初心者のための天体撮影ガイド

初心者のための天体撮影ガイド 初心者のための天体撮影ガイド

はじめに

初めて天体撮影に挑戦する方のために、この記事では基本的なステップを解説しています。まずは、月が小さい時期を選び、天気予報を確認して、星空がよく見える場所に出かけてみましょう。基本的な心構えを知っておけば、スムーズに天体撮影に取り組むことができます。このガイドが、あなたの天体撮影の第一歩となり、星空や天体を写真に収める楽しさを感じるきっかけになれば幸いです。



天体撮影の基礎知識

天体撮影を始める前に、いくつか基本的なことを覚えておくと、より満足のいく写真を撮ることができます。この章では、特に重要な「月の影響」と「天候」について説明します。



1. 月の影響

月明かりは、星空の見え方に大きな影響を与えます。満月の夜は、月が空を明るく照らすため、星の光がかき消されてしまい、星空の撮影には適していません。そのため、天体撮影を計画する際は、月明かりのない時期を選ぶのがポイントです。新月の夜がベストですが、私の場合、上弦の月から下弦の月の間の月明かりのない時間帯に天体撮影を行っています。

初心者のための天体撮影ガイド

こうした「月齢」に関する情報は、天気予報アプリや月齢カレンダーで確認できるので、あらかじめチェックしておくと良いでしょう。

ただし、月が明るい夜でも天体撮影を楽しむ方法があります。特に「ナローバンドフィルター」を使った撮影では、特定の波長の光だけを捉えることで、月の明るさの影響を軽減しながら美しい写真が撮れます。これは少し上級者向けですが、天体撮影に慣れてきたら試してみてはいかがでしょう。

また、惑星撮影なら、月明かりの影響を気にせず撮影が楽しめます。木星や土星などの惑星は明るいため、月の明るさに左右されることなくはっきりと捉えることができます。



2. 天候の重要性

天体撮影では、空が晴れていることが必須です。空に雲がかかっていると星が隠れてしまい、せっかくの遠方に出かけても撮影することができません。また、空気中の透明度も星の見え方に影響します。一般的に、撮影地の標高が高いほど空気が澄んで星空がクリアに見えるため、できるだけ標高の高い場所が理想的です。また、夏場よりも秋や冬の方が空気の透明度が高いことが多く、星の輝きが一層引き立ちます。

初心者のための天体撮影ガイド

天気の確認については、気象庁の天気予報に加えて、WindyやGPV天気予報なども活用し、観測地の今夜の天候を細かくチェックしましょう。WindyやGPVは、観測地の風速や雲の動きなども確認できるため、撮影場所の天候をより的確に見極めることができます。



撮影場所の選び方

天体撮影では、夜空が暗い場所を見つけることが重要です。街の明かりが少なく、光害がほとんどない暗い場所を選ぶことで、星々や天の川をより美しく写すことができます。以下に、暗い星空を見つけるためのポイントを紹介します。



1. 光害の少ないエリアを選ぶ

星空を観察・撮影するには、都市から離れた場所が理想です。光害が少ないエリアは暗い星まで見えるため、写真に写る星の数も増え、より鮮明に仕上がります。場所ごとの光害の影響が分かる「光害マップ」を活用し、街明かりの届きにくいエリアを探してみましょう。


初心者のための天体撮影ガイド



2. 山間部や海岸付近の場所を探す

山間部は都市から遠く、都市部の明かりが山脈で遮られるため、夜空が暗く保たれていることが多いです。特に標高が高い場所は、空気が澄んで透明度が高いため、星々の輝きが一層際立ちます。海岸線も広々とした空が確保でき、街明かりが届きにくい場合が多いのでおすすめです。



3. シミュレーションアプリで方角を確認する

スマホやPC用の星空シミュレーションアプリ(ステラナビゲーターやSkySafari7など)を活用し、撮影したい天体や天の川の方角をあらかじめ確認しておくと、より適した撮影場所を選びやすくなります。



実際に観測地へ行く際の注意点

天体撮影のために暗い観測地へ向かう際には、前もって準備しておきましょう。遠出になることが多いので、以下の点に気をつけて計画を立てましょう。



1. 交通手段とアクセス

観測地が自宅から離れている場合、車での移動が便利です。公共交通機関を利用する場合は、駅からの移動手段も確認し、現地に早めに到着できるよう計画しましょう。観測後は遅い時間の移動になるため、帰り道や終電の時間も忘れず確認しておきます。また、移動や設置作業がしやすいように、懐中電灯やヘッドライトを持参するようにしましょう。



2. 防寒対策

夜間は気温が下がるため、季節にかかわらず防寒対策が重要です。上着や帽子、手袋などの防寒具に加え、ホッカイロなども準備しておくとよいでしょう。特に秋や冬は気温が急に下がるため、厚手のアウターやブランケットも役立ちます。また、温かい飲み物を持っていくと長時間の観測が快適になります。



3. 観測地で必要なアイテム

天体撮影には、撮影機材や観測道具に加えて、以下のようなアイテムを持っていくと安心です。

赤い懐中電灯:暗順応した目を維持するために、通常の白いライトではなく、目に優しい赤いライトが便利です。両手が自由になるヘッドライトタイプが便利です。

虫よけスプレー:夏場は虫が多いため、虫よけ対策も忘れずに。



4. 周囲への配慮

天体観測地が公園や共有スペースの場合、他の観測者や周囲の人の迷惑にならないよう配慮しましょう。ライトは周りに向けない、大きな物音を立てないなど、マナーを守って静かな環境を保つことも大切です。



機材選びの基本

天体撮影を始める際、最初から高価な機材を揃える必要はありません。お持ちのカメラやレンズで十分に撮影を楽しめます。まずは手軽に始め、双眼鏡や天体望遠鏡などの機材を少しずつ増やしていくことで、末長く楽しむことができます。ここでは、機材選びのポイントについてご紹介します。

初心者のための天体撮影ガイド



1. カメラ

初心者におすすめのカメラは「デジタル一眼レフ(DSLR)」または「ミラーレスカメラ」です。これらはマニュアル設定が可能で、シャッタースピードやISO感度を細かく調整できるため、夜空の撮影に適しています。特に以下の点に注目してカメラを選ぶと良いでしょう。

高感度ISO性能:星空を撮影するには、短い露光時間でも星が写る高感度なカメラが理想です。ISO感度が高くてもノイズが少ない機種を選びましょう。

広いダイナミックレンジ:星や暗い天体の諧調を滑らかに撮影するため、ダイナミックレンジが広いものが適しています。

※最近では一部のスマートフォンも星空撮影モードを搭載しており、星空の撮影が可能ですので、まずはスマートフォンで試してみるのも良いでしょう。



2. レンズ

星空撮影には、広い範囲を撮れるレンズが適しています。星景撮影におすすめは「広角レンズ」で、焦点距離が24mm前後のものが最初は使いやすいでしょう。また、以下の要素に注意してレンズを選びましょう。

開放F値が小さいもの(F2.8以下):光を多く取り込める明るいレンズは、短い露光時間でも星空をはっきりと撮影できます。

単焦点レンズ:単焦点レンズはシャープな画質が得られやすく、昔から星空撮影に人気があります。初めての方は24mmのF2.8や35mmのF1.8レンズなど、広角で明るめのレンズを選ぶとコストパフォーマンスも良く使いやすいでしょう。ズームレンズなら開放F値が2.8前後の広角ズームレンズがお勧めです。



3. 三脚

天体撮影ではカメラを固定して長時間露光を行うため、安定した三脚が欠かせません。風が吹いても動かないような頑丈な三脚が理想ですが、以下のポイントを参考に選びましょう:

耐荷重:カメラとレンズの重さをしっかり支えられるかどうか確認しましょう。星景写真撮影の場合、耐荷重5kg以上のものが望ましいです。ポータブル赤道儀を使用する場合は、耐荷重8kg以上のものが安心でしょう。

アルカスイス規格の雲台プレート:アルカスイス規格のプレートとクランプがあれば、カメラと雲台をワンタッチで取り外しできるので重宝します。



4. 双眼鏡の活用

星空撮影中は、双眼鏡で星空を観察するのがおすすめです。双眼鏡は広い視野で星空を観察できるため、構図や天体の確認にも役立ちます。倍率は7倍から10倍程度、対物レンズの口径が30mm~40mm程度のものを選ぶと、手持ちでも使いやすいです。



5. 天体望遠鏡の選び方

初めての天体撮影には口径6cm程度の屈折式望遠鏡が向いています。観望だけなら安価なモデルでも問題ありませんが、天体撮影では色収差が目立つので、EDレンズやフローライトレンズが使われた機種がお勧めです。良い望遠鏡は、10年程度は使えるので、長く使える気に入ったモデルを購入するのがお勧めです。ビクセンFL55SSなどの小型で高性能な機種が使いやすいでしょう。



6. スマート機材の勧め

ZWOの「Seestar」をはじめ、スマート望遠鏡という新しい分野の撮影機材が登場しています。Seestarはスマートフォンと連携し、誰でも簡単に天体撮影を楽しめるのが特長です。星空全体の撮影には向いていませんが、特定の天体を大きく簡単に撮影したい場合には最適な機材です。

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星空シミュレーションソフトの紹介

天体撮影では、撮影対象となる天体や天の川の位置を事前に確認しておくと、撮影がスムーズに進みます。そのために便利なのが「星空シミュレーションソフト」です。これらのアプリやソフトは、スマートフォンやPCで夜空の様子をシミュレーションでき、撮影の天体の位置や動きを把握するのに役立ちます。ここでは、初心者にもおすすめのアプリやソフトを紹介し、それらの活用方法を解説します。



1. スマホアプリ

スマートフォン用の星空シミュレーションアプリは、持ち運びが簡単で、撮影現場での確認にも便利です。以下のアプリが特におすすめです。

SkySafari:星座や天体の情報が豊富で、詳細なシミュレーションが可能なアプリです。高度や方角も正確に表示され、撮影計画を立てやすくなります。また、未来の日付や時間を入力すると、その日時の星空もシミュレーションできるため、撮影日程を決める際にも便利です。

Star Walk 2:直感的な操作で星空をリアルタイムに観察できるアプリです。スマホをかざすと、現在の方角や星の名前が画面上に表示されるため、撮影したい天体をすぐに見つけることができます。



2. PC用ソフト

PCで使用できるシミュレーションソフトは、パソコンの画面上で細かい操作が可能で、事前のプランニングに役立ちます。特におすすめのソフトは以下の通りです。

Stellarium:無料で使用でき、初心者から上級者まで幅広く愛用されている星空シミュレーションソフトです。シンプルでわかりやすいインターフェースが特徴で、観測地と日時を設定するだけで、画面にリアルな夜空が表示されます。星や星座、惑星の位置が一目で確認できます。また、望遠鏡やカメラの視野をシミュレーションする機能もあり、機材に合わせた撮影計画が立てやすいです。

ステラナビゲーター12:ステラナビゲーターは、アストロアーツ社が開発している日本製の高機能星空シミュレーションソフトです。観測地や日時を細かく設定できるだけでなく、各種天体の位置情報や詳しい解説も豊富で、望遠鏡の視野や構図を表示する機能もあります。完全に日本語対応で、初心者には特に使いやすい天体シミュレーションソフトです。



