ビクセンVA225Cオートガイダーの インプレッション

ビクセンVA225Cオートガイダーの
インプレッション

ビクセン VA225C は、天体望遠鏡メーカーの株式会社ビクセンが販売する、天体写真撮影用のオートガイダーです。同社の専用アプリケーション「Vixen Autoguider」(以下:VAソフト)を使用することで、初心者でも手軽にオートガイド撮影を始めることができます。

今回は、VA225C のデモ機をお借りし、実際にフィールドへ持ち出して天体撮影に使用しました。VAソフトの使い勝手や機能性について検証し、実際の使用感を詳しくレビューします。


VA225CとVAソフトの概要

VA225C は、オートガイド用のCMOSカメラです。約120万画素の解像度を持つSONY 製の IMX225 センサーが搭載されており、低照度下でもノイズが少なく、オートガイド用途に適しています。

カメラ背面には USB 端子と ST-4 互換のガイドポートが装備されており、付属の USB ケーブルを使ってパソコンと接続し、ガイドケーブルで赤道儀のオートガイドポートに接続します。ST-4 ガイド信号は多くの赤道儀と互換性があるため、ビクセン製以外の赤道儀でも大抵使用可能です。

VA225C をオートガイドに使用するには、ガイド鏡(ガイドスコープ)が別途必要になります。今回は、ビクセン推奨の「暗視野ファインダーII 7倍50mm(以下:ビクセンファインダー)」を使用しましたが、他社製のガイドスコープでも使用可能です。

VA225C を使うには、専用のVAソフトを使用します。VAソフトはビクセン公式サイトから無料でダウンロード可能で、Windows 7、8、10、11 に対応しています。インターフェースは日本語で統一されており、ガイド星の自動選択、キャリブレーションの自動化、露出時間の設定、追尾グラフの表示など、オートガイドに必要な機能がシンプルにまとめられています。


VAソフトのインストールと画面構成

VAソフトはインストーラー形式で提供されており、指示に従って進めるだけで簡単にインストール可能で、特別なドライバのインストールも必要ありません。

インストール後に VAソフトを起動し、VA225C カメラを USB ケーブルでパソコンに接続すると、自動的にカメラが認識されます。汎用オートガイドソフトである PHD2 のように、複数の機器の中からカメラを手動で選ぶ必要がないため、初心者でも迷うことなくガイド撮影の準備に進むことができます。

VAソフトのインターフェースは、直感的で使いやすいレイアウトになっています。画面の左側には、VA225C カメラが捉えている星空の映像がリアルタイムで表示されます。画面右側には各種設定パラメーター、左下にはガイドグラフが表示され、現在のガイド状況を視覚的に確認することができます。

VAソフトは必要な情報が一画面に集約されており、ウィンドウの切り替えなども不要です。


オートガイドの基本的な手順

オートガイドを始めるには、まず右上にある「プリセット」から、観測環境に適した設定を選択します。プリセットの選択肢は「都会」「郊外」「満天」の3種類で、空の暗さや星の見え方に応じてガイド感度などの内部設定が自動で設定されます。

プリセットを選ぶと、VA225C が映し出す星空のライブ映像が画面に表示されます。星がぼやけて映る場合は、ガイド鏡のピントを調整してシャープに映るように合わせます。

次に、右下の「ガイド星選択」ボタンをクリックします。カメラが自動的に使用可能なガイド星を検出し、四角い枠で囲って表示します。その中から1つの星をクリックで選択すると、選んだ星が右上に拡大表示され、キャリブレーション(方位と動作方向の調整)が開始されます。

キャリブレーションには数十秒程度かかり、完了すると自動的にオートガイドが開始されます。同時に左下のガイドグラフがリアルタイムで動作し、ガイドの補正状況や精度を確認することができます。


天体撮影でのガイド精度

ビクセンSXD2赤道儀とビクセンSD103S望遠鏡をセットし、VA225C と VAソフトを使って天体撮影を行い、ガイド精度を確かめました。

下は、露光時間300秒で撮影したヘルクレス座の球状星団M13の画像(中央部をトリミングしています)です。合計8コマ撮影しましたが、すべて星は点像を保っていました。SD103Sの焦点距離は約810㎜ですので、焦点距離約160㎜のビクセンファインダーを使っていることを考えれば、ガイド精度として十分と言えるでしょう。

ただ、ガイド鏡の固定方法には注意が必要だと感じました。今回はガイド鏡としてビクセンファインダーを使用しましたが、このファインダー脚の取付部分には若干の公差があり、固定ネジをしっかり締め込まないと長時間の撮影ではガイド鏡が緩んでしまうようです。今回の撮影では問題は生じませんでしたが、ビクセンファインダーを使用する場合は、取り付けにご注意ください。


気になった点

ガイド精度には問題ありませんでしたが、実際にVAソフトを使っていると、いくつか気になる動きや改善してほしい点も見受けられました。

  • キャリブレーションの再実行が頻繁に必要
  • ガイド星の輝度検出と安定性
  • マルチスターガイドには非対応
  • 手動ガイド機能について

極軸支援機能について

極軸望遠鏡を使用した場合に比べて調整に時間がかかるものの、より正確に極軸を追い込むことができました。ただし、北極星が見えない環境では使用できません。


まとめ

VA225C と VAソフトの組み合わせは、ビクセン製ならではの初心者にも扱いやすいシンプルな操作性が魅力です。一方で、改善の余地もいくつか見受けられました。純正ソフトとカメラの安定した動作、日本語対応のサポート体制は、初めてオートガイドに挑戦するユーザーにとって心強いでしょう。




レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。

第3章:PROMINARシリーズではじめるバードウォッチング

第3章:PROMINARシリーズではじめるバードウォッチング 第3章
PROMINARシリーズではじめる
バードウォッチング

第二章では、バードウォッチングのマストアイテム「双眼鏡」についてご紹介しましたが、今回はさらにもう一歩進んで、より高倍率で鳥の表情まで観察できるスゴ技アイテム「スコープ」についてご紹介します。

「スコープ」は、「スポッティングスコープ」や「望遠鏡」とも呼ばれ、探鳥会に参加するとリーダーの方が三脚に取り付けて担いでいて、鳥を視界に入れて見せてくれる道具という印象が強いでしょうか。

「双眼鏡」はどちらかと言えば「鳥を探す」役割が強いですが、「スコープ」は見つけた鳥をじっくり観察するためのアイテムになります。

スコープを使うとどんな良いことがあるのか、スコープの魅力についてご案内して行きます。



■望遠鏡を使って楽しく鳥を識別しよう!鳥の表情を観察しよう!

双眼鏡で野鳥観察をしていると、ほどなくぶつかるのが、「思ったより野鳥に近寄れない」現実です。

もちろん双眼鏡でも識別できる分かりやすい種類もありますが、実際にフィールドに出ると、想像以上に野鳥に近寄れず、どうやって野鳥を識別したら良いか分からないことが多いと思います。

例えば、高い木の梢でさえずる逆光のオオルリや丘陵の尾根に止まっている猛禽類、沖合の堤防の上で休息するシギ・チドリ類など、双眼鏡ではお手上げになってしまうシチュエーションも多くあります。

そんなときは「望遠鏡」の出番です。双眼鏡は、8〜10倍程度の倍率ですが、望遠鏡だと20〜60倍と倍以上もの大きさで鳥を見ることができ、双眼鏡とは見える世界がまるで違います。



■どのくらい大きく見えるの?

よく野鳥写真を撮る方から「双眼鏡や望遠鏡だと望遠レンズの焦点距離で例えるなら何倍くらいなの?」という質問を受けます。

1倍がカメラの焦点距離で50mmと言われているので、10倍の双眼鏡だとカメラの焦点距離で500mmくらい。30倍の望遠鏡だと1500mmくらい。60倍までズームすると3000mmというカメラのレンズとは比べ物にならないくらい超望遠の世界が目の前に広がります。


・換算600mm相当の焦点距離の望遠レンズで撮影


・35倍の望遠鏡(TSN-66S PROMINAR+TE-80XW)にミラーレスカメラを付けて撮影(換算1,750mm相当)

双眼鏡では分からなかった鳥の表情やしぐさが手に取るような距離感で目の前に現れ、鳥の羽毛の毛の一本一本まで見えることもあります。

双眼鏡やカメラのファインダー越しでは味わえなかった異次元のバードワールドが広がりますよ。



■鳥の識別がしやすくなる

初心者に限らず、鳥の識別が苦手で周りの人にすぐに聞いてしまったり、双眼鏡を覗いても何の鳥か分からないままいつもモヤモヤしている識別嫌いさんこそ、スコープを使ってほしいんです。

図鑑に載っているイラストや写真に近い感覚で鳥を観察できるので、鳥を見分けるのが容易で楽しくなります。


・ヨーロッパトウネン幼鳥(左)とトウネン幼鳥(右)の比較。

ヨーロッパトウネンの方が嘴が下にカールしていて、体形が丸っこい。写真では見えづらいがヨーロッパトウネンを背中側からみると、背中にV字型の白線が入るのも特徴。ベテランでも識別の難しい鳥の識別もスコープで大きく見るからこそ識別できるようになる。



イチオシはフローライトクリスタル搭載のPROMINARシリーズ

スコープを選ぶなら、KOWA製のフラッグシップスコープ「PROMINARシリーズ」がイチオシです。 日本の職人技を体現し、卓越した光学性能を誇るMADE IN JAPANのフラグシップモデルです。 一番のポイントは、蛍石でお馴染みのフローライトクリスタルレンズを採用していること。 PROMINARが使用するフローライトクリスタルは、色収差の徹底除去に大きな効果を発揮するレンズ素材です。

従来の光学ガラスに比べ遥かに扱いにくく、高度な加工技術を要求されますが、独自の精密加工技術を用いて、本物の“Pure”な映像をユーザーに届けます。

デュアルフォーカス システム 微動ノブと粗動ノブの2つのフォーカスノブで素早く、精細にフォーカシングできます。



■あなたに最適なPROMINARはどれ?

