紫金山・アトラス彗星が大接近中です!!
紫金山・アトラス彗星C/2023 A3は放物線軌道の彗星で、太陽への接近は一度きりです。
そのためハレー彗星のような楕円軌道で太陽を繰り返し周回する彗星に比べ、その動向の予測が困難です。
2024年3月ごろからの観測において、光度の急な増加と、その後の鈍化が認められました。
これを受けて科学者の間では、元々の核は小さなものであってその核は太陽の熱で溶け彗星は崩壊してしまったのではないか?という悲観論が出始め、その後彗星は地球からは観測できない位置になり暫く様子がわかりませんでした。
しかし先日(9月2日)、NASAの太陽周回(ほぼ地球公転軌道で地球の少し先を進む)観測機STEREOが、紫金山・アトラス彗星の姿を捉えたというグッドニュースが飛び込みました!
どうやらこの彗星は崩壊を免れたようです。大彗星になるかどうかはわかりませんが可能性に賭けて今から準備をしておきましょう!!
紫金山・アトラス彗星を観察しよう!
紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3 Tsuchinshan-ATLAS)は、2023年に発見された新しい彗星で、今秋には肉眼で見える明るさになると予想されています。彗星は2024年9月29日に太陽に最接近し、10月12日には地球に最も接近します。日本からは、9月下旬から11月上旬にかけて観察条件が良くなる見込みです。この機会に、ぜひ双眼鏡や天体望遠鏡を使って話題の紫金山・アトラス彗星を観察・撮影してみましょう。
紫金山・アトラス彗星とは?
紫金山・アトラス彗星は、2023年1月に中国の紫金山天文台で発見された彗星です。発見当初、しばらくは彗星の存在が確認されませんでしたが、南アフリカの小惑星地球衝突警報システム(ATLAS)が再確認し、両方の名前を取って「紫金山・アトラス彗星」と名付けられました。
紫金山・アトラス彗星の発見時は、彗星は太陽から遠く、明るさは約18等級と非常に暗かったものの、軌道計算により、近日点では太陽から0.39au(水星軌道とほぼ同じ距離)まで接近し、マイナス等級になると予測されました。
久しぶりの大彗星として期待が高まっていましたが、今夏の観測では彗星の増光が徐々に鈍化し、最大で2等級程度と予想する専門家もいます。しかし、彗星の明るさ予測は難しく、過去には突然バーストして明るくなった例もあるため、今後の紫金山・アトラス彗星の動向に注目していきましょう。
彗星の観測チャンスは?
紫金山・アトラス彗星の観測チャンスは、大きく分けて2回あります。1回目は9月末から10月初め、2回目は10月中旬から11月上旬です。それぞれの時期に適した観測条件をまとめました。
9月末から10月初旬の明け方に東の空!
紫金山・アトラス彗星は9月29日に太陽に最も近づき、この頃に明け方の東の空で観測できます。
ただし、この時期の彗星は太陽に非常に近く、薄明が始まる東の空、地平線近くでしか見られません。そのため、東の方向が地平線まで開けた見晴らしの良い場所で観測する必要があります。
彗星と太陽の見かけの距離は約3度しか離れておらず、薄明中の観測となるため非常に難しい条件です。しかし、この時期は彗星が最も明るくなる可能性があるため、挑戦する価値があります。彗星が十分に明るければ、薄明の空に長い尾を引く大彗星の姿を目にすることができるでしょう。
なお、10月初旬は、太陽と彗星が非常に近いため、天体望遠鏡や双眼鏡で観測する際には、誤って太陽を視野に入れて目を傷めないように注意が必要です。
10月中旬から11月初旬の夕方に西の空!
10月上旬は、太陽と紫金山・アトラス彗星の位置関係が悪くなり、一時的に観測が難しくなります。次に彗星が見えるのは10月12日頃で、今度は日没後の西の空に姿を現します。
この時期、彗星は太陽から離れ始めますが、日没後に観測できる高度が日に日に上昇します。具体的には、18時30分頃の彗星の高度は、10月13日には約5度、14日には約9度、15日には約13度と急速に高くなるため、観測可能な時間が徐々に長くなっていきます。
10月中旬は、地球と彗星の距離が近く、高度も上がるため、9月末よりも彗星の尾が見やすくなる可能性があります。月明かりがある時期ではありますが、彗星がまだ明るい12日や13日頃に、西の空が開けた場所で観測するのが良いでしょう。
双眼鏡で観測しよう!
街灯がなく、夜空が暗く星空が綺麗な場所では、肉眼で6等級の星まで見ることができると言われています。しかし、彗星は恒星と異なり、淡く広がっているため、たとえ肉眼等級であっても見えづらく感じることがあります。
加えて、紫金山・アトラス彗星は太陽に近く、天文薄明中の低空で輝くため、明るさ次第では肉眼で見つけるのが非常に難しいことも予想されます。そのため、双眼鏡を使用して観察することをお勧めします。
もちろん天体望遠鏡でも観察可能ですが、彗星観察には、準備が簡単で機動力のある双眼鏡がより適しています。天体望遠鏡と同様に、双眼鏡も口径が大きいほど暗い星まで見えますが、口径が大きいと重くなるため、手持ちで使う場合は口径4センチ程度のものが扱いやすいでしょう。
倍率は10倍前後で、見かけ視界が広いタイプの双眼鏡が彗星観察には使いやすいです。双眼鏡は彗星だけでなく、星雲や星団の観望にも役立つため、この機会に性能の良い双眼鏡を1つ用意しておくと、今後の星空観察にも便利でしょう。
赤道儀で撮影しよう!