まとめ

天体撮影を楽しむためには、撮影対象や条件に合わせた事前準備が欠かせません。月齢や天候、光害を考慮して撮影の計画を立て、シミュレーションソフトを活用することで、より確実に星空や天体を捉えることができます。風景撮影用の機材でも星空を撮影することができますので、まずは手持ちのカメラやスマホで気軽に始めてみるのがおすすめです。少しずつ経験を積み、撮影機材を増やしていくことで、星空撮影が一層楽しく魅力的に感じられると思います。ぜひ、天体撮影を末永く楽しんでください。





リンク集

天体撮影に便利なアプリを提供しているメーカーの公式サイトへのリンク集です。

天気予報関係

GPV天気予報

Windy天気予報

星空指数天気予報


光害マップ

光害マップ


月齢カレンダー

シンプル月齢カレンダー


星空シミュレーションアプリ

SkySafari

STAR WALK 2


星空シミュレーションソフト(PC用)

Stellarium

ステラナビゲータ12



レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。


ビクセン レデューサーV0.71xの インプレッション

Seestarで楽しむ南半球の星空 ビクセン レデューサーV0.71xの
インプレッション

発売以来、優れた結像性能で注目を集めているビクセンのVSD90SS(以下「VSD90SS」)用の焦点距離を短縮する補正レンズ「レデューサーV0.71×」が2024年8月に発売されました。
早速、この新しいレデューサーをフィールドに持ち出し、VSD90SSを使って天体撮影を行いましたので、その様子をご紹介します。また、今回、VSD100F3.8(以下「VSD100」)用のレデューサーV0.79×との比較についても考察しました。

使用機材
VSD90SS鏡筒 レデューサーV0.71x

レデューサーV0.71×の概要

レデューサーV0.71×は、4群4枚のレンズ構成で、うち2枚にEDレンズを採用しています。イメージサークルは約44mmと広く、35mmフルサイズの撮影にも対応しています。また、ベテランユーザーの厳しい要求に応えるため、スケアリング調整ネジも備えています。

VSD90SSに使用すると、焦点距離は495mmから351mmに短縮され、口径比もF5.5からF3.9と明るくなります。

なお、レデューサーV0.71×は、VSD70SSにも使用できますが、旧機種のVSD100には使用できません。実際にVSD100に装着を試みましたが、接眼部の内径に対してレデューサーの直径が大きく、最後までねじ込むことができず、取り付けが不可能でした。


VSD90SSへのレデューサー取り付け

レデューサーV0.71×をVSD90SSに取り付ける際は、まずM84延長筒を含む接眼部のアダプター類を全て取り外し、レデューサーV0.71×をドロチューブに直接ねじ込みます。その後、レデューサーV0.71×の後部に直焦ワイドアダプターDXをねじ込み、カメラを装着して撮影を行います

一方、レデューサーV0.79×を使用する場合は、鏡筒に標準で付属するM84延長筒の後部にレデューサーをねじ込みます。ドロチューブに直接レデューサーV0.79×を取り付けるとピントが合わないため、注意が必要です。


レデューサーV0.71×の星像

レデューサーV0.71×の結像性能を検証するため、VSD90SSを郊外に持ち出し天体撮影を行いました。撮影には、Astro6D(キヤノンEOS6D改造機)とASI2600MMProのカメラを使用し、ASIAIRアプリでオートガイド追尾撮影を行いました。
まず、Astro6Dで撮影した北アメリカ星雲の写真です。カラーバランスを整え、コントラストを強調した1枚画像です。北アメリカ星雲が画角一杯にバランスよく収まっているのがわかります。


次に、画像の中央部と周辺部をピクセル等倍で切り抜いたものを以下に示します。

ご覧いただくとわかる通り、中心部はもちろん、最周辺部でも星はほぼ点像に収まっており、35mmフルサイズ全体にわたって鋭い星像を結んでいます。フラット補正を行っていないにもかかわらず、周辺減光も目立ちません。
次に、APS-Cサイズセンサーを搭載したASI2600MMProで撮影したケフェウス座のIC1396の画像です。都市部でナローバンドフィルターを使って撮影しカラー化しました。


IC1396は非常に大きな星雲で、VSD90SSの直焦点では一部が画角からはみ出してしまいますが、
レデューサーV0.71×を使用することでバランスよく収まりました。

こちらも、中央部と周辺部のピクセル等倍画像を比較しています。35mmフルサイズの時と同様、中心部はもちろん、最周辺部でも星像がほぼ点像を保っていることが確認できます。


レデューサーV0.79×との比較

VSD100F3.8用に開発されたレデューサーV0.79×は、3群3枚のレンズ構成で、そのうち1枚にEDガラスが使用されています。

新旧レデューサーを外観で比較すると、レデューサーV0.71×の方が対物レンズ側のレンズ直径が大きく、レンズ枚数が多いため、より重く感じられます。
VSD90SSにレデューサーV0.79×を装着した場合、焦点距離は391㎜に短縮され、F値は4.3まで明るくなりますが、新型のレデューサーV0.71×のF3.9と比べると、やや暗くなります。

上の図はメーカーが発表しているスポットダイアグラムです。これを比較すると、APS-Cサイズの対角までは星像の大きさに大きな違いは見られませんが、35mmフルサイズの対角に近づくにつれて、星像が大きくなることがわかります。


レデューサーV0.79×の星像

レデューサーV0.79×の結像性能を検証するため、Astro6Dを使用してオートガイド追尾撮影を行いました。以下は、Astro6Dで撮影した北アメリカ星雲の写真です。カラーバランスを調整し、コントラストを強調した1枚画像です。レデューサーV0.71×で撮影した画像と比較すると、画角がやや狭くなっていることがわかります。


次に、画像の中央部と周辺部をピクセル等倍で切り抜いたものを以下に示します。

ご覧いただくとおり、中央部ではシャープで星像は丸くなっていますが、最周辺部になると星が若干放射状に流れて写っています。
さらに、APS-Cサイズに切り抜いた中央部と周辺部のピクセル等倍画像を以下に示します。

こちらをご覧いただくと、中央部も周辺部も星像は丸くシャープです。スポットダイアグラムが示す通り、APS-Cセンサーサイズまでであれば、旧型レデューサーでも十分にシャープな星像が得られることがわかります。


新旧レデューサーを使った感想

新旧両方のレデューサーを使用してみた感想としては、新型レデューサーはF値が明るくなったにもかかわらず、星像の品質がさらに向上し、35mmフルサイズでも十分に満足できる結果が得られました。
周辺減光については、新型レデューサーの方が軽減されているように感じましたが、APS-Cサイズのカメラでは大きな差は感じませんでした。ただ、どちらのレデューサーも35mmフルサイズの最四隅では急激に暗くなる傾向が見られました。
F値が多少暗くても問題がなく、APS-Cサイズのカメラを使う場合には、旧型レデューサーでも十分に撮影を楽しめると思います。


彗星撮影にもおすすめのレデューサー

下の画像は、VSD90SSにレデューサーV0.71×とフルサイズデジタル一眼レフカメラを組み合わせて撮影した紫金山・アトラス彗星です(※周囲をトリミングしています)。

紫金山・アトラス彗星を撮影したのは、日の出前のわずかな時間でした。彗星の撮影は時間が限られるため、F値が明るい光学系が非常に有利です。
レデューサーV0.71×は、星雲や星団の撮影に限らず、夜空を駆ける彗星の撮影にも強力な武器となるでしょう。


最後に

今回の撮影を通じて、新型レデューサーV0.71×の性能を確認することができました。総合的に見て、新型レデューサーV0.71×は、明るいF値と優れた星像性能を兼ね備え、特に35mmフルサイズカメラを使用するベテランの天文ファンにおすすめできるアイテムだと感じました。
旧型レデューサーもAPS-Cサイズのカメラには十分実用的ですが、周辺減光の軽減や広い画角でのシャープな星像、さらに明るいF値を求める方には、新型レデューサーが最適な選択です。
VSD90SSやVSD70SSにこの高性能な新型レデューサーを組み合わせることで、その魅力がさらに引き立ちます。ぜひ新しいレデューサーを手に入れて、VSD90SSやVSD70SSの高性能を存分に体感してみてはいかがでしょうか。



レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。

冬の天体観測ガイド

冬の天体観測ガイド


冬の夜空は1年を通して最も透明度に恵まれる時期にあたり、星雲星団など深宇宙の観測に適した季節です。低い気温も撮影派にとっては力強い味方です。デジタルカメラやCMOSカメラで撮影を行う際、星雲や星団の撮影には長時間の露出を行いますが、カメラは長時間露出すると発熱し、その熱の影響で画像のノイズが増大します。ところが冬は寒い外気がカメラの発熱を抑えてくれますので、夏に比べ、ノイズが少なくてクリアな画像を得やすいのです。

銀河中心部を見せる荘厳な夏の天の川も素晴らしい眺めですが、天空をまたぐ淡い冬の天の川の美しさはこれも筆舌に尽くしがたく、その周辺には見ごたえのある星雲や星団が数多く存在します。


星雲星団は大変淡く、楽しみ方は写真撮影か電子観望が主流となりますが、大型の対空双眼鏡や集光力のある望遠鏡を用いれば、二重星団やプレアデス星団、オリオン大星雲やアンドロメダ銀河などは、眼視でも十分に楽しむことができます。

ただし月惑星に関しては、冬の大気は乾燥していてその面では有利なのですが、上空に強い風が吹く気圧配置となる日が多く、高倍率を必要とする月惑星観望に不利なシーイングになることが多いことも知っておきましょう。

お好みの天体を、用途にあった機材を選択してして思う存分にお楽しみください!

ステラナビゲーターで作成


ヒント→ 上記星図は2月15日午後9時ものです。月と惑星以外のすべての星の位置は、日時が1か月進めば、観測時刻を2時間早めることでほぼ同じになります。  ◎恒星の位置 : 12月15日25時 ≒ 1月15日23時 ≒ 2月15日21時





オリオン座の馬頭星雲からM42
大きい写真はコチラ 

大きい写真はコチラ 
撮影機材:ビクセン FL55SS鏡筒フラットナーHDキットSXP赤道儀
使用カメラ:Astro6D
露出時間:300秒×16コマ
撮影条件:RAWモード、ISO3200、M-genにて追尾撮影
撮影機材:ビクセン FL55SS鏡筒フラットナーHDキットSWAT-350 V-spec
使用カメラ:Astro6D
露出時間:180秒露光×16枚
撮影条件:SWAT-350 V-specにてノータッチ追尾
ふたご座流星群 2018「熊野灘 と ふたご座の流れ星」
大きい写真はコチラ 
NGC2264、コーン星雲とFox Fur Nebula
大きい写真はコチラ 

撮影レンズ:シグマ 14mm F1.8 DG HSM レンズ、ソフトフォーカスフィルター使用
使用カメラ:キヤノン EOS5D MarkII
撮影条件:RAWモード、ISO5000、F2.0、60秒露光、流れ星が写った24枚を比較明合成 ポータブル赤道儀 SWAT-350にて追尾撮影
画像処理ソフト:Photoshop CC 2017
撮影場所: 三重県熊野市
撮影機材:ミューロン250CRS(レデューサー使用)、ビクセンAXD赤道儀
使用カメラ:Moravian Instruments G3-16200 冷却CCDカメラ Astronomik Type2C LRGBフィルター
露出時間:L=15分×8フレーム、RGB=各10分×2フレーム (総露出時間:3時間)
画像処理ソフト:ステライメージ8、PhotoshopCC 2015
撮影場所:岡山県備前市八塔寺、2018年撮影

