極軸合わせの方法

極軸合わせの方法

赤道儀を使う際は、極軸合わせという作業が必要です。極軸合わせの方法としては、極軸望遠鏡を使って合わせる方法がよく知られていますが、その他にも昔から様々な方法が考え出されています。その中から広く知られたメジャーな方法を幾つかご紹介します。



極軸合わせとは

星は、毎日、東から昇って西に沈みます。これは地球が自転しているために起こる現象で、日周運動と呼ばれています。日周運動の中心は北極星の方向にあり、星はあたかも北極星を中心に回転しているように見えます。



赤道儀には、日周運動と同じように動く回転軸(赤経軸)があり、この回転軸の中心と日周運動の軸を平行に合わせることによって、星を正確に追いかけることができます。この2つの軸を平行に合わせることを「極軸合わせ」と呼んでいます。

なお、北極星は、ほぼ真北に見えますが、正確には天の北極から僅かにずれています。天体撮影時など、極軸を正確に合わせたいときは、そのズレも考慮して合わせる必要があります。



極軸望遠鏡を使う方法

極軸望遠鏡は、赤道儀に内蔵された小さな望遠鏡です。一般的に赤道儀の赤経の回転軸を貫通するように設置されており、この望遠鏡を覗いて北極星を視野に入れ、極軸を合わせます。

極軸望遠鏡には、北極星の導入位置を示すスケールパターンが示されています。上述の通り、北極星は天の北極から僅かに外れていますので、視野の中心ではなく、スケールパターンが示す場所に北極星を導入します。

上は、ビクセンSX赤道儀用の極軸望遠鏡PF-LIIのスケールパターンです。北極星とその近隣の星2つを使って合わせるタイプです。他にも様々なスケールパターンの極軸望遠鏡があります。
なお、複数の星を使って合わせるPF-LIIの場合、架台の水平出しは不要ですが、北極星だけを使うタイプの場合は、架台を水平に設置してから行う必要があります。


ポールマスターを使う方法


ポールマスターは、CMOSセンサーが内蔵された、とても小さな電子望遠鏡で、光学望遠鏡の極軸望遠鏡の代わりとして使うことができます。

使い方は、まず、アダプターを使用して、ポールマスターを赤道儀に固定します。その後、ポールマスターとパソコンをUSBケーブルで繋ぎ、ポールマスター専用のアプリケーションを起動させます。アプリケーション画面に表示される指示に従って、赤道儀を動かしていくと、北極星を導入するべき位置(円)が表示されます。赤道儀の方位と高度ネジを動かして、その円の中に北極星を入れれば、極軸合わせが完了です。

ポールマスターにはパソコンが必要になりますが、極軸望遠鏡が内蔵されていない赤道儀でも簡単かつ正確に極軸を合わせられるので、天体写真ファンに人気があります。


3点アライメント方法

極軸望遠鏡やポールマスターを使用する方法では、北極星が見えない場合は、極軸を合わせることができません。そのような場合には、3点アライメント方法による極軸合わせが便利です。以下、その手順をご紹介しましょう。
まず、方位磁針などを使って、赤道儀の極軸をおおよそ北の方向に向けます。架台のモードを「極軸の合っていない赤道儀」に設定し、3点アライメントを行って、天体を正確に導入できるようにします。

次に、望遠鏡の視野中央に任意の明るい星を基準星として自動導入し、その星でアライメントを行い、自動導入した時にその星が視野の中央に来るようにします(天頂付近の星は基準星として使えないため、選ばないようにしてください)。

架台のモードを「極軸の合った赤道儀」に変更し、先ほどの星を自動導入すると、視野中央にあった基準星が動きますので、赤道儀架台の方位と高度の調整ネジだけを使って、再び視野の中心に導入しなおします。これで、極軸はおおよそ合います。

3点アライメント方法は、1998年発売のビクセンのスカイセンサー2000PCのマニュアルに手順が紹介され、広く知られるようになりました。現在のビクセンの赤道儀に付属しているSTARBOOK TENやワイヤレスユニットは、赤道儀の動作モードを切り替えた時点で星の位置が補正されるため、3点アライメント方法は使えないようですが、知識として知っておくとよいと思います。


プレートソルビングを使った方法

プレートソルビングとは、撮影した星空の画像が、天球上のどの位置を写したものであるかを割り出す機能です。プレートソルバーと呼ばれるプレートソルビング用のソフトウェアが画像と星図を解析し、撮影した天体の位置(赤経と赤緯)を探し当てて表示します。

プレートソルビング機能は、アストロアーツ社のステラショットや、ZWO社のASIAIR、N.I.N.A、APTをはじめ、多くの天体撮影用アプリケーションに実装されており、天体撮影の標準的な機能となっています。

先ほどご紹介した3点アライメント方法を、肉眼の代わりにカメラで撮影した画像を使って行うイメージを想像していただければと思います。

天体写真ファンによく利用されているNINAでは、Three Point Polar Alignmentを実行すると、基準星を撮影後、プレートソルビングにより星の位置が解析され、3点アライメントにより極軸のズレ量がパソコン画面上に表示されます(上画像参照)。ユーザーは、そのズレ量を参考に赤道儀の方位と高度調整ネジを動かして、極軸を合わせます。



星のズレを見て合わせる方法(ドリフト法)

星のズレを見ながら合わせる方法もあります。極軸を全く合わせていない状態からでも可能ですが、ズレ量が大きいと時間がかかるので、上記でご紹介した3点アライメント方法を行った後に実施すると、簡単に極軸を追い込むことができ、便利です。

まず、南の空の南中少し前の星を視野の中心に入れ、赤道儀の追尾を一旦停止します。その後、再び赤経モーターだけを動かし、先ほどの星を視野の中央に戻します。そのとき、星が北方向にずれていれば、赤道儀の極軸が西にずれているということなので、東に微調整します。


同様に、赤道儀の高度も合わせます。北東の空の星を視野の中心に入れた後、赤道儀の追尾を一旦止め、その後、再び赤経モーターを動かして星の位置を確認します。星が北にずれていれば、赤道儀の高度が高すぎるということなので、低く微調整します。

3点アライメント方法やプレートソルビングを使った方法を実施した後に、このように星のズレを確認して、極軸を微調整すれば、極軸を更に正確に合わせることができます。


最後に

極軸合わせの代表的な方法をご紹介しました。最も手軽で簡単なのは、極軸望遠鏡を使った方法ですが、最近は極軸望遠鏡が付属していない赤道儀も増えています。そのような赤道儀を使う時や、北極星が見えない場合は、是非他の極軸合わせの方法を試してみて下さい。



レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。

ASIAIRアプリで天体撮影

ASIAIRアプリで天体撮影

電視観望に続き、ASIAIRと冷却CMOSカメラを使って天体撮影を楽しんでみましょう。
カメラの設定やピント合わせ方法は電視観望と同じなので、ここでは主にオートガイ ダーの操作方法を中心に説明します。


天体撮影にはオートガイドが必須

天体撮影と電視観望の大きな違いは、露光時間の長さです。天体撮影の場合はクオリ ティを重視するため、一枚当たりの露光時間が長くなります。露光時間が長くなると 星が流れて線状に写ってしまうため、オートガイドが必須となります。




オートガイドについて

星を追尾する赤道儀を使っても、焦点距離の長い望遠鏡で長時間露出すると、星がわ ずかに流れて写ります。そのズレを補正することをガイド補正と言い、中でもCMOSカ メラ(オートガイダー)で補正することをオートガイドと呼んでいます。”オート”ガ イドと呼ぶのは、昔は手動でガイド補正をしていたためです。現在は、ほぼオートガ イドで天体撮影が行われています。



具体的には、ガイド鏡に取り付けたオートガイダーが捉えた星の画像をアプリが解析し、補正信号を赤道儀に送ってガイド補正を行います。文字で書くと難しく感じられ ますが、ASIAIRを使えば、ボタンを順に押すだけでオートガイド撮影が可能です。


オートガイダーとは

オートガイドに使用するCMOSカメラをオートガイダーと言います。ZWO社のカメラな ら、どのタイプでもオートガイダーとしてASIAIRで使用することができますが、一般 的にセンサーが小さく安価な小型モデルが使用されています。




上は、私がオートガイダーとして使用しているZWO ASI120MM miniです。新たに購入 するなら、「mini」という符号がついたモデルが使いやすいでしょう。

ガイド鏡について

ガイド鏡は、オートガイダーを取り付けて赤道儀の追尾状況を確認するための小さな 望遠鏡です。小型の天体望遠鏡でも代用できますが、オートガイド専用のガイド鏡の 方が軽量で接眼部のガタも少なく、お勧めです。焦点距離200 ミリ前後のものが使い やすいでしょう。ZWO社からも純正のガイド鏡が発売されています。




ASIAIR で機器を接続

電視観望の時と同じように各機器を接続し、ASIAIRアプリを開きましょう。オートガ イダーを接続するのも忘れないようにしてください。 電子観望の画面構成の章で説明した通り、右側に動作モードが表示されますが、初期 状態では「Preview」が選択されています。電視観望の時と同じく、天体撮影でもこの Preview モードがASIAIR の基本です。”操作に迷ったら一旦Preview に戻る”と覚え ておきましょう。




ASIAIR のオートガイダー設定画面

オートガイダーの設定画面を開きましょう。オートガイダーのカメラ選択欄の下に、 Gain設定項目があります。Gainを増やすとカメラの感度が増すので、ガイド星があま り写らないと感じたら、ゲインを上げて下さい。初めは、GainをMに設定しましょう。 次に、ガイド鏡の焦点距離(Guide Scope Focal Length)を入力しましょう。ガイド 鏡の焦点距離はキャリブレーションの動きに影響するので、正確に入力しましょう。



キャリブレーション欄の各項目には既に値が表示されていると思います。これらはデ フォルトで使用します。また、Auto Restore Calibrationをオンにすると、前回のキ ャリブレーションデーターが読み込まれます。毎回、ガイド鏡やオートガイダーを外 す場合は、オフで撮影しましょう。 Guide Camera Bin2というのは、オートガイダーに使用しているCMOSカメラをビニン グするかどうかということです。ビニングすると感度は上がりますが、解像度は下が ります。オフアキシスガイダーを使用する場合などを除き、ガイド鏡を用いる場合、 通常はオフで使用します。


