見られるか!? 紫金山・アトラス彗星!!

>見られるか!? 紫金山・アトラス彗星!! 見られるか!? 紫金山・アトラス彗星!!

紫金山・アトラス彗星C/2023 A3は放物線軌道の彗星で、太陽への接近は一度きりです。
そのためハレー彗星のような楕円軌道で太陽を繰り返し周回する彗星に比べ、その動向の予測が困難です。 2024年3月ごろからの観測で、光度の急な増加とその後の鈍化が認められました。
これを受けて科学者の間で、元々の核は小さなものであってその核は太陽の熱で溶け彗星は崩壊してしまったのではないか?という悲観論が出始め、その後彗星は地球からは観測できない位置になり暫く様子がわかりませんでした。 しかし先日(9月2日)、NASAの太陽周回(ほぼ地球公転軌道で地球の少し先を進む)観測機STEREOが、紫金山・アトラス彗星の姿を捉えたというグッドニュースが飛び込みました!
どうやらこの彗星は崩壊を免れたようです!大彗星になるかどうかはわかりませんが可能性に賭けて今から準備をしておきましょう!




紫金山・アトラス彗星を観察しよう!

紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3 Tsuchinshan-ATLAS)は、2023年に発見された新しい彗星で、今秋には肉眼で見える明るさになると予想されています。彗星は2024年9月29日に太陽に最接近し、10月12日には地球に最も接近します。日本からは、9月下旬から11月上旬にかけて観察条件が良くなる見込みです。この機会に、ぜひ双眼鏡や天体望遠鏡を使って話題の紫金山・アトラス彗星を観察・撮影してみましょう。




紫金山・アトラス彗星とは?

紫金山・アトラス彗星は、2023年1月に中国の紫金山天文台で発見された彗星です。発見当初、しばらくは彗星の存在が確認されませんでしたが、南アフリカの小惑星地球衝突警報システム(ATLAS)が再確認し、両方の名前を取って「紫金山・アトラス彗星」と名付けられました。

>見られるか!? 紫金山・アトラス彗星!!


紫金山・アトラス彗星の発見時は、彗星は太陽から遠く、明るさは約18等級と非常に暗かったものの、軌道計算により、近日点では太陽から0.39au(水星軌道とほぼ同じ距離)まで接近し、マイナス等級になると予測されました。
久しぶりの大彗星として期待が高まっていましたが、今夏の観測では彗星の増光が徐々に鈍化し、最大で2等級程度と予想する専門家もいます。しかし、彗星の明るさ予測は難しく、過去には突然バーストして明るくなった例もあるため、今後の紫金山・アトラス彗星の動向に注目していきましょう。


彗星の観測チャンスは?

紫金山・アトラス彗星の観測チャンスは、大きく分けて2回あります。1回目は9月末から10月初め、2回目は10月中旬から11月上旬です。それぞれの時期に適した観測条件をまとめました。


9月末から10月初旬の明け方に東の空!

紫金山・アトラス彗星は9月29日に太陽に最も近づき、この頃に明け方の東の空で観測できます。
ただし、この時期の彗星は太陽に非常に近く、薄明が始まる東の空、地平線近くでしか見られません。そのため、東の方向が地平線まで開けた見晴らしの良い場所で観測する必要があります。

>見られるか!? 紫金山・アトラス彗星!!


彗星と太陽の見かけの距離は約3度しか離れておらず、薄明中の観測となるため非常に難しい条件です。しかし、この時期は彗星が最も明るくなる可能性があるため、挑戦する価値があります。彗星が十分に明るければ、薄明の空に長い尾を引く大彗星の姿を目にすることができるでしょう。
なお、10月初旬は、太陽と彗星が非常に近いため、天体望遠鏡や双眼鏡で観測する際には、誤って太陽を視野に入れて目を傷めないように注意が必要です。


10月中旬から11月初旬の夕方に西の空!

10月上旬は、太陽と紫金山・アトラス彗星の位置関係が悪くなり、一時的に観測が難しくなります。次に彗星が見えるのは10月12日頃で、今度は日没後の西の空に姿を現します。

>見られるか!? 紫金山・アトラス彗星!!


この時期、彗星は太陽から離れ始めますが、日没後に観測できる高度が日に日に上昇します。具体的には、18時30分頃の彗星の高度は、10月13日には約5度、14日には約9度、15日には約13度と急速に高くなるため、観測可能な時間が徐々に長くなっていきます。

10月中旬は、地球と彗星の距離が近く、高度も上がるため、9月末よりも彗星の尾が見やすくなる可能性があります。月明かりがある時期ではありますが、彗星がまだ明るい12日や13日頃に、西の空が開けた場所で観測するのが良いでしょう。


双眼鏡で観測しよう!

街灯がなく、夜空が暗く星空が綺麗な場所では、肉眼で6等級の星まで見ることができると言われています。しかし、彗星は恒星と異なり、淡く広がっているため、たとえ肉眼等級であっても見えづらく感じることがあります。

加えて、紫金山・アトラス彗星は太陽に近く、天文薄明中の低空で輝くため、明るさ次第では肉眼で見つけるのが非常に難しいことも予想されます。そのため、双眼鏡を使用して観察することをお勧めします。

>見られるか!? 紫金山・アトラス彗星!!



もちろん天体望遠鏡でも観察可能ですが、彗星観察には、準備が簡単で機動力のある双眼鏡がより適しています。天体望遠鏡と同様に、双眼鏡も口径が大きいほど暗い星まで見えますが、口径が大きいと重くなるため、手持ちで使う場合は口径4センチ程度のものが扱いやすいでしょう。

倍率は10倍前後で、見かけ視界が広いタイプの双眼鏡が彗星観察には使いやすいです。双眼鏡は彗星だけでなく、星雲や星団の観望にも役立つため、この機会に性能の良い双眼鏡を1つ用意しておくと、今後の星空観察にも便利でしょう。


赤道儀で撮影しよう!

デジタル一眼レフカメラや天体用CMOSカメラをお持ちであれば、紫金山・アトラス彗星の撮影に挑戦してみるのはいかがでしょう。使用する光学系は、焦点距離が短めの屈折望遠鏡や、200ミリ前後のカメラレンズが使いやすいです。望遠鏡とカメラを載せる架台は、設置と撤収が素早く行えるポータブル赤道儀や小型赤道儀が適しています。

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撮影の際、9月下旬は明け方に向けた撮影となるため、余裕をもって極軸合わせを終えた状態で撮影に臨めますが、10月中旬は日没後すぐの撮影になるので注意が必要です。

この時期に紫金山・アトラス彗星を撮影する場合、早めに現地に到着し、日没前にセッティングを済ませておくことが大切です。また、北の方角を事前に確認し、天文薄明が終了したらすぐに撮影を開始できるよう準備しておきましょう。


まとめ

紫金山・アトラス彗星は、久しぶりに注目される大彗星として、これから見ごろを迎えます。彗星の観測や撮影には少し工夫が必要な時期もありますが、明け方や日没後の空に輝くその姿を、ぜひ双眼鏡やカメラを使って楽しんでみましょう。

彗星は予測が難しい天体ですので、もしかしたら予想以上の明るさや美しい尾を見せてくれるかもしれません。この貴重なチャンスを逃さず、秋の夜空に広がる神秘的な光景を存分に堪能してみてはいかがでしょう。


レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。

ASIairのガイド機能だけを用いて、まるでスタンドアローン型オードガイダーのように運用する!

ASIairのガイド機能だけを用いて、まるでスタンドアローン型オードガイダーのように運用する! ASIairのガイド機能だけで、
スタンドアローン型オードガイダーのように運用!