IC2177 かもめ星雲
大きい写真はコチラ 
撮影光学系:ビクセン VSD100 F3.8
撮影カメラ:ニコンD810A 天体撮影専用デジタル一眼レフカメラ
赤道儀:ビクセンSXP赤道儀ステラショット1.5にて導入・オートガイド追尾
カメラの設定:ホワイトバランスマニュアル、ISO1250、RAWモード
露出時間:300秒×10コマ
画像処理ソフト: ステライメージ7、PhotoshopCC 2015
撮影場所: 岡山県備前市吉永町八塔寺、2016年撮影

ハインドの変光星雲付近、NGC1555、Sh2-239
大きい写真はコチラ 
撮影光学系:ビクセン VSD100 F3.8
撮影カメラ:キヤノン EOS6D(フィルター換装・冷却改造)
赤道儀:ビクセン SXP赤道儀にて追尾
カメラの設定:ホワイトバランス 手動設定、ISO1600、RAWモード
 露出時間:300秒×32コマ
画像処理ソフト:ステライメージ8、PhotoshopCC 2015
撮影場所:岡山県備前市吉永町 八塔寺、2018年撮影

難易度: 易 ★☆☆☆☆ 難易度: やや易 ★★☆☆☆
難易度: 並 ★★★☆☆ 難易度: やや難 ★★★★☆ 難易度: 難 ★★★★★

秋の天体観測ガイド

秋の天体観測ガイド


秋の夜長は天体観測にうってつけです。秋口には前線の停滞や台風の影響などで長雨に見舞われることも少なくないのですが、秋が深まり木々が紅葉で赤く染まり始めるころには、抜けるような秋晴れの空が姿を現すようになります。この頃には夜の時間がぐっと長くなるうえ、空気が乾燥し透明度がグングン向上していきますので天体観測には格好のシーズンとなります。

秋の夜空を見上げれば、夏の星座(はくちょう座)は西の空遠くになっていて、東からは冬の星座(おうし座)が早くも顔を見せ始めています。過ぎゆく夏と到来する冬の両方が観られ季節の移ろいを感じます。そして空高くにはカシオペア座やアンドロメダ座があって、一層秋の到来を印象づけています。

夏の間に月・土星・木星など太陽系の天体を経験された入門者の方は、ぜひ次のステップとして星雲や星団の観望・撮影に挑戦してみてはいかがでしょうか?この時期に観望が楽しめる星雲・星団の例としては、M31アンドロメダ銀河、H-χ二重星団、M45プレアデス星団などがあります。大口径の双眼鏡を用いたり、フィルタワークを駆使すれば網状星雲も眼視挑戦が可能な対象です。 撮影ならそれらに加え、ケフェウス座のIC1396、ペルセウス座IC1805、ぎょしゃ座のIC410/IC405など、近赤外域のHα線を発する赤い星雲が好対象となります。

お好みの天体を、用途にあった機材を選択してしてお楽しみください!



南の方角を観測すれば、星々は東から昇り、西へと沈む。太陽と同じ動きで移動します。惑星観測から始めた初心者の方にはこの星の動きになじみがあるでしょう。しかし次のステップとしては、是非北の空にも注目してみてください。南向きから体をくるっと180度回転させて北の空を見てみれば、星々は北極星を中心に反時計回りに運動します。上図ではM31アンドロメダ銀河の位置がほぼ天頂です。

ヒント→ 上記星図は11月15日午後8時ものです。月と惑星以外のすべての星の位置は、日時が1か月進めば、観測時刻を2時間早めることでほぼ同じになります。  ◎恒星の位置 : 10月15日午後10時 ≒ 11月15日午後8時 ≒ 12月15日午後6時

星図:ステラナビゲーターで作成


眼視・撮影向き 撮影向き
・網状星雲
・H-χ二重星雲
・M45プレアデス星団

・M31アンドロメダ銀河
・北アメリカ・ペリカン星雲
・ガーネットスターとIC1396
・ハート&ソウルIC1805・IC1848
・勾玉星雲IC405・IC410


ペルセウス座
▲マウスを載せると詳細表示
大きい写真はコチラ 
おうし座の北~ぎょしゃ座
▲マウスを載せると詳細表示
大きい写真はコチラ 
ペルセウス座の全景です。
右上の赤い散光星雲はIC1805ハート星雲/IC1848ソウル星雲で、その少し右下には二重星団があります。左下の赤い散光星雲はNGC1499カリフォルニア星雲です。
105mm+ペンタ67銀塩での作品ですがAPS-C機+50mmレンズでも、ほぼ同等の画角が得られます。
おうし座の北からぎょしゃ座にかけての領域です。
左の赤い星団がIC405勾玉星雲、右がカリフォルニア星雲です。右下の青い散開星団はM45プレアデス星団です。
105mm+ペンタ67銀塩での作品ですがAPS-C機+50mmレンズでも、ほぼ同等の画角が得られます。
網状
大きい写真はコチラ 
はくちょう座の超新星残骸です。特に明るい写真左側NGC6992は眼視挑戦が可能な星雲として知られます。
ドブソニアン望遠鏡や、望遠鏡2本を使って作成する対空双眼望遠鏡に、OIIIなどのネビュラフィルターを組わせて挑みます。
写真にとれば赤と青緑の対比が美しく、超新星爆発による微細なフィラメント構造が観測できます。

撮影光学系:タカハシ ε-180ED
撮影カメラ:Astro6D(キヤノンEOS6D フィルター換装・冷却改造モデル)
赤道儀:ビクセンAXD赤道儀にて追尾、ステラショット、M-GENにてオートガイド追尾
カメラの設定:ホワイトバランス 手動設定、ISO1600、
RAWモード、IDAS UIBAR-Ⅲフィルター
露出時間:180秒×12コマ
画像処理ソフト:ステライメージ8、PhotoshopCC 2015
撮影場所:岡山県備前市吉永町 八塔寺、2018年撮影
M31
大きい写真はコチラ 

網状
大きい写真はコチラ 
私たちが住むこの天の川銀河の、お隣さんの銀河です。7倍程度の双眼鏡でも中心の明るい部分が眼視できます。 写真にとると見事な腕の広がりが撮影でき、その広がりの大きさは満月5つ分ほどもあります。 アンドロメダ銀河は現在、私たちの天の川銀河へ向かって進んでおり、約40億年後には衝突し融合するそうです。

撮影光学系:タカハシTOA-130、レデューサーレンズ使用
撮影カメラ:Astro6D(キヤノンEOS6D フィルター換装・冷却改造モデル)
赤道儀:ビクセンAXD赤道儀、ステラショットにてオートガイド追尾
カメラの設定:ホワイトバランスマニュアル、ISO1600、IDAS UIBAR-Ⅲ
露出時間:420秒×8コマ
画像処理ソフト: ステライメージ8、PhotoshopCC 2015
撮影場所: 岡山県備前市吉永町、2017年撮影
ガーネットスターはケフェウス座の変光星で、その正体は直径が太陽の約1500倍もある赤色超巨星です。 あまりに赤いため宝石の名になぞらえて「ガーネットスター」と名付けられました。 その南側に広がる赤い星雲がIC1396です。 恒星と星雲の色の対比がとても美しく、長時間観測できる北天に位置するため、撮影の好対象になります。

撮影光学系:タカハシ ε-180ED
撮影カメラ:Astro6D(キヤノンEOS6D フィルター換装・冷却改造モデル)
赤道儀:ビクセン AXD赤道儀にて追尾
カメラの設定:ホワイトバランス 手動設定、ISO1600、RAWモード
露出時間:240秒×12コマ
画像処理ソフト:ステライメージ8、PhotoshopCC 2015
撮影場所:岡山県備前市吉永町 八塔寺、2018年撮影
網状
大きい写真はコチラ 
写真右側の星雲がIC1805で、心臓のような形をしていますので「ハート星雲」という愛称があります。
左側のIC1848は胎児のような形をしていることから日本では「胎児星雲」とも呼ばれます。
母体に宿った魂ということなのか、Heart & Soul(英語で、心と魂=熱心に打ち込むの意)の語呂がいいのか、海外では「ハート&ソウル星雲」と呼ばれることが多いです。

撮影光学系:コーワ PROMINAR 500mm F5.6 FL (TX07使用, 350mm F4)
撮影カメラ:Astro6D(キヤノンEOS6D フィルター換装・冷却改造モデル)
赤道儀:ビクセン SXP赤道儀 にて追尾
カメラの設定:ホワイトバランス 手動設定、ISO1600、RAWモード
露出時間:240秒×13コマ
画像処理ソフト:ステライメージ8、PhotoshopCC 2015
撮影場所:岡山県備前市吉永町 八塔寺、2018年撮影
ぎょしゃ座の星雲星団
▲マウスを載せると詳細表示
大きい写真はコチラ 
ぎょしゃ座は日本では11月の2時ごろ、12月の0時ごろに天頂付近を通過します。観測条件が良いため、写真写りの良い星域です。
コーワプロミナー350mmF4とフルサイズカメラを組み合わせれば、左に2つの淡い散開星団M36/M38、右に散光星雲IC405/IC410を配したご覧のような構図が完成します。
この付近は冬の天の川にあたりますので星がびっしりと集まり、その星々の色は様々で表情豊かなことも特徴です。

撮影光学系:コーワ PROMINAR 500mm F5.6 FL (TX07使用, 350mm F4)
撮影カメラ:Astro6D(キヤノンEOS6D フィルター換装・冷却改造モデル)
赤道儀:ビクセン SXP赤道儀 にて追尾
カメラの設定:ホワイトバランス 手動設定、ISO1600、RAWモード
露出時間:240秒×13コマ
画像処理ソフト:ステライメージ8、PhotoshopCC 2015
撮影場所:岡山県備前市吉永町 八塔寺、2018年撮影


難易度: 易 ★☆☆☆☆ 難易度: やや易 ★★☆☆☆
難易度: 並 ★★★☆☆ 難易度: やや難 ★★★★☆ 難易度: 難 ★★★★★


手軽に楽しめるバードウォッチング

手軽に楽しめるバードウォッチング 手軽に楽しめるバードウォッチング

カバー写真:この鳥を見てバードウォッチングを始めたという人も多い人気の鳥カワセミ
「バードウォッチング」には、歩くことによる適度な運動効果と野鳥の声を聴いたり、姿を観察する事による癒 しやリフレッシュ効果が期待できます。 日常生活に「バードウォッチング」を取り入れることで、野鳥たちの可愛い姿、美しい姿を見て楽しむだけでな く、 鳥を探して歩くことで、 自然と健康を維持することにもつながり、 「「バードウォッチング」 は一石二鳥の趣味 と言えるかもしれません。


◼️身近に野鳥はくらしています

普段生活をしていて「「鳥」というと「「スズメ・ハト・カラス」くらいしかいないと思うかもしれません。ところ が、ほんのちょっとでも「いるかもしれない!」と気をつけて見るだけで、今まで「なんだスズメか…」と思っ ていた鳥が、実は違う鳥だということに気付くことがバードウォッチングの第一歩です。また、季節によって見 ることのできる野鳥の種類が変わっていくのも、バードウォッチングの面白いところです。


写真:なんだスズメか…なんて思わずに、よくよく目を向けてみると表情やしぐさが魅力的です 。


◼️耳をすましてみよう

「バードウォッチング」=「「野鳥を観察すること」と思うかもしれませんが、特に樹のある場所でバードウォッ チングをする時は、すぐ目に見える場所に野鳥が出てくることはほとんどありません。バードウォッチングの 8 割は、 耳からの情報といっても過言ではありません。 まずは耳を澄ませて鳴き声で存在に気付きましょう。また、 鳴き声が聞こえなくても、地面の枯れ葉を動かすカサカサとした音にも注意を払ってみましょう。野鳥たちが落 ち葉の下にいる虫を探している音かも知れません。その場に立ち止まって、音のした方を探してみましょう。


写真:鳴き声が聞こえるツツジの植え込みを覗くと、シジュウカラの巣立ち雛を発見!