ディザリングとは

オートガイダーの設定画面の一番下に、ディザリングのオンオフを切り替える項目が あります。ディザリングとは、撮影ごとに数ピクセル画角をずらして、連続撮影する 手法です。画像処理で撮影画像を重ね合わせたときにノイズが目立たなくなるので、 特に淡い星雲を狙う時に有効です。 ディザリングをオンにすると、何枚ごとにどれくらい画角をずらすかを設定する画面 が開きます。この辺りは使用している望遠鏡や好みによりますが、最初は2 枚ごとに 4ピクセルずらす設定で撮影してみましょう。


オートガイド撮影をはじめよう

電視観望の時と同じようにPreview 画面で大まかにピントを合わせた後、Focus モー ドに変えて撮影望遠鏡のピントをしっかりと合わせます。次に、撮影対象を導入しま しょう。導入後、プレートソルビングが始まり、導入補正が終了すれば、オートガイ ド撮影の開始です。 ASIAIRの左側のガイドグラフの画面をタップすると、オートガイド操作画面が開きま す。右側に並んでいるアイコンが操作アイコンで、左側の広い部分にガイド星が表示 されます。



右側一番下のアイコンをタップして、オートガイダーの露出時間を選びましょう。通常1~3秒程度が適当です。露出時間を設定後、上から2番目の更新ボタンをタップすると、オートガイダーの露光が始まり、左側の画面にガイド星が表示されます。もしガイド星が表示されない場合は、露出時間を増やしたり、オートガイダーの設定画面に戻って、カメラのゲインを上げてみましょう。
露出時間の設定の下にあるアイコンが、ガイド開始のボタンです。このボタンを押すと、オートガイダーから赤道儀へと信号が送られ、オートガイドの準備が行われます。キャリブレーション中はしばらく時間がかかるので、何も操作せずに待ちましょう。


キャリブレーションについて

キャリブレーションは、「オートガイダーからの信号に対して、赤道儀がどの方向にどの程度反応するか」をASIAIRに学習させる作業です。ASIAIRの場合、一度キャリブレーションすれば、次の対象からはキャリブレーションすることなく、すぐにオートガイド撮影に移ることができます。


なお、望遠鏡が天の北極に近づくにつれて、ガイド星の動きは小さくなるため、キャリブレーションの精度は悪くなります。そのため、天の北極付近の星でキャリブレーションを行おうとすると、ASIAIRに警告画面が出る場合があります。その時は、一度、天の赤道付近(赤緯0度付近)に望遠鏡を向けてキャリブレーションを行い、それから目的天体を再導入して撮影しましょう。


AutoRunでシークエンス撮影

オートガイドが始まったら、いよいよ撮影です。撮影は、AutoRunを使用して行います。


AutoRun画面を開くと、左側に設定欄、右側に撮影シークエンスが表示されます。右上のプラスボタンを押すと、新しい画面が表示され、撮影画像の種類や露光時間、撮影枚数を設定することができます。適当な数値が分からない場合は、Lightを選び、露出時間は300秒、枚数は5~10枚で撮影してみてはいかがでしょう。
左欄では、撮影間隔や撮影後にASIAIRの電源を切るなどが設定できます。初めはデフォルトで撮影を行ってみて、慣れてきたら自分好みの設定に変えていくとよいでしょう。



シークエンスが組めたら、AutoRun の画面を閉じ、ASIAIR の右側の丸い撮影開始ボタ ンを押すと、設定した撮影が始まります。1枚目の撮影が終わったら、画面に画像が表 示されるので、星が流れて写っていないか、露出時間は適正かなどをチェックします。 画面の左上にオートガイダーのガイドグラフが表示されるので、星が流れて写るとき は、ガイド状況を確認しましょう。


ASIAIR での天体撮影について

ASIAIRを使用すると、タブレットやスマホ画面からシークエンス撮影を組むことがで き、誰でも簡単に本格的な天体撮影を楽しむことができます。 特にオートガイドの操作方法はわかりやすく、ガイド精度も高いため、安心してガイ ドを任せることができます。ASIAIRの登場で天体撮影が手軽になったと言えるでしょ う。 次回は、ASIAIRでデジタル一眼レフカメラやミラーレス一眼を操作する方法をご紹介 したいと思います。





レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。



2023 秋の天体観測ガイド

秋の天体観測ガイド


秋の夜長は天体観測にうってつけのシーズンです。 前半には秋雨前線の停滞や台風の影響などで秋の長雨に見舞われることも少なくありませんが、後半木々が紅葉で赤く染まり始めるころには、抜けるような秋晴れの空が姿を現すようになります。この頃には夜の時間がぐっと長くなるうえ、空気が乾燥し透明度がグングン向上していきますので天体観測には格好のシーズンとなります!

秋の夜空を見上げれば、西には夏の名残の星座(はくちょう座)が輝き、東からは冬の星座(おうし座)が顔を見せ始めています。空高くにはカシオペア座やアンドロメダ座があり秋を印象づけています。

夏の間に月や、土星・木星といった惑星など、太陽系の天体を経験された入門者の方は、ぜひ次のステップとして星雲や星団の観望・撮影に挑戦してみてはいかがでしょうか?この時期に観望が楽しめる星雲・星団の例としては、M31アンドロメダ銀河、H-χ二重星団、M45プレアデス星団などがあります。大口径の双眼鏡を用たり、フィルタワークを駆使すれば網状星雲も眼視挑戦が可能な対象です。 撮影ならそれらに加え、ケフェウス座のIC1396、ペルセウス座IC1805、ぎょしゃ座のIC410/IC405など、近赤外域のHα線を発する赤い星雲が好対象となります。

お好みの天体を、用途にあった機材を選択してしてお楽しみください!




南の方角を観測すれば星々は東から昇り西へと沈む、太陽と同じような動きで移動します。惑星観測から始めた初心者の方にはこの星の動きになじみがあると思いますが、くるっと180度回転して北の方角を向いてみれば、星々は北極星を中心に反時計回りをする動きになります。上図ではM31アンドロメダ銀河の位置がほぼ天頂です。

ヒント→ 上記星図は11月15日午後8時ものです。月と惑星以外のすべての星の位置は、日時が1か月進めば、観測時刻を2時間早めることでほぼ同じになります。  ◎恒星の位置 : 10月15日午後10時 ≒ 11月15日午後8時 ≒ 12月15日午後6時

星図:ステラナビゲーターで作成


眼視・撮影向き 撮影向き
・網状星雲
・H-χ二重星雲
・M45プレアデス星団

・M31アンドロメダ銀河
・北アメリカ・ペリカン星雲
・ガーネットスターとIC1396
・ハート&ソウルIC1805・IC1848
・勾玉星雲IC405・IC410


ペルセウス座
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おうし座の北~ぎょしゃ座
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ペルセウス座の全景です。
右上の赤い散光星雲はIC1805ハート星雲/IC1848ソウル星雲で、その少し右下には二重星団があります。左下の赤い散光星雲はNGC1499カリフォルニア星雲です。
105mm+ペンタ67銀塩での作品ですがAPS-C機+50mmレンズでも、ほぼ同等の画角が得られます。
おうし座の北からぎょしゃ座にかけての領域です。
左の赤い星団がIC405勾玉星雲、右がカリフォルニア星雲です。右下の青い散開星団はM45プレアデス星団です。
105mm+ペンタ67銀塩での作品ですがAPS-C機+50mmレンズでも、ほぼ同等の画角が得られます。
網状
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はくちょう座の超新星残骸です。特に明るい写真左側NGC6992は眼視挑戦が可能な星雲として知られます。
ドブソニアン望遠鏡や、望遠鏡2本を使って作成する対空双眼望遠鏡に、OIIIなどのネビュラフィルターを組わせて挑みます。
写真にとれば赤と青緑の対比が美しく、超新星爆発による微細なフィラメント構造が観測できます。

撮影光学系:タカハシ ε-180ED
撮影カメラ:Astro6D(キヤノンEOS6D フィルター換装・冷却改造モデル)
赤道儀:ビクセンAXD赤道儀にて追尾、ステラショット、M-GENにてオートガイド追尾
カメラの設定:ホワイトバランス 手動設定、ISO1600、
RAWモード、IDAS UIBAR-Ⅲフィルター
露出時間:180秒×12コマ
画像処理ソフト:ステライメージ8、PhotoshopCC 2015
撮影場所:岡山県備前市吉永町 八塔寺、2018年撮影
M31
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網状
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私たちが住むこの天の川銀河の、お隣さんの銀河です。7倍程度の双眼鏡でも中心の明るい部分が眼視できます。 写真にとると見事な腕の広がりが撮影でき、その広がりの大きさは満月5つ分ほどもあります。 アンドロメダ銀河は現在、私たちの天の川銀河へ向かって進んでおり、約40億年後には衝突し融合するそうです。

撮影光学系:タカハシTOA-130、レデューサーレンズ使用
撮影カメラ:Astro6D(キヤノンEOS6D フィルター換装・冷却改造モデル)
赤道儀:ビクセンAXD赤道儀、ステラショットにてオートガイド追尾
カメラの設定:ホワイトバランスマニュアル、ISO1600、IDAS UIBAR-Ⅲ
露出時間:420秒×8コマ
画像処理ソフト: ステライメージ8、PhotoshopCC 2015
撮影場所: 岡山県備前市吉永町、2017年撮影
ガーネットスターはケフェウス座の変光星で、その正体は直径が太陽の約1500倍もある赤色超巨星です。 あまりに赤いため宝石の名になぞらえて「ガーネットスター」と名付けられました。 その南側に広がる赤い星雲がIC1396です。 恒星と星雲の色の対比がとても美しく、長時間観測できる北天に位置するため、撮影の好対象になります。