スタンドアローン型オートガイダーの分野ではラセルタMGEN-3の評価が高く事実上1強の状況でしたが 本国出荷価格が大幅値上げとなり円安も重なるという環境があり、2024年現在新規販売を休止しています。
しかしながらデジカメ撮影用途などにスタンドアローン型のオートガイダーには根強い人気があり、
お問い合わせが絶えませんので今回は、ASIairを単機能のオートガイダーのように活用する方法を手順を追って解説します。


使用機材
ASI air ビクセン
クイックリリース
アングルプレート
K-ASTEC
DS38-30
 
K-ASTEC
DS38N
30F4 ミニスコープ


ASIAIRで楽しむデジカメ天体撮影

ASIAIR とデジカメで天体撮影を楽しんでみませんか。ASIAIRを使えば、スマホやタブ レットからデジカメや赤道儀を統合コントロールし、天体撮影を快適に、かつ本格的に楽しむことができます。ASIAIRとデジカメを使って天体撮影を行う方法を、3部に分けてご 紹介します。


2.撮影準備編3.天体撮影編



ASIAIRとは

ASIAIRは、ZWO社が開発したスマートWi-Fiデバイスです。2024年夏現在、ASIAIR Plus- 256GとASIAIR miniが発売されており、これらに同社の天体撮影用CMOSカメラを繋ぐと、 無線LAN経由で、ASIAIRアプリをインストールしたスマホやタブレットから、カメラや赤 道儀を操作ができます。


ASIAIRは、基本的に同社の天体撮影用CMOSカメラを制御するための機材ですが、キヤノ ンやニコン、ソニー製のデジタルカメラにも対応しています。主要なカメラにはほぼすべて 対応していますが、対応カメラの詳細については、ASIAIRアプリの対応欄をご確認ください。


ASIAIRのメリット

ASIAIRは、ZWO社が開発したスマートWi-Fiデバイスです。2024年夏現在、ASIAIR Plus- 256GとASIAIR miniが発売されており、これらに同社の天体撮影用CMOSカメラを繋ぐと、 無線LAN経由で、ASIAIRアプリをインストールしたスマホやタブレットから、カメラや赤 道儀を操作ができます。



ワイヤレスで撮影機器を操作できるため、車内など離れた場所でも撮影することができます。また、天体導入も、ASIAIRアプリの豊富な天体リストの中から撮影対象を選んで自動導入することが可能です。
プレートソルビングが使える点も魅力です。プレートソルビングは、実際に撮影した画像から星の位置を解析し、自動導入で選んだ撮影対象が正確に入っているかを判断して、導入補正する機能です。撮影対象と構図のズレを手動で調整する必要がないため、大変便利です。


デジカメとガイド鏡のセットアップ

撮影を行う前に、デジカメにZWO社のガイド鏡を取り付けましょう。以下は、カメラレンズとデジカメで撮影するときにお勧めのセットアップ例です。
まず、デジカメにアルカスイス規格のL字プレートを取り付けます。下写真では、ビクセンのクイックリリースアングルプレートを使用しています。



次に、アングルプレートのサイド側にガイド鏡を取り付けますが、取り付けには、K-AstecのDS38-30クランプ(下画像)を使用します。



DS38-30に付属しているカメラネジを利用して、下画像のようにクランプの裏側にガイド鏡をネジで取り付けます。ネジが緩いとガイド鏡が動いてしまうので、しっかりとネジを締めて固定してください。



クランプにガイド鏡を取り付け、アングルプレートのサイド側にクランプを挟み込みむと、以下のようにデジカメにガイド鏡を取り付けることができます。


最後にデジカメにカメラレンズを取り付け、ガイド鏡にオートガイダーのZWO ASI120MMminiを差し込めば、デジカメのオートガイド撮影システムの完成です。


ASIAIRとデジカメの接続

ASIAIRとデジカメは、カメラ付属のUSBケーブルで接続します。カメラのUSB端子にUSBケーブルを差し込み、もう一方をASIAIRのUSBハブに差し込みます。



今回は、ASIAIR miniを使用しましたが、ASIAIR Plus-256Gを使う場合は、USB3.0に対応した青色の端子に差し込むとよいでしょう。
オートガイダーとASIAIRは、ASIAIRに付属しているUSB type-Cケーブルを使って接続しましょう。
※ASIAIR miniとASIAIR Plus-256Gでは、使える機能が若干異なります。デジカメ(DSLR)の場合、ASIAIR miniではライブスタック機能が使用できません。ライブスタックを使用して電視観望も行いたい場合は、ASIAIR Plus-256Gを選びましょう。


ASIAIRアプリのインストール

撮影システムが構築できたら、スマホやタブレットにASIAIRアプリをインストールしましょう。インストールは、各スマホのアプリストアから、ZWO社のASIAIRをダウンロードして実行してください。 アプリをインストールできたら、赤道儀につなぐ前に、デジカメを認識できるか確認しましょう。



ASIAIRに電源コードをつなぎ、電源を入れます。ASIAIR miniには電源スイッチはなく、DC12Vを供給すれば自動的に電源が入ります。電源が入ると、ASIAIRからビープ音が鳴るので、スマホのWifi設定画面を開いて、ASIAIRを接続します。
ASIAIR接続後、ASIAIRアプリを開くと、下のような画面が表示されます。右上のカメラ欄から、接続しているカメラを選び、スライドスイッチをオンにします。オンになればASIAIRと接続が完了しているので、ASIAIRアプリでデジカメのシャッターをコントロールすることができます。オンにならない場合は、USBケーブルの接続を確認してください。


次から赤道儀で実際に撮影

今回は、デジカメのセットアップ方法についてご紹介しました。次回は、赤道儀にセットアップ機材を載せて、ASIAIRとデジカメで実際に天体撮影を行う手順をご紹介します。



撮影準備編


前回は、ASIAIRとデジカメのセットアップ方法をご紹介しました。今回は、赤道儀への取り付け方法から、ASIAIRを使ったピント合わせまでを順を追ってご紹介します。なお、今回の記事ではビクセン SX2リミテッド赤道儀(以下:SX2リミテッド)を使用しました。その他の機材は前回と同じです。


デジカメと赤道儀のセットアップ

取扱説明書を見ながら、赤道儀を設置しましょう。SX2リミテッドの場合は、三脚を開いた後、その上に赤道儀を載せ、バランスウェイトを取り付けます。このとき、赤道儀が北方向に向いているようにしてください。


次に、デジカメを取り付けるために、赤道儀の架頭(ヘッド部分)にアルカスイス規格のクランプを取り付けましょう。クランプは固定力の高い製品の方が安心です。今回は定評のあるK-Astec DS38Nを使用しました。



クランプを架頭に固定したら、前回セットアップしたデジカメを取り付けます。レンズが大きく重い場合は、カメラボディをクランプに取り付けてからカメラにレンズを取り付けると、取り付けやすいでしょう。
カメラを取り付けたら、ガイド鏡をL字アングルに固定します。ガイド鏡を付けて左右のバランスが崩れた場合は、DS38Nのクランプを緩めてカメラの位置を調整すると良いでしょう。



最後に、赤道儀の赤経側のクランプを緩めて、極軸周りのバランスを合わせます。バランスウェイトの位置を変更したり、ウェイトを追加して左右のバランスを取りましょう。


極軸合わせとASIAIRの接続

セットアップが完了したら、赤道儀の電源を入れ、極軸望遠鏡やPoleMasterを使用して極軸合わせを行いましょう。極軸望遠鏡やPoleMasterをお持ちでない場合は、ASIAIRのPA機能を使って合わせることもできます。



極軸合わせが完了したら、撮影機材とASIAIR miniをケーブルで接続します。
接続が完了したら、デジカメの電源を入れます。撮影途中で接続が切れないように、デジカメのオートオフ機能はオフにしておきましょう。
すべての電源が入り、撮影の準備が整ったら、ASIAIR miniに電源ケーブルを接続して、電源を入れます。
※PA機能とは PA機能はASIAIRに搭載されている極軸合わせ支援機能です。天の北極付近を撮影した画像を解析し、赤道儀をどの位置に向けるべきかを示してくれます。ASIAIRアプリのPA機能から実行できます。撮影に慣れてきたら、ぜひ使ってみてください。


ASIAIRとの接続

ASIAIR miniの電源が入り、ビープ音が鳴ったら、スマホのASIAIRアプリを立ち上げて、ASIAIR miniとWi-Fi接続しましょう。



Wi-Fi接続が完了すると、画面に撮影地の経度や緯度が表示されます。実際の位置と大きくずれていないか確認してください。
画面右側でカメラとオートガイダーを接続します。それぞれ接続しているカメラとオートガイダーを選んで接続しましょう。



Main/Guide Scope FLの欄には、カメラレンズの焦点距離とガイド鏡の焦点距離を入力します。この値が大きくずれていると、自動導入やガイド精度に支障が出るため、できるだけ正確に入力してください。
最後に赤道儀を接続しましょう。今回はSX2リミテッド赤道儀を使用しているので、ワイヤレスユニットを使ったWi-Fi接続です。ステーションモードを使って接続しましょう。以下、手順をご紹介します。
架台の一覧から、Vixen Wireless Unitを選択しましょう。



