Explore Scientific ED102WH鏡筒のインプレッション

Explore Scientific ED102WH鏡筒のインプレッション

Explore Scientific ED102WH鏡筒

Explore Scientific社は、天体観望ファンに人気のあるメーカーで、 コストパフォーマンスの高い超広角アイピースや天体望遠鏡を製造しています。 今回、Explore Scientific ED102WHを試用する機会を得ましたので、 星空を観望した印象を交えながら、望遠鏡の使用感をまとめてみました。


Explore Scientific ED102WHの外観と各部

Explore Scientific ED102WHは、口径102mm、焦点距離714mm、口径比がF7のアポクロマート屈折望遠鏡です。 対物レンズには、EDレンズを含んだトリプレット光学系が採用され、 諸収差を補正しています。 ED102WH鏡筒には、伸縮式のフードが採用されているため、 10センチクラスの屈折望遠鏡にしてはコンパクトというのが、箱を開けたときの第一印象でした。 フードを縮めたときの長さは約55cmと、一クラス下の8センチクラスの鏡筒並です。 手元にあったビクセンED103S鏡筒と比べると、そのコンパクトさが一段と際だちました(下画像参照)。 このぐらいの大きさならば、収納場所にも困らないでしょう。

Explore Scientific ED102WH鏡筒

ED102WHの前後分離式の鏡筒バンドには、持ち運びに便利な取っ手が取り付けられています。 鏡筒バンド下面には、汎用のアリガタ金具が固定されていて、 市販の赤道儀(ビクセンSXD2赤道儀など)にワンタッチで取り付けることが可能です。
望遠鏡を箱から取り出してまず目に留まるのは、フードの中の大きな対物レンズセルです。 鏡筒部分が細いこともあって、対物レンズを入れたレンズセルは大変目立ちます。 対物レンズキャップを外すと、ED102WHの心臓部とも言える3枚玉レンズが姿を現しました。 間近に見る口径102mmのレンズは存在感のある大きさで、星空観望への期待が膨らみます。
なお、レンズセルの外側には、光軸修正用のネジが設けられているので、ユーザーによる光軸調整も可能です。 ただし、届けられた時点で光軸は完全に合っていましたので、通常の用途であればユーザー側で調整する必要はないでしょう。

Explore Scientific ED102WH鏡筒

アイピース等を取り付ける接眼部には、ラック&ピニオン式フォーカサーが採用されています。接眼装置には、減速微動装置が標準で付属していて、正確なピント合わせを支援してくれます。 また、このフォーカサーの動きは軽く滑らかで、クレイフォード式のフォーカサーのようなフィーリングです。 繰り出し機構に採用されているヘリカル形状のギアが、このスムーズな動きを生み出しているのでしょう。 フォーカサーの動きは軽快ですが、接眼部上部に設けられているドロチューブ固定用の2本のネジを締めると、 ドロチューブはしっかりと固定されます。 実際に双眼装置のような重い機材を取り付けて観望してみましたが、 機材の重みでドロチューブがズレ落ちることはありませんでした。

Explore Scientific ED102WH鏡筒

ED102WHの接眼部には、回転装置も設けられています。 フォーカサーと鏡筒部分の境目にあるネジを緩めると、接眼部を回転させることができます。 接眼部の向きを変えたりする時に便利な回転機構です。 ED102WHには、天体観望に便利な、2インチ-31.7mm変換アダプター付の2インチ天頂ミラーが標準で付属します。 一方、ファインダーはオプションとなっていて、通常の8倍50mmのタイプの他に、 照明装置が付いた正立8倍50mmタイプと、90度傾斜型の正立8倍50mmタイプを選択できます。

Explore Scientific ED102WH鏡筒

Explore Scientific ED102WH を使った観望

Explore Scientific ED102WH望遠鏡を赤道儀に載せて、天体観望を行いました。 最初は、夏の天の川の中で輝く星雲の観望です。 付属している2インチ天頂ミラーに、同社の視野68度タイプの低倍率の40ミリアイピースを取り付けて観望しました。 この組み合わせでは、倍率は約18倍になります。 天の川の方向に望遠鏡を向けると、針で突いたような微恒星が視野一杯に広がりました。 干潟星雲を視野に入れると、微恒星の中に淡いガスが浮かんでいるように見え、気持ちの良い眺めを楽しめました。 主要な星雲を観望した後、倍率を上げ、M22をはじめとした球状星団を観望しました。 星は隅までシャープで、中央部にはボール状に集まった星々がよく分解されていました。 輝星を視野に入れると、若干の色収差を感じることがありましたが、観望で気になるほどではありませんでした。 なお、ED102WHに天頂ミラーを使用する際には、付属の延長筒をドロチューブにねじ込む必要があります。