撮影光学系:タカハシ ε-180ED
撮影カメラ:Astro6D(キヤノンEOS6D フィルター換装・冷却改造モデル)
赤道儀:ビクセン AXD赤道儀にて追尾
カメラの設定:ホワイトバランス 手動設定、ISO1600、RAWモード
露出時間:240秒×12コマ
画像処理ソフト:ステライメージ8、PhotoshopCC 2015
撮影場所:岡山県備前市吉永町 八塔寺、2018年撮影
網状
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写真右側の星雲がIC1805で、心臓のような形をしていますので「ハート星雲」という愛称があります。
左側のIC1848は胎児のような形をしていることから日本では「胎児星雲」とも呼ばれます。
母体に宿った魂ということなのか、Heart & Soul(英語で、心と魂=熱心に打ち込むの意)の語呂がいいのか、海外では「ハート&ソウル星雲」と呼ばれることが多いです。

撮影光学系:コーワ PROMINAR 500mm F5.6 FL (TX07使用, 350mm F4)
撮影カメラ:Astro6D(キヤノンEOS6D フィルター換装・冷却改造モデル)
赤道儀:ビクセン SXP赤道儀 にて追尾
カメラの設定:ホワイトバランス 手動設定、ISO1600、RAWモード
露出時間:240秒×13コマ
画像処理ソフト:ステライメージ8、PhotoshopCC 2015
撮影場所:岡山県備前市吉永町 八塔寺、2018年撮影
ぎょしゃ座の星雲星団
▲マウスを載せると詳細表示
大きい写真はコチラ 
ぎょしゃ座は日本では11月の2時ごろ、12月の0時ごろに天頂付近を通過します。観測条件が良いため、写真写りの良い星域です。
コーワプロミナー350mmF4とフルサイズカメラを組み合わせれば、左に2つの淡い散開星団M36/M38、右に散光星雲IC405/IC410を配したご覧のような構図が完成します。
この付近は冬の天の川にあたりますので星がびっしりと集まり、その星々の色は様々で表情豊かなことも特徴です。

撮影光学系:コーワ PROMINAR 500mm F5.6 FL (TX07使用, 350mm F4)
撮影カメラ:Astro6D(キヤノンEOS6D フィルター換装・冷却改造モデル)
赤道儀:ビクセン SXP赤道儀 にて追尾
カメラの設定:ホワイトバランス 手動設定、ISO1600、RAWモード
露出時間:240秒×13コマ
画像処理ソフト:ステライメージ8、PhotoshopCC 2015
撮影場所:岡山県備前市吉永町 八塔寺、2018年撮影


難易度: 易 ★☆☆☆☆ 難易度: やや易 ★★☆☆☆
難易度: 並 ★★★☆☆ 難易度: やや難 ★★★★☆ 難易度: 難 ★★★★★


Lacerta MGEN-3のインプレッション

Lacerta MGEN-3のインプレッション

Lacerta MGEN-3 オートガイダーは、一世を風靡したM-GEN オートガイダーの後継機種 です。MGEN-3 は、前機種のスタンドアローン型の機能を継承しつつ、より進化し、使い やすくなりました。今回は、MGEN-3 の概要や前機種との違いをご紹介しながら、オート ガイダー撮影時の使用感をまとめました。

MGEN-3 オートガイダーの外観と概要

MGEN-3 オートガイダーは、ハンドコントローラーとガイドカメラで構成されています。 ハンドコントローラーとガイドカメラの他、各種ケーブル、望遠鏡と接続するためのアダプ ター類、そして詳しい日本語マニュアルが付属しています。

ハンドコントローラーの底部には、上写真のように、各種ケーブルを接続するコネクタが設 けられています。一番左は、デジタルカメラ接続用のジャックです。その右側にAUX端子 とSDカードスロット、中央にガイドカメラUSB用コネクタ、その右にオートガイドケー ブルを接続するコネクタと電源供給用USBコネクタが写っています。 ガイド状況を監視する撮像素子(CMOS センサー)は、直方体をしたガイドカメラ内に固 定されています。撮像素子には、ピクセルサイズが3.75×3.75(μm)のモノクロCMOS セ ンサー(CMOS AR0130CS)が用いられています。ガイドカメラ用として標準的なセンサー ですが、感度は十分で、実際の撮影でもガイド星探しに困ることはありませんでした。

ガイドカメラの内側には、1.25インチのフィルターネジ(M28x0.6)が切られています。カ メラには1.25 インチのノーズリープやT2 マウント用アダプターが付属しており、これら を使えば望遠鏡の接眼部に取り付けることも可能です。

前機種M-GEN との比較

MGEN-3を前機種のM-GENと比較したときにまず目に留まるのは、ハンドコントローラ ーの画面が大きく見やすくなったことです。画面の解像度も高く、カラー化されたので、前 機種に比べて文字やアイコンが大変見やすく、操作感が大幅に向上しました。

画面の向上に加えて、便利な機能も追加されています。中でも特筆すべきは、ワンプッシュ オートガイダー機能が搭載されたことでしょう。その名の通り、コントローラー上の「Start Guiding」ボタンを1度押すだけで、ガイド星の探索からキャリブレーション、そしてオー トガイドまで自動で行ってくれます。M-GENでは、ガイド星探し→ガイド星選択→キャリ ブレーション→ガイド開始と、それぞれ作業が必要でしたが、それらが文字通り、ワンプッ シュで可能になりました。非常に便利で、一度使うと手離せない機能です。

ガイド動作自体も、複数の星をガイド星に選ぶ、マルチスターガイドに対応し、精度を向上 させるアルゴリズムが追加されました。 その他、前機種ではDC12V ジャックだった電源端子がDC5V のモバイルバッテリーに対 応するなど、使い勝手も大幅に向上しており、MGEN3は、M-GENの大進化版と言えそう です。

MGEN-3 のガイド鏡のセットアップ

MGEN-3を実際に使用する前に、MGEN-3のカメラをガイド鏡に取り付け、ピントを合わ せておきましょう。遠征する場合も、自宅でガイド鏡のピントをしっかりと合わせておけば、 現地ですぐに撮影に移ることができ、ストレスがありません。 オートガイド用のガイド鏡には、昔は小型の天体望遠鏡が使われていましたが、最近は焦点 距離の短いレンズがコンパクトかつ軽量でよく使われます。 MGEN-

MGEN-3 のガイド鏡によく使用されているのは、小型ビジョンカメラ用のレンズです。コ ーワの75mmと100mmレンズがオートガイド用として実績があり、MGEN-3とこれらの レンズがセットとなった商品も販売されています。MGEN-3 カメラとレンズに合わせた固 定パーツもセットになっているので、これからガイド鏡を探すならこのセットがお勧めで す。 ガイド鏡の準備が整ったら、MGEN-3 を接続してピントを合わせておきましょう。ピント 合わせは、MGEN-3 のライブビュー画面で行うと合わせやすいです。取扱説明書を見なが ら、ライブビュー画面を開き、星が小さくなるようにピントリングを動かします。

星でピントを合わせにくい環境なら、遠くの夜景でピントを合わせることもできます。ピン トが合ったら、ピントリングをテープなどで固定し、誤ってピントをずらしてしまわないよ うにしましょう。

MGEN-3 とデジタルカメラの接続

MGEN-3 とカメラをケーブルで繋ぐと、カメラのシャッターをMGEN-3 からコントロー ルできるようになります。

MGEN-3 用のシャッターケーブルとしては、K-Astec 製のM-GEN 用シャッターケーブル2(2.5mmジャック用)が便利です。このケーブルには、2.5mmジャックケーブルの他に、拡張ポートが設けられているので、この端子に市販のシャッターケーブル(ビクセンシャッ ターケーブル各社用、ビクセンシャッターケーブルSony用)を繋ぐと、他社製カメラを制 御することも可能です。また、2台同時にシャッターを切ることもできます。

MGEN-3 にはディザリング撮影機能が内蔵されていますが、この機能を使用するには、カ メラのシャッター制御が必要です。是非シャッターケーブルも準備して、ディザリング撮影 に挑戦してみましょう。

Tips: ディザリングとは:1枚撮影が終わる度にオートガイドが一旦停止し、数ピクセル構 図を移動させた上で、再びオートガイドを開始し、シャッターを切る撮影アルゴリズム。画 像処理時のノイズを平均化する効果がある。

MGEN-3 とAP 赤道儀でオートガイド撮影

MGEN-3オートガイダーを郊外に持ち出し、実際にオートガイド撮影に使用してみました。 今回使用した機材は、小型で高性能な天体望遠鏡ビクセンFL55SS とビクセンAP 赤道儀 です。MGEN-3は、コーワ100ミリレンズや固定金具等がセットになった、MGEN-100HSA を使用しました。

撮影テストでは、まずワンプッシュオートガイドの動作を確認しました。マニュアルに記載 された通り、ボタンを押すだけで、ガイド星の選択からキャリブレーション後のガイド開始 まで、スムーズに行うことができました。
撮影では、デジカメの感度をISO1600、露出時間を480 秒に設定して撮影しました。ガイ ド中、MGEN-3 と赤道儀のコントローラーをチェックしていましたが、ガイド補正信号は 赤道儀に的確に伝達され、撮影した星に流れはありませんでした。

上は、MGEN-3を使って撮影した、いて座のM8とM20星雲です。480秒露光の画像を6 枚重ね合わせた後、コントラストを強調した画像ですが、夏の天の川の中の星雲が色鮮やか に写し出されています。
M8 とM20 を撮影後、ワンプッシュオートガイドを終了し、今度は、ガイド星選択からキ ャリブレーション、ガイド開始までマニュアルで設定して撮影を行いました。

マルチスターガイドになったため、選択されるガイド星の数が一気に増えたことに驚きま したが、追尾精度は良好で、こちらも撮影した星に流れは発生しませんでした。

ポータブル赤道儀とMGEN-3

MGEN-3 はパソコンやタブレット端末が不要のスタンドアローン型なので、ポータブル赤 道儀とも相性の良いオートガイダーです。実際に、ユニテック社のSWAT-350 に載せて、 1軸ガイド撮影を試してみました。

まず、SWAT用のハンドコントローラーのガイド端子に、ガイドケーブルを接続します。次 に、MGEN-3を起動してメニュー画面を開き、赤緯軸をオフにしましょう
。 その後は、通常操作と同じように、ガイド星選択からキャリブレーション、ガイド開始でオ ートガイド撮影を楽しむことができます。