次に、ステーションモードを設定します。Enterキーをタップして、ASIAIRアプリ内に入ります。電波マーク(ネットワークアイコン)をタップして、ネットワーク設定画面を開きましょう。設定画面が表示されたら、Wi-Fi を選択してください。初期状態では、ステーションモードはオフになっているので、タップしてオンにします。



ステーションモードがオンになると、ASIAIRは接続可能なWiFiネットワークを探しはじめます。しばらく待つと、接続可能なネットワークの中にWireless Unitが表示されるので、それを選択してください。



パスワード入力画面が表示されるので、ワイヤレスユニットのパスワードを入力します。接続に成功すると、接続されたネットワークのSSIDが上の欄に表示され、緑色のチェックマークが入ります。


マウントの一覧でVixen Wireless Unitが選択されているのを確認し、接続ボタンをタップすると、ASIAIRと赤道儀の接続が確立し、下に赤道儀のパラメーターや設定項目が表示されます。


ピント合わせ

赤道儀との接続が完了したら、ASIAIRの撮影モードをプレビュー(Preview)モードにして、露光時間を1~数秒程度に設定し、撮影してみましょう。撮影した画像が転送され、ASIAIRの画面に表示されます。表示されない場合は、接続が確立されているかを再確認してください。



最初はピントがずれているため、星がぼやけて写るはずです。レンズのピントリングを回し、プレビュー撮影を繰り返して、ある程度星が小さくなるまでピントを調整してください。



星がある程度小さくなったら、撮影モードをフォーカス(Focus)モードに変更し、ピントをさらに追い込みましょう。画面に表示されるカーソルを星に合わせ、画面左側の拡大ボタンを押すと、画面の一部が拡大表示されます。
ピントが合ったら、不用意にフォーカスリングが動かないように、テープを貼ってリングを固定しておくことをお勧めします。


オートガイダーの設定とガイド鏡のピント合わせ

まず、オートガイダーのアイコンを押し、オートガイダーの感度を設定しましょう。撮影場所の夜空の暗さにも左右されますが、初めは感度をMに設定しておくと良いでしょう。その他の設定はデフォルトのままで試してみてください。



オートガイダーの設定が完了したら、ガイド鏡のピント合わせを行います。画面左のガイドグラフのアイコンを押すと、オートガイダーが捉えた画像が表示されます。 画面右の露出開始ボタンをタップすると撮影が開始されます。露出時間を1~2秒に設定し、露出を開始しましょう。オートガイダーの場合、一度露出を開始すると、連続撮影され画面も更新され続けます。



星の像を見ながら、ガイド鏡のピントリングを回して、星が小さくシャープになるようにピントを合わせます。星を選ぶと、その星が拡大表示されるので、それを参考に合わせると良いでしょう。
ガイド鏡のピントが合ったら、ピントリングを固定しておきます。ガイド鏡のピントは頻繁に調整する必要がないため、一度合わせれば次回からはピント合わせを省いて撮影に移ることができます。 次回は自動導入とプレートソルビングを使った撮影
次回は、自動導入とプレートソルビングを活用した本格的な天体撮影について説明します。今回の記事を参考に、ASIAIRを用いてデジカメや赤道儀を接続し、ピント合わせや天体撮影にぜひチャレンジしてみてください。



天体撮影編



前回までで撮影の準備は整いましたので、ASIAIRの自動導入とプレートソルビング機能を使用して、撮影を開始していきましょう。


ASIAIRで天体の選択

ASIAIRで天体を自動導入する際は、まず目的の天体を選択する必要があります。天体の選択は、画面上のスタートボタンの左側にある検索ボックス(Target)から行います。この検索ボックスは、撮影モードを「プレビュー(Preview)」にすると表示されます。



導入したい天体のカタログ番号(メシエ番号やNGC番号)がわかっている場合は、検索ボックスにその番号を入力します(例:「M31」)。すると、該当する天体がリストに表示されます。



天体のカタログ番号がわからない場合は、検索ボックスに何も入力せず、右側の「Goボタン」をタップします。すると画面が切り替わり、ASIAIRが現時点でお勧めの天体(Tonight’s Best)を一覧表示します。



一覧の右上にあるメニューボタンをタップすると、検索する天体の種類を選択できます。たとえば、メニューから「Messier Objects(メシエ天体)」を選択すると、メシエ天体のリストが画像付で画面表示されます。



※ASIAIRアプリのバージョンによって、操作方法が若干異なります。


天体を選択して自動導入を開始

導入したい天体が決まったら、リストの中のその天体をタップしましょう。タップすると、画面右側にGoToボタンが表示されるので、それを再びタップします。これで、赤道儀が目的の天体に向かって回転を始めます。



赤道儀が動いている間は、カメラやASIAIR miniと接続されているケーブルが機材に巻き付かないように注意しましょう。


プレートソルビング

赤道儀のモーターが止まると、ASIAIRは自動的にカメラのシャッターを切り、画像を撮影します。この画像内の星の位置を解析して、現在の写野(視野)が実際にどこを向いているかを特定します。そして、目的の天体が写野の中央に収まっているかを確認します。



目的の天体が中央からずれている場合は、赤道儀が再び動き、位置を補正します。補正後、もう一度カメラのシャッターが切られ、再度解析が行われます。このプロセスは、通常1~2回繰り返され、写野が正確に調整されます。この位置補正の技術を「プレートソルビング」と呼びます。
もしプレートソルビングに失敗する場合は、カメラのレンズ焦点距離が正しく入力されているかを確認してください。レンズの焦点距離は、カメラタブから確認できます。また、ピントが大きくずれている場合もプレートソルビングに失敗します。前回ご紹介した方法でピントを再調整しましょう。


デジカメの設定と撮影の開始

撮影を開始する前に、デジカメの設定を確認しましょう。ASIAIRアプリでカメラボタンをタップすると、設定画面が表示されます。ここで、ISO感度や撮影データの保存先などを確認してください。



撮影は「Autorun」モードで行います。Autorunをタップすると、撮影スケジュール画面が開きます。スケジュール画面の左側には設定メニューが、右側には露光時間や撮影枚数を設定するシークエンスタイルが表示されます。
左側の設定メニュー: 一番上には、自動導入した天体のカタログ番号や名称が表示されています。この部分が保存フォルダの名称となります。名称を変更したい場合は、この部分をタップして編集できます。 その下には、子午線反転(Meridian Flip)のオンオフ設定などが並んでいますが、初めての設定ではデフォルトのままで問題ありません。操作に慣れてきたら、自分の好みに合わせて変更することができます。



右側のシークエンスタイル画面: ここで実際の露光時間や撮影枚数を設定します。タイルをタップすると、フレームの種類(Light、Bias、Flat、Dark)や露光時間、撮影枚数を設定できます。今回はデジカメでの本撮影なので、「Light」を選択し、露光時間を空の暗さに合わせて設定します。撮影枚数は、初めての場合は5枚で試してみましょう。Binは、最も解像度が高いBin1を選びましょう。
+ボタンを押すと、新しい撮影設定用のタイルが追加されます。異なる露光時間で撮影したい場合は、タイルを追加してスケジュールを組むと良いでしょう。


オートガイド開始

Autorunの撮影スケジュールが設定できたら、前の画面に戻り、オートガイドを開始します。オートガイドの画面は、画面左側のグラフアイコンをタップすると表示されます。
オートガイダーの画面が表示されたら、まず「露出開始」ボタンをタップします。タップすると、画面が更新され、オートガイダーが捉えた星の映像が表示されます。星がぼやけている場合は、前回ご紹介した方法でピントを合わせてください。



星がはっきり映っていることを確認したら、「オートガイド開始」ボタンをタップします。初めてオートガイドを開始する際には、ASIAIRが補正信号とモーターの動く方向を学習するキャリブレーションを行います。
キャリブレーションが完了すると、ガイド星を囲む線が緑色に変わり、オートガイドが開始されます。また、補正量を示すグラフも表示されます。オートガイドが始まったら、オートガイダーの画面から元の画面に戻りましょう。


撮影開始

「撮影開始」ボタンをタップして、露光を開始しましょう。撮影が始まったら、しばらくオートガイドのグラフを確認して、大きなずれがないかをチェックします。



もしグラフが一方向に大きくずれて戻らない場合は、一度露光を中止し、キャリブレーションをやり直してください


画像表示と確認

撮影が終わると、デジカメで撮影した画像が画面に表示され、更新されます。画像が表示されたら、拡大してピントのズレや星の流れがないか確認しましょう。



撮影画像は撮影が終了するたびに転送され、画面が更新されます。以前の画像を確認したい場合は、上部メニューバーのSDボタンをタップし、「Image Management」を開くことで、撮影した画像を確認できます。