◼️声のする方を探してみよう

声が聞こえた方向に目を向け、動くものがないかじっと見てみましょう。葉陰や藪の中でじっとしている時の野 鳥を見つけるのは難しいですが、動けば居場所がわかるので、根気よくチャンスを待ちましょう。この時、不用 意に近づいたりせず、できるだけ動かないことがポイントです。追いかけたくなる気持ちは分かりますが、しっ かりと見る前に、遠くに飛び去ってしまいます。



写真:池のほとりで休息するカルガモをスマホでパチリ。公園の鳥は人をあまり怖れないことが多い。


◼️まずは公園で鳥を探そう

まずは公園で鳥を探してみましょう。 公園は小さな児童公園から、 豊かな自然環境を持つ広い公園まで様々です。 広い都市公園の方が野鳥の種類数が多く、見やすいですが、桜などの樹木があれば近所の児童公園にだって野鳥 たちは暮らしています。 買い物や散歩の途中に公園を通りかかったら、「いるかもしれない!」という気持ちを持 って観察してみましょう。 「「スズメ、カラス、ハト」以外にも野鳥たちが暮らしていることにきっと気づけるはず です 。 ここ大都市大阪にもバードウォッチングに適した都市公園が数多くあります。今回はその中から「大阪城公園」 と「花博記念公園」の 2 箇所を簡単にご紹介します。



■バードウォッチングに適した都市公園[大阪編]

【大阪城公園】
大阪城の天守閣を囲むように整備された『大阪城公園』は、大都市大阪の中心に位置する都市公園です。大都市 の中心とは思えないような緑深い公園内では、四季を通して多くの野鳥が観察できます 。 森が広がるエリアでは、 シジュウカラ、ヤマガラ、エナガ、コゲラなどが通年見られ、 春秋の渡りの時期には、 本 来山で見られるセンダイムシクイ、キビタキ、オオルリ、コサメビタキ、コマドリ、コルリなどの夏鳥たちが、 渡りの途中に立ち寄り、多くの野鳥愛好家が集まります。 冬は、 地上の枯れ葉をカサカサとかき分けて採餌するツグミやシロハラ、 年によってはトラツグミやルリビタキ、 樹上ではアトリやシメなどの冬鳥たちが観察できます。 JR 大阪城公園駅近くの森が広がる一帯や音楽堂西側上通路が探鳥ポイントとなっています 。 公園中央の梅林では 2 月頃から梅が咲き、メジロやヒヨドリなどが花の蜜を吸いに訪れます。紅梅や白梅にやっ てくる小鳥たちは、野鳥カメラマンたちの格好の被写体になります 。 外堀ではカイツブリやアオサギ、 カワウ、ササゴイなどの水鳥が見られます。 冬季には、 キンクロハジロ、ハシビ ロガモなどのカモ類やユリカモメなどが越冬しにやってきます 。

【花博記念公園鶴見緑地】
大阪市鶴見区に位置する『花博記念公園鶴見緑地』 は、 チューリップやコスモス畑が広がる風車の丘や、 バラ園、 日本庭園などがあり、観光スポットとしても人気の都市公園です。 園中央に位置する大池では、コサギやアオサギが見られ、冬になると、オナガガモやホシハジロ、ヒドリガモ、 オオバンなどが多数飛来します。カモ類は人に慣れており、近距離で観察できます。夏になると、コアジサシや コチドリがやってきます。 北東エリアにある鶴見新山付近では、ジョウビタキやシジュウカラ、コゲラ、シロハラなどが観察できます。 梅林では、花の蜜を吸いにメジロやヒヨドリがやってきます。


◼️公園で見られる主な野鳥


シジュウカラ:全長約 14cm (スズメくらい)

人家の庭先に顔を出してくれることも多く、土の地面と樹木があれば、たいていの公園で姿を見ることができま す。白い頬と、喉から腹にかけてのネクタイのような黒い帯が特徴です。全国に生息し、一年中見ることができ る、スズメに次いで見やすい小鳥の一種と言えるでしょう。



ヤマガラ:全長約 14cm(スズメくらい)

全国に生息し、公園や山地の林で一年中見ることができます 。シジュウカラよりも樹木の多い場所でよく見られ ます。人懐っこい性格で、比較的近距離で観察できることもあります。愛嬌のある正面顔でファンが多く、写真 集も刊行されています。



ヒヨドリ:全長約 27cm(スズメとハトの間くらい)

ピーヨ、ピーヨと賑やかに鳴きながら、枝にとまっている姿を見ることが多いです。全身グレー系で、頬が茶色 いのが特徴です。ほぼ全国に生息し、一年中見ることができます。花の蜜を好み、春には桜や梅の木にやってき て、嘴まわりを花粉まみれにしている姿を見かけます。



キジバト:全長 約 33 ㎝

よく電線にとまってデーデポッポポーと鳴いている姿を見かけます。山鳩と呼ばれていますが、都心の公園でも 普通に見られます。街中で見かけるドバトと違って、翼の鱗模様と頸の縞模様が特徴です。



メジロ: 全長約 12cm(スズメより小さい)

チーと鳴きながら春先につがいで庭先の梅の木に花の蜜を吸いにやってきます 。オリーブ褐色に目の周りのアイ リングが特徴です 。春から夏にかけてチーチュルチーチュルと美しい囀りを響かせてくれます 。全国に生息し、 一年中見ることができます。



ツグミ:全長約 24cm(スズメより大きい)

日本には 11 月くらいにやってくる冬鳥で、 4 月頃まで見られます。 開けた場所を好むので比較的見つけやすいで す。地上に落ちている植物の実や、虫などの食べ物を探して歩いている姿を見ることが多く、食べては立ち止ま り、胸を張った姿勢で周囲を見回す動作を繰り返します。赤茶色の羽根が目立ちます。



ジョウビタキ オス



ジョウビタキ メス :全長約 14 ㎝(スズメくらい)

日本には 11 月くらいにやってくる冬鳥ですが、標高の高い地域では繁殖例も増えています。翼に白い斑があり、 オスは胸から腹が橙色でキレイ系。メスは目がクリっとしたカワイイ系でどちらも魅力的です 。 林の周辺や河川敷、市街地の空き地など、やや開けた環境を好み、単独で生活します 。時々ピョコンとおじぎを して尾を震わせる動作もチャーミングで、澄んだ声で「ヒッ、ヒッ」と鳴きます。



ハクセキレイ: 全長約 21cm(スズメより大きい)

九州以北に生息。元来水辺の鳥ですが、芝生や駐車場などの舗装路上でも、食べ物を探して歩き回っている姿を よく見かけます。白い顔で目の前後に黒い線が走っているのが特徴。長い尾を上下に振りながら、チョコマカと 歩き回るカワイイ姿は見飽きません。



コゲラ:全長約 15cm(スズメくらい)

都会のちょっとした公園でも見掛ける一番身近なキツツキの仲間。ギィーと鳴きながら、桜の木の幹をコツコツ とつつきながら上へ上がっていき、隣の幹へ移りまた上へと上がっていく姿をよく見掛けます 。



カワセミ: 全長約 17cm(スズメより少し大きい)

鮮やかなコバルトブルーの背が美しく、カワセミを見て以来バードウォッチングにはまった!という人も多い人 気者です。全国に生息し、都市公園の池などで見られることも多く、水面に突き出た枝から水中を伺い、飛び込 んで魚やエビなどを捕まえて食べます。



カルガモ: 全長約 60cm(カラスより大きい)

全国に生息、他のカモ類はほとんど春には北に渡ってしまうが、カルガモは一年中見られます。ヒナを連れた様 子が、テレビなどで紹介されることもあり、最も身近なカモ類です。一般的には、カモはオスが鮮やかな姿の種 類が多いのですが、カルガモは雌雄の外見がほとんど同じです 。



アオサギ :全長約 90cm(カラスより大きい)

全国に生息、ツルと見間違えるほど長い頸にグレーから青灰色の体色が特徴。川や池で一年中見られます。



コサギ: 全長約 61cm(カラスより大きい)

体が大きく真っ白なサギ類は、遠くにいても見つけやすい野鳥です。川や池にいて首の長い白サギは、たいてい ダイサギかコサギです 。コサギはダイサギの 2/3 ほどの大きさで、足指が黄色いのが特徴です。歩きながら足指 を水中でブルブル震わせて、魚などを追い出して捕まえます。



GENESIS22 8×22 軽量コンパクトながら XD レンズ搭載でクリアな見え味の日本製高級双眼鏡


■双眼鏡を持ってでかけよう!

野鳥は基本的に近寄らせてはくれません。中にはドバトやカルガモのように、向こうから近寄ってくるような鳥 もいないわけではありませんが、肉眼で見ても「何か鳥がいるなぁ」としか分からないのが大半のシチュエーシ ョンです。 そこで「双眼鏡」の出番になります。 双眼鏡があれば、遠くの枝に止まっている鳥も「「ヒヨドリだ!」とか「「ヤマガラがいる!」と鳥の種類が分かる ようになります。 また、 「「スポッティングスコープ」があると、さらに大きく見ることができます。川の対岸にいる水鳥や尾根の上 を飛ぶ猛禽類といったより遠距離の鳥の識別もできるようになります。 鳥の種類が分かるだけでなく、鳥の表情やしぐさまで楽しめようになるのもスコープの魅力です。 次回は、双眼鏡や望遠鏡などの観察アイテムについてご紹介したいと思います。



レビュー著者: 岩本 多生氏

ASIAIRで楽しむデジカメ天体撮影 番外編

ASIAIRで楽しむデジカメ天体撮影 番外編 ASIAIRで楽しむデジカメ天体撮影
番外編

これまでASIAIRとデジカメを使った撮影方法についてご紹介してきましたが、天体撮影を 続けるうちに、「もっと綺麗に撮りたい」「天体をさらに大きく撮りたい」と感じるよう になってくると思います。今回は、ASIAIRを使ってより美しい写真を撮る方法と、機材の ステップアップについてご紹介します。



基本編はこちら▶︎


使用機材
FL55SS鏡筒 レデューサーHD
キット
ZWO EAF 


撮影枚数を増やしてみよう

撮影した画像を画像処理ソフト(ステライメージ9など)で処理する際には、複数の画像 を重ね合わせ、その後コントラストを強調して星雲や銀河を浮かび上がらせます。コント ラストを強調するとノイズが目立つことがありますが、重ね合わせる画像の枚数を増やす ことで、画像の荒れが軽減されます。



前回の記事では、初めの一歩として5枚の撮影を推奨しましたが、撮影に慣れ、オートガイ ドが安定してきたら、10枚、20枚と枚数を増やしてみましょう。また、撮影対象によって は、一枚当たりの露出時間を調整するのも良い方法です。


ディザリングを使ってみよう

ディザリングは、天体撮影のテクニックの一つで、1枚撮影が終わるごとに構図を少しずら して次の露出を開始する手法です。画像を重ね合わせる際にノイズが目立たなくなるた め、多くのベテラン撮影者が取り入れている方法です。