追尾精度が高いSWAT-350 でも、長時間ノータッチで連続撮影すると星が少し流れて写る コマが発生しますが、MGEN-3 で1 軸オートガイドすると撮影画像は全て点像で写りまし た。一般的なポータブル赤道儀なら、よりMGEN-3の効果が感じられると思います。

MGEN-3 の印象

MGEN-3 オートガイダーを使用した印象や上記で触れなかった内容を、以下に箇条書きで 列挙します。
前機種と比べて画面が非常に見やすくなり、アイコン化のおかげで操作もしやすくなった。 また、モバイルバッテリーに対応したので、DC12V電源を用意する必要がなくなった点は 嬉しい。
ワンプッシュオートガイドは大変便利で信頼性も高い。久しぶりの撮影でオートガイドの 操作方法を忘れていたが、この機能のおかげでマニュアルを見ずに撮影を開始することが できた。一度使うと手離せない便利な機能だ。
マルチスターガイドになって更に精度が向上し、オートガイドの安定感も増したように感 じられる。ただ、場合によってはガイド星が多すぎると感じる場合もある。ガイド星を個別 にキャンセルすることは可能だが、ガイド星の最大数を設定できればさらに便利だと感じ た。
コーワのガイド鏡には、K-Astecのフードヒーターを取り付けた。専用設計だけに一体感が あり、カメラ部分とフードの前後2点留めができるため、安心感が増した。結露防止性能も 十分で、レンズの結露を気にせずに撮影を続けることができた。
ビクセンAP-WM赤道儀MGEN-3のマッチングは良好で、大容量のモバイルバッテリー 1 個で両方を動作させてオートガイド撮影することができた。ビクセンFL55SS も小口径 ながら星像はシャープで、手軽ながら天体撮影を本格的に楽しめる組み合わせだと感じた。 MGEN-3SWAT-350 の組合わせで撮影してみて、ポータブル赤道儀と組み合わせての1 軸ガイドもアリだと感じた。オートガイド端子が装備されているビクセン星空雲台ポラリ エUなどと組み合わせれば、星雲星団の撮影も楽しめそうだ。

まとめ

今回のテスト撮影を通じて、Lacerta MGEN-3 オートガイダーは、前機種のスタンドアロ ーン機能を継承しながら、更に使い勝手や精度が向上したオートガイダーであることが確 認できました。 感心したのは、ワンプッシュオートガイド機能の便利さです。数か月振りに撮影するときな ど、オートガイダーの操作方法を忘れてしまった場合でも、ワンプッシュでガイド開始まで 行ってくれるので、本当に助かります。貴重な撮影時間を無駄にすることもありません。 M-GENが一世を風靡していた数年前と比べると、ワイヤレスで動く機器なども登場し、オ ートガイド撮影の環境も様変わりしました。それでもMGEN-3は、スタンドアローンと低 電力という他にはない魅力を持つオートガイダーです。ワンプッシュオートガイド機能は とても快適です。是非、MGEN-3での天体撮影をお楽しみください。

レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

ASIAIRとstellaimageを使った天体写真の画像処理 基本編

ASIAIRとstellaimageを使った天体写真の画像処理 基本編

撮影した画像を画像処理して綺麗に仕上げてみましょう。
今回は、天体写真の画像処理の基本、ダーク・フラット補正やスタック処理について説明します。

ダークノイズについて

デジカメや天体用カメラに採用されているCMOSセンサーは、レンズで受け止めた光を電気信号に変換し、画像として記録します。その際、カメラの電子回路に起因する微弱な電流(暗電流)もセンサーに流れ続けていて、これが時間とともに蓄積し、ノイズとなって画像に表れます。これを一般的にダークノイズと呼んでいます。

センサー温度が低くなれば暗電流が減るので、ダークノイズの量は減少します。ダークノイズは、露光時間やセンサー温度、カメラの感度などの条件が同じであれば、ほぼ同じ強さで画像に表れる特徴があるので、天体撮影後にダークノイズだけをまとめて撮影し、画像処理で取り除く(減算)ことができます。

ダークノイズを撮影するには、センサー温度や感度、露光時間を撮影画像と同じに設定し、真っ暗な中で撮影を行います。冷却機構のないカメラの場合は、センサー温度を制御できないため、天体を撮影した夜、天文薄明が始まり温度があまり変わらないうちに撮影するのが一般的です。ダークノイズが写った画像のことを、ダークフレームと呼んでいます。

Tip:天体撮影用として、冷却機構のついた冷却CMOSカメラの人気が高いのは、センサー温度を低くすればダークノイズが減るからです。


バイアスについて

露光時間0秒で撮影した画像のことをバイアスフレームやバイアスと呼んでいます。バイアスには、撮像素子が受けた光の情報は含まれておらず、カメラの電子回路に起因するノイズだけが含まれています。

バイアスの撮影方法は、カメラに蓋をして、センサー温度やカメラの感度を同じにし、露光時間は0秒もしくは、カメラの最短露光時間で撮影します。ASIカメラの場合は、ASIImgのオートランの中に、バイアス撮影モードがあるので、それを利用して撮影しましょう。

画像処理時、ソフトウェアによっては、バイアスとダークフレーム、両方を指定する必要があるものもありますが、一般的にはダークノイズにバイアスも含まれているので、ダークフレームを減算するだけで、長時間ノイズとバイアスはしっかり減算されます。
Tips:バイアスやダークノイズの呼び方に明確な定義はなく、人によって異なることがあります。例えば、ダークノイズからバイアスを減算したノイズ画像のことを、ダークフレームと呼ぶ人もいます。慣れてくればニュアンスでわかりますので、あまり気にしなくても大丈夫です。


フラットフレームについて

フラットフレームとは、光学系の周辺減光を補正するための撮影画像です。下のように、周辺減光以外、何も写っていない画像です。

フラットフレームの撮影は、カメラに望遠鏡を付けた状態で行います。望遠鏡の筒先には、光を拡散するため、白いトレーシングペーパーや布を被せるのが一般的です。カメラに蓋をして簡単に撮れるダークと異なり、撮影に使った望遠鏡も必要になります。
何も写さないなら撮影は簡単と思われるかもしれませんが、正確なフラットフレームを得るには均質な明るさの光源が必要なため、撮影はなかなか難しく、いろいろ工夫されています。EL調光板を使う方法もありますが、私は天体望遠鏡の筒先にトレーシングペーパーをかぶせて、天文薄明が始まり、星がまばらになった頃合いを見計らって、フラットフレームを撮影しています。

薄明の空を使ったフラットフレームの具体的な撮影方法は以下の通りです。

  1. 望遠鏡を天頂に向け、筒先に光を拡散するシート(トレーシングペーパー)などを付ける。
  2. カメラの感度は撮影時と同じ。露光時間は明るさに合わせて変更する(目安5秒前後)。
  3. 1枚テスト撮影後、画像を確認して、明るすぎたり暗すぎたりしないかを確認する。
    明るすぎるときは露光時間を短く、暗すぎるときは長くする。
  4. ライトフレームと同じだけの枚数を撮影する。


Tips:フラットフレームの明るさは、ライトフレームと同じぐらいが目安です。画像のヒストグラムの山の位置が、ライトフレームと同じ程度になっているようにしましょう。


スタック処理(コンポジット処理)

スタック処理は、撮影した画像を重ね合わせてノイズを平均化するために行います。コンポジットとも呼ばれていますが、最近は英語表記に合わせて「スタック(Stack)」と呼ばれることが多くなりました。

スタック処理は、撮影画像に表れるランダムノイズを低減するために行う処理です。ランダムノイズはその名の通り、ランダムに表れるノイズで、発生パターンに再現性がありません。そのため、ランダムノイズを減らすには、数多くの画像を重ね合わせて画像を均一化します。最初は、撮影が楽でノイズ低減効果を感じやすい4枚を目安にするとよいでしょう。
なお、バイアスフレーム、ダークフレーム、フラットフレームにもランダムノイズは発生するので、これらの補正画像もスタック処理をして画像を均一化しておきましょう。枚数は、撮影画像と同じ枚数が目安です。


ASIDeepStackでダーク・フラット処理

ASIStudioに付属している、ASIDeepStackでダーク・フラット処理を試してみましょう。ASIDeepStackは、最新バージョン1.9での作業をご紹介しています。

ASIDeepStackを起動すると、上画像のように、右上にファイルという項目があり、この下に、バイアス、フラット、ダーク、ライトフレームを選ぶリストボックスが表示されています。タブを切り替えて、該当の撮影画像を選択しましょう。
次に、右上にある設定アイコンを押して、ファイルの保存先を指定してください。

設定が完了したら、スタックボタンを押しましょう。処理の進捗状況を表示するダイアログボックスが表れた後、ダーク・フラット補正後のスタックされた画像が画面に表示されます。

ヒストグラムのボタンや矢印を移動させると、画面に表示されている画像の明るさやコントラストが変わるのを確認できます。

また、画像処理欄にある、明るさやコントラストのスライダーを使って、好みの画像に仕上げましょう。
画像処理が終わったら、ファイルの保存から画像データーを保存します。画像は、fit形式の外、TIFFやJPEG形式でも保存されます。TIFFやJPEGは一般的な画像表示ソフトで開けるので、SNS等に投稿することもできます。


ステライメージ9でダーク・フラット処理

天体写真の画像処理ソフトと言えば、日本ではアストロアーツ社のステライメージ9がよく使用されています。ステライメージ9は、ダーク・フラット処理はもちろん、スタック処理時に細かな設定ができるなど、市販ソフトだけに機能が充実しています。





レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。




カメラのドライバーやソフトウェアをカメラ付属のCD-ROMやZWO社のWebサイトからダウンロードしましょう。


2023夏の観測ガイド

夏の観測ガイド

夏は天の川やその周辺に位置する星雲星団など、たくさんのメジャー天体を観測することができます。
星雲や星団なんて難しくてわからない、という入門者の方はまず「夏の大三角」(=デネブ・ベガ・アルタイル)を見つけることから始めてみましょう。主要な恒星が複数把握できるようになれば、それらの位置関係との対比で星座早見盤などを頼りに星雲や星団にたどり着くことができるようになります!