撮影終了とASIAIRの電源オフ

撮影を中断するには、「一時停止」ボタンを押し、「Puase」を押します。撮影を再開したい場合は、「撮影開始」ボタンを再度押すと、先ほどの設定で撮影を続けることができます。



全ての撮影が終了したら、オートガイダーを停止させます。その後、上部メニューバーの電波マークボタンをタップし、一番下の「Slide to Shut Down」部分をスライドすると、ASIAIRの電源が切れます。これにより、接続しているデジカメや赤道儀も切断されます。最後に、ケーブルを抜き、デジカメの電源も切ってください。


ASIAIRを使うと簡単に天体撮影を楽しめる

これまで3回にわたり、ASIAIRを使ったデジカメによる天体撮影方法をご紹介してきました。この手順に従えば、どなたでも簡単にASIAIRを使って天体撮影を楽しむことができるでしょう。
スマホからカメラや赤道儀等を操作できるASIAIRはとても便利で、初心者でも手軽に天体撮影に取り組めます。ぜひ、ASIAIRを使って、宇宙の美しい天体をデジカメに収めてみてください。



レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。

Seestarで楽しむ南半球の星空

Seestarで楽しむ南半球の星空 Seestarで楽しむ南半球の星空

天文ファンにとって、南半球の星空は憧れでしょう。しかし、南半球の星雲や星団を撮影しようと思うと、重い撮影機材を海外に持ち出さなければなりません。Seestar S50が発売開始され、海外遠征に適した機材だと感じましたので、実際にオーストラリアに持ち出し、撮影に使用してみました。今回は、航空機での運搬も含め、南半球での使用時のメリットをご紹介したいと思います。

使用機材
Seestar S50

Seestar S50とは

Seestar S50(以下「Seestar」)は、ZWO社が開発したスマート望遠鏡です。スマート望遠鏡とは、望遠鏡やカメラと架台等が一体になったタイプの望遠鏡で、Seestarの場合は、カメラがとらえた画像を、WifやBluetoothで接続したスマホやタブレットに映し出すことができます。

天体望遠鏡とは異なり、接眼部にアイピースを付けて天体を観望することやカメラを交換することはできませんが、オールインワンの一体型になっているため、全体として非常にコンパクトで持ち運びやすくなっています。

また、Seestarには、容量6000mAhリチウムイオンバッテリーも内蔵されており、追加電源なしで撮影が可能です。


海外への持ち運び

Seestar本体の重さは、約2.5キロです。日本からオセアニア方面への航空機の機内への持ち 込み荷物の制限は7キロ前後の航空会社が多いので、手荷物として航空機に持ち込むことが 可能です。

今回、私は、関西国際空港からジェットスターを利用してケアンズに向かいました。 Seestarの本体はカメラバックに入れて手荷物として機内に持ち込み、三脚は預入荷物としてチェックイン時に預け入れました。

出国前に心配だったのは、セキュリティゲートの通過です。Seestarは、形状が特殊ですし、本体にはリチウムイオンバッテリーが内蔵されているので、係官から質問されるかもしれないと思いましたが、特段の指摘はなく、スムーズに通過できました。

帰国便のセキュリティチェックも同様で、不審に思われることもなく、搭乗ゲートを通過し、機内に持ち込むことができました。なお、Seestarは電波を発する機器に該当するので、機内では必ず電源を切るようご注意ください。


Seestarが海外遠征で魅力的な点

何度か海外に撮影用機材を持参して撮影した経験のある私にとって、Seestarは非常に魅力 的な機材に感じました。以下、箇条書きでご紹介しましょう。

1.大きくて重い赤道儀を持ち運ぶ必要がない
星雲や銀河を天体望遠鏡や望遠レンズで撮影するには赤道儀が必要です。赤道儀は重く嵩張るため、荷物の重さや大きさに制限のある海外遠征では、持ち運びが大変です。その点、Seestarは、全てで約2.5キロと軽いので、簡単に機内に持ち込むことができます。

2.長い天体望遠鏡を持ち運ぶ必要がない
天体望遠鏡にはレンズや鏡が使われており、壊れやすいため、預け入れ荷物にはしたくない機材です。しかし、手荷物として機内に持ち込むには長すぎることも多く、私も分解してレンズ部分だけを機内に持ち込んでいました。一方、Seestarは、望遠鏡と比べてコンパクトで、持ち運びやすい箱のような形をしているので、大きめのバッグに入れて容易に機内に持ち込むことができます。

3.電源を別途用意する必要がない
天体撮影時は、赤道儀やカメラにDC12Vを供給する必要がありますが、ポータブル電源を海外に持ち出すわけにもいかず、電源問題が頭を悩ませます。しかし、Seestarにはリチウムイオンバッテリーが内蔵されているので、電源を追加で準備する必要はありません。内蔵バッテリーで容量が足りない場合も、モバイルバッテリーとUSBケーブルを用意しておけば、一晩中撮影が楽しむことができます。

4.南天の極軸合わせに悩まされない
南半球での極軸合わせは、北極星のような目印になる星がないので、慣れていないと大変です。その点、Seestarは極軸を合わせる必要がないので、極軸合わせの心配はなく、水平に設置すればすぐに撮影に移ることができます。

5.忘れ物をする可能性が低い
海外撮影で気をつけなければいけないのが、忘れ物です。接続リング一つ忘れても撮影できなくなることがあり、ショックは大きいです。私も一度、日本に補正レンズのアダプターリングを忘れた苦い経験があります。Seestarは一体型で、操作もスマホがあれば完結するので、まず忘れ物の心配はありません。


南半球でのSeestarの使い方

Seestarの使い方は、南半球でも、国内での使用時と全く変わりません。Seestarを水平に設 置し、アプリを開き、スマホやタブレットと接続すれば、撮影を開始できます。

スマホやタブレットが携帯電波に繋がっていない場合は、緯度と経度を入力する画面が出ますので、撮影地の緯度と経度を入力してください。南天の極軸合わせは必要ありませんので、星空が見えていればどこでも、例えば、ホテルの庭でも撮影を楽しむことができます。


Seestarで撮影した南天の天体

今回訪れたオーストラリアで、Seestarで撮影した天体をいくつかご紹介しましょう。

上の画像は、有名なイータカリーナ星雲です。イータカリーナ星雲は、りゅうこつ座のη星の周りに広がる巨大な星雲で、明るいので肉眼でもうっすらと見えます。南半球に出かけたら、まず最初に撮影したい天体ではないでしょうか。


次は、オメガ星団です。オメガ星団は、ケンタウルス座に位置する球状星団で、全天一大きな球状星団です。日本でも撮影することは可能ですが、東京での南中高度はわずか7度前後にしかならないため、 クリアに撮影するのは難しい天体です。ケアンズでの南中高度は約60度になるため、鮮明に映し出すことができます。


最後は、タランチュラ星雲です。タランチュラ星雲は、大マゼラン雲の中に存在する散光星雲で、大きな望遠鏡で見ると、星雲の広がった姿がタランチュラのように見えることから、この呼び名があります。明るいので、口径の小さな双眼鏡でもその姿を確認できます。今回は撮影適期ではなく、高度が低かったのですが、思った以上に写りました。


Seestarは星景写真ファンや観望ファンにもお勧め

Seestarを使った撮影は、天体望遠鏡と赤道儀を使った本格的な撮影に比べると、構図などの自由度は落ちるものの、荷物制限の厳しい飛航機でも容易に持ち運べる点は、海外遠征用機材として大きなメリットになります。

撮影時も、南天の極軸合わせの苦労がなく、すぐに撮影に入ることができ、撮影中はゆっくり南半球の星空を肉眼で楽しむこともできます。広角レンズメインでの星空撮影や観望時のサブ機材としても、お勧めだと思います。

今回、実際にオーストラリアにSeestarを持参してみて、南天の極軸合わせにも悩まされず、気軽に撮影を楽しめるSeestarは、撮影旅行自体を心の余裕のある楽しい時間に変えてくれたと感じました。是非、国内だけでなく、海外遠征時の撮影機材としても、Seestarを候補に考えてみてはいかがでしょうか。


レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。

夏の観測ガイド

夏の観測ガイド



夏の夜空には、はくちょう座あれい星雲・こと座リング星雲といった輝度の高い惑星状星雲、ヘルクレス座M13のように大きな球状星団、いて座に明るく広がる三裂星雲/干潟星雲など、眼視・撮影ともに挑戦しやすい星雲星団が多数存在します。

星雲や星団なんて難しくてわからない、という場合は「夏の大三角」(=はくちょう座デネブ・こと座ベガ・わし座アルタイル)を見つけることから始めてみましょう。主要な恒星が複数把握できれば、それらの位置関係との対比で星座アプリや自動導入望遠鏡を頼りに星雲や星団にたどり着くことができます。

日本から観測する場合に高度が低くて夏の短い間しか観測できない星座として、さそり座があります。さそり座アンタレスの高度は東京や大阪では南中時すら30度に届きません。南中時刻は6月で24時ごろ、7月で22時頃、8月で20時ごろです。

8月の20時と言えば地域によっては薄明がまだ終わっていない時間ですので空がすっかり暗くなってからだと子午線の西側に傾きつつある姿を観測することになり、あっという間に沈むなぁとお感じになるかもしれません。

梅雨が明けたら南に光害が少なく空の開けた場所へ遠征し、ひと時の夏の風物詩をお愉しみ頂ければと思います。


ステラナビゲーターVer.11で作成


そのほかの夏の風物詩と言えばペルセウス座流星群が挙げられます。

周期133年のスイフト・タットル彗星を母天体とし毎年8月12日~13日ごろ極大を迎えます。
前回1992年の彗星回帰から少し年数が経ってしまい近年では流星出現数が減少傾向にある群ではありますが、時期がお盆のお休み期間に該当すること、例年好天に恵まれる場合が多いこと、夏の天の川を併せて観測または撮影できることなどから人気があります。

望遠鏡がなくてもカメラ(と赤道儀)を用意すれば意外と簡単に ”夏の天の川と流星群” という強いテーマ性を持つ星景写真に挑戦できてしまいますので、未経験者の方の天体写真デビューのきっかけとしても好適です。








惑星を撮ってみよう 初めての望遠鏡購入ガイド

満天の星空の下、天体観測をお楽しみください!!




春から初夏の観測ガイド

春から初夏の観測ガイド

春から初夏へと季節が進むこの時期には、天の川やその周辺に位置する星雲星団など、たくさんのメジャー天体を観測することができます。 南の空から東の空へと横たわる天の川を撮影したいなら、4月は深夜2時ごろ、5月は深夜0時ごろ、6月は22時ごろ、7月なら20時ごろからがチャンスです。
この時期は日に日に気流が安定して空のコンディションが向上していきます。気候的も過ごしやすい季節なため、入門者の方が天体観測デビューするのにとても適しています。 もちろん中級者以上の方にも好条件チャンスであることに違いはありません。 この時期ならではの、おおぐま座やおとめ座の系外銀河など、難易度の高い対象にもぜひチャレンジしてみてください! 梅雨の合間の晴れ間には素晴らしいシーイングが現れたりします。チャンスを逃さないように!!

ステラナビゲーターVer.11で作成


春夏は南の地平線から東の空へと横たわる天の川が刻一刻と立ち昇ってくる迫力ある姿が見られる季節です。ステラナビゲータなどのシミュレーションソフトがあれば、撮影計画を練って星景写真に挑戦することができます。
吉田隆行氏 「大台ケ原の天の川」  

天体写真家の吉田隆行氏は、標高1600メートルの大台ケ原を往復3時間歩いてこの作品を撮影しました。低空にかかった淡い雲海で下界と隔離された原野の風景が天の川の光によって映し出され、雄大な天の川銀河の姿と相まって荘厳な印象を与えています。
星景写真の撮影のためにトレッキングする場合、カメラや三脚といっしょに担いで歩けるポータブル赤道儀を使用します。撮影チャンスを確実なものにするためには、小さくても高精度で信頼性の高いポータブル赤道儀をご選択ください。


SWATシリーズの最高峰!「ユニテック SWAT-350」




惑星を撮ってみよう 初めての望遠鏡購入ガイド

過ごしやすい気候が続きます。天体観測をお楽しみください!!




AM5/AM3の比較

AM5/AM3の比較 AM5/AM3の比較

ZWO社から2022年春に発売されたAM5赤道儀(以下「AM5」)と、約1年後に発売されたAM3赤道儀(以下「AM3」)は、ともに力強いモーターを採用した波動型赤道儀として「小型なのに大きな望遠鏡を載せられる」「ASIAIRを使えて便利」と天体撮影ファンの注目を集めていますが、「AM5とAM3のどちらを買えばいいのか?」という声もよく聞きます。そこで、2つの赤道儀を比較し、それぞれの仕様の違いをご紹介したいと思います。

使用機材

仕様上の違い

まず、AM5とAM3のスペックを比べてみましょう。以下に、一覧表でスペックをまとめてみました。スペックが異なる箇所に、黄色マーカーを引いています。


AM5 AM3
架台形式  赤道儀
架台モード  赤道儀モード/経緯台モード
駆動系  ストレイン・ウェーブ・ギア(波動歯車装置)+シンクロナスベルト(減速比・300:1)
ピリオディックモーション  <±20″(周期:432秒)  <±20″(周期:288秒)
赤経駆動  NEMA42ステッピングモーター
Model No.17(減速比・100:1)+ブレーキ
 NEMA35ステッピングモーター
Model No.14(減速比・100:1)+ブレーキ
赤緯駆動  NEMA35ステッピングモーター
Model No.17(減速比・100:1)
 NEMA35ステッピングモーター
Model No.14
搭載重量  13kg(カウンターウェイト未使用時)
 20kg(カウンターウェイト使用時)
 8kg(カウンターウェイト未使用時)
 13kg(カウンターウェイト使用時)
本体重量  5kg  4kg
緯度調整範囲  0°-90°  0°-90°
方位角調整範囲  ±10°  ±10°
アリミゾ規格  ロスマンディ/ビクセン互換(デュアル式)
BWシャフト取付規格  M12
モーター解像度  0.17秒
最大駆動スピード  秒間6°(対恒星時1440倍速)
駆動速度  対恒星時:0.5×/1×/2×/4×/8×/20×/60×/720×/1440×
外部電源ポート  DCプラグ(外径:5.5φ-内径2.1φ)/入力:12V-3A
消費電力  12V-0.386A(スタンバイ時)/12V-0.58A(恒星時駆動時)/12V-1.5A(自動導入時)  12V-0.386A(スタンバイ時)/12V-0.58A(恒星時駆動時)/12V-1.7A(自動導入時)
オートガイド端子  ST4互換(SSAG)
外部インターフェース  USB/Wi-Fi
ゼロポジション  機械式
適応温度(使用時)  -20゚C~50゚C  -15゚C~40゚C
瞬電保護  有り

ざっと見たところ、使用されている赤緯モーターは異なりますが、それ以外は、重さや大きさが違う程度のようです。以下、スペックが異なる点について、実際に使用した感想を交えながら、見ていきましょう。


赤道儀の大きさ

AM5かAM3を購入しようと思った際に、一番迷うのは大きさの違いでしょう。AM5とAM3のデザインは全く同じで、外観上のデザインの違いはほとんどありません。しかし、大きさはスペック表から想像した以上に異なっており、AM5に比べてAM3は一回り小さくなっています。

上は、AM5とAM3を並べた写真です。写真からも、AM5に比べてAM3が一回り小さいことがよくわかると思います。 ※AM5には自作のPoleMaster取り付けステーを固定しています。

次の画像は、望遠鏡を取り付けるアリミゾ金具方向から写した写真です。AM5のアリミゾ金具とAM3のアリミゾ金具を比べると、幅は同じですが、AM3のアリミゾ金具は長さが短く、コンパクトになっています。


赤道儀の重さ

他社製赤道儀と比較すると、AM5も決して重い架台ではありませんが、AM3の方が更に軽く感じます。



実測してみると、AM5が5.9キロのところAM3は4.15キロと、AM3は2キロほど軽くなっています。男性ならAM3は片手でも軽々持ち上げられるでしょう(但し、赤道儀に取っ手は付いていないので、落とさないように注意が必要)。


搭載可能重量の違い

バランスウェイト無しの場合、AM5は13キロ、AM3は8キロまでの機材を載せることができます。バランスウェイトを付ければ、AM5は20キロ、AM3は13キロまで搭載可能重量を増やすことができます。
何キロと言われてもイメージしにくいと思いますが、実際に使用した印象では、AM5ならビクセンR200SSのような口径20センチの反射望遠鏡でも搭載できる一方、AM3では厳しく、反射なら15センチ程度が限界でしょう。