PROMINAR集結。手前から順に、TSN-55S、66S、88S、99S。いずれも直視型。

・さまざまなフィールドに持って行きたい方、重いのが嫌という方は、TSN-55シリーズで決まり! TSN-55シリーズは、驚くほど「軽量コンパクト」ながら、視野の広さが大口径機にも迫るワイド設計で重さを気にせず持ち運べます。 据える三脚も軽量コンパクトなモデルで済むので、トータルで軽量化を図れます。 17~40倍のズーム搭載で、ワイド側で鳥を探して、視野に捉えたら40倍までズームしてじっくり観察を楽しむことができます。
>>TSN-55S(直視型)TSN-55A(傾斜型) 

・「しっかり明るく見たいけど携行性も手放せない!」なら重量と明るさのバランスに優れたスタンダードモデル、TSN-66/88シリーズがおすすめ。 「明るさ」と「軽量コンパクトさ」を天秤にかけて、「軽さ重視」なら、携帯性に優れたTSN-66シリーズをチョイス。 日の出前や夕暮れの薄暮時にもしっかり観察したければ、口径88mmで「明るさ重視」のTSN-88シリーズを選びたい。 接眼レンズは、倍率25~60倍のワイドズームアイピース「TE-11WZⅡ」と倍率35倍のエクストリームワイドアイピース「TE-80XW」から選択できます。
>>TSN-66S(直視型)TSN-66A(傾斜型)TSN-88S(直視型)TSN-88A(傾斜型)
>>TE-11WZⅡ(25‑60倍ワイドズームアイピース)TE-80XW(35倍エクストリームワイドアイピース)

・最高の見え味が必要なら大口径99mmのTSN-99シリーズがおすすめ。 30~70倍(TE-11WZⅡ使用時)と他機種よりも高倍率ながら、大口径99mmの豊富な光量で「明るさ」も確保。それでいて、持ち運べるサイズに収めたTSN-99シリーズです。 陸から海上の海鳥を観察したり、猛禽類の調査・観察などの極限の性能を必要とするシチュエーションでは迷わずこのモデルを選びたい。
>>TSN-99S(直視型)TSN-99A(傾斜型)
>>TE-11WZⅡ(30‑70倍ワイドズームアイピース)TE-80XW(40倍エクストリームワイドアイピース) 



■直視型(ストレート)と傾斜型(アングル)どっちが良いの?

上側がTSN-55A傾斜型(アングルタイプ)、下側がTSN-55S直視型(ストレートタイプ)
スコープには、接眼レンズの取り付け位置が異なる、直視型(ストレートタイプ)と傾斜型(アングルタイプ)の2種類があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。

・直視型(ストレートタイプ)のメリット・デメリット 直視型(ストレートタイプ)は、接眼レンズの覗く位置の直線上に対象物がくるため、目視で定めた方向に合わせることで対象物を視野内に捕捉しやすいメリットがあります。 一方で、高さを自分の目の位置に合わせるようとすると、背の高い方だと高さのある三脚を用意する必要があります。 また、頭上の木の梢にいる鳥を見ようとすると、屈みながら無理な姿勢で覗くことになります。

・傾斜型(アングルタイプ)のメリット・デメリット 傾斜型(アングルタイプ)のスコープでは、接眼レンズを覗く時に、楽な姿勢で覗くことができ、頭上の木の梢を覗いたり、長時間の観察でも快適です。携帯チェアに座ってじっくり観察したり、観察しながらスケッチをするなら、傾斜型が適しています。 三脚を目線まで高くする必要がないので、より低く安定した状態で観察ができます。 デメリットは、覗く方向が対象物に対して斜め下向きになるため、慣れるまでは対象物を視野に捕捉するのが難しく感じるかもしれません。 探鳥会のような身長の違う複数人が交代で観察する場面では、低い身長の方に高さを合わせておけば、三脚を調整することなく、無理のない姿勢で皆が覗くことができます。



■スマートフォン用フォトアダプターで撮影に挑戦!

じっくり観察を楽しんだら、記憶だけでなく記録にも残しておきたいもの。 スマートフォン用フォトアダプター「TSN-UN1」とアダプターリング「TSN-AR1」を使って、接眼レンズの映像をスマートフォンに記録してみましょう。 自分の持っているスマートフォンで、羽毛の毛の一本一本まで解像した写真が撮れたり、野鳥の面白いしぐさを動画に撮ったり、手軽に高画質な野鳥の写真や映像を記録できます。

TSN-55SにiPhone12proを取り付けて撮影 ケラレ(画面周囲の暗い部分)が気になる場合は、スマートフォン側のカメラをズームします。

チュウシャクシギ TSN-66S+TE-80XWにiPhone12proを取り付けて撮影 TE-80XW(エクストリームワイドアイピース)を使用すると、スマートフォン側のカメラをズームすることなく、ケラレ(画面周囲の暗い部分)なしで撮影することができます。
>>TSN-UN1
>>TSN-AR1



■一眼カメラを取り付けて撮影に挑戦

TSN-66S+TE-80XW+TSN-DA10+TSN-AR42GT+TSN-CM2 SEにSONY α1を取り付けてアオバトを撮影。 ピントはスコープ側で手動で合わせる必要がありますが、一眼カメラを取り付けて撮影することもできます。

TSN-66S+TE-80XW+TSN-DA10+TSN-AR42GT+TSN-CM2 SEにSONY α1を取り付けた図
>>TSN-DA10
>>TSN-AR42GT
>>TSN-CM2 SE



■まとめ

バードウォッチングに双眼鏡が必要なのはよく知られていますが、スコープがあれば、まるで目の前に野鳥がいるかのように、しぐさや表情を楽しむことができます。 口径(50~100mm)、倍率(25倍~70倍)、特殊レンズ(XDレンズ)を搭載した機種を選ぶと良いでしょう。PROMINARシリーズは、優れた光学性能を誇り、用途に応じてさまざまなモデルを取り揃えています。場所や用途に応じて、さらに、エクステンダーやスマートフォン用フォトアダプターを組み合わせることで快適な野鳥観察を楽しむことができます。



レビュー著者:岩本 多生氏
商品提供:興和オプトロニクス株式会社


初心者のための天体写真の画像処理ガイド  実践編(後処理)

天体写真画像処理ガイド_実践編_後処理 初心者のための天体写真の画像処理ガイド 
実践編(後処理)



使用機材
ステライメージ

後処理編

後処理では、コントラスト調整や色彩強調を行います。この行程こそが天体写真の画像処理の醍醐味であり、撮影者の意図が大きく反映される部分です。
後処理の方法は人それぞれ異なり、絶対的な正解はありませんが、ここでは基本に沿った手順で、滑らかで美しい画像を仕上げる方法をご紹介します。
ベイヤー変換でカラー化 星雲の強調処理に入る前に、これまで扱ってきた画像は、カラー化前のベイヤー配列のモノクロ画像です。そのため、まずはカラー化の処理が必要です。

1. MasterLight.fts を選択した状態で、ツールバーの 「画像」 メニューから 「ベイヤー・RGB変換」 を選びます

2.ダイアログボックスが表示されたら、以下の設定を行います。
3.画像生成:「カラー画像」を選択
4.カラーフィルター:「ベイヤー(RGGB)」を手動で選択
5.色調整:デフォルトのままでOKを押す

実行すると、モノクロだった画像がカラー化されます。
今後はこのカラー画像を処理していくので、「名前を付けて保存」で新しい名前を付けて保存しておきましょう(例:MasterLightColor.fts)。



レベル調整でコントラストを強調

カラー化しただけでは、星雲が背景に埋もれてしまい、ほぼ真っ黒に見える状態だと思います。そこで、レベル調整を使って星雲を明るく浮かび上がらせましょう。

レベル調整の手順
1.ツールバーの「階調」メニューから「レベル調整」を選択
2.ヒストグラムが表示されるので、右端にある三角マークをヒストグラムの山の右端に合わせるように移動する

3.ヒストグラムが見づらい場合は、「ヒストグラム拡大」または「ヒストグラム縮小」ボタンを押して調整
4.角マークを適切な位置に移動させたら、「OK」を押して適用

最初は一度の調整では十分に明るくならないことが多いので、レベル調整を何度か繰り返して調整してみてください。ステライメージ9の特長として、レベル調整を何度行っても画像の階調が破壊されないので、納得のいくまで試せます。



ポイント:レベル調整のコツ

レベル調整は画像のコントラストを調整する作業であり、天体写真の画像処理において基本かつ重要な工程です。しかし、最初はどの程度強調すればよいのか分からない方も多いでしょう。強調の目安としては、目的の天体が明確に表れ、画面内の明るい星(輝星)が飽和する程度を基準にするとよいでしょう。