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次に月を観望しました。 まず、月の全景を視野に入れ、月面全体の様子を確認しましたが、 屈折望遠鏡らしいコントラストの高い像で、色収差もほとんど感じられません。 更にアイピースを変えて、約150倍で月面クレーターを観望しました。 こちらもコントラストは良好で、クレーターや山脈の凹凸がよくわかります。 なお、月の欠け際を見ると、若干色収差が感じられました。 月を観望した後、南西の空で輝く土星も観望しました。 見頃を過ぎているため、土星の見かけの大きさは小さく、また暗くなっていましたが、 土星の環がよくわかりました。 入門機で人気の8センチクラスの望遠鏡と比べると、ED102WHは光量があるため、 このような惑星の観望も楽しむことができます。 ところで、ED102WHはバックフォーカスに余裕がある設計のため、 90度傾斜型の双眼装置を取り付けることが可能です。 上の写真では、バーダープラネタリウム社の双眼装置を取り付けていますが、 その他の機器も取り付け可能でしょう。 Explore ScientificED102WHは、双眼で星空を楽しみたい天文ファンにとって、 魅力的な光学系の一つではないでしょうか。


ED102WHで天体写真撮影

ED102WHは広角アイピースで人気を博している米Explore Scientific社製品であり、 どちらかというと観望用に製造された望遠鏡だと思いますが、 今回、笠井トレーディングED屈折用0.8倍レデューサーを使用して、 天体写真の撮影テストを行ってみました。 この組み合わせでは、ED102WHは焦点距離が約570mm、F値が5.6の光学系となります。 レデューサーの後ろにカメラマウントを取り付け、 天体撮影用デジタル一眼レフカメラのAstro60Dで撮影を行いました。 赤道儀には、ビクセンSXP赤道儀を使用しました。 下の写真は、この組み合わせで撮影した亜鈴星雲 M27です。 デジタルカメラの感度をISO1600に設定し、600秒露出で撮影しました。 写り具合がよくわかるように、カラーバランスを合わせただけの一枚画像を載せています。 全体画像の下に、星雲部分をトリミングした拡大画像も載せました。

Explore Scientific ED102WH鏡筒

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撮影画像を見ると、亜鈴星雲の形がはっきり写し出されているのがわかります。 画像をよく見ると輝星の周りに青色にじみが若干発生していますが、 背景の星々はシャープで、コントラストも良好です。 下に、上の画像を各部分ごとにトリミングした拡大画像を載せました。 拡大画像を見ると、四隅でも星の形がほぼ円形を保っていることがわかります。 四隅でも光量は豊富で、周辺減光はほとんど目立ちませんでした。

下に、上の画像を各部分ごとにトリミングした拡大画像を載せました。 拡大画像をご覧いただくと、四隅でも星の形がほぼ円形を保っていることがわかります。 周辺光量が豊富なこともこの光学系の強みです。 空の条件にもよりますが、フラット補正を行わなくても天体写真の作品作りを楽しめそうです。

Explore Scientific ED102WH鏡筒

まとめ

Explore Scientific ED102WH望遠鏡は、同社の超広角アイピースを使って、 夜空に浮かぶ星雲・星団や月・惑星の観望を楽しむ方のために作られた天体望遠鏡という印象を受けました。 天体観望用アイピースを製造しているメーカーだけあって、 星空観望時に便利な2インチ天頂ミラーや接眼部の減速微動装置を標準で装備している点は、 観望ファンに喜ばれるでしょう。 口径10センチという大きさも、星空観望を気軽に楽しむのに適した大きさと言えます。 これ以上口径が大きくなると、より大きな架台が必要になり、取扱いも難しくなります。 一方、8センチクラスでは、天体を観望するには、少々物足りないと感じる時もあります。 ED102WHは、フードを縮めるとコンパクトになるので、フィールドに持ち出しやすく、 天体観測を始めたばかりの方でも扱いやすい大きさだと思います。 ED102WHは、光学性能や細部の造りという点では、国産の高級機には敵いませんが、 コストパフォーマンスの点で秀でた望遠鏡です。 双眼装置や広角アイピースを使って天体観望を楽しみたいユーザーにとって、 Explore Scientific ED102WHは一つの選択肢になるのではないでしょうか。

レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

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