ASIAIRを使えば、ディザリング撮影も簡単に行えます。オートガイドのマークをタップし て詳細設定画面(Guiding Advanced Settings)を開き、「ディザリング(Dither)」のスイッチを オンにするだけで、ディザリング撮影が可能になります。 ASIAIRでは、何枚ごとに構図をずらす(Interval)かなど、細かい設定も可能です。私の場合、 4枚ごとにディザリングするように設定していますが、いろいろな条件を試して、最適な設 定を見つけてみてください。


カメラレンズの絞り値を変更しよう

星の画像を拡大してみると、ピントをしっかり合わせたはずなのに、星像がどことなくぼ やけていたり、画像中央の星に比べて周囲の星が伸びて写っていることがあります。これ は、カメラレンズを絞り開放で撮影した際によく見られる現象です。



このような場合、絞り値を大きくする(レンズを絞る)ことで星像が改善されます。ただ し、天体は非常に暗いため、風景写真のように大きく絞り込むことは難しいです。F2.8の レンズであればF4前後、F4のレンズであればF5.6前後まで絞って撮影してみましょう。 レンズの絞り値を変更した際は、露出時間の調整を忘れないようにしましょう。露出時間 が長くなりすぎる場合は、ISO感度を変更することで対応できます。絞ることで星像が引 き締まり、周辺減光も軽減されるため、より美しく天体を撮影することができます。


望遠鏡へのステップアップ

カメラレンズの天体撮影に限界を感じたら、望遠鏡を使った天体撮影にステップアップさ れてみてはいかがでしょうか。



カメラレンズ(望遠レンズ)は、一般撮影から天体撮影まで幅広く楽しめる点が魅力で す。しかし、多数のレンズを組み合わせているため、無限遠の対象に特化して作られた天 体望遠鏡に比べると、星像の鋭さやコントラストでは劣ることがあります。
性能比較として、ニコンの70-200㎜ F2.8レンズ(AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II)をF4まで絞って撮影したアンドロメダ大銀河の画像と、ビクセンのFL55SS(レデュー サーHD付き)で撮影した画像を以下に掲載しました。


上の画像を見比べると、70-200㎜レンズで撮影したアンドロメダ銀河の写真では、中心部 に比べて周囲が暗くなっているのがわかります。一方、ビクセンFL55SSで撮影した画像 は、背景の明るさがほぼ均一で、周辺減光が少ないことがわかります。 さらに、画像の中心と右上部分を拡大して比較しました。


どちらも中心付近の星像は真円ですが、70-200㎜レンズで撮影した画像の最周辺部では、 星が放射状に流れて写っています。一方、FL55SSで撮影した画像は、中心部と比べて若干 星の形が崩れているものの、目立たず真円に近い状態を保っています。 一般写真撮影用として定評のある高価なレンズでも、無限遠の星を撮る能力では、高性能 な天体望遠鏡の方が優れていると改めて感じました。


望遠鏡を使うその他のメリット

天体望遠鏡への変更には、星像以外にもさまざまなメリットがあります。 まず、天体望遠鏡は鏡筒バンドを使って架台にしっかりと固定できるため、オートガイド の失敗が減少します。また、オートガイダーも鏡筒バンドの上に固定できるので、機材全 体の重量バランスが良くなります。



さらに、ZWO社の電動フォーカサーEAFを接眼部に取り付ければ、ASIAIRでオートフォー カス機能を利用できるようになります。 小さな天体を撮影する際には、500mm以上のレンズが必要になりますが、超望遠カメラレ ンズは非常に高価です。その点、天体望遠鏡なら500mm以上の焦点距離を持つものが多 く、比較的リーズナブルな価格で超望遠撮影を楽しめます。また、カメラレンズに比べ、 天体望遠鏡は長期間にわたって使用できるというメリットもあります。 このように、天体望遠鏡に移行することで、撮影の幅が広がり、より安定した高品質な写 真を撮影できるようになります。


天体望遠鏡のお勧め

カメラレンズからステップアップしたい方には、口径6センチ前後の天体望遠鏡が使いやす くておすすめです。特に、撮影用の補正レンズ(レデューサーレンズなど)が用意されて いる望遠鏡が適しています。ビクセンのFL55SSやタカハシのFS60CBなどがその代表で、こ のクラスの望遠鏡なら、大きさも望遠レンズとほぼ変わらないため、扱いやすいでしょう。


天体撮影に特化した望遠鏡(Askar FMA180proやウィリアムオプティクス RedCat 51など) もありますが、これらはどちらかというとベテラン天文ファンのサブ機として人気があり ます。初めて望遠鏡を使う方には、ビクセンFL55SSのように月面のクレーターや惑星の観 望も楽しめるタイプの天体望遠鏡を選ぶ方が、天文の世界を広く知ることができ、楽しめ ると思います。


最後に

今回は、天体撮影をさらに楽しむためのテクニックとして、ディザリングの活用や望遠鏡 へのステップアップについてご紹介しました。また、カメラレンズの絞り値を変更する方 法や、撮影枚数を増やすことで、より美しい天体写真を得るためのポイントについてもお 伝えしました。 これらのテクニックを参考にしていただき、ASIAIRを活用しながら、天体撮影をより深く 末永く楽しんでいただければ幸いです。


レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。

紫金山・アトラス彗星が大接近中です!!

>見られるか!? 紫金山・アトラス彗星!! 見られるか!? 紫金山・アトラス彗星!!

紫金山・アトラス彗星C/2023 A3は放物線軌道の彗星で、太陽への接近は一度きりです。
そのためハレー彗星のような楕円軌道で太陽を繰り返し周回する彗星に比べ、その動向の予測が困難です。
2024年3月ごろからの観測において、光度の急な増加と、その後の鈍化が認められました。
これを受けて科学者の間では、元々の核は小さなものであってその核は太陽の熱で溶け彗星は崩壊してしまったのではないか?という悲観論が出始め、その後彗星は地球からは観測できない位置になり暫く様子がわかりませんでした。 しかし先日(9月2日)、NASAの太陽周回(ほぼ地球公転軌道で地球の少し先を進む)観測機STEREOが、紫金山・アトラス彗星の姿を捉えたというグッドニュースが飛び込みました!
どうやらこの彗星は崩壊を免れたようです。大彗星になるかどうかはわかりませんが可能性に賭けて今から準備をしておきましょう!!




紫金山・アトラス彗星を観察しよう!

紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3 Tsuchinshan-ATLAS)は、2023年に発見された新しい彗星で、今秋には肉眼で見える明るさになると予想されています。彗星は2024年9月29日に太陽に最接近し、10月12日には地球に最も接近します。日本からは、9月下旬から11月上旬にかけて観察条件が良くなる見込みです。この機会に、ぜひ双眼鏡や天体望遠鏡を使って話題の紫金山・アトラス彗星を観察・撮影してみましょう。




紫金山・アトラス彗星とは?

紫金山・アトラス彗星は、2023年1月に中国の紫金山天文台で発見された彗星です。発見当初、しばらくは彗星の存在が確認されませんでしたが、南アフリカの小惑星地球衝突警報システム(ATLAS)が再確認し、両方の名前を取って「紫金山・アトラス彗星」と名付けられました。

>見られるか!? 紫金山・アトラス彗星!!


紫金山・アトラス彗星の発見時は、彗星は太陽から遠く、明るさは約18等級と非常に暗かったものの、軌道計算により、近日点では太陽から0.39au(水星軌道とほぼ同じ距離)まで接近し、マイナス等級になると予測されました。
久しぶりの大彗星として期待が高まっていましたが、今夏の観測では彗星の増光が徐々に鈍化し、最大で2等級程度と予想する専門家もいます。しかし、彗星の明るさ予測は難しく、過去には突然バーストして明るくなった例もあるため、今後の紫金山・アトラス彗星の動向に注目していきましょう。


彗星の観測チャンスは?

紫金山・アトラス彗星の観測チャンスは、大きく分けて2回あります。1回目は9月末から10月初め、2回目は10月中旬から11月上旬です。それぞれの時期に適した観測条件をまとめました。


9月末から10月初旬の明け方に東の空!

紫金山・アトラス彗星は9月29日に太陽に最も近づき、この頃に明け方の東の空で観測できます。
ただし、この時期の彗星は太陽に非常に近く、薄明が始まる東の空、地平線近くでしか見られません。そのため、東の方向が地平線まで開けた見晴らしの良い場所で観測する必要があります。

>見られるか!? 紫金山・アトラス彗星!!


彗星と太陽の見かけの距離は約3度しか離れておらず、薄明中の観測となるため非常に難しい条件です。しかし、この時期は彗星が最も明るくなる可能性があるため、挑戦する価値があります。彗星が十分に明るければ、薄明の空に長い尾を引く大彗星の姿を目にすることができるでしょう。
なお、10月初旬は、太陽と彗星が非常に近いため、天体望遠鏡や双眼鏡で観測する際には、誤って太陽を視野に入れて目を傷めないように注意が必要です。


10月中旬から11月初旬の夕方に西の空!

10月上旬は、太陽と紫金山・アトラス彗星の位置関係が悪くなり、一時的に観測が難しくなります。次に彗星が見えるのは10月12日頃で、今度は日没後の西の空に姿を現します。

>見られるか!? 紫金山・アトラス彗星!!


この時期、彗星は太陽から離れ始めますが、日没後に観測できる高度が日に日に上昇します。具体的には、18時30分頃の彗星の高度は、10月13日には約5度、14日には約9度、15日には約13度と急速に高くなるため、観測可能な時間が徐々に長くなっていきます。

10月中旬は、地球と彗星の距離が近く、高度も上がるため、9月末よりも彗星の尾が見やすくなる可能性があります。月明かりがある時期ではありますが、彗星がまだ明るい12日や13日頃に、西の空が開けた場所で観測するのが良いでしょう。


双眼鏡で観測しよう!

街灯がなく、夜空が暗く星空が綺麗な場所では、肉眼で6等級の星まで見ることができると言われています。しかし、彗星は恒星と異なり、淡く広がっているため、たとえ肉眼等級であっても見えづらく感じることがあります。

加えて、紫金山・アトラス彗星は太陽に近く、天文薄明中の低空で輝くため、明るさ次第では肉眼で見つけるのが非常に難しいことも予想されます。そのため、双眼鏡を使用して観察することをお勧めします。

>見られるか!? 紫金山・アトラス彗星!!



もちろん天体望遠鏡でも観察可能ですが、彗星観察には、準備が簡単で機動力のある双眼鏡がより適しています。天体望遠鏡と同様に、双眼鏡も口径が大きいほど暗い星まで見えますが、口径が大きいと重くなるため、手持ちで使う場合は口径4センチ程度のものが扱いやすいでしょう。

倍率は10倍前後で、見かけ視界が広いタイプの双眼鏡が彗星観察には使いやすいです。双眼鏡は彗星だけでなく、星雲や星団の観望にも役立つため、この機会に性能の良い双眼鏡を1つ用意しておくと、今後の星空観察にも便利でしょう。


赤道儀で撮影しよう!

デジタル一眼レフカメラや天体用CMOSカメラをお持ちであれば、紫金山・アトラス彗星の撮影に挑戦してみるのはいかがでしょう。使用する光学系は、焦点距離が短めの屈折望遠鏡や、200ミリ前後のカメラレンズが使いやすいです。望遠鏡とカメラを載せる架台は、設置と撤収が素早く行えるポータブル赤道儀や小型赤道儀が適しています。

>見られるか!? 紫金山・アトラス彗星!!