オートストレッチでカラーバランス調整

レベル調整後の画像を見ると、星雲の色が濁っていたり、背景宇宙の色が、緑がかっていたりすることがあります。特に緑かぶりは、光害のある場所で撮影した画像では発生しやすく、星雲の色合いが損なわれる原因となります。カラーバランスを調整し、透明感のある美しい画像に仕上げましょう。


カラーバランス調整の手順
1.ツールバーの「階調」メニューから「オートストレッチ」を選択する。
2.ダイアログボックスが表示されたら、「バックグラウンド」の中にある「自動選択」ボタンを押す(「プレビュー」にチェックが入っていることを確認する)。
3.画像にオートストレッチが適用され、カラーバランスが補正されたことを確認したら、「OK」ボタンを押す。
4.自動選択でカラーバランスがうまく調整できない場合は、「バックグラウンド指定」ツールを使い、画像の背景部分を囲んでから「OK」ボタンを押す。

カラーバランスはレベル調整や他のツールでも修正できますが、「オートストレッチ」は簡単にカラーバランスを調整できる便利な機能です。ぜひ活用してみてください。



デジタル現像でハイライトの階調を取り戻す

レベル調整で淡い星雲のコントラストを上げると、明るい部分が白飛びしてしまうことがあります。デジタル画像は表現できるダイナミックレンジに限りがあるため、白飛びを完全に避けることは難しいですが、観賞用の写真としては見栄えが良くありません。そこで、デジタル現像コマンドを使って、明るい部分の階調をできるだけ取り戻しましょう。

1.ツールバーの「階調」メニューから「デジタル現像」を選択します。
2.プレビューにチェックを入れると、明るく飛んでいた部分の階調がよみがえります。
3.ヒストグラム下のスライダーを移動させて、デジタル現像の効果と星雲のコントラストを好みのレベルに調整します。
4.調整が終わったら、「OK」ボタンを押します。


デジタル現像の適用強度は、まずデフォルト設定を目安に調整してください。スライダーを左側に移動させすぎると、コントラストが低すぎて画像が眠くなってしまうので、適切なバランスを保つように注意しましょう。


色彩強調で彩度を上げる

デジタル現像でハイライトの階調を取り戻した後、彩度を上げて星雲の色を強調してみましょう。ステライメージ9にはいくつかの彩度調整ツールがありますが、マトリクス色彩補正を使うと、手軽に簡単に彩度を調整できます。

1.ツールバーの「階調」メニューから「マトリクス色彩補正」を選択します。
2.三行三列の行列が表示され、数値を入力することでRGBごとの彩度を調整できます。カラーCMOSカメラを使用している場合、デフォルト設定で最適な値に調整されていることが多いので、特に変更の必要はありません。もし色合いが不自然に感じたら、左下のリセットボタンを押して初期状態に戻すことができます。
3.プレビューで色合いが良ければ、「OK」ボタンを押して確定します。


フィルタで画像をシャープに

彩度を上げて画像にメリハリが出たら、最後にシャープフィルタを使用して画像の先鋭度を高めましょう。ステライメージ9にはさまざまなツールがありますが、星雲などの画像には「スマートマルチバンドシャープ」が特に使いやすいです。

1.ツールバーの「フィルタ」メニューから「スマートマルチバンドシャープ」を選択します。
2.半径と強さを調整してアンシャープマスクの適用度を調整し、細部強調を使って星雲の輪郭を強調します。細部強調は強すぎるとノイズが増えるので、適用度を少なめに設定するようにしましょう。
3.プレビューでシャープフィルタの効果を確認し、納得できる仕上がりになったら「OK」ボタンを押して確定します。


トリミングして完成へ

シャープ処理を済ませたら、画像の端部分をトリミングして仕上げましょう。


1.ツールボックスから矩形選択ツールを選択する。
2.トリミングしたい範囲をツールで囲む。
3.選択範囲内で右クリックし、切り抜きを選択する。

以上が、ステライメージ9での基本的な画像処理の流れです。お疲れ様でした。 ステライメージ9には他にもさまざまなツールがありますが、まずはこの方法をしっかり習得することで、他の画像処理ソフトウェアへの移行もスムーズになるでしょう。

なお、ステライメージ9で処理した画像をPhotoshopやAffinity Photo 2などで開く場合は、「名前を付けて保存」を選択し、TIFF形式で保存してからファイルを開きましょう。保存の際、ビット数は16ビット、圧縮形式は無圧縮に設定して保存してください。


レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。

初心者のための天体写真の画像処理ガイド  実践編(前処理)

初心者のための天体写真の画像処理ガイド
実践編(前処理) 初心者のための天体写真の画像処理ガイド 
実践編(前処理)



はじめに

導入編をお読みいただき、天体写真には画像処理が必要であること、またそのためには専用のソフトウェアが必要であり、処理の大まかな流れもご理解いただけたかと思います。

ここからは、カラー冷却CMOSカメラ「ASI2600MC Pro」で撮影した天体写真を使い、実際の画像処理を進めていきます。ステップごとに詳しく説明するので、初めての方でも同じように仕上げることができるはずです。なお、内容が長くなるため、「前処理」と「後処理」に分けて解説します。使用する画像処理ソフトは「ステライメージ9」です。


使用機材
ZWO ASI2600MC Pro ステライメージ9

前処理編

前処理では、ダーク補正やフラット補正、スタッキング(コンポジット)処理を行います。これらの工程は、撮影時のノイズを除去し、より正確な画像を作るために欠かせません。

前処理は撮影者の意図がほとんど反映されない作業ですが、手順が多く、慣れないうちは戸惑うかもしれません。今回は「ステライメージ9」の画面を紹介しながら、一つずつの作業を丁寧に解説していきます(詳細編集モードを使用しています)。


画像処理の前準備

1. 撮影画像(ライトフレーム)
天体を撮影した画像です。今回は、馬頭星雲を天体望遠鏡と冷却CMOSカメラを使用し、露出時間360秒で8枚撮影しました。

2. ダーク画像(ダークフレーム)
ライトフレームのノイズ補正に使用する画像です。ライトフレームと同じ露出時間・ゲイン(感度)で撮影します。理想的には、ライトフレームと同じか、それ以上の枚数を用意します。今回は露出時間360秒のダークフレームを8枚撮影しました。

3. フラットフレーム
周辺減光を補正するための画像です。ライトフレームと異なる露出時間でも問題ありませんが、ゲインは同じにするのが理想的です。こちらも、ライトフレームと同じか、それ以上の枚数を用意します。今回は露出時間10秒のフラットフレームを8枚撮影しました。

4. フラットフレーム用のダーク画像(フラットダーク)
フラットフレームのノイズ補正に使用する画像です。フラットフレームと同じ露出時間・ゲインで撮影します。今回は露出時間10秒のフラットダークを8枚撮影しました。

これらの画像は同じフォルダにまとめておくと、ステライメージでの選択がスムーズになります。また、画像処理に慣れないうちは、どの画像がどの目的で必要なのかを紙にメモしておくと迷わず作業できるでしょう。


ダークフレームの作成

ライトフレームのダーク補正・フラット補正に使用するダークフレームを作成します。まずは、ライトフレーム補正用のダークフレームを作成しましょう。

1. ステライメージ9のツールバーから「バッチ」を開き、「コンポジット」を選択します。

2. ダイアログボックスが開いたら、「ファイルから追加」ボタンを押し、露出時間360秒のダーク画像を追加します。

3. 追加が完了したら「OK」を押し、ダイアログボックスにファイル一覧が表示されていることを確認します。

4. 位置合わせは不要なので、「基準点」のままでOKです。

5. コンポジットの設定を「加算平均」、ピクセル補間を「バイキュービック」に設定し、「コンポジット実行」ボタンを押します。

6. 処理が完了すると、新しい画像「New1.fts」が表示されます。

7. ツールバーの「ファイル」から「名前を付けて保存」を選び、適切な名前を付けて保存します。例:MasterDark_360sec_8com.fts(露出時間と枚数がわかるようにするのがおすすめです)

この手順をフラットフレーム用の露出時間10秒のダーク画像(フラットダーク)にも適用し、適切な名前(MasterDark_10sec_8com.fts等)で保存しておきましょう。これでダークフレームの作成が完了しました。


いよいよ後処理へ

ここまでで、撮影した画像の前処理が完了しました。次回からは、撮影画像に写っている星雲を明るく浮かび上がらせる後処理を行います。

前処理は最初のうちは手間に感じるかもしれませんが、慣れればスムーズに進められるようになります。また、ステライメージ9の「ダークライブラリ」機能を活用すれば、毎回ダークフレームを呼び出す手間を省くことも可能です。最初は面倒に感じるかもしれませんが、基本をしっかり押さえて取り組んでみてください。




レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。

GENESISシリーズではじめる バードウォッチング

GENESISシリーズではじめるバードウォッチング GENESISシリーズではじめる
バードウォッチング

今回から、バードウォッチングに必要な機材についてご紹介します。第二章では、バードウォッチングのマストアイテム「双眼鏡」についてです。 「双眼鏡」というと、千円程度の安価ものから何十万もする高級品まで様々なものがあります。 ひと口に双眼鏡といっても種類やバリエーションが数多くあり、どれを選んだらよいか迷ってしまうことでしょう。そこで失敗しない双眼鏡の選び方をご紹介します。





