ASIAIRとstellaimageを使った天体写真の画像処理 基本編

ASIAIRとstellaimageを使った天体写真の画像処理 基本編

撮影した画像を画像処理して綺麗に仕上げてみましょう。
今回は、天体写真の画像処理の基本、ダーク・フラット補正やスタック処理について説明します。

ダークノイズについて

デジカメや天体用カメラに採用されているCMOSセンサーは、レンズで受け止めた光を電気信号に変換し、画像として記録します。その際、カメラの電子回路に起因する微弱な電流(暗電流)もセンサーに流れ続けていて、これが時間とともに蓄積し、ノイズとなって画像に表れます。これを一般的にダークノイズと呼んでいます。

センサー温度が低くなれば暗電流が減るので、ダークノイズの量は減少します。ダークノイズは、露光時間やセンサー温度、カメラの感度などの条件が同じであれば、ほぼ同じ強さで画像に表れる特徴があるので、天体撮影後にダークノイズだけをまとめて撮影し、画像処理で取り除く(減算)ことができます。

ダークノイズを撮影するには、センサー温度や感度、露光時間を撮影画像と同じに設定し、真っ暗な中で撮影を行います。冷却機構のないカメラの場合は、センサー温度を制御できないため、天体を撮影した夜、天文薄明が始まり温度があまり変わらないうちに撮影するのが一般的です。ダークノイズが写った画像のことを、ダークフレームと呼んでいます。

Tip:天体撮影用として、冷却機構のついた冷却CMOSカメラの人気が高いのは、センサー温度を低くすればダークノイズが減るからです。


バイアスについて

露光時間0秒で撮影した画像のことをバイアスフレームやバイアスと呼んでいます。バイアスには、撮像素子が受けた光の情報は含まれておらず、カメラの電子回路に起因するノイズだけが含まれています。

バイアスの撮影方法は、カメラに蓋をして、センサー温度やカメラの感度を同じにし、露光時間は0秒もしくは、カメラの最短露光時間で撮影します。ASIカメラの場合は、ASIImgのオートランの中に、バイアス撮影モードがあるので、それを利用して撮影しましょう。

画像処理時、ソフトウェアによっては、バイアスとダークフレーム、両方を指定する必要があるものもありますが、一般的にはダークノイズにバイアスも含まれているので、ダークフレームを減算するだけで、長時間ノイズとバイアスはしっかり減算されます。
Tips:バイアスやダークノイズの呼び方に明確な定義はなく、人によって異なることがあります。例えば、ダークノイズからバイアスを減算したノイズ画像のことを、ダークフレームと呼ぶ人もいます。慣れてくればニュアンスでわかりますので、あまり気にしなくても大丈夫です。


フラットフレームについて

フラットフレームとは、光学系の周辺減光を補正するための撮影画像です。下のように、周辺減光以外、何も写っていない画像です。

フラットフレームの撮影は、カメラに望遠鏡を付けた状態で行います。望遠鏡の筒先には、光を拡散するため、白いトレーシングペーパーや布を被せるのが一般的です。カメラに蓋をして簡単に撮れるダークと異なり、撮影に使った望遠鏡も必要になります。
何も写さないなら撮影は簡単と思われるかもしれませんが、正確なフラットフレームを得るには均質な明るさの光源が必要なため、撮影はなかなか難しく、いろいろ工夫されています。EL調光板を使う方法もありますが、私は天体望遠鏡の筒先にトレーシングペーパーをかぶせて、天文薄明が始まり、星がまばらになった頃合いを見計らって、フラットフレームを撮影しています。

薄明の空を使ったフラットフレームの具体的な撮影方法は以下の通りです。

  1. 望遠鏡を天頂に向け、筒先に光を拡散するシート(トレーシングペーパー)などを付ける。
  2. カメラの感度は撮影時と同じ。露光時間は明るさに合わせて変更する(目安5秒前後)。
  3. 1枚テスト撮影後、画像を確認して、明るすぎたり暗すぎたりしないかを確認する。
    明るすぎるときは露光時間を短く、暗すぎるときは長くする。
  4. ライトフレームと同じだけの枚数を撮影する。


Tips:フラットフレームの明るさは、ライトフレームと同じぐらいが目安です。画像のヒストグラムの山の位置が、ライトフレームと同じ程度になっているようにしましょう。


スタック処理(コンポジット処理)

スタック処理は、撮影した画像を重ね合わせてノイズを平均化するために行います。コンポジットとも呼ばれていますが、最近は英語表記に合わせて「スタック(Stack)」と呼ばれることが多くなりました。

スタック処理は、撮影画像に表れるランダムノイズを低減するために行う処理です。ランダムノイズはその名の通り、ランダムに表れるノイズで、発生パターンに再現性がありません。そのため、ランダムノイズを減らすには、数多くの画像を重ね合わせて画像を均一化します。最初は、撮影が楽でノイズ低減効果を感じやすい4枚を目安にするとよいでしょう。
なお、バイアスフレーム、ダークフレーム、フラットフレームにもランダムノイズは発生するので、これらの補正画像もスタック処理をして画像を均一化しておきましょう。枚数は、撮影画像と同じ枚数が目安です。


ASIDeepStackでダーク・フラット処理

ASIStudioに付属している、ASIDeepStackでダーク・フラット処理を試してみましょう。ASIDeepStackは、最新バージョン1.9での作業をご紹介しています。

ASIDeepStackを起動すると、上画像のように、右上にファイルという項目があり、この下に、バイアス、フラット、ダーク、ライトフレームを選ぶリストボックスが表示されています。タブを切り替えて、該当の撮影画像を選択しましょう。
次に、右上にある設定アイコンを押して、ファイルの保存先を指定してください。

設定が完了したら、スタックボタンを押しましょう。処理の進捗状況を表示するダイアログボックスが表れた後、ダーク・フラット補正後のスタックされた画像が画面に表示されます。

ヒストグラムのボタンや矢印を移動させると、画面に表示されている画像の明るさやコントラストが変わるのを確認できます。

また、画像処理欄にある、明るさやコントラストのスライダーを使って、好みの画像に仕上げましょう。
画像処理が終わったら、ファイルの保存から画像データーを保存します。画像は、fit形式の外、TIFFやJPEG形式でも保存されます。TIFFやJPEGは一般的な画像表示ソフトで開けるので、SNS等に投稿することもできます。


ステライメージ9でダーク・フラット処理

天体写真の画像処理ソフトと言えば、日本ではアストロアーツ社のステライメージ9がよく使用されています。ステライメージ9は、ダーク・フラット処理はもちろん、スタック処理時に細かな設定ができるなど、市販ソフトだけに機能が充実しています。





レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。




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