撮影の際、9月下旬は明け方に向けた撮影となるため、余裕をもって極軸合わせを終えた状態で撮影に臨めますが、10月中旬は日没後すぐの撮影になるので注意が必要です。

この時期に紫金山・アトラス彗星を撮影する場合、早めに現地に到着し、日没前にセッティングを済ませておくことが大切です。また、北の方角を事前に確認し、天文薄明が終了したらすぐに撮影を開始できるよう準備しておきましょう。


まとめ

紫金山・アトラス彗星は、久しぶりに注目される大彗星として、これから見ごろを迎えます。彗星の観測や撮影には少し工夫が必要な時期もありますが、明け方や日没後の空に輝くその姿を、ぜひ双眼鏡やカメラを使って楽しんでみましょう。

彗星は予測が難しい天体ですので、もしかしたら予想以上の明るさや美しい尾を見せてくれるかもしれません。この貴重なチャンスを逃さず、秋の夜空に広がる神秘的な光景を存分に堪能してみてはいかがでしょう。



レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。


■作例:パンスターズ彗星(C2011/L4)



撮影機材:
FSQ85ED直焦点 (450mmF5.3)/SXD2赤道儀 (極軸勘合わせ) / Canon EOS Kiss DX (APS-Cフォーマット)
撮影データ:
ISO400 / 露出20秒 / ノートリミング / レベル調整 / 2013.3.15.夕刻西の空 / 大阪府能勢町にて


双眼鏡

柴金山アトラス彗星を眼視観測するなら双眼鏡がおススメ!淡い彗星の姿を確実に捉えるには、色収差が僅少で高コントラストの中級クラス以上の双眼鏡が推奨です 。柴金山アトラス彗星にはダスト成分が多く、後方から太陽が照らす位置となる10月中旬以降に前方散乱の効果で尾が見事に長くなる可能性があります。明るさは淡いものの、視野角20度を超えると予測する科学者もいます。そうなった場合に備え、倍率2~3倍のワイドビノも用意しておいたほうがいいかもしれません!!

笠井トレーディング ワイドビノ

倍率たった2~3倍の超広角双眼鏡。モデルナンバー末尾の数字が実視野角。世界的ベストセラーの定番機「ワイドビノ28」が鉄板だがメガネ非使用者(コンタクトレンズ・裸眼)には最大視野のスーパーワイドビノ36、メガネ使用者には目を離しても高視野を保つ30GFもおススメ!

ビクセン アルテスJ 

ビクセン上位機種に定番のマルチコート、フェイズコート、誘電体高反射コートを施しコントラストが良い。

ニコン EDG

視界全域にわたって極めてフラットでありながらキレのある像質を実現。流石はニコン、と唸らざるを得ない一級品。

スワロフスキー NL Pure

色再現性にこだわりつつ数世代にわたるモデルチェンジで各収差を極限まで低減したELシリーズを凌駕する性能。ELからさらに一皮剝いたかのようなクリアな像は他を圧倒する。

ニコン WX

世界最高峰と評される天体望遠鏡用アイピースNAV-HWシリーズのコア技術を双眼鏡にインストールした贅沢過ぎる設計。凄まじい解像力。

コーワ ハイランダープロミナー

フローライトクリスタル82mm口径。高倍率32倍なのに星像の鋭さと解像感が素晴らしい。柴金山アトラス彗星をド迫力で見るなら、もはやこれ以上の機材はない。



赤道儀

彗星撮影は時間との勝負!オーソドックスな2軸ドライブ付ドイツ式赤道儀なら、いざという時はクランプフリーで手早く手動導入に作戦変更もできて機動的です。可搬性を重視するならポータブル赤道儀の選択肢を。

ビクセン SX2赤道儀WLリミテッド

スターブックTENアプリで柴金山アトラス彗星を自動導入可能!


ビクセン SXD2赤道儀WL

スターブックTENアプリで柴金山アトラス彗星を自動導入可能!

ビクセン SXP2赤道儀WL

スターブックTENアプリで柴金山アトラス彗星を自動導入可能!

ユニテック SWAT-350 V-spec

ピリオディックモーションが小さいため追尾精度が良く、信頼度が高い!


鏡筒

鏡筒は焦点距離の選択が悩ましいところ。迫力ある長焦点か、広い短焦点か? 最大1等級まで増光した2013年のパンスターズ彗星の例では、尾がそれほど長くは伸びなかったため500mm+APS-Cの画角に充分収まりましたが今回はどうでしょう? 持てるカメラレンズや鏡筒を総動員して複数機材で挑む手もあります。

ビクセン FL55SS鏡筒

ビクセン SDレデューサーHDキットfor FL55SS

主焦点303mmF5.5 フラットナー焦点312mmF5.7 レデューサー焦点237mmF4.3

タカハシ FSQ-85EDP

タカハシ フラットナー1.01X、タカハシ レデューサーCR0.73x

主焦点450mmF5.3 フラットナー焦点455mmF5.4 レデューサー焦点328mmF3.9

ビクセン VSD90SS鏡筒

ビクセン レデューサーV0.71x

主焦点495mmF5.5 レデューサー焦点351mmF3.9

ビクセン SD81SII鏡筒

ビクセン SDレデューサーHDキット

主焦点625mmF7.7 フラットナー焦点644mmF7.9 レデューサー焦点496mmF6.1

タカハシ FC-100DF鏡筒

タカハシ FC/FSマルチフラットナー1.04X、タカハシ FC-35レデューサー0.66x

主焦点740mmF7.4 フラットナー焦点747mmF7.5 レデューサー焦点488mmF4.9

タカハシ TSA-120鏡筒

タカハシ 35フラットナー、タカハシ TOA-35レデューサー150セット

主焦点900mmF7.5 フラットナー焦点880mmF7.3 レデューサー焦点635mmF5.3


ASIairのガイド機能だけを用いて、まるでスタンドアローン型オードガイダーのように運用する!

ASIairのガイド機能だけを用いて、まるでスタンドアローン型オードガイダーのように運用する! ASIairのガイド機能だけで、
スタンドアローン型オードガイダーのように運用!

スタンドアローン型オートガイダーの分野ではラセルタMGEN-3の評価が高く事実上1強の状況でしたが 本国出荷価格が大幅値上げとなり円安も重なるという環境があり、2024年現在新規販売を休止しています。
しかしながらデジカメ撮影用途などにスタンドアローン型のオートガイダーには根強い人気があり、
お問い合わせが絶えませんので今回は、ASIairを単機能のオートガイダーのように活用する方法を手順を追って解説します。



望遠鏡へのステップアップ▶︎


使用機材
ASI air ビクセン
クイックリリース
アングルプレート
K-ASTEC
DS38-30
 
K-ASTEC
DS38N
30F4 ミニスコープ


ASIAIRで楽しむデジカメ天体撮影

ASIAIR とデジカメで天体撮影を楽しんでみませんか。ASIAIRを使えば、スマホやタブ レットからデジカメや赤道儀を統合コントロールし、天体撮影を快適に、かつ本格的に楽しむことができます。ASIAIRとデジカメを使って天体撮影を行う方法を、3部に分けてご 紹介します。


2.撮影準備編3.天体撮影編



ASIAIRとは

ASIAIRは、ZWO社が開発したスマートWi-Fiデバイスです。2024年夏現在、ASIAIR Plus- 256GとASIAIR miniが発売されており、これらに同社の天体撮影用CMOSカメラを繋ぐと、 無線LAN経由で、ASIAIRアプリをインストールしたスマホやタブレットから、カメラや赤 道儀を操作ができます。


ASIAIRは、基本的に同社の天体撮影用CMOSカメラを制御するための機材ですが、キヤノ ンやニコン、ソニー製のデジタルカメラにも対応しています。主要なカメラにはほぼすべて 対応していますが、対応カメラの詳細については、ASIAIRアプリの対応欄をご確認ください。


ASIAIRのメリット

ASIAIRは、ZWO社が開発したスマートWi-Fiデバイスです。2024年夏現在、ASIAIR Plus- 256GとASIAIR miniが発売されており、これらに同社の天体撮影用CMOSカメラを繋ぐと、 無線LAN経由で、ASIAIRアプリをインストールしたスマホやタブレットから、カメラや赤 道儀を操作ができます。



ワイヤレスで撮影機器を操作できるため、車内など離れた場所でも撮影することができます。また、天体導入も、ASIAIRアプリの豊富な天体リストの中から撮影対象を選んで自動導入することが可能です。
プレートソルビングが使える点も魅力です。プレートソルビングは、実際に撮影した画像から星の位置を解析し、自動導入で選んだ撮影対象が正確に入っているかを判断して、導入補正する機能です。撮影対象と構図のズレを手動で調整する必要がないため、大変便利です。


デジカメとガイド鏡のセットアップ

撮影を行う前に、デジカメにZWO社のガイド鏡を取り付けましょう。以下は、カメラレンズとデジカメで撮影するときにお勧めのセットアップ例です。
まず、デジカメにアルカスイス規格のL字プレートを取り付けます。下写真では、ビクセンのクイックリリースアングルプレートを使用しています。



次に、アングルプレートのサイド側にガイド鏡を取り付けますが、取り付けには、K-AstecのDS38-30クランプ(下画像)を使用します。



DS38-30に付属しているカメラネジを利用して、下画像のようにクランプの裏側にガイド鏡をネジで取り付けます。ネジが緩いとガイド鏡が動いてしまうので、しっかりとネジを締めて固定してください。



クランプにガイド鏡を取り付け、アングルプレートのサイド側にクランプを挟み込みむと、以下のようにデジカメにガイド鏡を取り付けることができます。


最後にデジカメにカメラレンズを取り付け、ガイド鏡にオートガイダーのZWO ASI120MMminiを差し込めば、デジカメのオートガイド撮影システムの完成です。


ASIAIRとデジカメの接続

ASIAIRとデジカメは、カメラ付属のUSBケーブルで接続します。カメラのUSB端子にUSBケーブルを差し込み、もう一方をASIAIRのUSBハブに差し込みます。



今回は、ASIAIR miniを使用しましたが、ASIAIR Plus-256Gを使う場合は、USB3.0に対応した青色の端子に差し込むとよいでしょう。
オートガイダーとASIAIRは、ASIAIRに付属しているUSB type-Cケーブルを使って接続しましょう。
※ASIAIR miniとASIAIR Plus-256Gでは、使える機能が若干異なります。デジカメ(DSLR)の場合、ASIAIR miniではライブスタック機能が使用できません。ライブスタックを使用して電視観望も行いたい場合は、ASIAIR Plus-256Gを選びましょう。


ASIAIRアプリのインストール

撮影システムが構築できたら、スマホやタブレットにASIAIRアプリをインストールしましょう。インストールは、各スマホのアプリストアから、ZWO社のASIAIRをダウンロードして実行してください。 アプリをインストールできたら、赤道儀につなぐ前に、デジカメを認識できるか確認しましょう。



ASIAIRに電源コードをつなぎ、電源を入れます。ASIAIR miniには電源スイッチはなく、DC12Vを供給すれば自動的に電源が入ります。電源が入ると、ASIAIRからビープ音が鳴るので、スマホのWifi設定画面を開いて、ASIAIRを接続します。
ASIAIR接続後、ASIAIRアプリを開くと、下のような画面が表示されます。右上のカメラ欄から、接続しているカメラを選び、スライドスイッチをオンにします。オンになればASIAIRと接続が完了しているので、ASIAIRアプリでデジカメのシャッターをコントロールすることができます。オンにならない場合は、USBケーブルの接続を確認してください。