◼︎失敗しない双眼鏡の選び方

選び方のポイントは主に3つあります。

左からGENESIS 22シリーズ、GENESIS 33シリーズ、GENESIS 44シリーズ。



・口径

対物レンズの口径は30〜40mm程度がバードウォッチングには標準的です。口径が大きければ大きいほど集光力が上がり、明るく見えます。

一方で口径が大きくなるとその分重量も重くなります。見やすさと明るさのバランスの取れた、30~40mm口径前後のモデルを選ぶと良いでしょう。



・倍率

8〜10倍程度の倍率を選ぶと良いでしょう。倍率は高ければ高いほど大きく見えるので、つい高倍率のものを選びたくなりますが、倍率が高くなり過ぎるとその分視界が狭くなり、動きの早い野鳥の姿を視界にとらえるのが難しくなってしまいます。

これから始めるのであれば、まずは「8倍」の機種を選ぶと良いでしょう。



・特殊レンズ

EDレンズやXDレンズと呼ばれる特殊低分散ガラスレンズを搭載した機種を選ぶことで、色収差を抑えたクリアで自然な像が得られます。野鳥を抜け目なく識別するには、こういった特殊レンズによる自然でクリアな視界が大きなサポートになります。





◼︎GENESISシリーズがおすすめ

双眼鏡の最高峰の性能を実現するためにXDレンズ(eXtra low Dispersion lens)を対物レンズに計4枚(2枚×2)採用し色収差を徹底的に除去しています。

アクロマート対物レンズで除去しきれなかった残存色収差を極限まで抑えることにより最高の見え味をお約束します。 ※GENESIS22は計2枚(1枚×2)

>>GENESIS22/GENESIS33/GENESIS44



◼︎こだわりのMADE IN JAPAN

GENESISシリーズは、日本の職人技を体現し、卓越した光学性能を誇る双眼鏡です。

極上の見え味にこだわり、至高の感動体験を生むフラグシップモデルです。



◼︎観察スタイルに合わせてモデルを選ぼう


①GENESIS44シリーズ

タカの渡りスポットでの観察や猛禽類調査の現場、フェリー航路からの海鳥観察など、プロの過酷な現場でも重宝されているのが、大口径44mmの「GENESIS 44シリーズ」です。

近寄ることのできない猛禽類や広い水辺での観察のような、少しでも大きく見る必要があるシチュエーションなら、より倍率の高い「GENESIS 44-10.5」を、日の出前、夕暮れ時といった薄暮時の観察機会が多ければ、明るさ重視の「GENESIS 44-8.5」を選びましょう。

大口径ならではの高い解像力と明るい見え味が得られます。


ノスリ

トビに次いで身近な猛禽類。ワシタカ観察の第一歩はトビ以外の猛禽類をみつけること。
ノスリは主に冬期に農耕地や里山でよく見られる。



②GENESIS33シリーズ

山野を歩き回っての野外観察や探鳥会では、しっかり見ること以上に、フィールドで動き回れる機動力の高さが重要になります。

中口径33mmの「GENESIS 33シリーズ」なら、GENESIS44譲りの隅々まで歪みを抑えた堅実な描写力を持ちつつ、機動力を損なわない携行性で、バードウォッチングを楽しめます。

明るさと重量バランスに優れた「GENESIS 33シリーズ」は、30mm口径が多い中口径モデルの中でも一回り大きな33mm口径の対物レンズを搭載しています。


ルリビタキ

幸せの青い鳥「ルリビタキ」。低山や里山を散策していると見られることがある。



③GENESIS22

野鳥観察では、双眼鏡をはじめ、カメラ機材や三脚など、いろいろな荷物を持ち運ぶ必要がある中で、携帯性も重要になります。

GENESIS22シリーズは、口径22mm、重さ315gの軽量コンパクトなサイズながら、コンパクトクラス随一のワイドな視界を実現しています。


ザックのサイドポケットや胸ポケットに収まるサイズ。



◼︎双眼鏡をより楽しむためのアクセサリー



1.ハーネスストラップ

GENESIS44/33にハーネスストラップを付けることで、首への負担と重さを軽減し、一日フィールドで快適に観察することができます。サイクリング中でも双眼鏡を提げたままバードウォッチングを楽しめます。

>>ハーネスストラップへリンク



2.スマートフォン用フォトアダプター

スマートフォン用フォトアダプター「TSN-UN1」

スマートフォンのカメラでは、野鳥が小さ過ぎてまともに撮影できません。そこで、スマートフォンを双眼鏡に装着してもっと大きく撮ってみましょう。

GENESIS双眼鏡に各社のスマートフォンを装着し望遠撮影するためのユニバーサルフォトアダプターです。

>>TSN-UN1へ

※装着の際は、アダプターリングが別途必要です。

GENESIS44用:「TSN-AR44GE

GENESIS33用:「TSN-AR33GE

GENESIS22用:「TSN-AR25BD




オオバン

GENESIS44-8.5にiPhone 12 proを装着して撮影。


コールドムーン(12月の満月)

翌日の月をGENESIS44-8.5にiPhone12proを装着して撮影。

月の撮影では、そのままだと露出オーバーになってしまうので、露出をマイナスにするのがポイントです。三脚アダプター「KB2-MT」を介して三脚に据えると快適に撮影できます。



◼︎まとめ

バードウォッチングに最適な双眼鏡は、口径(30〜40mm)、倍率(8倍〜10倍)、特殊レンズ(XDレンズ)を搭載した機種を選ぶと良いでしょう。GENESISシリーズは、優れた光学性能を誇り、用途に応じてさまざまなモデルを取り揃えています。さらに、ハーネスストラップやスマートフォン用フォトアダプターを組み合わせることで快適な野鳥観察を楽しむことができます。

次回は双眼鏡よりもさらに大きく見えるスコープについてご紹介します。




レビュー著者:岩本 多生氏
商品提供:興和オプトロニクス株式会社

初心者のための天体写真の画像処理ガイド 導入編

ビクセンVSD70SSのインプレッション 初心者のための天体写真の画像処理ガイド
導入編



はじめに

風景写真や人物写真とは異なり、星雲や銀河は非常に暗いため、最初は思い通りの仕上がりにならないことが多いものです。また、天体写真の画像処理には専用のソフトが必要となり、どれを選べばよいか迷うこともあるでしょう。
このガイドでは、天体画像の基本知識から、天体写真用の画像処理ソフトウェアの紹介、処理の流れまでを複数回に分けて解説します。この記事を参考に、撮影した天体写真をより鮮やかに仕上げてみましょう。なお、近年主流となっている冷却 CMOS カメラで撮影した画像を中心に説明します。



天体写真の基礎知識

天体写真の画像処理を始める前に、基本的な知識を押さえておくと、ネットで調べたり専門書を読んだりする際に理解しやすくなります。



天体写真の画像処理の必要性

星雲や銀河は非常に暗く、長時間露光をしても背景の宇宙にぼんやりと浮かび上がる程度の明るさしかありません。そのため、撮影した画像をそのまま見ると、ほとんど真っ暗で、ヒストグラムを表示するとデータが左端に寄っているのがわかります。



この左端に寄ったデータを引き延ばし、適切に強調することで、星雲や銀河の姿をはっきりと表現できるようになります。
天体写真に興味を持った方なら、ネットや雑誌で鮮やかな天体写真を目にすることが多いでしょう。しかし、それらの写真も撮影時点では同じように暗く、画像処理を施すことで、あれほど鮮明な星雲や銀河の姿に仕上げているのです。



撮影画像のファイル形式

デジタル一眼カメラで撮影した画像は、各メーカー独自のRAW形式で保存されます。一方、冷却CMOSカメラをはじめとする天体撮影専用カメラでは、FITS形式(Flexible Image Transport System)が標準的に使用されます。FITS形式は天体画像の保存に適しており、天文学の分野でも広く採用されているファイル形式です。


ただし、FITSファイルは一般的な画像表示ソフトでは開くことができないため、天体写真専用のソフトウェアを使用する必要があります。



バイアスフレーム、ダークフレームとは

天体は非常に暗いため、カメラのシャッターを長時間開き、センサーに光を蓄積することで撮影します。しかし、その間にカメラのセンサーには電流が流れ続け、内部回路の影響や発熱によってノイズが発生します。このノイズを補正するために使用されるのがバイアスフレームとダークフレームです。


・バイアスフレーム:露出時間を最短(実際には0秒に近い)に設定し、カメラに蓋をした状態で撮影した画像。センサーの読み出しノイズを記録します。
・ダークフレーム:天体を撮影した際の露出時間と同じ時間で、カメラに蓋をして撮影した画像。センサーの熱ノイズを記録します。
どちらも一見真っ黒な画像ですが、よく見るとノイズが点々と写っているのが確認できます。



フラットフレーム

フラットフレームは、光学系に生じる周辺減光やゴミの影響を補正するための画像です。望遠鏡にカメラを取り付けた状態で、均一な光源を撮影することで得られます。フラットフレームを使うことで、画像の明るさを均一にし、より自然な仕上がりに補正することができます。




ダーク減算とフラット補正

ダーク減算とは、撮影画像からダークフレームを差し引くことで、画像に含まれるノイズを低減する処理です。一方、フラット補正は、フラットフレームを用いて撮影画像の周辺減光を補正する処理で、それぞれ本格的な画像処理の最初に行う重要な事前処理となります。海外ではこれらを総称して「キャリブレーション処理」と呼ぶこともあります。なお、ダーク減算にはバイアスフレームを併用することもありますが、最初のうちはダークフレームのみを使うと覚えておけば問題ありません。