ステラナビゲーターVer.11で作成


夏の天の川は雄大です。夏の天の川は、地球から私たちの住む銀河系の中心部を眺めた姿です。
吉田隆行氏 「大台ケ原の天の川」
天体写真家の吉田隆行氏は、標高1600メートルの大台ケ原を往復3時間歩いてこの作品を撮影しました。低空にかかった淡い雲海で下界と隔離された原野の風景が天の川の光によって映し出され、雄大な天の川銀河の姿と相まって荘厳な印象を与えています。
星景写真の撮影のためにトレッキングする場合、カメラや三脚といっしょに担いで歩けるポータブル赤道儀を使用します。撮影チャンスを確実のものにするためには、小さくても高精度で信頼性の高いポータブル赤道儀をご選択ください。


SWATシリーズの最高峰!「ユニテック SWAT-350」


そろそろ惑星もシーズンイン!です。



2023年8月15日午前0時 南南東の空 

一番明るい星といえば「1等星」という言葉をイメージされる方も多いと思いますが、夏の大三角のデネブの明るさが約1等級であるのに対し、土星は約0等級、木星に至ってはマイナス2等級以上の明るさがありますので意外とすぐに見つけられます!(等級が1つ上がると約2.5倍明るくなります。)
「惑星を見たことがありますか?」 と質問すると多くの方がありませんとお答えになります。しかし「あの明るい星は何だろう?」と疑問に思われた場合、その星がまさに惑星だったということはとても多いです。
2023年の土星はみずがめ座にあり、ふだんはフォーマルハウトが一人存在感を示す秋の空の領域を、より明るく照らしています。 夜半になると木星も姿を現します。 夏は気流の安定した夜が多く、高倍率に耐えるシーイングに恵まれ惑星観測に適しています。是非挑戦を!


惑星を撮ってみよう 初めての望遠鏡購入ガイド

満天の星空の下、天体観測をお楽しみください!!




電視観望 超初級編

電子観望
超初級編

まず電視観望とは?


電視観望とは、天体望遠鏡に接眼レンズを差し込む代わりに、 CMOS カメラを取り付け、パソコンの画面に天体 の姿を映し出して楽しむ観望方法です。通常、肉眼で天体観測をする場合は人間の眼の能力には限界があるため、 星雲はグレーがかった雲のように見えます。しかし、 CMOS カメラ(カラー)を使用することでライブで鮮やか な星雲星団を観測することができます。




電視観望では、感度の高いCMOS カメラを使用して短い露光時間で撮影した画像を重ね合わせた画像をパソコン 画面上に映します。そのため焦点距離の短くF値の明るい小口径の望遠鏡でも短時間で撮影が可能となります。 また、光害の多い都会でもフィルターを装着すれば、手軽に観測を楽しむことができます。


●ポイント



はじめたいけど何が必要?




鏡筒


赤道儀


CMOSカメラ


PC

鏡筒・CMOS カメラ・赤道儀は様々なメーカーより用途に応じて複数種類販売しているため、組み合わせは無限 大です。ご予算や、何を撮影したいかによって組み合わせは異なりますので、下記をご参考にご検討ください。 電子観望でご使用の場合、当店では ZWO 社製品でのご使用をおすすめしております。



すべてそろえるのはちょっと大変・・・という方にはオールインワンもおすすめです!


ZWO SeeStar S50

2023年新発売の(カメラ・レンズ付きオールインワン経緯台。 専用アプリから Wi Fi と Bluetooth の両方で操作が可能です。 本体重量はわずか3kgで持ち運びも軽々行えます。

69,819円
(税込76,800円)


OCTelescope Revolution Imager R2

必要なものはモニタを含めてすべて付属しており、このセットだけで電子観望を楽 しむ PC 不要の高感度ビデオCCDシステムです。タブレットさえ必要がありません。 簡単に操作が可能で、学校や児童館や科学館などで幅広く利用されています。

39,800円
(税込43,780円)


CMOSカメラの仕様


■センサーサイズCMOS
カメラにはセンサーサイズがあり、望遠鏡の焦点距離と CMOS カメラの組み合わせで画角が決まります。 そのためセンサーのサイズが大きいほど広い写野となります。広い写野であればあるほど、目的の天体を導入 しやすくなるので、初心者の方にはセンサーサイズの大きなカメラがおススメです。



センサーサイズが大きくなればなるほど、高価になりますが写野の広さを生かした広がりのある天体(アン ドロメダ銀河など)の撮影に向いています。逆にセンサーサイズが小さい CMOS カメラの場合はが土星や木 星などの惑星に有利となります。ただ、鏡筒の焦点距離によって画角が変わりますので、まずは望遠鏡の焦 点距離とセンサーサイズによる画角のシミュレーションを行いましょう 。シミュレーションはステラナビ ゲーター(有料)などで行うことができます。下記はステラナビゲーターで①短焦点距離 250mm ② 中焦点距離 400mm 、③長焦点距離 1000mm 以上でシミュレーションした結果です。 ※ NGC7000 は吉田隆行氏撮影写真をお借りしています。


REDCat51 Fl=250 mm RASA Fl=400 mm C8SCT F6.3RD
Fl=1260 mm
北アメリカ
ペリカン
M42
オリオン大星雲
M57
リング星雲
▲各画像クリックで拡大表示


組み合わせによっては写野からあふれてしまう、もしくは小さすぎるなどがありますので、撮影したい天体に合 わせて鏡筒の焦点距離、 CMOS カメラのセンサーサイズを選ぶのがおすすめです。

■カラーor モノクロ
カラーカメラはカラー合成処理が必要ないため、お手軽に撮影を楽しむことができます。反対にモノクロカ メラは何種かのフィルターを介して撮影した画像を重ね合わせて画像処理が必要となります。カラーカメラ では表現できないような色彩を表現することが可能です。電視観望を行う場合はカラーカメラがおすすめです。


■冷却or 非冷却
冷却カメラは撮影の際に発生するノイズ(主にダークノイズ)を減少させるため、冷却機能を搭載していま す。センサーサイズの大きいカメラが多く、価格も高価になり、別途電源が必要となります。 非冷却カメラはセンサーサイズは小さいですが、安価で別途外部電源を用意する必要なくお手軽に撮影が可 能です。
電動フォーカサーEAFは必ずしも必要ありませんが、タブレットやスマホ上で遠隔でピントを合わせることができ、便利です。AF機能も使用できるので、是非お勧めしたい機器です。また、天体撮影を行う場合は、この他にZWO社のオートガイダーが必要になります。


おススメCMOS カラーカメラ



非冷却カラー 冷却カラー
ZWO ASI 482MC
(カラー/非冷却モデル)


センサーサイズ 1/1.2 インチ で天体の導入がしやすい、 高コストパフォーマンスの最新カメラ。

48,819円
(税込53,700円)
ZWO ASI2600MC Pro
(カラー/冷却モデル)


センサーサイズAPS-Cで焦点 距離500mmの望遠鏡の組み合わせで代表的な天体を抑えることが可能。

251,819円
(税込277,000円)


■フィルターワーク
観測対象の天体に応じてフィルターの装着をお勧めします。

・IR/UV カットフィルター
赤外線(IR)、紫外線(UV)をカットするフィルターです。人間の眼で観測できる波長域を透過します。 系外銀河や球状星団など連続光を発する天体におススメです。


・光害カットフィルター
都会など水銀灯、LED灯の光をカットするフィルターです。


・ナローバンドフィルター
輝線星雲や惑星状星雲などの天体が発する Hα、SII、OIIIの狭い範囲の光のみを透過させるフィルターです。


おススメフィルター


ZWO
IR/UV カットフィルター1.25”


赤外線および紫外線をカットします。人間の眼で見え る可視光線のみ透過します。

3,091円
(税込3,400円)
アイダス
LPS-D3 ZF


人工光害と共に自然発光 する大気光 夜天光 も抑制 する世界初の光害カットフィルターです。

20,000円
(税込22,000円)


電視観望におすすめ鏡筒


通常の天体観測ではなるべく多くの光を集める口径の大きな鏡筒が有利となりますが、電子観望では CMOSカメラの感度が高いため、 F 値が明るく口径の小さい鏡筒でも十分楽しむことができます。また、口径が小さい=鏡筒本体も小さいため、 よりお手軽な観測が可能となります。


ウィリアムオプティクス REDCAT 51 II

話題の3群4枚ペッツバール式鏡筒 新たに使いやすく改良されたリ ニューアル第二世代モデル。 本体にビルドインされた鏡筒バンドには、ビクセン規格とアルカスイ ス規格に対応したデュアルアリミゾプレートが標準付属。

有効径:51mm
焦点距離:250mm
F値: 4.9
重量:1.8kg


110,000円
(税込121,000円)


他にもこんな鏡筒がおススメです!


Askar FMA180pro

2枚のEDレンズを含む3枚玉 アポクロマート式を採用した 高コストパフォーマンス鏡筒。

有効径:40mm
焦点距離:180mm
F値: 4.5
重量:800g

65,000円
(税込71,500円)
タカハシ FS-60CB

タカハシブランドの現行モデ ルの中で最小のフローライト 望遠鏡。

有効口径:60mm
焦点距離:355mm
F値: 5.9
重量:1.4kg

81,000円
(税込89,100円)


電視観望におすすめの赤道儀


まず、赤道儀の購入ガイドはこちら(さらに詳しく赤道儀購入ガイド~続編 望遠鏡・双眼鏡など光学機器の販 売店 ネイチャーショップ KYOEI 大阪店 協栄産業株式会社 (kyoei osaka.jp) をご覧ください。また、ZWO社のCMOS カメラを使用する場合、今後の発展も考えてASIAIRPlusとの相性も確認していきたいところです。



ASIAIR Plusとは?


パソコン不要でタブレット端末で簡単に電子観望を可能にする
ZWO社のWi-Fiデバイスです!


最新の(eMMC embedded MultiMediaCard)を内蔵し、Wi-Fi経由で「 ASI USB 3.0 カメラ ASI Mini シリーズを含む)」、「自動導入赤道儀」を制御してスマートフォンやタブレット端末で統合制御可能なスマート Wi-Fiデバイス。コードレスでスマートな電子観望 をサポートします。
※ZWO CMOS カメラのみに対応しています。



ASIAIR mini

27,819円
(税込30,600円)
ASIAIR Plus 32G

41,819円
(税込46,000円)
ASIAIR Plus
256G


55,819円
(税込61,400円)



超コスパ!超軽量!