屈折望遠鏡の場合は、AM5なら13~15センチクラスも搭載できますが、AM3は10センチクラスまでが無難だと思います。AM5なら10センチクラスを複数搭載することもできるでしょう。
ZWOの公式ページでは、赤道儀の性能アピールのためか、搭載重量の限界に近い大きな天体望遠鏡を載せていますが、鏡筒が大きくなると、重さだけでなくモーメントも大きくなりますので、実用では上記の大きさまでの機材が安心だと思います。


ASIAIRとの連携について

AM赤道儀シリーズの購入を検討されている方は、まず間違いなく、ASIAIRでの使用を考えていらっしゃると思います。
AM5とASIAIRの接続方法には、USBケーブルを使って有線で繋ぐ方法と、Wifiで接続する方法があります。AM3の場合には、これらに加えてBluetoothでの接続方法も追加されました。
Bluetoothでの接続は、コントローラーが不要になる点が便利です。接続方法が違うだけで、ASIAIRの操作や機能自体は全く同じですが、Bluetooth接続を使いたい場合は、AM3赤道儀を選ぶとよいでしょう。


追尾精度について

AM5とAM3を天体撮影に使用してみました。追尾精度に関しては、どちらの赤道儀も必要十分で、オートガイドのレスポンスも良好でした。追尾精度に関しては、どちらの赤道儀を選んでも、まず問題ない範囲に収まっていると思います。



上は、AM5にε-160EDを載せて撮影したM35散開星団の撮影画像です。追尾状況がわかるようにトリミングしていますが、星が点像に写っているのがわかります。


次は、AM3にFC-100DFを載せて撮影したM81の撮影画像です。こちらも同じようにトリミングしています。こちらの画像も星が点像に写っています。
使用した鏡筒は異なりますが、どちらの赤道儀も天体撮影に使用するのに必要十分な追尾精度やオートガイド適性を備えていると思います。その点は安心して大丈夫でしょう。


経緯台としても楽しめる

以上、天体撮影時の性能について紹介しましたが、AM5、AM3には、経緯台モードも搭載されています。経緯台として使用すれば、ハイパワーで高速回転も可能なモーターを使った天体観望も可能です。


上は、AM3に口径8センチの天体望遠鏡を載せ、経緯台モードで天体観望している様子です。ASIカメラとASIAIRを使えば、プレートソルビング機能も使用でき、これまで以上に正確に天体を視野内に導入することができます。



また、K-Astec社からは、コーワ ハイランダープロミナーをAM赤道儀に取り付けるアダプターが販売されています。このアダプターを使用すれば、上写真のようにAM赤道儀にハイランダーをしっかりと固定することができ、双眼での天体観望も楽しむことができます。観望用の架台としても魅力的な赤道儀と言えるでしょう。


まとめ

AM5とAM3のスペックを比較しましたが、モーターの精度や追尾精度に関してはほぼ同じ性能と言え、ユーザーが所有している機材の大きさに合わせて選ぶのが一番だと改めて感じました。
具体的には、口径20センチクラスの反射望遠鏡や口径13センチクラスの屈折望遠鏡に使うなら、AM5を選ぶ方が安心だと思います。一方、10センチクラスの屈折望遠鏡や13センチクラスの反射望遠鏡であれば、AM3が適しているでしょう。
また、荷物の制限が厳しい海外遠征には、AM3が最適だと思います。私も何度か海外に撮影に出かけていますが、AM3の大きさと重さは大変魅力的です。正直、AM5とAM3の2台ともあれば、操作感も同じで、メインとサブ機で撮影や観望を快適に楽しめるだろうと思うほどです。是非皆様もAM5やAM3で快適な撮影・観望を楽しんではいかがでしょうか。


レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。

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AM5赤道儀レビュー 周辺パーツ
AM5 周辺パーツ



ZWO 社 ASI 冷却CMOS カメラの乾燥剤の再生方法

ZWO 社 ASI 冷却CMOS カメラの乾燥剤の再生方法

ZWO/ASI冷却CMOSカメラ
乾燥剤の再生方法

ZWO 社の冷却CMOS カメラのチャンバー内には、結露を防ぐための乾燥剤が入っていま す。カメラを使用するにつれて除湿性能は徐々に低下していくので、センサーが結露するよ うになったら、乾燥剤の再生を行いましょう。今回は、私のASI2600MCProを例に、乾燥剤の再生手順をご紹介します。


冷却CMOS カメラに乾燥剤が必要な理由

冷たい物体の表面に水蒸気を含んだ空気が触れると、空気の温度は下がります。温度が下がると飽和水蒸気量は減少しますが、湿度が100%以上になると、空気中の水分が凝結して物体の表面上で水滴となります。これが結露現象です。冷たいコップの表面に水滴が付く様子を想像するとわかりやすいと思います。

ZWO 社 ASI 冷却CMOS カメラの乾燥剤の再生方法

冷却CMOSカメラの場合、カメラのセンサーやカバーガラスが冷たいコップに相当します。ZWO 社のカメラのカバーガラスには結露防止ヒーターが取り付けられていますが、2 年ほどで乾燥剤の能力が落ちて、結露が発生してしまうようです。私のASI2600MCProの場合は、購入後、約3年で結露が発生しました。 ZWO 社に限らず、他社の冷却CMOS カメラでも、結露防止には乾燥剤がよく用いられています。一部、アルゴンガスをチャンバー内に充填したカメラもありますが、どちらも永久的なものではなく、乾燥剤の再生やガスの再充填が必要です。特に日本は湿度が高いので、結露には注意する必要があります。


晴れた日に屋内で作業しましょう

乾燥剤を交換するには、カメラのチャンバーを開けなければなりません。雨の日や湿度の高い日にチャンバーを開けると、湿度の高い空気が入り込んでしまうので、湿度の低い、天気の良い日を選んで作業しましょう。
また、ほこりやゴミの混入を防ぐため、風のない室内で行いましょう。クリーニングルームが理想ですが、一般家庭にはそのような場所はありません。私は、我が家で最もホコリが少ないと思われる部屋で作業しました。


再生作業に必要なもの

冷却CMOSカメラのチャンバーを開けた際にごみを吹き飛ばすために、カメラの掃除用のエアブローを用意しましょう。また、結露でカバーガラスが汚れている場合のために、無水エタノールとクリーニングペーパーや綿棒なども準備しておくと安心です。

ZWO 社 ASI 冷却CMOS カメラの乾燥剤の再生方法


カメラのチャンバーを開く

いよいよ乾燥剤を取り出す作業の開始です。まず、3つのネジ(引きネジ)を緩めて、 ASI2600MCProの前面に取り付けられているチルトプレート(黒色プレート)を外します。 なお、プレートを外す前に、再取り付けの際にプレートの向きがわかるように、カメラとプレートに印を付けておくと安心です。

ZWO 社 ASI 冷却CMOS カメラの乾燥剤の再生方法

次に、カメラのフロントピースの6つのネジを緩めましょう。フロントピースは、Oリング で密閉されているので、1つのネジを一気に緩めるのではなく、6本のネジを少しずつ均等 に緩めて外すようにしてください。ネジが外れたら、フロントピースをカメラ本体から慎重 に取り外してください。

ZWO 社 ASI 冷却CMOS カメラの乾燥剤の再生方法


乾燥剤を再生させる

フロントピースを外すと、フロントピースのカバーガラスの周りに白い丸いタブレットが 4つ見えると思います。これがチャンバー内の湿度を下げる乾燥剤です。フロントピースか ら4つとも取り外しましょう。

ZWO 社 ASI 冷却CMOS カメラの乾燥剤の再生方法

乾燥剤を電子レンジに入れ、500Wで約2分間加熱します。加熱すると乾燥剤に蓄えられて いた水分が蒸発し、乾燥剤が再生します。電子レンジから乾燥剤を取り出し、乾燥剤がまだ 温かいうちにカメラのチャンバー内に戻します。