スタッキング処理

スタッキング処理とは、撮影した複数の画像を重ね合わせてノイズを平均化し、目立たなくするための手法です。ソフトウェアによっては「コンポジット」や「インテグレーション」とも呼ばれ、赤道儀を使用して同じ天体を連続撮影する天体写真ならではの技術です。画像を滑らかに仕上げるためには欠かせない重要な処理です。



冷却CMOSカメラで撮影した画像の保存先

デジタル一眼カメラの場合、撮影データはSDカードに保存されますが、冷却CMOSカメラの画像は、カメラを接続したパソコンやASIAIRの保存フォルダに記録されます。そのため、画像処理を行う際は、事前に画像データを処理用のパソコンへ移動させておきましょう。



天体写真の画像処理用ソフト

一般的な写真の編集には Photoshop などの画像処理ソフトが広く使われていますが、天体写真では FITS 形式の画像データを扱う必要があるため、専用の処理ソフトが求められます。ここでは、日本の天文ファンに人気のある天体写真処理ソフトをご紹介します。



ステライメージ9(有償)


日本のアストロアーツ社が開発・販売する Windows 用の天体画像処理ソフトで、2025年3月下旬に最新バージョンのステライメージ10がリリース予定です。ダーク・フラット補正はもちろん、スタッキング処理や画像復元処理など、高度な画像処理機能も備えています。

詳細はこちら



PixInsight(有償)

スペインの Pleiades Astrophoto S.L. が開発・販売する天体写真用ソフトウェアで、Windows に加え macOS でも利用できます。世界中に多くのユーザーがおり、日本でも使用者が増えています。独特なインターフェースのため習得には時間がかかりますが、非常に多機能で高度な画像処理が可能です。
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Siril(無償)


オープンソースで開発された天体写真用の画像処理ソフトで、Windows、macOS、Linux に対応しています。操作に慣れるまで時間がかかりますが、天体写真の基本的な処理機能を網羅しており、日本でも徐々にユーザーが増えています。
詳細はこちら



DeepSkyTracker(無償)


天体写真のダーク・フラット補正とスタッキングに特化した無料ソフトウェアです。シンプルなインターフェースで初心者にも使いやすく、比較的短時間で処理が完了するため、天体写真の前処理用ソフトとして広く利用されています。

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ASIDeepStack(無償)

天体撮影用 CMOS カメラメーカー ZWO 社が提供する総合ソフト「ASI Studio」に含まれる画像スタッキングソフトです。画像閲覧ソフト ASIFitsView とともに ASI Studio 内に搭載されており、ダーク・フラット補正やスタッキングが可能で、前処理用ソフトとして活用できます。
詳細はこちら



体験版や無料ソフトでまずは試してみよう

さまざまな画像処理ソフトを紹介しましたが、初心者にはガイドブックが用意されている「ステライメージ」が人気です。画像処理の操作に慣れてくると、より高度な機能を求めてPixInsightを導入し、両方を使い分ける方も多いようです。
また、オープンソースで無料のSirilも一定の人気がありますが、こちらもある程度画像処理の経験を積んでから使い始める方が多い傾向にあります。


一方、DeepSkyStackerやASIDeepStackは前処理専用のソフトであるため、これだけで画像処理を完結させるケースは少なく、その後にPhotoshopやAffinity Photo2等で仕上げ処理を行うのが一般的です。
いきなり画像処理ソフトを購入するのはリスクが高いため、まずは無料ソフトや体験版を試してみるのがおすすめです。ステライメージは30日間、PixInsightは45日間のトライアルライセンスが提供されており、購入前に使い勝手を確認できます。



天体写真の画像処理の流れ

撮影した天体写真は、以下のような流れで処理を進めていきます。使用する画像処理ソフトが異なっても、基本的な手順は共通しているため、一度流れを理解してしまえば、別のソフトに移行してもスムーズに作業を進められるでしょう。

まず、撮影した画像にはカメラ特有のノイズや周辺減光などが含まれているため、これらを補正する「キャリブレーション処理(ダーク減算・フラット補正)」を行います。次に、複数の画像を重ね合わせてノイズを低減し、信号を強調する「スタッキング処理(コンポジット)」を実施します。この段階で、画像はまだ暗く、コントラストも低い状態です。


撮影画像(ライトフレーム)
ダーク補正
フラット補正
ダークフラット補正後のライトフレーム
複数枚のライトフレームをスタッキング

ここまでの処理は「前処理」と呼ばれ、ダーク補正やフラット補正、スタッキング処理が含まれます。前処理の特徴は、撮影者の意図が入る余地がほとんどなく、誰が行っても同じ結果になることです。そのため、ソフトウェアによってはバッチ処理(自動処理)を活用し、一連の作業を一気に終わらせることもできます。

一方、スタッキングまで完了した画像をさらに調整して仕上げる作業を「後処理」と呼びます。後処理では、撮影者のセンスや技術が反映される部分が大きく、天体写真の画像処理の醍醐味とも言える工程です。ここでは、一般的な写真編集にも用いられるレベル補正、トーンカーブ、色彩強調といった手法が活用され、より美しい仕上がりを目指します。画像処理に慣れてくると、星雲のディテールを際立たせるためにマスク補正などの高度な技術を取り入れることもあります。

前処理画像の完成
レベル補正・トーンカーブ補正他
色彩強調
完成

このように、前処理は正確さと効率性が求められる工程であり、後処理は撮影者の表現力が試される工程です。どちらも天体写真の仕上がりに大きく影響する重要なステップであり、試行錯誤を重ねながら最適な方法を見つけていくことが上達への鍵となります。



次回からは実践編!撮影画像を処理してみよう

今回は、天体写真の画像処理の基本や使用するソフトウェアについてご紹介しました。次回からは、実際に撮影した画像を使いながら、具体的な画像処理の手順を解説していきます。ぜひ引き続きご覧ください。


レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。

ASIAIRで楽しむデジカメ天体撮影 2軸ドライブ赤道儀でオートガイド編

初心者のための天体撮影ガイド ASIAIRで楽しむデジカメ天体撮影
2軸ドライブ赤道儀でオートガイド編

はじめに

ビクセンGPD赤道儀をはじめ、自動導入機能のない古い赤道儀とデジタルカメラを組み合わせて天体撮影を楽しんでいる方は少なくありません。単純な2軸ドライブ赤道儀であっても、電話のモジュラージャックのような形をしたオートガイド端子(ST4)を装備している場合には、単機能オートガイダーを接続してオートガイド撮影を行うことができます。かつては、こうした赤道儀で使用するオートガイダーとして「ラセルタMGEN-3」が選ばれていました。しかし、現在では取り扱いが中止されています。
そこで今回は、MGEN-3に代わる選択肢として「ASIAIR」を活用する方法をご紹介します。具体的な設定手順や運用方法についても詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。



基本編はこちら▶︎

望遠鏡へのステップアップ▶︎




今回撮影に使用した機材

撮影には以下の機材を使用しました:

鏡筒 赤道儀 カメラ
ビクセン FL55SS/
フラットナー
レデューサーレンズ使用


STARBOOK ONE
コントローラー仕様


ニコン D810A

ガイドスコープ オートガイダー ガイドシステム
ZWO 30F4 ミニスコープ ASI120MMmini ASIAIR miniとASIAIRアプリ




機材のセッティングとケーブル接続方法

機材は以下のようにセッティングしました(※上の画像を参照)。
まず、Vixen FL55SSに補正レンズ(フラットナーとレデューサー)を装着し、その接眼部にデジタル一眼レフカメラ Nikon D810Aを取り付けました。カメラとASIAIR MiniはUSBケーブルで接続し、スマートフォンのASIAIRアプリを使用してシャッターをリモート操作できるようにしています。

さらに、FL55SSの上部にはZWO社のガイドスコープを固定し、その接眼部にオートガイダー ASI120MM Miniを装着しました。オートガイダーのUSBケーブルはASIAIR Miniに接続し、オートガイド信号を送るST4オートガイドケーブルは120MMminiのオートガイド端子からSTARBOOK ONEコントローラーのオートガイド端子へと接続しています。

接続の概要
1.カメラとオートガイダーのUSBケーブル → ASIAIR Miniに接続
2.オートガイダーのST4ケーブル → STARBOOK ONEコントローラーに接続
3.ASIAIR Miniの電源 → DC12V電源ケーブルを接続
4.AP赤道儀の電源 → 単三乾電池4本で供給

このように撮影機器を接続することで、ASIAIRを中心にした効率的な天体撮影が可能となります。



ASIAIRアプリの準備

撮影を始める前に、ASIAIRアプリを公式サイトからダウンロードし、使用するスマートフォンやタブレットにインストールしておきましょう。このアプリは無料で利用できます。

ASIAIR Miniの電源は、DC12V電源ケーブルを接続すると自動的に入ります(スイッチはありません)。電源を入れたら、Wi-Fiを通じてスマートフォンをASIAIR Miniに接続し、アプリを起動します。これにより、スマートフォンから接続した機器を操作できるようになります。



