトレマイオス


綺麗な月を撮影するためには

1.まず重要なのは、天体望遠鏡とカメラの光軸を合わせることです。カメラの光軸をしっかり合わせていないと、 せっかくの天体望遠鏡の性能が生かされず、色収差や片ボケが起こったりしてしまいます。 なるべく光軸はしっかり合わせるようにしましょう。

2.大きく撮りたいと思うと、ズーム機能を使って目一杯望遠で写してしまいがちです。でもこれは像が暗くなり、 お勧めできません。大きく撮りたいときは、高倍率のアイピースに変えてから撮影しましょう。 もちろんアイピースを変えても像は暗くなりますから、ほどほどの倍率で写すことが大切です。

3.大きく撮りたいというのとも関連しますが、ISO感度はほどほどにしておきましょう。コンパクトデジカメの 弱点はノイズが多いことです。ISO感度を上げてしまうと、せっかく滑らかで美しい月が ノイズで荒れた月になってしまいます。そういう意味でも、撮影倍率はほどほどで写しましょう。

4.シャッターブレにも気をつけましょう。カメラのシャッターを直接押すと、撮影された画像はぶれてピント がずれたように写ってしまいがちです。セルフタイマーモードやケーブルレリーズを使って撮影を行いましょう。

5.気流の良さそうな日を選んで撮りましょう。月は地球から一番近いといっても、大気圏を越えたずっと遠くです。 ですから風が強かったり、大気がユラユラ揺らいでいる日に撮影しても、ピンぼけしたような写真になってしまいます。 デジカメで写真を撮るときは、クレーターがはっきり見えている日にしましょう。そうすればシャープな 月面の写真を撮ることが出来ます。

6.月の撮影も少しずつ慣れていくことが大切です。どんなことでもそうですが、初めから上手くいくことは希です。 月の観望の合間に撮影を楽しむ、といったスタンスで、ゆっくり月の撮影を楽しんでいかれてはいかがでしょう。 月の地名を覚えれば、より月に親近感が沸き、その地形を写真に撮ってみたいと思うはずです。 そいうことを繰り返しながら撮影していれば、いつのまにかエキスパートも驚く月の写真が撮れると思います。

レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

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