ZWO 社 ASI 冷却CMOS カメラの乾燥剤の再生方法

なお、カメラのセンサーやカバーガラスにホコリや汚れが付着している場合は、乾燥剤を再 生する前に清掃しましょう。清掃方法については、最後の項目でご紹介しています。


チャンバーを再封する

乾燥剤をチャンバー内の所定の位置に戻し、素早くチャンバーを再封します。これは、乾燥 剤が長時間外気に触れて、外気の湿度を吸ってしまうのを防ぐためです。

ZWO 社 ASI 冷却CMOS カメラの乾燥剤の再生方法

フロントピースを被せて、6つのネジを締めて再封します。この時、カメラの固定用ネジ穴の内側にO リングがしっかりと入っていることを確認しましょう。また、ヒーターの接点 が接触するように、フロントピースの向きを確認して被せましょう。外すときと同じように、 1つのネジを一気に締めるのではなく、対角の位置のネジを順に少しずつ締めて均等に締め てください。


新しい乾燥剤に交換

乾燥剤の再生を繰り返していると、乾燥剤自体が劣化し、粉末状になってしまいます。劣化すると乾燥剤としての能力も落ち、カメラのセンサーに粉末が付いてしまいますので、新しい乾燥剤タブレットと交換しましょう。

ZWO 社 ASI 冷却CMOS カメラの乾燥剤の再生方法

交換の手順は、再生の手順と同じようにチャンバーを開けて、古い乾燥剤と新しいものを交換します。この時、乾燥剤の大きさが、カメラにあらかじめ取り付けられているものと同じであることを確認しましょう。サイズが異なる乾燥剤を無理にねじ込むと、乾燥剤が割れて、センサーにゴミが付着してしまいます。


センサーの清掃

センサーや保護ガラスのゴミが気になるときは、乾燥剤の再生や交換の際に清掃しましょう。

ZWO 社 ASI 冷却CMOS カメラの乾燥剤の再生方法

まず、エアブローを使用してゴミを吹き飛ばします。エアブローなら、センサーや保護ガラスに傷や拭きムラをつける心配がありません。ほこりが付いた程度なら、ブローだけで綺麗になると思います。

結露の跡が残っていたり、エアブローだけでは取り切れないゴミが付いている場合は、綿棒やクリーニングペーパーにエタノールをしみこませて、そっと拭き取ります。ガラスや表面を傷つけないよう、できるだけやさしく拭きましょう。

ZWO 社 ASI 冷却CMOS カメラの乾燥剤の再生方法

もし、オイルリークが確認できる場合や、あまりにもしつこい汚れが付着して取れない時は、無理にこすらず、販売店に相談した方が安心です。


レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。

AX VISIO 10x32 JPN 試用レポート

AX VISIO 10x32 JPN 試用レポート AX VISIO 10x32 JPN
試用レポート

2024年スワロフスキー・オプティック社より発表の世界初のスマート望遠鏡 AX VISIO 10×32JPNの発売に先行して、ハクバ写真(㈱)様よりデモ機をお借りし、大阪城公園にて試用しました。多機能なAX VISIO 10×32 JPNの紹介と試用レビュー、大阪城公園でのバードウォッチングの様子をお伝えします。

AX VISIO 10×32 JPNの概要

AX VISIO10×32JPNは倍率10倍、口径32mmの双眼鏡にカメラ内蔵した世界初のスマート双眼鏡です。スマートフォンやタブレット端末をWifiおよびBluetoothを用いてAX VISIO10×32JPNを接続することにより、内蔵のカメラで撮影することはもちろんのこと、アプリを連携させることにより視野内にいる野鳥の名前をレンズに表示させることも可能です。見る・撮る・調べる・共有することをAX VISIO10×32JPN1台で完結させます。


AX VISIO 10×32 JPNインプレッション

外装はNL PUREと同様のラバー素材が使用されており、手になじむ質感です。センターにメニュー選択用のノブがあり、各モードはこのリングを回すことにより選択します。決定ボタン「●」や選択ボタン「V」、電源ボタン類は右手側、センターには双眼鏡のピント調整が位置しています。カメラのピント調整は決定ボタンを半押しすることにより、オートフォーカスします。双眼鏡本体の見え味はスワロフスキーEL シリーズに近く、色収差も感じることがありませんでした。持参したEL 10×42 明るさや視界の広さを比較しても遜色なく、スワロフスキーらしい明るくすっきりとした見え味を楽しむことができます。カメラおよびバッテリー内蔵のため本体の厚みはもちろんのこと、重量も約1000g のため女性が長時間使用するには少し厳しいと感じました。残念ながら現時点では三脚の取り付けができないため、今後に期待したいと思います。今回はWifi 経由で写真を常にダウンロードしながら使用しましたが、5 時間程度持ちました。Bluetooth 接続のみの場合は1 日程度持つようです。バッテリーは別途追加購入できますので予備として持ち運びしておけば安心です。


フィールドでの試用

今回は大阪城公園にて試用を行いました。事前に「SWAROVSKI OPTIK Outdoor アプリ」アプリをインストールして、wifi・Bluetooth 経由でAX VISIO10×32JPN とスマートフォンと接続をします。


AX VISIO 10×32 JPNは同時に5つの端末を接続することが可能ですが、現時点では写真・ビデオは1端末のみがダウンロードできる仕様となっています。


搭載のメニューは ・鳥マーク:野鳥識別
・カメラマーク:写真撮影・ビデオ撮影・Live view
・リスマーク:動物名識別
・ターゲットマーク:指定した場所への誘導
・方位磁針マーク:方位・高度の表示
・スマホマーク:他アプリのインポート
・星Iマーク:他アプリ連携
・星IIマーク:他アプリ連携

スワロフスキーより提供のアプリ以外もインポートが可能のため、今後の拡張性が期待できる余白を残した製品となっています。

今回はこの中より、
① 撮影(写真・ビデオ)
② 野鳥名識別
③ 視野の共有 をご紹介します。

① 撮影(写真・ビデオ)・Live View
操作はとても簡単です。メニューをカメラマークに合わせて右側レンズ視野内の赤枠内に被写体を入れ、決定ボタンを半押しでオートフォーカスし、全押しでシャッターを切ります。撮影した画像は「SWAROVSKI OPTIK Outdoor アプリ」に自動転送され、撮影した画像のサムネイルがスマートフォン画面上に表示されます。また、アプリ内でLive Viewを選択するとカメラの画像がリアルタイムに見ることができ、アプリ側でシャッターボタンを押すことも可能です。


撮影画像はGALLERYに



4/15 アオバト/大阪城公園/AX VISIO にて



4/15 ムクドリ/大阪城公園/AX VISIO にて



Live View 画面 QR コードで共有します



4/15 アオサギ/大阪城公園/AX VISIO にて

アプリ上で写真のサムネイルを確認することはできますが、写真を拡大するためにはAX VISIO10×32JPNストレージから写真データを端末へインポートする作業が必要です。この際にデータの容量や通信環境により時間がかかる場合がありました。


アオバトの動画


② 野鳥名識別
双眼鏡右側のレンズ上に赤い文字で識別した野鳥名を表示させるモードです。 「SWAROVSKI OPTIK Outdoor」に加えて「Merlrin Bird」をインストールします。この2つのアプリを連携させることにより、野鳥の識別を行います。メニューを鳥マークに合わせ、識別対象を視界の中央にとらえ、決定ボタンを押すと認識されると右側レンズ上に赤文字の英語表示で野鳥名が表示されます。「Merlrin Bird」アプリ側では識別された野鳥名が写真とともに表示されます。こちらは日本語設定すると、日本語名で確認できますのでご安心ください。


左:イメージ写真 右:『Merlrin Bird』画⾯


ただ、識別対象の前に障害物があると識別できないことがありましたので、少しコツがいると感じました。コツをつかむと、野鳥名の答え合わせをしていくようで楽しく使用することできました。

③ 視野の共有
観察対象にマーカーを決定ボタンでセットすると一度視野から外しても、矢印の誘導でマーカー位置まで双眼鏡の視野の中央に導くことができます。

初心者の方や野鳥が見つけにくい場所にいる場合に有効であると感じました。もちろん、対象が移動した場合は自身で導くことが必要です。
今回、AX VISIO10×32JPNの各機能の事前情報は入れずに試用しましたが、上記操作は感覚的にできるため、およそ30分程度で慣れることができました。また、モバイルデータ通信が行えない場所にて使用する場合は「Merlrin Bird」からデータを事前にダウンロードする必要があるため、その場合は事前に準備することをお勧めします。