ASIAIRアプリの設定

ASIAIRアプリを起動したら、まずカメラとオートガイダーを接続します。ドロップダウンメニューから使用するカメラとオートガイダーを選択し、スイッチをスライドして接続を確立します。

赤道儀の設定では、「On-Camera-ST4」を選択してください。この設定により、オートガイダーのオートガイド端子を通じて、ガイド修正信号が赤道儀に送られるようになります。
撮影鏡筒とガイドスコープの焦点距離も入力しておきましょう。



対象の導入とピント合わせ

撮影したい天体を導入します。今回は自動導入機能を使用せず、赤道儀のクランプを緩めて手動で赤道儀を動かしながら導入を行います。初心者の方には、アンドロメダ大銀河やすばるのような、明るく目立つ天体が導入しやすいでしょう

導入が完了したら、ASIAIRの撮影モードを「Preview」に切り替え、構図の微調整を行います。構図が決まったら、「Focus」モードに切り替えてピントを合わせましょう。「Focus」モードでは画像の一部が拡大表示されるため、ピント調整がしやすくなります。

また、対象天体を導入する前に明るい星であらかじめピントを合わせておくのも良い方法です。自分に合った手順で導入とピント合わせを行いましょう。



オートガイドの開始

画面左側の「Guide」メニューをタップしてオートガイド画面を開きます。露出時間を2秒程度に設定し、「露出開始」ボタンを押して、オートガイダーが捉えた星を表示させます。
もし星がぼやけている場合は、ガイド鏡のピントがずれている可能性があります。ガイド鏡のフォーカス部を回して、星がシャープに見えるように調整しましょう。

星がシャープに映るようになったら、「オートガイド開始」ボタンを押します。初めてオートガイドを開始すると、自動的にキャリブレーションが始まります。キャリブレーションは、ガイド信号によって赤道儀がどの方向に動くかを学習する工程です。
キャリブレーションが完了すると、ガイド星に重なる十字線の色が黄色から緑色に変わり、オートガイドが開始されます。



撮影開始

オートガイドが安定したら、撮影モードを「Autorun」に設定して撮影を開始します。「Autorun」モードでは、カメラの露出時間、撮影枚数を自由に設定できます。目的や好みに合わせて設定を行いましょう。

設定が完了したら、メイン画面に戻り、シャッターボタンを押して撮影を開始します。露出が完了すると、撮影画像が画面に表示されますので、ピントやガイドの状況を確認しましょう。
もし星がぼけていたり、星像が流れている場合は、シャッターボタンを押して「Autorun」を一時停止できます。一時停止後、ピント調整やガイド設定を再確認して撮影を再開してください。



まとめ「ASIAIRと2軸赤道儀について」

自動導入機能のない2軸赤道儀でASIAIRを使った撮影方法をご紹介しました。実際に撮影してみると、MGEN-3と比べてASIAIR MiniにはDC12Vの電源供給が必要ですが、スマートフォンからWi-Fiでカメラやオートガイダーを遠隔操作できる点が非常に便利だと感じました。
将来、赤道儀を自動導入機にアップグレードすれば、ASIAIRで構築した撮影システムをそのまま活用できるのも大きなメリットです。MGEN-3を使って天体撮影を楽しまれている方々も、ぜひASIAIRを体験してみてはいかがでしょうか。



追記「ASIAIRと1軸赤道儀について」

1軸駆動赤道儀(ポータブル赤道儀)のなかにも、ユニテックSWATシリーズやビクセンポラリエUのようにオートガイド端子を備えた製品があります。MGEN-3では赤緯(DEC)を無効化する1軸ガイドモードが装備されており、これらポータブル赤道儀でのオートガイド撮影が可能でした。今回、ASIAIRでSWATの1軸ガイドが可能かどうか試してみましたが、残念ながらその機能は実装されておらず使用することができませんでした。





レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。


初心者のための天体撮影ガイド

初心者のための天体撮影ガイド 初心者のための天体撮影ガイド

はじめに

初めて天体撮影に挑戦する方のために、この記事では基本的なステップを解説しています。まずは、月が小さい時期を選び、天気予報を確認して、星空がよく見える場所に出かけてみましょう。基本的な心構えを知っておけば、スムーズに天体撮影に取り組むことができます。このガイドが、あなたの天体撮影の第一歩となり、星空や天体を写真に収める楽しさを感じるきっかけになれば幸いです。



天体撮影の基礎知識

天体撮影を始める前に、いくつか基本的なことを覚えておくと、より満足のいく写真を撮ることができます。この章では、特に重要な「月の影響」と「天候」について説明します。



1. 月の影響

月明かりは、星空の見え方に大きな影響を与えます。満月の夜は、月が空を明るく照らすため、星の光がかき消されてしまい、星空の撮影には適していません。そのため、天体撮影を計画する際は、月明かりのない時期を選ぶのがポイントです。新月の夜がベストですが、私の場合、上弦の月から下弦の月の間の月明かりのない時間帯に天体撮影を行っています。

初心者のための天体撮影ガイド

こうした「月齢」に関する情報は、天気予報アプリや月齢カレンダーで確認できるので、あらかじめチェックしておくと良いでしょう。

ただし、月が明るい夜でも天体撮影を楽しむ方法があります。特に「ナローバンドフィルター」を使った撮影では、特定の波長の光だけを捉えることで、月の明るさの影響を軽減しながら美しい写真が撮れます。これは少し上級者向けですが、天体撮影に慣れてきたら試してみてはいかがでしょう。

また、惑星撮影なら、月明かりの影響を気にせず撮影が楽しめます。木星や土星などの惑星は明るいため、月の明るさに左右されることなくはっきりと捉えることができます。



2. 天候の重要性

天体撮影では、空が晴れていることが必須です。空に雲がかかっていると星が隠れてしまい、せっかくの遠方に出かけても撮影することができません。また、空気中の透明度も星の見え方に影響します。一般的に、撮影地の標高が高いほど空気が澄んで星空がクリアに見えるため、できるだけ標高の高い場所が理想的です。また、夏場よりも秋や冬の方が空気の透明度が高いことが多く、星の輝きが一層引き立ちます。

初心者のための天体撮影ガイド

天気の確認については、気象庁の天気予報に加えて、WindyやGPV天気予報なども活用し、観測地の今夜の天候を細かくチェックしましょう。WindyやGPVは、観測地の風速や雲の動きなども確認できるため、撮影場所の天候をより的確に見極めることができます。



撮影場所の選び方

天体撮影では、夜空が暗い場所を見つけることが重要です。街の明かりが少なく、光害がほとんどない暗い場所を選ぶことで、星々や天の川をより美しく写すことができます。以下に、暗い星空を見つけるためのポイントを紹介します。



1. 光害の少ないエリアを選ぶ

星空を観察・撮影するには、都市から離れた場所が理想です。光害が少ないエリアは暗い星まで見えるため、写真に写る星の数も増え、より鮮明に仕上がります。場所ごとの光害の影響が分かる「光害マップ」を活用し、街明かりの届きにくいエリアを探してみましょう。


初心者のための天体撮影ガイド



2. 山間部や海岸付近の場所を探す

山間部は都市から遠く、都市部の明かりが山脈で遮られるため、夜空が暗く保たれていることが多いです。特に標高が高い場所は、空気が澄んで透明度が高いため、星々の輝きが一層際立ちます。海岸線も広々とした空が確保でき、街明かりが届きにくい場合が多いのでおすすめです。



3. シミュレーションアプリで方角を確認する

スマホやPC用の星空シミュレーションアプリ(ステラナビゲーターやSkySafari7など)を活用し、撮影したい天体や天の川の方角をあらかじめ確認しておくと、より適した撮影場所を選びやすくなります。



実際に観測地へ行く際の注意点

天体撮影のために暗い観測地へ向かう際には、前もって準備しておきましょう。遠出になることが多いので、以下の点に気をつけて計画を立てましょう。



1. 交通手段とアクセス

観測地が自宅から離れている場合、車での移動が便利です。公共交通機関を利用する場合は、駅からの移動手段も確認し、現地に早めに到着できるよう計画しましょう。観測後は遅い時間の移動になるため、帰り道や終電の時間も忘れず確認しておきます。また、移動や設置作業がしやすいように、懐中電灯やヘッドライトを持参するようにしましょう。



2. 防寒対策

夜間は気温が下がるため、季節にかかわらず防寒対策が重要です。上着や帽子、手袋などの防寒具に加え、ホッカイロなども準備しておくとよいでしょう。特に秋や冬は気温が急に下がるため、厚手のアウターやブランケットも役立ちます。また、温かい飲み物を持っていくと長時間の観測が快適になります。



3. 観測地で必要なアイテム

天体撮影には、撮影機材や観測道具に加えて、以下のようなアイテムを持っていくと安心です。

赤い懐中電灯:暗順応した目を維持するために、通常の白いライトではなく、目に優しい赤いライトが便利です。両手が自由になるヘッドライトタイプが便利です。

虫よけスプレー:夏場は虫が多いため、虫よけ対策も忘れずに。



4. 周囲への配慮

天体観測地が公園や共有スペースの場合、他の観測者や周囲の人の迷惑にならないよう配慮しましょう。ライトは周りに向けない、大きな物音を立てないなど、マナーを守って静かな環境を保つことも大切です。