次から赤道儀で実際に撮影

今回は、デジカメのセットアップ方法についてご紹介しました。次回は、赤道儀にセットアップ機材を載せて、ASIAIRとデジカメで実際に天体撮影を行う手順をご紹介します。



撮影準備編


前回は、ASIAIRとデジカメのセットアップ方法をご紹介しました。今回は、赤道儀への取り付け方法から、ASIAIRを使ったピント合わせまでを順を追ってご紹介します。なお、今回の記事ではビクセン SX2リミテッド赤道儀(以下:SX2リミテッド)を使用しました。その他の機材は前回と同じです。


デジカメと赤道儀のセットアップ

取扱説明書を見ながら、赤道儀を設置しましょう。SX2リミテッドの場合は、三脚を開いた後、その上に赤道儀を載せ、バランスウェイトを取り付けます。このとき、赤道儀が北方向に向いているようにしてください。


次に、デジカメを取り付けるために、赤道儀の架頭(ヘッド部分)にアルカスイス規格のクランプを取り付けましょう。クランプは固定力の高い製品の方が安心です。今回は定評のあるK-Astec DS38Nを使用しました。



クランプを架頭に固定したら、前回セットアップしたデジカメを取り付けます。レンズが大きく重い場合は、カメラボディをクランプに取り付けてからカメラにレンズを取り付けると、取り付けやすいでしょう。
カメラを取り付けたら、ガイド鏡をL字アングルに固定します。ガイド鏡を付けて左右のバランスが崩れた場合は、DS38Nのクランプを緩めてカメラの位置を調整すると良いでしょう。



最後に、赤道儀の赤経側のクランプを緩めて、極軸周りのバランスを合わせます。バランスウェイトの位置を変更したり、ウェイトを追加して左右のバランスを取りましょう。


極軸合わせとASIAIRの接続

セットアップが完了したら、赤道儀の電源を入れ、極軸望遠鏡やPoleMasterを使用して極軸合わせを行いましょう。極軸望遠鏡やPoleMasterをお持ちでない場合は、ASIAIRのPA機能を使って合わせることもできます。



極軸合わせが完了したら、撮影機材とASIAIR miniをケーブルで接続します。
接続が完了したら、デジカメの電源を入れます。撮影途中で接続が切れないように、デジカメのオートオフ機能はオフにしておきましょう。
すべての電源が入り、撮影の準備が整ったら、ASIAIR miniに電源ケーブルを接続して、電源を入れます。
※PA機能とは PA機能はASIAIRに搭載されている極軸合わせ支援機能です。天の北極付近を撮影した画像を解析し、赤道儀をどの位置に向けるべきかを示してくれます。ASIAIRアプリのPA機能から実行できます。撮影に慣れてきたら、ぜひ使ってみてください。


ASIAIRとの接続

ASIAIR miniの電源が入り、ビープ音が鳴ったら、スマホのASIAIRアプリを立ち上げて、ASIAIR miniとWi-Fi接続しましょう。



Wi-Fi接続が完了すると、画面に撮影地の経度や緯度が表示されます。実際の位置と大きくずれていないか確認してください。
画面右側でカメラとオートガイダーを接続します。それぞれ接続しているカメラとオートガイダーを選んで接続しましょう。



Main/Guide Scope FLの欄には、カメラレンズの焦点距離とガイド鏡の焦点距離を入力します。この値が大きくずれていると、自動導入やガイド精度に支障が出るため、できるだけ正確に入力してください。
最後に赤道儀を接続しましょう。今回はSX2リミテッド赤道儀を使用しているので、ワイヤレスユニットを使ったWi-Fi接続です。ステーションモードを使って接続しましょう。以下、手順をご紹介します。
架台の一覧から、Vixen Wireless Unitを選択しましょう。



次に、ステーションモードを設定します。Enterキーをタップして、ASIAIRアプリ内に入ります。電波マーク(ネットワークアイコン)をタップして、ネットワーク設定画面を開きましょう。設定画面が表示されたら、Wi-Fi を選択してください。初期状態では、ステーションモードはオフになっているので、タップしてオンにします。



ステーションモードがオンになると、ASIAIRは接続可能なWiFiネットワークを探しはじめます。しばらく待つと、接続可能なネットワークの中にWireless Unitが表示されるので、それを選択してください。



パスワード入力画面が表示されるので、ワイヤレスユニットのパスワードを入力します。接続に成功すると、接続されたネットワークのSSIDが上の欄に表示され、緑色のチェックマークが入ります。


マウントの一覧でVixen Wireless Unitが選択されているのを確認し、接続ボタンをタップすると、ASIAIRと赤道儀の接続が確立し、下に赤道儀のパラメーターや設定項目が表示されます。


ピント合わせ

赤道儀との接続が完了したら、ASIAIRの撮影モードをプレビュー(Preview)モードにして、露光時間を1~数秒程度に設定し、撮影してみましょう。撮影した画像が転送され、ASIAIRの画面に表示されます。表示されない場合は、接続が確立されているかを再確認してください。



最初はピントがずれているため、星がぼやけて写るはずです。レンズのピントリングを回し、プレビュー撮影を繰り返して、ある程度星が小さくなるまでピントを調整してください。



星がある程度小さくなったら、撮影モードをフォーカス(Focus)モードに変更し、ピントをさらに追い込みましょう。画面に表示されるカーソルを星に合わせ、画面左側の拡大ボタンを押すと、画面の一部が拡大表示されます。
ピントが合ったら、不用意にフォーカスリングが動かないように、テープを貼ってリングを固定しておくことをお勧めします。


オートガイダーの設定とガイド鏡のピント合わせ

まず、オートガイダーのアイコンを押し、オートガイダーの感度を設定しましょう。撮影場所の夜空の暗さにも左右されますが、初めは感度をMに設定しておくと良いでしょう。その他の設定はデフォルトのままで試してみてください。



オートガイダーの設定が完了したら、ガイド鏡のピント合わせを行います。画面左のガイドグラフのアイコンを押すと、オートガイダーが捉えた画像が表示されます。 画面右の露出開始ボタンをタップすると撮影が開始されます。露出時間を1~2秒に設定し、露出を開始しましょう。オートガイダーの場合、一度露出を開始すると、連続撮影され画面も更新され続けます。



星の像を見ながら、ガイド鏡のピントリングを回して、星が小さくシャープになるようにピントを合わせます。星を選ぶと、その星が拡大表示されるので、それを参考に合わせると良いでしょう。
ガイド鏡のピントが合ったら、ピントリングを固定しておきます。ガイド鏡のピントは頻繁に調整する必要がないため、一度合わせれば次回からはピント合わせを省いて撮影に移ることができます。 次回は自動導入とプレートソルビングを使った撮影
次回は、自動導入とプレートソルビングを活用した本格的な天体撮影について説明します。今回の記事を参考に、ASIAIRを用いてデジカメや赤道儀を接続し、ピント合わせや天体撮影にぜひチャレンジしてみてください。



天体撮影編



前回までで撮影の準備は整いましたので、ASIAIRの自動導入とプレートソルビング機能を使用して、撮影を開始していきましょう。


ASIAIRで天体の選択

ASIAIRで天体を自動導入する際は、まず目的の天体を選択する必要があります。天体の選択は、画面上のスタートボタンの左側にある検索ボックス(Target)から行います。この検索ボックスは、撮影モードを「プレビュー(Preview)」にすると表示されます。



導入したい天体のカタログ番号(メシエ番号やNGC番号)がわかっている場合は、検索ボックスにその番号を入力します(例:「M31」)。すると、該当する天体がリストに表示されます。



天体のカタログ番号がわからない場合は、検索ボックスに何も入力せず、右側の「Goボタン」をタップします。すると画面が切り替わり、ASIAIRが現時点でお勧めの天体(Tonight’s Best)を一覧表示します。



一覧の右上にあるメニューボタンをタップすると、検索する天体の種類を選択できます。たとえば、メニューから「Messier Objects(メシエ天体)」を選択すると、メシエ天体のリストが画像付で画面表示されます。



※ASIAIRアプリのバージョンによって、操作方法が若干異なります。


天体を選択して自動導入を開始

導入したい天体が決まったら、リストの中のその天体をタップしましょう。タップすると、画面右側にGoToボタンが表示されるので、それを再びタップします。これで、赤道儀が目的の天体に向かって回転を始めます。



赤道儀が動いている間は、カメラやASIAIR miniと接続されているケーブルが機材に巻き付かないように注意しましょう。


プレートソルビング

赤道儀のモーターが止まると、ASIAIRは自動的にカメラのシャッターを切り、画像を撮影します。この画像内の星の位置を解析して、現在の写野(視野)が実際にどこを向いているかを特定します。そして、目的の天体が写野の中央に収まっているかを確認します。



目的の天体が中央からずれている場合は、赤道儀が再び動き、位置を補正します。補正後、もう一度カメラのシャッターが切られ、再度解析が行われます。このプロセスは、通常1~2回繰り返され、写野が正確に調整されます。この位置補正の技術を「プレートソルビング」と呼びます。
もしプレートソルビングに失敗する場合は、カメラのレンズ焦点距離が正しく入力されているかを確認してください。レンズの焦点距離は、カメラタブから確認できます。また、ピントが大きくずれている場合もプレートソルビングに失敗します。前回ご紹介した方法でピントを再調整しましょう。


デジカメの設定と撮影の開始

撮影を開始する前に、デジカメの設定を確認しましょう。ASIAIRアプリでカメラボタンをタップすると、設定画面が表示されます。ここで、ISO感度や撮影データの保存先などを確認してください。



撮影は「Autorun」モードで行います。Autorunをタップすると、撮影スケジュール画面が開きます。スケジュール画面の左側には設定メニューが、右側には露光時間や撮影枚数を設定するシークエンスタイルが表示されます。
左側の設定メニュー: 一番上には、自動導入した天体のカタログ番号や名称が表示されています。この部分が保存フォルダの名称となります。名称を変更したい場合は、この部分をタップして編集できます。 その下には、子午線反転(Meridian Flip)のオンオフ設定などが並んでいますが、初めての設定ではデフォルトのままで問題ありません。操作に慣れてきたら、自分の好みに合わせて変更することができます。



右側のシークエンスタイル画面: ここで実際の露光時間や撮影枚数を設定します。タイルをタップすると、フレームの種類(Light、Bias、Flat、Dark)や露光時間、撮影枚数を設定できます。今回はデジカメでの本撮影なので、「Light」を選択し、露光時間を空の暗さに合わせて設定します。撮影枚数は、初めての場合は5枚で試してみましょう。Binは、最も解像度が高いBin1を選びましょう。
+ボタンを押すと、新しい撮影設定用のタイルが追加されます。異なる露光時間で撮影したい場合は、タイルを追加してスケジュールを組むと良いでしょう。


オートガイド開始

Autorunの撮影スケジュールが設定できたら、前の画面に戻り、オートガイドを開始します。オートガイドの画面は、画面左側のグラフアイコンをタップすると表示されます。
オートガイダーの画面が表示されたら、まず「露出開始」ボタンをタップします。タップすると、画面が更新され、オートガイダーが捉えた星の映像が表示されます。星がぼやけている場合は、前回ご紹介した方法でピントを合わせてください。