デジタル一眼レフカメラや天体用CMOSカメラをお持ちであれば、紫金山・アトラス彗星の撮影に挑戦してみるのはいかがでしょう。使用する光学系は、焦点距離が短めの屈折望遠鏡や、200ミリ前後のカメラレンズが使いやすいです。望遠鏡とカメラを載せる架台は、設置と撤収が素早く行えるポータブル赤道儀や小型赤道儀が適しています。
撮影の際、9月下旬は明け方に向けた撮影となるため、余裕をもって極軸合わせを終えた状態で撮影に臨めますが、10月中旬は日没後すぐの撮影になるので注意が必要です。
この時期に紫金山・アトラス彗星を撮影する場合、早めに現地に到着し、日没前にセッティングを済ませておくことが大切です。また、北の方角を事前に確認し、天文薄明が終了したらすぐに撮影を開始できるよう準備しておきましょう。
まとめ
紫金山・アトラス彗星は、久しぶりに注目される大彗星として、これから見ごろを迎えます。彗星の観測や撮影には少し工夫が必要な時期もありますが、明け方や日没後の空に輝くその姿を、ぜひ双眼鏡やカメラを使って楽しんでみましょう。
彗星は予測が難しい天体ですので、もしかしたら予想以上の明るさや美しい尾を見せてくれるかもしれません。この貴重なチャンスを逃さず、秋の夜空に広がる神秘的な光景を存分に堪能してみてはいかがでしょう。
レビュー著者
吉田 隆行氏 ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。
■作例:パンスターズ彗星(C2011/L4)
撮影機材:
FSQ85ED直焦点 (450mmF5.3)/SXD2赤道儀 (極軸勘合わせ) / Canon EOS Kiss DX (APS-Cフォーマット)
撮影データ:
ISO400 / 露出20秒 / ノートリミング / レベル調整 / 2013.3.15.夕刻西の空 / 大阪府能勢町にて
双眼鏡
柴金山アトラス彗星を眼視観測するなら双眼鏡がおススメ!淡い彗星の姿を確実に捉えるには、色収差が僅少で高コントラストの中級クラス以上の双眼鏡が推奨です 。柴金山アトラス彗星にはダスト成分が多く、後方から太陽が照らす位置となる10月中旬以降に前方散乱の効果で尾が見事に長くなる可能性があります。明るさは淡いものの、視野角20度を超えると予測する科学者もいます。そうなった場合に備え、倍率2~3倍のワイドビノも用意しておいたほうがいいかもしれません!!
倍率たった2~3倍の超広角双眼鏡。モデルナンバー末尾の数字が実視野角。世界的ベストセラーの定番機「ワイドビノ28」が鉄板だがメガネ非使用者(コンタクトレンズ・裸眼)には最大視野のスーパーワイドビノ36、メガネ使用者には目を離しても高視野を保つ30GFもおススメ!
ビクセン上位機種に定番のマルチコート、フェイズコート、誘電体高反射コートを施しコントラストが良い。
視界全域にわたって極めてフラットでありながらキレのある像質を実現。流石はニコン、と唸らざるを得ない一級品。
色再現性にこだわりつつ数世代にわたるモデルチェンジで各収差を極限まで低減したELシリーズを凌駕する性能。ELからさらに一皮剝いたかのようなクリアな像は他を圧倒する。
世界最高峰と評される天体望遠鏡用アイピースNAV-HWシリーズのコア技術を双眼鏡にインストールした贅沢過ぎる設計。凄まじい解像力。
フローライトクリスタル82mm口径。高倍率32倍なのに星像の鋭さと解像感が素晴らしい。柴金山アトラス彗星をド迫力で見るなら、もはやこれ以上の機材はない。
赤道儀
彗星撮影は時間との勝負!オーソドックスな2軸ドライブ付ドイツ式赤道儀なら、いざという時はクランプフリーで手早く手動導入に作戦変更もできて機動的です。可搬性を重視するならポータブル赤道儀の選択肢を。
スターブックTENアプリで柴金山アトラス彗星を自動導入可能!
ピリオディックモーションが小さいため追尾精度が良く、信頼度が高い!
鏡筒
鏡筒は焦点距離の選択が悩ましいところ。迫力ある長焦点か、広い短焦点か? 最大1等級まで増光した2013年のパンスターズ彗星の例では、尾がそれほど長くは伸びなかったため500mm+APS-Cの画角に充分収まりましたが今回はどうでしょう? 持てるカメラレンズや鏡筒を総動員して複数機材で挑む手もあります。
タカハシ FC/FSマルチフラットナー1.04X、タカハシ FC-35レデューサー0.66x
主焦点740mmF7.4 フラットナー焦点747mmF7.5 レデューサー焦点488mmF4.9
タカハシ 35フラットナー、タカハシ TOA-35レデューサー150セット
主焦点900mmF7.5 フラットナー焦点880mmF7.3 レデューサー焦点635mmF5.3