機材選びの基本

天体撮影を始める際、最初から高価な機材を揃える必要はありません。お持ちのカメラやレンズで十分に撮影を楽しめます。まずは手軽に始め、双眼鏡や天体望遠鏡などの機材を少しずつ増やしていくことで、末長く楽しむことができます。ここでは、機材選びのポイントについてご紹介します。

初心者のための天体撮影ガイド



1. カメラ

初心者におすすめのカメラは「デジタル一眼レフ(DSLR)」または「ミラーレスカメラ」です。これらはマニュアル設定が可能で、シャッタースピードやISO感度を細かく調整できるため、夜空の撮影に適しています。特に以下の点に注目してカメラを選ぶと良いでしょう。

高感度ISO性能:星空を撮影するには、短い露光時間でも星が写る高感度なカメラが理想です。ISO感度が高くてもノイズが少ない機種を選びましょう。

広いダイナミックレンジ:星や暗い天体の諧調を滑らかに撮影するため、ダイナミックレンジが広いものが適しています。

※最近では一部のスマートフォンも星空撮影モードを搭載しており、星空の撮影が可能ですので、まずはスマートフォンで試してみるのも良いでしょう。



2. レンズ

星空撮影には、広い範囲を撮れるレンズが適しています。星景撮影におすすめは「広角レンズ」で、焦点距離が24mm前後のものが最初は使いやすいでしょう。また、以下の要素に注意してレンズを選びましょう。

開放F値が小さいもの(F2.8以下):光を多く取り込める明るいレンズは、短い露光時間でも星空をはっきりと撮影できます。

単焦点レンズ:単焦点レンズはシャープな画質が得られやすく、昔から星空撮影に人気があります。初めての方は24mmのF2.8や35mmのF1.8レンズなど、広角で明るめのレンズを選ぶとコストパフォーマンスも良く使いやすいでしょう。ズームレンズなら開放F値が2.8前後の広角ズームレンズがお勧めです。



3. 三脚

天体撮影ではカメラを固定して長時間露光を行うため、安定した三脚が欠かせません。風が吹いても動かないような頑丈な三脚が理想ですが、以下のポイントを参考に選びましょう:

耐荷重:カメラとレンズの重さをしっかり支えられるかどうか確認しましょう。星景写真撮影の場合、耐荷重5kg以上のものが望ましいです。ポータブル赤道儀を使用する場合は、耐荷重8kg以上のものが安心でしょう。

アルカスイス規格の雲台プレート:アルカスイス規格のプレートとクランプがあれば、カメラと雲台をワンタッチで取り外しできるので重宝します。



4. 双眼鏡の活用

星空撮影中は、双眼鏡で星空を観察するのがおすすめです。双眼鏡は広い視野で星空を観察できるため、構図や天体の確認にも役立ちます。倍率は7倍から10倍程度、対物レンズの口径が30mm~40mm程度のものを選ぶと、手持ちでも使いやすいです。



5. 天体望遠鏡の選び方

初めての天体撮影には口径6cm程度の屈折式望遠鏡が向いています。観望だけなら安価なモデルでも問題ありませんが、天体撮影では色収差が目立つので、EDレンズやフローライトレンズが使われた機種がお勧めです。良い望遠鏡は、10年程度は使えるので、長く使える気に入ったモデルを購入するのがお勧めです。ビクセンFL55SSなどの小型で高性能な機種が使いやすいでしょう。



6. スマート機材の勧め

ZWOの「Seestar」をはじめ、スマート望遠鏡という新しい分野の撮影機材が登場しています。Seestarはスマートフォンと連携し、誰でも簡単に天体撮影を楽しめるのが特長です。星空全体の撮影には向いていませんが、特定の天体を大きく簡単に撮影したい場合には最適な機材です。

初心者のための天体撮影ガイド



星空シミュレーションソフトの紹介

天体撮影では、撮影対象となる天体や天の川の位置を事前に確認しておくと、撮影がスムーズに進みます。そのために便利なのが「星空シミュレーションソフト」です。これらのアプリやソフトは、スマートフォンやPCで夜空の様子をシミュレーションでき、撮影の天体の位置や動きを把握するのに役立ちます。ここでは、初心者にもおすすめのアプリやソフトを紹介し、それらの活用方法を解説します。



1. スマホアプリ

スマートフォン用の星空シミュレーションアプリは、持ち運びが簡単で、撮影現場での確認にも便利です。以下のアプリが特におすすめです。

SkySafari:星座や天体の情報が豊富で、詳細なシミュレーションが可能なアプリです。高度や方角も正確に表示され、撮影計画を立てやすくなります。また、未来の日付や時間を入力すると、その日時の星空もシミュレーションできるため、撮影日程を決める際にも便利です。

Star Walk 2:直感的な操作で星空をリアルタイムに観察できるアプリです。スマホをかざすと、現在の方角や星の名前が画面上に表示されるため、撮影したい天体をすぐに見つけることができます。



2. PC用ソフト

PCで使用できるシミュレーションソフトは、パソコンの画面上で細かい操作が可能で、事前のプランニングに役立ちます。特におすすめのソフトは以下の通りです。

Stellarium:無料で使用でき、初心者から上級者まで幅広く愛用されている星空シミュレーションソフトです。シンプルでわかりやすいインターフェースが特徴で、観測地と日時を設定するだけで、画面にリアルな夜空が表示されます。星や星座、惑星の位置が一目で確認できます。また、望遠鏡やカメラの視野をシミュレーションする機能もあり、機材に合わせた撮影計画が立てやすいです。

ステラナビゲーター12:ステラナビゲーターは、アストロアーツ社が開発している日本製の高機能星空シミュレーションソフトです。観測地や日時を細かく設定できるだけでなく、各種天体の位置情報や詳しい解説も豊富で、望遠鏡の視野や構図を表示する機能もあります。完全に日本語対応で、初心者には特に使いやすい天体シミュレーションソフトです。



まとめ

天体撮影を楽しむためには、撮影対象や条件に合わせた事前準備が欠かせません。月齢や天候、光害を考慮して撮影の計画を立て、シミュレーションソフトを活用することで、より確実に星空や天体を捉えることができます。風景撮影用の機材でも星空を撮影することができますので、まずは手持ちのカメラやスマホで気軽に始めてみるのがおすすめです。少しずつ経験を積み、撮影機材を増やしていくことで、星空撮影が一層楽しく魅力的に感じられると思います。ぜひ、天体撮影を末永く楽しんでください。





リンク集

天体撮影に便利なアプリを提供しているメーカーの公式サイトへのリンク集です。

天気予報関係

GPV天気予報

Windy天気予報

星空指数天気予報


光害マップ

光害マップ


月齢カレンダー

シンプル月齢カレンダー


星空シミュレーションアプリ

SkySafari

STAR WALK 2


星空シミュレーションソフト(PC用)

Stellarium

ステラナビゲータ12



レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。


ビクセン レデューサーV0.71xの インプレッション

Seestarで楽しむ南半球の星空 ビクセン レデューサーV0.71xの
インプレッション

発売以来、優れた結像性能で注目を集めているビクセンのVSD90SS(以下「VSD90SS」)用の焦点距離を短縮する補正レンズ「レデューサーV0.71×」が2024年8月に発売されました。
早速、この新しいレデューサーをフィールドに持ち出し、VSD90SSを使って天体撮影を行いましたので、その様子をご紹介します。また、今回、VSD100F3.8(以下「VSD100」)用のレデューサーV0.79×との比較についても考察しました。

使用機材
VSD90SS鏡筒 レデューサーV0.71x

レデューサーV0.71×の概要

レデューサーV0.71×は、4群4枚のレンズ構成で、うち2枚にEDレンズを採用しています。イメージサークルは約44mmと広く、35mmフルサイズの撮影にも対応しています。また、ベテランユーザーの厳しい要求に応えるため、スケアリング調整ネジも備えています。

VSD90SSに使用すると、焦点距離は495mmから351mmに短縮され、口径比もF5.5からF3.9と明るくなります。

なお、レデューサーV0.71×は、VSD70SSにも使用できますが、旧機種のVSD100には使用できません。実際にVSD100に装着を試みましたが、接眼部の内径に対してレデューサーの直径が大きく、最後までねじ込むことができず、取り付けが不可能でした。


VSD90SSへのレデューサー取り付け

レデューサーV0.71×をVSD90SSに取り付ける際は、まずM84延長筒を含む接眼部のアダプター類を全て取り外し、レデューサーV0.71×をドロチューブに直接ねじ込みます。その後、レデューサーV0.71×の後部に直焦ワイドアダプターDXをねじ込み、カメラを装着して撮影を行います

一方、レデューサーV0.79×を使用する場合は、鏡筒に標準で付属するM84延長筒の後部にレデューサーをねじ込みます。ドロチューブに直接レデューサーV0.79×を取り付けるとピントが合わないため、注意が必要です。


レデューサーV0.71×の星像

レデューサーV0.71×の結像性能を検証するため、VSD90SSを郊外に持ち出し天体撮影を行いました。撮影には、Astro6D(キヤノンEOS6D改造機)とASI2600MMProのカメラを使用し、ASIAIRアプリでオートガイド追尾撮影を行いました。
まず、Astro6Dで撮影した北アメリカ星雲の写真です。カラーバランスを整え、コントラストを強調した1枚画像です。北アメリカ星雲が画角一杯にバランスよく収まっているのがわかります。