スカイウォッチャー
Star Adventurer GTi マウント三脚セット


Star Adventurer GTiは、マウントの質量がわずか約 2.9kg でありながら、 自動導入機能を備えた小型軽量赤道儀です。 Wi-Fi モジュールを内蔵しており、専用の SynScanPro アプリ( Android / iOS / PC )をインストールしたスマートフォンやタブレット端末から操 作できます。お好みの天体はもちろん、見つけにくい星雲、星団、銀河なども簡単に観測できます。

最大搭載重量:5kg
赤道儀重量:約2.9kg
ハンドコントローラーなし


81,800円
(税込89,980円)


ZWOとの相性抜群!★動作音の静かさ No.1

アイオプトロン
GEM28/28EC赤道儀+三脚セット


iOptron ドイツ型赤道儀マウントで軽量コンパクト版の GEM28 赤道儀。 赤道儀重量はわずか 4.5Kg でありながら 最大 12.7kg の搭載重量をサポー ト。コンピューター制御対応を標準化されたマウント設計は各種外部 コントロール機器との相性や操作性に優れています。特に ZWO ASIAIRPlus との接続相性は抜群。接続や初期設定に苦労することなく気 持ちよく操作できます。

最大搭載重量12.7kg
赤道儀重量:4.7kg
ハンドコントローラーあり


173,000円
(税込190,300円)



売 れ て ま す !
ZWO製波動歯車装置搭載赤道儀

ZWO AM5

2022 年春発売のウェイトレスでも 13kg の搭載重量を誇る ZWO 社の波動 歯車装置搭載赤道儀。 AM5のレビューについてはこちら( https://www.kyoei osaka.jp/hpgen/HPB/entries/448.html )をご覧ください。 よりコンパクトなモデルAM3はこちら( https://www.kyoei osaka.jp/SHOP/zwo am3.html)

最大搭載重量:8kg (カウンターウェイト未使用時)
13kg(カウンターウェイト使用時 )
赤道儀重量:4.7kg

279,819円
(税込307,800円)
※本体のみ


STARBOOKTEN コントローラー付き
SXシリーズ最高峰モデル


ビクセン SXP2赤道儀+SXG HAL130 三脚

ビクセン社SXシリーズの最高峰モデル。高精度な追尾のため P-PEC 機能を搭載。ベルトドライブ方式を採用し、バックラッシュ低減と 静音化を実現。

最大搭載重量:約 1.3〜17kg
赤道儀重量:約13.3kg
ハンドコントローラーあり

447,000円
(税込491,700円)



よくいただくご質問


Q.電子観望用セット商品はありますか?
▶オールインワンタイプはZWO社から新発売のZWO SeeStar S50です。フィルターなど全ての商品がセットになったKYOEIオリジナルセットはコチラです→ KYOEIオリジナRedCat51II+StarAdventurerGTi+ASIAIRmini+ASI585MC 電視観望セット

Q. 惑星も星雲星団も見たいのですが 1 つの CMOS カメラで可能ですか?
▶センサーサイズが大きく変わってきますので、惑星用は惑星用として別途ご用意をおすすめしております。

Q. PC 、タブレットはどのようなものを用意すればいいですか?
▶ここ数年に販売されたモデルであれば、問題なくご使用いただけると思います。
まずはお手持ちの PC 、タブレットでお試しください。

Q. 都会の家のベランダでも使用できますか?
▶CMOS カメラの感度は人間の眼よりも高く、スタッキング技術も活用するため、都会のベランダでも楽しめま す。ナローバンドフィルター(例: NBZ-II フィルター、 GNB フィルターなど)を用いれば、さらによく映ります。

Q. 電源はどのように用意すればいいですか?
▶AC アダプター、ポータブル 電源をご用意ください。当店で取り扱いの商品はこちら( https://www.kyoei osaka.jp/SHOP/celestron-powertanklithium-pro.html )です。



コチラの記事もご覧ください!

おすすめ赤道儀特集~天体追尾撮影に挑戦!
モノクロ冷却CMOSカメラで天体撮影をより深く楽しもう 電子観望にチャレンジ




ラセルタMGEN3ファームウェアアップデート


ラセルタMGEN3ファームウェアアップデート


1.MGEN-3付属のSDカードを誤ってフォーマットしてしまい、起動ができなくなってしまった!
2.正常に動くのだが、どうしてもプレートソルバーを装備した最新ファームウエアにアップデートしたい!

という方に向けて、メーカーホームページで公開されているラセルタMGEN-3のファームウェアのアップデート方法をご紹介します。

※アップデートは自己責任でお願いいたします。この方法は総代理店・協栄産業株式会社が輸入する正規輸入品のMGEN-3(起動時にLacertaロゴと共に ” Powered by KYOEI ”ロゴが出るもの)の新品を、ラセルタホームページでお客様自身でデバイス登録することでご利用いただけます。非正規品や中古品などは対象外です。
(MGEN-3はメーカーデータベース上でシリアル管理されており、ラセルタ社がどの代理店へ卸した個体なのかが把握されています。KYOEI正規品は登録から3年間、無償で自由にファームウエア等をダウンロードできます。)
※現在問題なく動作している場合には、アップデートせずそのまま安定使用されることをお勧めします。
※当店ではファームウエアアップデート代行サービスは行っておりません。またファームウエア作業失敗による故障や損失の補償は致しかねますのでリスクを十分にご理解頂いた上で慎重に操作してください。



1. ラセルタの公式ページにログイン


最新のファームウェアは、ラセルタの公式サイトのサポートページからダウンロードする ことができます。初めての方は、まず、ユーザーアカウントを作成しましょう。以下が、 ラセルタのサポートページのアドレスです。 https://support.mgen-autoguider.com/


ラセルタMGEN3ファームウェアアップデート




2.アカウントの作成


アカウントの作成には、メールアドレスとパスワードが必要です。

ラセルタMGEN3ファームウェアアップデート


アカウント作成後、ご自身のMGEN-3を登録しましょう。

ラセルタMGEN3ファームウェアアップデート



My Devicesの中のRegister Your Deviceでご自身の MGEN-3の Identification No.(=IDナンバー)とシリアルナ ンバーを入力し、Registerボタンを押すと、登録されます。


ラセルタMGEN3ファームウェアアップデート



なお、MGEN3 identification No. は、MGEN-3起動後、オプションの中のSystemで、ID:の欄で番号を確認することが できます。また、シリアルナンバーは、MGEN-3本体の背面に記載されています。 また、登録すると、約3年間、サポートページでファームウェア等をダウンロードするこ とができます。有効期限が切れた後に再びサポートやファームウェアのダウンロードを受 けるには、有効期限の更新(有料)が必要になります。


ラセルタMGEN3ファームウェアアップデート


誤ってファームウエアを消去してしまった場合は直接BOOTモードに入りますが、ここでもIDは確認できます。





3.keyfile とファームウェアのダウンロード


MGEN-3 の登録が完了したら、keyfile をダウンロードしましょう。keyfile は、登録した MGEN-3の右隣にリンクが表示されています。


ラセルタMGEN3ファームウェアアップデート



ファームウェアは、一旦、Support ページの一番上に戻り、右下のFirmwares、Language Fileの中からダウンロードすることができます。 2023年5月現在、最新のFirmwareは、Ver1.30.1です。ご自身のMGEN-3のファームウェ アを確認し、該当するファームウェアをダウンロードしましょう。




4.FTDI ドライバーのダウンロード


MGEN-3とパソコンをUSBケーブルで接続する前に、FTDI社の公式ページからD2XX用デバ イスドライバーをダウンロードして、パソコンにインストールしましょう(既にインスト ール済みの場合は不要です)。インストールの手順は、以下の通りです。
① パソコンのブラウザでFTDI 社のドライバダウンロードページ 「https://ftdichip.com/drivers/d2xx-drivers/」にアクセスする。


ラセルタMGEN3ファームウェアアップデート



MGEN-3とパソコンをUSBケーブルで接続する前に、FTDI社の公式ページからD2XX用デバ ② ページをスクロールダウンし、表の右端のComments欄から、リンク「setup executable」 をクリックし、実行ファイルをダウンロードする。


ラセルタMGEN3ファームウェアアップデート



③ ダウンロードした「CDM212364_setup.zip」ファイルを展開し、
exe ファイルを実行してドライバーをインストールする。



5.ファームウェアのアップデート


MGEN-3本体にカメラを接続し、USBケーブルでパソコンと接続します。ファームウェアの アップデートは、BOOTモードで行いますので、MGEN-3コントローラーで、ブート画面を開 きましょう。


ラセルタMGEN3ファームウェアアップデート



MGEN-3のESCボタンを長押しするか、起動後、オプションのTurn OFFの下に表示されて いる、「Stop & go to BOOT」ボタンを押すと、ブート画面が開きます。 次に、パソコン作業に移ります。ラセルタのページからダウンロードした、Zip ファイル 「Mgen3_Firmware_1-30.zip」を展開しましょう。展開すると、いくつかのフォルダが表示 されますが、Appsフォルダの中から、「MG3_Updater_v.1.3.exe」を実行します。


ラセルタMGEN3ファームウェアアップデート



上のようなダイアログボックスが開きます。Firmware file に「Firmware_1- 30/LMG3_fw0130_1.bin」、Key file にダウンロードしたkeyfile を指定しましょう。 右下の「Update Firmware」ボタンを押すと、アップロードが開始されます。更新中はパソ コンの電源やMGENの電源を切らずにお待ちください。「Done」と表示されれば、終了です。
※右上のRead Device infoボタンを押すと、現在ご使用のMGEN-3のファームウェアのバ ージョンを確認できます。



6.Plate Solver 用のデーター


ファームウェアの更新は以上で終了ですが、Plate Solving機能を使用するには、天体デ ータベースファイルをMGEN-3内部のSDカードに書き込む必要があります。 MGEN-3ハンドコントローラーとパソコンをUSBケーブルで接続し、ラセルタからダウンロ ードしたファイルのAppsフォルダの中にある、「MG3_PCApp_v.1.30.exe」を起動しましょ う。