まとめ

AX VISIO10×32JPNはこんなこともできるのか!と驚きと感動にあふれる試用会でした。スマートフォンと連動させるためのデジタル機器への慣れは必要ですが、AX VISIO10×32JPN本体の操作はいたって簡単です。また、余白を残しているのは他アプリを入れる余裕を残していることです。今後、様々なアプリと連動されることを期待しています。 課題となる点としては、重量感です。カメラ・バッテリー内蔵のため仕方ありませんが、例えば双眼鏡+カメラと三脚を持っていくのと比べるとコンパクトに携帯することはできそうです。また、環境によって変わるかもしれませんがデータの転送速度はもう少し期待したいところです。


監修・協力 :
久下直哉(くげなおや)
バードガイドKUGEオフィス(bird-kuge.com)
1976年生まれ。大阪府在住。
鳥見歴35年/ツアーガイド歴21年

兵庫県立コウノトリの郷公園元飼育員(2000年~2002年)。鳥類標識調査員。日本野鳥の会大阪支部幹事。旅の本棚、モンベルアウトドアチャレンジ、朝日カルチャー中之島教室にてバードガイドを担当している。 西日本を中心とした探鳥地をベースに日本全国幅広くガイドしている。時々、雑誌BIRDERに執筆協力したり、最近では『はじめての野鳥観察』(JTBパブリッシング出版)にて関西の探鳥地案内を一部、執筆。
好きな鳥:ツバメとオオジュリンとコウノトリ
ツアーガイド:
・旅の本棚|初心者でも安心 野鳥ガイドと行く初めてのバードウォッチング(tabihon.jp)
・モンベルアウトドアチャレンジ|バードウォッチング (montbell.jp)
執 筆: はじめての野鳥観察(JTBパブリッシング)

朗報!ASIAIRがビクセンWLに対応しました

ビクセン ワイヤレスユニットとASIAIRの概要と使い方

2024年3月15日、ASIAIRアプリのVer2.1.2が公開され、ASIAIRがビクセンのワイヤレスユニットに正式対応しました。早速、アップデートされたASIAIRとワイヤレスユニットを使って、天体撮影を行ってみましたので、接続方法をご紹介しながら使用感をお伝えします。



ワイヤレスユニットとASIAIRについて

実際の操作に入る前に、ワイヤレスユニットとASIAIRについて簡単にご説明します。

ワイヤレスユニットは、天体望遠鏡メーカーの株式会社ビクセンが開発した、同社赤道儀用のコントローラーユニットです。

赤道儀にワイヤレスユニット(上画像左)を取り付け、スマートフォンやタブレットにスマホアプリ「STARBOOK Wireless(以下「ワイヤレスアプリ」)」をインストールすると、Wifiを使って遠隔で赤道儀を操作することができます。

ASIAIRは、天体撮影用CMOSカメラメーカーのZWO社が開発したスマートWi-Fiデバイスです。同社のカメラやフォーカサー、赤道儀にASIAIR Plus(以下:ASIAIR本体)を接続すると、スマホアプリのASIAIRアプリから、遠隔で接続した機器を操作し、天体撮影や電視観望を行うことができます。

ASIAIRアプリが対応するのは、基本的にZWO社の製品だけですが、赤道儀やカメラに関しては他社製の機材にも対応しており、今回、新たにビクセンのワイヤレスユニットに対応したというわけです。



ワイヤレスユニットとASIAIRの接続方法

ワイヤレスユニットは、従来の同社のコントローラー「STARBOOK TEN」と異なり、Wifiで接続する必要があるため、ASIAIRアプリの架台の一覧からワイヤレスユニットを選択しただけではつながりません。ASIAIRアプリのステーションモードで接続する必要があります。以下、接続方法を、順を追って説明します。

まず、ASIAIRアプリの最新バージョンをアプリストアからダウンロードし、スマートフォンやタブレットにインストールしてください。

ASIAIR本体の電源を入れ、スマホ等の設定画面を開いてASIAIR本体とWifi接続します。その後、ASIAIRアプリを立ち上げると、ファームウェアアップデートが始まりますので、電源を切らずに、しばらく待ちましょう。

アップデート後、ASIAIRアプリを起動すると、架台の一覧にVixen Wireless Unitが追加されているので、それを選択します。

次に、ステーションモードを設定します。ASIAIRアプリ内の電波マーク(ネットワークアイコン)をタップして、ネットワーク設定画面を開きましょう。設定画面が表示されたら、Wi-Fi を選択してください。初期状態では、ステーションモードはオフになっているので、タップしてオンにします。

ステーションモードがオンになると、ASIAIRは接続可能なWiFiネットワークを探しはじめます。しばらく待つと、接続可能なネットワークの中にWireless Unitが表示されるので、それを選択してください。

パスワード入力画面が表示されるので、ワイヤレスユニットのパスワードを入力します。接続に成功すると、接続されたネットワークのSSIDが上の欄に表示され、緑色のチェックマークが入ります。

マウントの一覧でVixen Wireless Unitが選択されているのを確認し、接続ボタンをタップすると、ASIAIRと赤道儀の接続が確立し、下に赤道儀のパラメーターや設定項目が表示されます。



ケーブルレスで快適

ASIAIRとワイヤレスユニットの接続が確立できれば、ケーブル接続の赤道儀と同じように、赤道儀をASIAIRアプリ上で操作することができます。

従来のビクセンSTARBOOK TENコントローラーに比べると、LANケーブルをASIAIR本体に接続する必要がなくなったので、赤道儀周りがすっきりします。子午線を跨いで自動導入するときも、ケーブルが絡まる心配が少なくなり、とても快適に感じました。

赤道儀に天体望遠鏡を載せ、ASIAIRとワイヤレスユニットを使って、数時間、天体撮影を行いましたが、接続は安定していました。ASIAIRアプリを入れたタブレットは、赤道儀から約5m離れた場所に置いていましたが、撮影中、電波が途切れることはありませんでした。



オートガイドについて

ワイヤレスユニットには、SBIG社製オートガイダーに準拠したオートガイド端子が設けられています。

ワイヤレスユニットを使って天体撮影を行う場合、オートガイダーのケーブルをこの端子に接続してオートガイドしていたと思いますが、ASIAIRを使用すると、ASIAIRからWifiを通じて赤道儀に修正信号を送るので、ケーブル接続は不要になります。

実際にオートガイド撮影を行ってみましたが、キャリブレーションからオートガイド開始までスムーズに移行し、撮影中のガイドグラフも上記の通り、安定していました。



STARBOOK WirelessからASIAIRアプリへ

ASIAIRがワイヤレスユニットに対応していなかった時は、ASIAIRアプリを入れたタブレットでZWO社CMOSカメラを制御しつつ、天体を導入するときはワイヤレスアプリを入れたスマホを操作する必要があり、2台のモバイル機器を使わなければいけない点を面倒に感じていました。

そこで、一時はASIAIRを使わず、ワイヤレスユニット用のASCOMドライバーをインストールし、パソコンからCMOSカメラと赤道儀を制御していましたが、遠征先でもパソコンが必要になるのが難点でした。

今回、ASIAIRがワイヤレスユニットに対応したことで、ASIAIRからカメラと赤道儀を制御できるようになり、パソコンや2台のモバイル機器を使い分ける必要がなくなりました。1つのアプリで天体撮影や電視観望を楽しめるようになったのは、大きな進展でしょう。

また、ASIAIRアプリでは、自動導入後にプレートソルビング機能が実行されるので、自動導入の精度も高まります。ワイヤレスアプリで自動導入を行っていた時に比べ、スムーズに撮影に移ることができるようになりました。

CMOSカメラを使用しない天体観望の用途では、ワイヤレスアプリの方が手軽に感じますが、天体撮影や電視観望では、ASIAIRを使う方がストレスも減り、気軽に撮影を楽しめるでしょう。これまでASIAIRを使わず、ワイヤレスユニットで天体撮影を楽しんでいた方にも、ASIAIRを導入するメリットは大きいと思います。



まとめ -ケーブルレスで快適に-

ワイヤレスユニットが発売開始されて以降、ASIAIRの対応を待ち望んだ人は多かったと思います。今回、ようやく正式対応となり、私自身も喜んでいるところです。

実際にこの組み合わせで天体撮影を行ってみたところ、ケーブルレスで赤道儀を使えるのは本当に快適でした。正直なところ、LANケーブルを接続しなければならないSTARBOOK TENにはもう戻れないと感じています。

ワイヤレスユニットとASIAIRの組み合わせは、天体撮影や電視観望を大変便利にしてくれるでしょう。STARBOOK TENユーザーの方も、是非、ワイヤレスユニットとASIAIRを試していただき、ワイヤレスで天体撮影や電子観望を楽しんでみてはいかがでしょうか。


レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。

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