次に、画像の中央部と周辺部をピクセル等倍で切り抜いたものを以下に示します。

ご覧いただくとわかる通り、中心部はもちろん、最周辺部でも星はほぼ点像に収まっており、35mmフルサイズ全体にわたって鋭い星像を結んでいます。フラット補正を行っていないにもかかわらず、周辺減光も目立ちません。
次に、APS-Cサイズセンサーを搭載したASI2600MMProで撮影したケフェウス座のIC1396の画像です。都市部でナローバンドフィルターを使って撮影しカラー化しました。


IC1396は非常に大きな星雲で、VSD90SSの直焦点では一部が画角からはみ出してしまいますが、
レデューサーV0.71×を使用することでバランスよく収まりました。

こちらも、中央部と周辺部のピクセル等倍画像を比較しています。35mmフルサイズの時と同様、中心部はもちろん、最周辺部でも星像がほぼ点像を保っていることが確認できます。


レデューサーV0.79×との比較

VSD100F3.8用に開発されたレデューサーV0.79×は、3群3枚のレンズ構成で、そのうち1枚にEDガラスが使用されています。

新旧レデューサーを外観で比較すると、レデューサーV0.71×の方が対物レンズ側のレンズ直径が大きく、レンズ枚数が多いため、より重く感じられます。
VSD90SSにレデューサーV0.79×を装着した場合、焦点距離は391㎜に短縮され、F値は4.3まで明るくなりますが、新型のレデューサーV0.71×のF3.9と比べると、やや暗くなります。

上の図はメーカーが発表しているスポットダイアグラムです。これを比較すると、APS-Cサイズの対角までは星像の大きさに大きな違いは見られませんが、35mmフルサイズの対角に近づくにつれて、星像が大きくなることがわかります。


レデューサーV0.79×の星像

レデューサーV0.79×の結像性能を検証するため、Astro6Dを使用してオートガイド追尾撮影を行いました。以下は、Astro6Dで撮影した北アメリカ星雲の写真です。カラーバランスを調整し、コントラストを強調した1枚画像です。レデューサーV0.71×で撮影した画像と比較すると、画角がやや狭くなっていることがわかります。


次に、画像の中央部と周辺部をピクセル等倍で切り抜いたものを以下に示します。

ご覧いただくとおり、中央部ではシャープで星像は丸くなっていますが、最周辺部になると星が若干放射状に流れて写っています。
さらに、APS-Cサイズに切り抜いた中央部と周辺部のピクセル等倍画像を以下に示します。

こちらをご覧いただくと、中央部も周辺部も星像は丸くシャープです。スポットダイアグラムが示す通り、APS-Cセンサーサイズまでであれば、旧型レデューサーでも十分にシャープな星像が得られることがわかります。


新旧レデューサーを使った感想

新旧両方のレデューサーを使用してみた感想としては、新型レデューサーはF値が明るくなったにもかかわらず、星像の品質がさらに向上し、35mmフルサイズでも十分に満足できる結果が得られました。
周辺減光については、新型レデューサーの方が軽減されているように感じましたが、APS-Cサイズのカメラでは大きな差は感じませんでした。ただ、どちらのレデューサーも35mmフルサイズの最四隅では急激に暗くなる傾向が見られました。
F値が多少暗くても問題がなく、APS-Cサイズのカメラを使う場合には、旧型レデューサーでも十分に撮影を楽しめると思います。


彗星撮影にもおすすめのレデューサー

下の画像は、VSD90SSにレデューサーV0.71×とフルサイズデジタル一眼レフカメラを組み合わせて撮影した紫金山・アトラス彗星です(※周囲をトリミングしています)。

紫金山・アトラス彗星を撮影したのは、日の出前のわずかな時間でした。彗星の撮影は時間が限られるため、F値が明るい光学系が非常に有利です。
レデューサーV0.71×は、星雲や星団の撮影に限らず、夜空を駆ける彗星の撮影にも強力な武器となるでしょう。


最後に

今回の撮影を通じて、新型レデューサーV0.71×の性能を確認することができました。総合的に見て、新型レデューサーV0.71×は、明るいF値と優れた星像性能を兼ね備え、特に35mmフルサイズカメラを使用するベテランの天文ファンにおすすめできるアイテムだと感じました。
旧型レデューサーもAPS-Cサイズのカメラには十分実用的ですが、周辺減光の軽減や広い画角でのシャープな星像、さらに明るいF値を求める方には、新型レデューサーが最適な選択です。
VSD90SSやVSD70SSにこの高性能な新型レデューサーを組み合わせることで、その魅力がさらに引き立ちます。ぜひ新しいレデューサーを手に入れて、VSD90SSやVSD70SSの高性能を存分に体感してみてはいかがでしょうか。



レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。

冬の天体観測ガイド

冬の天体観測ガイド


冬の夜空は1年を通して最も透明度に恵まれる時期にあたり、星雲星団など深宇宙の観測に適した季節です。低い気温も撮影派にとっては力強い味方です。デジタルカメラやCMOSカメラで撮影を行う際、星雲や星団の撮影には長時間の露出を行いますが、カメラは長時間露出すると発熱し、その熱の影響で画像のノイズが増大します。ところが冬は寒い外気がカメラの発熱を抑えてくれますので、夏に比べ、ノイズが少なくてクリアな画像を得やすいのです。

銀河中心部を見せる荘厳な夏の天の川も素晴らしい眺めですが、天空をまたぐ淡い冬の天の川の美しさはこれも筆舌に尽くしがたく、その周辺には見ごたえのある星雲や星団が数多く存在します。


星雲星団は大変淡く、楽しみ方は写真撮影か電子観望が主流となりますが、大型の対空双眼鏡や集光力のある望遠鏡を用いれば、二重星団やプレアデス星団、オリオン大星雲やアンドロメダ銀河などは、眼視でも十分に楽しむことができます。

ただし月惑星に関しては、冬の大気は乾燥していてその面では有利なのですが、上空に強い風が吹く気圧配置となる日が多く、高倍率を必要とする月惑星観望に不利なシーイングになることが多いことも知っておきましょう。

お好みの天体を、用途にあった機材を選択してして思う存分にお楽しみください!

ステラナビゲーターで作成


ヒント→ 上記星図は2月15日午後9時ものです。月と惑星以外のすべての星の位置は、日時が1か月進めば、観測時刻を2時間早めることでほぼ同じになります。  ◎恒星の位置 : 12月15日25時 ≒ 1月15日23時 ≒ 2月15日21時





オリオン座の馬頭星雲からM42
大きい写真はコチラ 

大きい写真はコチラ 
撮影機材:ビクセン FL55SS鏡筒フラットナーHDキットSXP赤道儀
使用カメラ:Astro6D
露出時間:300秒×16コマ
撮影条件:RAWモード、ISO3200、M-genにて追尾撮影
撮影機材:ビクセン FL55SS鏡筒フラットナーHDキットSWAT-350 V-spec
使用カメラ:Astro6D
露出時間:180秒露光×16枚
撮影条件:SWAT-350 V-specにてノータッチ追尾
ふたご座流星群 2018「熊野灘 と ふたご座の流れ星」
大きい写真はコチラ 
NGC2264、コーン星雲とFox Fur Nebula
大きい写真はコチラ 

撮影レンズ:シグマ 14mm F1.8 DG HSM レンズ、ソフトフォーカスフィルター使用
使用カメラ:キヤノン EOS5D MarkII
撮影条件:RAWモード、ISO5000、F2.0、60秒露光、流れ星が写った24枚を比較明合成 ポータブル赤道儀 SWAT-350にて追尾撮影
画像処理ソフト:Photoshop CC 2017
撮影場所: 三重県熊野市
撮影機材:ミューロン250CRS(レデューサー使用)、ビクセンAXD赤道儀
使用カメラ:Moravian Instruments G3-16200 冷却CCDカメラ Astronomik Type2C LRGBフィルター
露出時間:L=15分×8フレーム、RGB=各10分×2フレーム (総露出時間:3時間)
画像処理ソフト:ステライメージ8、PhotoshopCC 2015
撮影場所:岡山県備前市八塔寺、2018年撮影

IC2177 かもめ星雲
大きい写真はコチラ 
撮影光学系:ビクセン VSD100 F3.8
撮影カメラ:ニコンD810A 天体撮影専用デジタル一眼レフカメラ
赤道儀:ビクセンSXP赤道儀ステラショット1.5にて導入・オートガイド追尾
カメラの設定:ホワイトバランスマニュアル、ISO1250、RAWモード
露出時間:300秒×10コマ
画像処理ソフト: ステライメージ7、PhotoshopCC 2015
撮影場所: 岡山県備前市吉永町八塔寺、2016年撮影

ハインドの変光星雲付近、NGC1555、Sh2-239
大きい写真はコチラ 
撮影光学系:ビクセン VSD100 F3.8
撮影カメラ:キヤノン EOS6D(フィルター換装・冷却改造)
赤道儀:ビクセン SXP赤道儀にて追尾
カメラの設定:ホワイトバランス 手動設定、ISO1600、RAWモード
 露出時間:300秒×32コマ
画像処理ソフト:ステライメージ8、PhotoshopCC 2015
撮影場所:岡山県備前市吉永町 八塔寺、2018年撮影

難易度: 易 ★☆☆☆☆ 難易度: やや易 ★★☆☆☆
難易度: 並 ★★★☆☆ 難易度: やや難 ★★★★☆ 難易度: 難 ★★★★★

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