ラセルタMGEN3ファームウェアアップデート



ダイアログボックス左下に、File Systemボタンが表示されます。そのボタンを押すと、 ファイルマネージャーが立ち上がります。



ラセルタMGEN3ファームウェアアップデート



画面左側のファイルマネージャーを使い、データーを書き込むフォルダ(/MG3/DB/)を開き ます。その後、左下の「Upload Sky DataBase file (plate solving)」ボタンを押してく ださい。画面に進行状況が表示され、データベースファイルの書き込みが始まります。
万一、MGEN-3 のSD カードのデーターを誤って消してしまった場合も、この方法でSDカードを初期状態に戻すことが可能です。






レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。



セレストロンEdgeHD800-CG5鏡筒と K-ASTEC TR74-ASI6200_M42 オフアキシスガイダー接続装置のインプレッション

セレストロンEdgeHD800-CG5鏡筒と K-ASTEC TR74-ASI6200_M42 オフアキシスガイダー
接続装置のインプレッション

セレストロンEdgeHD800-CG5 鏡筒(以下「セレストロンEdge」)は、セレストロン社が製造している口径203㎜(8インチ)、焦点距離2000㎜の天体望遠鏡です。
セレストロンEdgeには、同社のセレストロンC8を更に進化させた光学系が採用されており、天体観望から天体撮影までオールマイティに使用できる望遠鏡です。今回は、レデューサー用のオフアキシスガイダーをご紹介しながら、天体撮影時の性能を中心にレビューしました。


シュミットカセグレン式を進化させた光学系

セレストロンC8はコンパクトで大口径が得られるシュミットカセグレン望遠鏡ですが、収差の影響で視野周辺の星像が悪化してしまいます。その点を改善するため、セレストロンEdgeには、補正レンズがバッフル内に設けられました。補正レンズにより、中心像はもちろん周辺まで鋭い星像を結ぶように設計されています。

上は、セレストロンEdge(右側)と同社のセレストロンC8を並べた写真です。外観はほとんど同じですが、セレストロンEdgeの主鏡背面にはミラーの固定機構が採用されるなど、より天体撮影に使いやすい構造になっています。

なお、重さはEdgeの方が若干重く6.4キロ(C8は5.7キロ)です。接眼パーツなどは共用できるものが多く、C8からのステップアップ用としてもお勧めできる望遠鏡です。

セレストロンEdgeで天体観望

口径20センチの集光力は、肉眼の 841 倍もあります。セレストロンEdgeで春や秋の夜空を眺めると、小口径の望遠鏡では見えなかった暗く小さな系外銀河も確認することができます。

都会からの天体観望で人気の木星や土星でも、口径20センチの集光力や解像力が発揮されます。同じ倍率の小口径と比べると、覗いた瞬間、像が明るいと感じ、木星の縞模様や土星の環も明瞭に確認できます。

また、セレストロンEdgeの星像は、中心だけでなく視野周辺もシャープなため、星の集まった散開星団や球状星団の観望にも適しています。中心像のシャープさに関しても、セレストロンC8と見比べて違いは感じられず、中心から周辺まで引き締まった星像が広がる様子が気持ちよく感じられました


天体撮影時の性能

セレストロンEdgeのシャープな星像は、電視観望や天体撮影用としても魅力的です。直焦点では約F10と暗いですが、オプションの補正レンズ「レデューサーレンズ 0.7X EdgeHD800用」を使用すれば、F値が約7まで明るくなり、天体撮影や電視観望に使いやすくなります。

上は、レデューサー使用時の星像です。イメージサークルはAPS-Cサイズの範囲ですが、写野周辺まで星は丸く保たれ、星像も均質です。

周辺減光を表すフラットフレーム画像(下画像)を見ると、写野隅に近づくにつれて暗くなり、周辺減光が感じられますが、それほど急激な減光でありません。フラット補正を適用すると、綺麗にフラットになりました。

このように天体撮影用としても魅力的なセレストロンEdgeですが、焦点距離が長く、ミラーシフトが発生しやすい構造のため、ガイド鏡を使ったオートガイド撮影では、ガイドエラーに悩まされることが多く、以前からレデューサー使用時用のオフアキシスガイダーの発売が待ち望まれていました。

そして今回、K-astec社の協力で完成したのが、Edgeレデューサー用のオフアキシスガイダーシステムです。 ※セレストロン社から純正のオフアキシスガイダーが発売されていますが、直焦点(F10)専用で、レデューサー使用時には使えませんでした。


K-ASTEC オフアキシスガイダー接続装置 TR74-ASI6200_M42

/SHOP/zwo-asi2600mc-pro.html 下の写真は、セレストロンEdge用レデューサーの後ろにK-ASTEC オフアキシスガイダーTR74-ASI6200_M42経由でオフアキシスガイダー(以下:オフアキ)を取り付けた様子です。

オフアキは、ZWO社のM68オフアキとK-AstecのM42Fテーパーリング接続キットを組み合わせた構造で、ZWO社のCMOSカメラ(ASI2600MCPなど)を使用したときに最適な光路長になるよう調整されています。

オフアキとCMOSカメラの間には、ZWO社のM54フィルターボックスが取り付けられています。このボックスを使えば、フィルターの交換を容易に行うことができます。通常フィルターから、デュアルナローバンドフィルターへの交換もスムーズです。

M54フィルターボックスとカメラの接続は、オフアキシステム専用のM54接続プレートを介して固定します。接続プレートのネジ部分には回転方向に溝が彫られており、固定後、オフアキのプリズムの位置に合わせて、カメラを回転させて微調整できるようになっています。

実際にオフアキを使用してテスト撮影を行ってみました。ガイド鏡を使った撮影では、5分露光でも星が流れて写ることが多く、ガイド成功率が低かったところ、オフアキに変更すると、2倍の10分露光でも星が点に写るようになりました。風がなければ100%に近い成功率で、安心して撮影を続けることができました。

オフアキでよく問題になるガイド星に関しても、オフアキの3本のねじを緩めれば、容易に写野を回転できるので、適当なガイド星を探しやすくなっています。春の銀河撮影でもガイド星が見つからなくて困ることはありませんでした。

オフアキではイメージーサークル端の星をガイド星として選ぶため、ガイド星が若干いびつになる場合がありましたが、オートガイドへの影響は感じられず、ガイドは正常に行われました。気になる場合は、オフアキの固定ネジを緩めれば、オフアキのプリズムの位置(深さ)を微調整して、星像の良い範囲でガイド星を選ぶことも可能です。


セレストロンEdgeで撮影した春の銀河

テスト撮影の後、セレストロンEdgeを郊外に持ち出し、オフアキとASI2600MCProカメラを使用して天体撮影を行いましたので、作例をご紹介します(掲載画像は周囲をトリミングしています)。

上は、おおぐま座のM81銀河の写真です。300秒露光で10枚撮影しましたが、星像はすべてシャープで点像を保っています。

次は、かみのけ座のNGC4565銀河の写真です。エッジオン銀河の代表とも呼べる美しい銀河で、460秒露光で8枚撮影しました。こちらも星像は丸く均質です。

最後は、りょうけん座のM51銀河の写真です。子持ち銀河の愛称で知られる銀河を、460秒露光で8枚撮影しました。銀河の外側に広がる淡いガスも写り、見ごたえのある写真になりました。


都会でも撮影を楽しめるEdge鏡筒

M54フィルターボックスにデュアルバンドフィルターや光害カットフィルターを挿入すれば、都会でも天体撮影を楽しむことができます。下は、アイダスのGNBフィルターを取り付け、ASI2600MCProで撮影した、M51銀河の写真です。

郊外で撮影した画像と比べると、淡い部分のコントラストは劣るものの、都会でも系外銀河の撮影を楽しむことができます。

上の画像は600秒露光を10枚重ね合わせたものですが、露光時間を増やせば、郊外で撮影した写真に近づくでしょう。惑星の観望だけでなく、Edgeを使って都会からの撮影も楽しめれば天体趣味の幅も広がるのではないでしょうか。


まとめ

セレストロンEdgeと鏡筒外付け式のガイド鏡を組み合わせて天体撮影したところ、ガイド成功率の低さに悩まされました。そこでK-Astec社に相談し、改良を重ねて、今回ご紹介したオフアキシスガイダーが完成しました。

フィルターボックスも装備され、非常に使いやすいオフアキだと思います。天体撮影の成功率を上げるため、是非ご活用いただければと思います。

今回は、春の銀河の写真を取り上げましたが、セレストロンEdgeは、夏の星雲のクローズアップ撮影にも適した光学系です。レデューサーとオフアキを使って、三裂星雲のクローズアップや、M16星雲にある創造の柱を狙ってみてはいかがでしょう。撮影対象の幅が広がり、天体撮影が更に楽しくなると思います。

レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

ASIAIRアプリで電視観望

ASIAIRアプリで電視観望


ASIAIRを使った電視観望や天体撮影が、天文ファンの注目を集めています。このページでは、ASIAIRを初めて使う方向けに、ASIAIRの概要から撮影方法まで、順を追って説明します。


ASIAIRとは


ASIAIRは、ZWO社が開発したスマートWi-Fiデバイスです。2023年春現在、ASIAIR PlusとASIAIR miniが発売されており、これらに同社のカメラ等を繋ぐと、無線LAN経由でスマホやタブレットから機器を操作することができます。




撮影用のパソコンを別途準備する必要がなくなり、スマホやタブレットで、どこでも気軽に電視観望や天体撮影を楽しむことができます。また、無線LANを使用するので、離れた場所からでも望遠鏡一式を操作することができます。例えば、寒い屋外に機材を設置し、暖かい家の中や車の中にいながら撮影することも可能です。
以下、ASIAIR Plusを用いて、設定から操作方法を説明します。ASIAIR Plus本体の大きさは、スマホを分厚くした程度で、本体側面にはUSB端子やDC出力端子等が設けられています。