星がはっきり映っていることを確認したら、「オートガイド開始」ボタンをタップします。初めてオートガイドを開始する際には、ASIAIRが補正信号とモーターの動く方向を学習するキャリブレーションを行います。
キャリブレーションが完了すると、ガイド星を囲む線が緑色に変わり、オートガイドが開始されます。また、補正量を示すグラフも表示されます。オートガイドが始まったら、オートガイダーの画面から元の画面に戻りましょう。


撮影開始

「撮影開始」ボタンをタップして、露光を開始しましょう。撮影が始まったら、しばらくオートガイドのグラフを確認して、大きなずれがないかをチェックします。



もしグラフが一方向に大きくずれて戻らない場合は、一度露光を中止し、キャリブレーションをやり直してください


画像表示と確認

撮影が終わると、デジカメで撮影した画像が画面に表示され、更新されます。画像が表示されたら、拡大してピントのズレや星の流れがないか確認しましょう。



撮影画像は撮影が終了するたびに転送され、画面が更新されます。以前の画像を確認したい場合は、上部メニューバーのSDボタンをタップし、「Image Management」を開くことで、撮影した画像を確認できます。



撮影終了とASIAIRの電源オフ

撮影を中断するには、「一時停止」ボタンを押し、「Puase」を押します。撮影を再開したい場合は、「撮影開始」ボタンを再度押すと、先ほどの設定で撮影を続けることができます。



全ての撮影が終了したら、オートガイダーを停止させます。その後、上部メニューバーの電波マークボタンをタップし、一番下の「Slide to Shut Down」部分をスライドすると、ASIAIRの電源が切れます。これにより、接続しているデジカメや赤道儀も切断されます。最後に、ケーブルを抜き、デジカメの電源も切ってください。


ASIAIRを使うと簡単に天体撮影を楽しめる

これまで3回にわたり、ASIAIRを使ったデジカメによる天体撮影方法をご紹介してきました。この手順に従えば、どなたでも簡単にASIAIRを使って天体撮影を楽しむことができるでしょう。
スマホからカメラや赤道儀等を操作できるASIAIRはとても便利で、初心者でも手軽に天体撮影に取り組めます。ぜひ、ASIAIRを使って、宇宙の美しい天体をデジカメに収めてみてください。



望遠鏡へのステップアップ▶︎



レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。

Seestarで楽しむ南半球の星空

Seestarで楽しむ南半球の星空 Seestarで楽しむ南半球の星空

天文ファンにとって、南半球の星空は憧れでしょう。しかし、南半球の星雲や星団を撮影しようと思うと、重い撮影機材を海外に持ち出さなければなりません。Seestar S50が発売開始され、海外遠征に適した機材だと感じましたので、実際にオーストラリアに持ち出し、撮影に使用してみました。今回は、航空機での運搬も含め、南半球での使用時のメリットをご紹介したいと思います。

使用機材
Seestar S50

Seestar S50とは

Seestar S50(以下「Seestar」)は、ZWO社が開発したスマート望遠鏡です。スマート望遠鏡とは、望遠鏡やカメラと架台等が一体になったタイプの望遠鏡で、Seestarの場合は、カメラがとらえた画像を、WifやBluetoothで接続したスマホやタブレットに映し出すことができます。

天体望遠鏡とは異なり、接眼部にアイピースを付けて天体を観望することやカメラを交換することはできませんが、オールインワンの一体型になっているため、全体として非常にコンパクトで持ち運びやすくなっています。

また、Seestarには、容量6000mAhリチウムイオンバッテリーも内蔵されており、追加電源なしで撮影が可能です。


海外への持ち運び

Seestar本体の重さは、約2.5キロです。日本からオセアニア方面への航空機の機内への持ち 込み荷物の制限は7キロ前後の航空会社が多いので、手荷物として航空機に持ち込むことが 可能です。

今回、私は、関西国際空港からジェットスターを利用してケアンズに向かいました。 Seestarの本体はカメラバックに入れて手荷物として機内に持ち込み、三脚は預入荷物としてチェックイン時に預け入れました。

出国前に心配だったのは、セキュリティゲートの通過です。Seestarは、形状が特殊ですし、本体にはリチウムイオンバッテリーが内蔵されているので、係官から質問されるかもしれないと思いましたが、特段の指摘はなく、スムーズに通過できました。

帰国便のセキュリティチェックも同様で、不審に思われることもなく、搭乗ゲートを通過し、機内に持ち込むことができました。なお、Seestarは電波を発する機器に該当するので、機内では必ず電源を切るようご注意ください。


Seestarが海外遠征で魅力的な点

何度か海外に撮影用機材を持参して撮影した経験のある私にとって、Seestarは非常に魅力 的な機材に感じました。以下、箇条書きでご紹介しましょう。

1.大きくて重い赤道儀を持ち運ぶ必要がない
星雲や銀河を天体望遠鏡や望遠レンズで撮影するには赤道儀が必要です。赤道儀は重く嵩張るため、荷物の重さや大きさに制限のある海外遠征では、持ち運びが大変です。その点、Seestarは、全てで約2.5キロと軽いので、簡単に機内に持ち込むことができます。

2.長い天体望遠鏡を持ち運ぶ必要がない
天体望遠鏡にはレンズや鏡が使われており、壊れやすいため、預け入れ荷物にはしたくない機材です。しかし、手荷物として機内に持ち込むには長すぎることも多く、私も分解してレンズ部分だけを機内に持ち込んでいました。一方、Seestarは、望遠鏡と比べてコンパクトで、持ち運びやすい箱のような形をしているので、大きめのバッグに入れて容易に機内に持ち込むことができます。

3.電源を別途用意する必要がない
天体撮影時は、赤道儀やカメラにDC12Vを供給する必要がありますが、ポータブル電源を海外に持ち出すわけにもいかず、電源問題が頭を悩ませます。しかし、Seestarにはリチウムイオンバッテリーが内蔵されているので、電源を追加で準備する必要はありません。内蔵バッテリーで容量が足りない場合も、モバイルバッテリーとUSBケーブルを用意しておけば、一晩中撮影が楽しむことができます。

4.南天の極軸合わせに悩まされない
南半球での極軸合わせは、北極星のような目印になる星がないので、慣れていないと大変です。その点、Seestarは極軸を合わせる必要がないので、極軸合わせの心配はなく、水平に設置すればすぐに撮影に移ることができます。

5.忘れ物をする可能性が低い
海外撮影で気をつけなければいけないのが、忘れ物です。接続リング一つ忘れても撮影できなくなることがあり、ショックは大きいです。私も一度、日本に補正レンズのアダプターリングを忘れた苦い経験があります。Seestarは一体型で、操作もスマホがあれば完結するので、まず忘れ物の心配はありません。


南半球でのSeestarの使い方

Seestarの使い方は、南半球でも、国内での使用時と全く変わりません。Seestarを水平に設 置し、アプリを開き、スマホやタブレットと接続すれば、撮影を開始できます。

スマホやタブレットが携帯電波に繋がっていない場合は、緯度と経度を入力する画面が出ますので、撮影地の緯度と経度を入力してください。南天の極軸合わせは必要ありませんので、星空が見えていればどこでも、例えば、ホテルの庭でも撮影を楽しむことができます。


Seestarで撮影した南天の天体

今回訪れたオーストラリアで、Seestarで撮影した天体をいくつかご紹介しましょう。

上の画像は、有名なイータカリーナ星雲です。イータカリーナ星雲は、りゅうこつ座のη星の周りに広がる巨大な星雲で、明るいので肉眼でもうっすらと見えます。南半球に出かけたら、まず最初に撮影したい天体ではないでしょうか。


次は、オメガ星団です。オメガ星団は、ケンタウルス座に位置する球状星団で、全天一大きな球状星団です。日本でも撮影することは可能ですが、東京での南中高度はわずか7度前後にしかならないため、 クリアに撮影するのは難しい天体です。ケアンズでの南中高度は約60度になるため、鮮明に映し出すことができます。


最後は、タランチュラ星雲です。タランチュラ星雲は、大マゼラン雲の中に存在する散光星雲で、大きな望遠鏡で見ると、星雲の広がった姿がタランチュラのように見えることから、この呼び名があります。明るいので、口径の小さな双眼鏡でもその姿を確認できます。今回は撮影適期ではなく、高度が低かったのですが、思った以上に写りました。


Seestarは星景写真ファンや観望ファンにもお勧め

Seestarを使った撮影は、天体望遠鏡と赤道儀を使った本格的な撮影に比べると、構図などの自由度は落ちるものの、荷物制限の厳しい飛航機でも容易に持ち運べる点は、海外遠征用機材として大きなメリットになります。

撮影時も、南天の極軸合わせの苦労がなく、すぐに撮影に入ることができ、撮影中はゆっくり南半球の星空を肉眼で楽しむこともできます。広角レンズメインでの星空撮影や観望時のサブ機材としても、お勧めだと思います。

今回、実際にオーストラリアにSeestarを持参してみて、南天の極軸合わせにも悩まされず、気軽に撮影を楽しめるSeestarは、撮影旅行自体を心の余裕のある楽しい時間に変えてくれたと感じました。是非、国内だけでなく、海外遠征時の撮影機材としても、Seestarを候補に考えてみてはいかがでしょうか。


レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。

夏の観測ガイド

夏の観測ガイド



夏の夜空には、はくちょう座あれい星雲・こと座リング星雲といった輝度の高い惑星状星雲、ヘルクレス座M13のように大きな球状星団、いて座に明るく広がる三裂星雲/干潟星雲など、眼視・撮影ともに挑戦しやすい星雲星団が多数存在します。

星雲や星団なんて難しくてわからない、という場合は「夏の大三角」(=はくちょう座デネブ・こと座ベガ・わし座アルタイル)を見つけることから始めてみましょう。主要な恒星が複数把握できれば、それらの位置関係との対比で星座アプリや自動導入望遠鏡を頼りに星雲や星団にたどり着くことができます。

日本から観測する場合に高度が低くて夏の短い間しか観測できない星座として、さそり座があります。さそり座アンタレスの高度は東京や大阪では南中時すら30度に届きません。南中時刻は6月で24時ごろ、7月で22時頃、8月で20時ごろです。

8月の20時と言えば地域によっては薄明がまだ終わっていない時間ですので空がすっかり暗くなってからだと子午線の西側に傾きつつある姿を観測することになり、あっという間に沈むなぁとお感じになるかもしれません。

梅雨が明けたら南に光害が少なく空の開けた場所へ遠征し、ひと時の夏の風物詩をお愉しみ頂ければと思います。


ステラナビゲーターVer.11で作成


そのほかの夏の風物詩と言えばペルセウス座流星群が挙げられます。

周期133年のスイフト・タットル彗星を母天体とし毎年8月12日~13日ごろ極大を迎えます。
前回1992年の彗星回帰から少し年数が経ってしまい近年では流星出現数が減少傾向にある群ではありますが、時期がお盆のお休み期間に該当すること、例年好天に恵まれる場合が多いこと、夏の天の川を併せて観測または撮影できることなどから人気があります。

望遠鏡がなくてもカメラ(と赤道儀)を用意すれば意外と簡単に ”夏の天の川と流星群” という強いテーマ性を持つ星景写真に挑戦できてしまいますので、未経験者の方の天体写真デビューのきっかけとしても好適です。








惑星を撮ってみよう 初めての望遠鏡購入ガイド

満天の星空の下、天体観測をお楽しみください!!




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