120ED PRO望遠鏡インプレッション

120ED PRO望遠鏡インプレッション

Sky-Watcher120ED PRO望遠鏡とSXD赤道儀

今回テストした120ED PRO鏡筒は、協栄産業が販売する望遠鏡でEDレンズを含む2枚玉の対物レンズが使われ高性能化が計られたモデルです。 今回はこの120EDPRO望遠鏡をお借りして、ゴールドに輝く天体望遠鏡の見え味を確かめてみました。


天体望遠鏡の外観

 このPROシリーズ望遠鏡のトレードマークの一つとなっているのが、天体望遠鏡のカラーです。上の写真からもご覧頂ける通り、金色のボディーカラーが特徴です。ホワイトカラーが多い日本の天体望遠鏡の世界では異色ですが、ビクセンのSXD赤道儀に載せてみたところ、思った以上にフィットして精悍に感じました。

120EDPRO鏡筒自体の大きさはコンパクトで、鏡筒の長さ太さ共にビクセンのED103S望遠鏡と同じ程度しかありません(下写真参照)。しかし、レンズがED103に比べると約20ミリ大きいので、重さは120EDPRO望遠鏡の方が1.5キロほど重く約5.1キロあります。またレンズが大きく重いため、鏡筒のバランス位置は少し前よりになっています。

天体望遠鏡には、上の写真のように鏡筒バンドとアリミゾ金具が付属しています。赤道儀への取付は、このアリミゾ金具を使って行いますので、ビクセン製赤道儀でしたらワンタッチで取り付けることができます。

Sky-WatcherED120PROとビクセンED103S
ED120PROとビクセンED103S


120EDPROのスペック

120EDPRO望遠鏡は口径120mm、焦点距離900mm、F/7.5のEDアポクロマート天体望遠鏡です。2枚玉の対物レンズにEDレンズが使われていますので、色収差の発生が少ない像を楽しめます。この対物レンズを収めるレンズセルには光軸調整機能はなく、メンテナンスフリータイプになっています。最近の望遠鏡では、こうした調整機能のないレンズセルが用いられることが多くなってきました。

ピントを合わせる接眼部には、クレイフォード式のフォーカサーが用いられています。動きはスムーズですがロックする力は弱いので、大きく重いカメラなどを取り付けるときは注意しましょう。この接眼部には、アメリカンサイズアイピースと2インチサイズのアイピースを使うことができます。なおこの望遠鏡には、標準で2インチ天頂ミラーが付属してきます。観望時にはこれを使うのがよいでしょう。

ファインダーはアリガタアリミゾ式で、ワンタッチで取り付け取り外しが可能のタイプです。口径は50mmで倍率は9倍のものが使用されています。

ED120PROの接眼部とレンズセル
ED120PROの接眼部とレンズセル


月や惑星の観望に

この天体望遠鏡をSXD赤道儀に載せて、半月を少し過ぎた月を観望してみました。まずは約50倍の倍率で月の全景を見てみると、月は明るすぎてまぶしいくらいです。10センチの天体望遠鏡よりも明らかに像が明るく、集光力の違いを感じました。そこで、もう少し倍率の高くなるアイピースに交換して月を観望してみました。

視界の中には屈折望遠鏡らしいコントラストの高い像が広がってくれました。EDアポクロマート望遠鏡なので、月の欠け際やクレーターを見ても色収差は感じられません。スッキリした見え味で、月面クレーターの落ち込む様子や、山脈の切り立った姿を楽しむことができました。

その後、西空に傾き始めた土星も観望してみました。やはり口径12センチの集光力は大きく、10センチの望遠鏡 よりも土星が明るく見えます。また、土星の環は傾きが小さくなって見づらくなっていますが、カッシニの空隙も確認することができました。もう少し条件がよければ、土星の環に走るカッシニ空隙をしっかりと見ることができるでしょう。

ED120PROとデジカメで撮影した月
ED120PROとキャノンEOSKissDXで撮影した月全景


ED120PRO VS ED115S

ED120PROにとって一番のライバルとなるのは、ビクセンのED115S望遠鏡でしょう。口径、焦点距離共に ほぼ同じでスペックを持った望遠鏡です。この二つの望遠鏡を使って、星空を見比べてみました。

まずは外観ですが、ED120PROの方が鏡筒の太さが一回り細くて長さも短くなっています。鏡筒の色もゴールド色なので、見た目は実際よりスマートに感じます。ED115Sには持ち手が鏡筒バンドに付いていますが、ED120PROには付属しません。その分赤道儀への載せ易さという点では、ED115Sの方が楽でしょう。

この二つの望遠鏡をSXD赤道儀に同架して月を観望してみました。どちらも同じような見え方でしたが、倍率を上げてみると、コペルニクスの周りにある小クレーターは、120EDPROの方がよく見えます。明らかに違いがわかるほどの差ではありませんが、5mmの口径差が効いているのかもしれません。この後、土星や恒星も見てみましたが、色収差の出方などは同じような印象でした。

この後、デジタルカメラを付けて月の撮影も行ってみました。画像を見比べても同じような写り具合で、画像ファイルを混ぜてしまうと、どの画像がどちらの望遠鏡で撮ったかわからないぐらいです。光学性能的には、ほぼ同じと言っても間違いはないでしょう。

Sky-WatcherED120PROとビクセンED115S
ED120PROとビクセンED115S


観望向きの120EDPRO

Sky-WatcherED120PROとビクセンSXD赤道儀 120EDPROとED115Sの大きな違いは接眼部です。120EDPROは上記したようにクレイフォード式のフォーカーサーが用いられていますが、ED115Sには昔ながらのラックアンドピニオン式のものが使われています。どちらも動きはスムーズで問題有りませんが、重いカメラを取り付けるなら、しっかりロックできるラックアンドピニオン式の方が有利です。

また、ドロチューブの径もED115Sの方が太くなっています。それにED115Sにはメーカーから直焦点撮影用のレデューサーレンズも発売されていますので、これとカメラと組み合わせることで、星雲や銀河の写真撮影にも使うことができるようになっています。現在のところ、120EDPROにはこうしたコンバージョンレンズのラインナップはないようです。

こうしたことを考えると、写真撮影用途ならED115Sの方が向いています。もちろん120EDPROでも写真撮影は可能ですが、どちらかと言えば観望専用に作られた天体望遠鏡です。コンパクトなボディと大口径の集光力を生かして、自宅から月や惑星を観望したり、星空の綺麗な場所で星雲星団を見るのに適した望遠鏡です。

口径120mmという大口径屈折望遠鏡としては非常にコンパクトに作られていますから、比較的小さな架台にも搭載できるのが、この望遠鏡の美点です。8センチ~10センチの天体望遠鏡一式をお持ちでしたら、望遠鏡だけをアップグレードすることも可能でしょう。ゴールドに輝く精悍なボディカラーも、この天体望遠鏡の魅力の一つだと思います。

レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

ページトップへ