ASIAIRで必要な機材


気軽な天体撮影や電視観望を可能にしてくれるASIAIRですが、ASIAIRで制御できるのは、一部のデジカメを除くと、ZWO社が製造している天体用CMOSカメラのみです。他社製のCMOSカメラには対応していませんので、ご注意ください。
下に、ASIAIRで電視観望や天体撮影を行う際に必要となる機器をまとめました。既に天体望遠鏡や赤道儀をお持ちの場合は、それらを使用することができますが、一部の赤道儀には対応していないので、対応機種一覧表を見て確認しましょう。

  • 天体望遠鏡
  • 赤道儀(ASIAIRが対応している機種)
  • ASIAIR Plus または ASIAIR mini
  • ZWO社ASIシリーズのCMOSカメラ(一部のデジタル一眼レフカメラでも可能)
  • スマートフォン、またはタブレット(ASIAIRアプリが動くもの)
  • ZWO社の電動フォーカサー EAF


SXP2赤道儀 ASIAIR Plus-32G/256G ASI 2600MC Pro EAF
スタンダードセット/
アドバンスセット


電動フォーカサーEAFは必ずしも必要ありませんが、タブレットやスマホ上で遠隔でピントを合わせることができ、便利です。AF機能も使用できるので、是非お勧めしたい機器です。また、天体撮影を行う場合は、この他にZWO社のオートガイダーが必要になります。
スマホやタブレットは、iPhone・Androidのどちらにも対応しています。個人的には、スマホより画面の大きいタブレットの方が操作しやすいと思います。


コラム:ASIAIR PlusとASIAIR miniの違い


現在、ASIAIRには、Plusとminiの2機種があります。両製品の大きな違いは、PlusにはLANポートがある点と、USB3端子が装備されている点です。
ビクセンのSTARBOOK TENのように、有線LAN接続が必要な場合は、Plusを購入しないと赤道儀を接続することができません。また、6Mピクセルを超えるASIカメラ(ASI6200/ASI461等)やデジカメには、miniは対応していないため、それらの場合もPlusを選んでください。
USB端子は、USB3が装備されているPlusの方が、データー転送速度が速くなります。ただ実際には、タブレットやスマホに画像が表示されるタイミングは、無線LANの速度に左右されるため、そこまで大きな差は出ないようです。詳しくは機能比較表をご覧ください。



ASIAIRの使い方


アプリのインストール まず、アプリストアから、ZWO社のアプリ「ASIAIR」をダウンロードし、スマホやタブレットにインストールしてください。




アプリストアで見つからない場合は、ZWO社の公式サイトのソフトウェアのページから、QRコードを読み込んでダウンロードすることも可能です。なお、アプリは無料で使用できます。



ASIAIR Plusを望遠鏡に装着


次に、ASIAIR Plus本体を天体望遠鏡に取り付けましょう。ASIAIR Plusにはアリガタ金具が装備されているので、ファインダー台座などに取り付けると固定しやすいと思います。


USBケーブルで機器を接続


カメラやフォーカサーとASIAIR PlusをUSBコードで繋ぎましょう。カメラは転送速度の速いUSB3.0端子に繋ぐとよいでしょう。 また、撮影したデーターを保存するため、microSDカードを差し込んでおくことをお勧めします。ASIAIR Plus本体にデーターを保存することも可能ですが、容量が限られているため、別途microSDカードを用意する方がよいでしょう。


※ASIAIR miniにはmicroSDカードスロットは設けられていません。本体にデーターを保存します。


電源ケーブルを接続


ASIAIR Plus本体には、DC12Vの電源取り出し端子があります。付属の電源ケーブルを使って、これと機器を繋ぎます。


ただし、ASIAIR Plusの電源出力は限られているので、赤道儀のような大電流が必要なものは、別途、電源を取る方が安心です。入力電圧が不安定になると、ASIAIR Plusの動作も不安定になるので、その点に注意しましょう。
最後に、ASIAIR Plusの電源端子にDC12Vの電源ケーブルを接続します。AC/DCアダプターは付属していないため、別途準備しましょう。


ASIAIR Plusの電源を入れてスマホに接続


以上の準備が整ったら、ASIAIR本体の電源スイッチを入れましょう。しばらくすると、ビープ音が鳴り、ASIAIRが起動します。
ASIAIRが起動したら、スマホの設定画面を開けて、ASIAIR Plusとwifiで接続します。ネットワーク名(SSID)とパスワードは、ASIAIR Plus本体の裏側に記載されていますので、それを参考に接続してください。



なお、ASIAIRを使用する際、ご自宅のインターネット回線等に接続する必要はありません。ASIAIR Plusとスマホを単純に接続すればOKです。 ASIAIR Plusとスマホが繋がったら、スマホにインストールしたアプリASIAIRを立ち上げましょう。


ASIAIRの設定


アプリが立ち上がると、観測場所の入力画面や接続されている機器の一覧が表示されます。まず初めに、観測場所の緯度経度を入力しましょう。


次に、接続されている機器の一覧を確認しましょう。カメラ等が表示されていない場合は、ダイアログボックスを選んで、接続したカメラを選択します。
撮影用鏡筒の焦点距離も入力しましょう。プレートソルビングに影響するので、できるだけ正確に入力しましょう。レデューサー等、補正レンズを使用している場合は、天体望遠鏡の直焦点の値と異なります。ご注意ください。
入力が終われば、OKを押して設定完了です。いよいよ撮影に移りましょう。撮影については、次のページでご案内します。


コラム:パスワードの変更


ASIAIRのパスワードは、初期状態のままだと、他のデバイスから間違ってアクセスされる危険性があるので、アプリのWiFi settingsで変更しておきましょう。できれば、ネットワーク名(Name)も変更しておくとよいでしょう。有名観測地でASIAIR使用者が複数いると、どれが自分の機器か、混乱する可能性もあります。




ASIAIRアプリで電視観望


ASIAIRの画面構成がわかったところで、実際にASIAIRを使って電視観望を楽しんでみましょう。
極軸合わせなどのセッティングは事前に行っているものとします。




ASIAIRアプリはPreviewモードが基本


各種機器を接続し、ASIAIRアプリを開くと、下のような画面が表示されます。画面構成で説明した通り、右側に動作モードが表示されますが、初期状態では「Preview」が選択されています。このPreviewモードがASIAIRの基本です。操作に迷ったら、一旦Previewに戻ると覚えておきましょう。



カメラ冷却を開始のメインカメラのタブをクリックして、冷却CMOSカメラのゲインを設定し、冷却を開始しましょう。冷却温度は一気に下げるのではなく、一旦0度まで下げてしばらく待ち、再度希望温度まで下げると、結露が発生しにくいようです。




大よそのピント合わせ


カメラを冷却している間に、大よそのピントを合わせておきましょう。Previewモードのまま、ビニングを2~4に設定し、露出時間1~2秒に合わせて撮影ボタンを押してください。ピントがずれていれば、画像のように星がぼやけて写ります。



望遠鏡のドロチューブを前後させて、ピントを合わせましょう。このピント合わせは、ASIAIRがPlateSolving時に星の位置を解析するためですので、厳密に追い込む必要はありません。星がだいたい一点に収束すればOKです。



自動導入


ASIAIRのマウントタブを開けて赤道儀が接続されているのを確認し、目的の天体を自動導入しましょう。

自動導入は、画面右側の検索ボックスの虫眼鏡ボタンを押すと、下のような別画面が開き、天体リストから選ぶことができます。


今回は、りょうけん座の渦巻銀河M51を選びました。選択後、右下に表示されるGotoのボタンを押すと赤道儀が動き出します。




PlateSolving


目標天体まで到達すると、一旦赤道儀が止まり、カメラが自動的に画像を撮影して、星の位置の解析が始まります。その後、再び赤道儀が動き出し、目標天体を中央に導入して終了します。ASIAIRの機能の中でも、大変便利な機能だと思います。



もし、PlateSolvingに何度も失敗するときは、最初に入力した望遠鏡の焦点距離が正しいか確認しましょう。補正レンズなどを入れると、焦点距離が変わるので注意してください。




ピント合わせ


目標天体が導入できたら、ピントを合わせましょう。今度は、Focusモードを使って、厳密に合わせていきます。


Focusモードを選択してスタートボタンを押すと、画面上に四角いカーソルが表示されます。そのカーソルをピントを合わせたい星に合わせ、画面左側の拡大ボタンを押すと、選んだエリアが拡大され、正確にピントを合わせることができます。

星の映像の隣には、星の大きさ(StarSize)と、星の明るさの値が数値とグラフで表示されます。星の大きさが小さく、明るくなるようにドロチューブを動かしましょう。


EAFとオートフォーカス


ZWO社の電動フォーカサーEAFを望遠鏡の接眼部に取り付けていれば、画面の左側にドロチューブを前後に動かすためのタブが表示されます。これを使えば、望遠鏡に触れることなくピントを合わせることが可能です。



また、AF機能も使用可能です。AFボタンを押すと、上画像のような解析グラフが立ち上がり、最良の位置をASIAIRが判断して、ピントを合わせてくれます。


電視観望を開始する



動作モードからLIVEを選び、電視観望を開始しましょう。Liveを開始すると、下画像のようなダイアログボックスが表示されます。


別途ダークフレームやフラットフレームがあれば、指定すれば、画像処理後の画像が表示されますが、最初は何もチェックを入れずにやってみましょう。今回は、ビニング3、露出時間30秒でM51銀河を電視観望しました。



上は、4枚スタックした時点での画像です。2等星がやっと見えるかどうかの都会でも伴銀河まではっきりとわかります。


ダウンロードボタンを押すと、スタックした画像が保存されます。刷毛のようなアイコンを押すと、スタックされたデータがクリアされ、また新たに撮影が始まります。




ASIAIRでの電視観望について


パソコンと繋いで行う電視観望と比べると画面は少々小さくなりますが、タブレットを持ち歩きながら操作できるのはとても便利です。


また、ASIAIRが全ての機器を統合制御しているので、電視観望から天体撮影へも簡単に切り替えることができます。一度ASIAIRで電視観望を体験すると、パソコンには戻れないほどの魅力があります。
次回は、天体撮影時の操作やオートガイダーについてお伝えしたいと思います。





レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。



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