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天体望遠鏡や本格双眼鏡、 天体観測・バードウオッチング機材の製造・販売。協栄産業株式会社。昭和34年創業。

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セレストロンC8 SCT OTA CG5のインプレッション

セレストロンC8 SCT OTA CG5のインプレッション

セレストロンC8 SCT OTA CG((以下「セレストロンC8」)は、セレストロン社が製造している口径203㎜(8インチ)、焦点距離2032㎜のシュミットカセグレン式天体望遠鏡です。


セレストロンC8は、惑星や月から星雲・星団の観察までオールマイティに使用できるため、天文ファンに人気の高い鏡筒です。今回は、セレストロンC8の使い勝手や使用感についてご紹介します。


コンパクトなシュミットカセグレン式天体望遠鏡

セレストロンC8の光学系には、シュミットカセグレン式(正確には、コンパクト・シュミットカセグレン式)が採用されています。


鏡筒の底部には、光を集める主鏡(凹面鏡)が取り付けられています。主鏡で集められた星の光は、筒先にある副鏡(凸面鏡)で反射し、接眼部に導かれますが、この2つの鏡は球面鏡のため、諸収差が発生します。この収差を補正するため、筒先にシュミット補正板が取り付けられています。

シュミットカセグレン式は、同口径の20センチニュートン反射式と比べると、筒長を短くできる点がメリットです。下画像は、同じ口径のニュートン式反射(F6)と並べた写真ですが、長さの違いがよくわかります。


セレストロンC8はコンパクトなため、鏡筒本体重量も約5.7キロと軽量です。自宅だけでなく、キャンプ場などにも持ち運びやすい望遠鏡です。女性でも気軽に持ち運ぶことができるでしょう。


セレストロンC8の使い勝手

セレストロンC8は、コンパクトで軽いだけでなく、使い勝手も良好です。

望遠鏡の底部には、架台に載せるためのアリガタ金具が固定されており、鏡筒バンドを別途購入する必要はありません。購入してすぐにアリミゾ台座が設けられた赤道儀や経緯台に載せて使用することができます。

鏡筒の底部には、持ち手が取り付けられています。ちょっとしたことですが、持ち手があると、安心して持ち運び、架台に載せることができます。

セレストロンC8のピント合わせ機構には、主鏡を前後に動かす方式が採用されています。本格的な天体撮影では、ミラーシフトが生じる場合があり、この方式を避ける方もいますが、初心者にとってはピント合わせのイメージがしやすく、操作しやすいでしょう。


大口径で楽しむ天体観望の世界

口径20センチは、大口径天体望遠鏡の入り口です。肉眼の 841 倍の集光力は素晴らしく、口径8センチや10センチとは明らかに異なる世界が広がります。


夜空の綺麗な場所での天体観望では、小口径とは集光力に大きな違いを感じます。小口径では見えづらかった系外銀河の腕もよりはっきりと見えますし、小口径ではそもそも見えなかった天体の姿を確認することもできます。

都会での天体観望で人気の高い木星や土星について、同じ倍率の小口径と比べると、覗いた瞬間、像が明るいと感じます。倍率を上げれば、木星の縞模様も小口径より詳細に見えますし、土星の環にあるカッシーニの隙間もよりはっきり見えます。


上の写真は、セレストロンC8とZWO社のCMOSカメラで撮影したものです。惑星の撮影では、コンパクトで大口径を得られるセレストロンのシュミカセシリーズの人気は高いです。

天体撮影や電視観望にも使用可能

セレストロンC8にオプションのTアダプターとカメラマウントを取り付ければ、天体撮影や電視観望を楽しむことも可能です。

さらに、オプションの「レデューサー 0.63x SCT用」を使用すると、像面湾曲が改善され、焦点距離も0.63倍に短縮され、F値も10から6.3と明るくなり、天体撮影や電視観望に使いやすいでしょう。

上は、私が以前、所有していた、ミード社の同口径の20センチのシュミットカセグレン望遠鏡にレデューサー0.63xを使用して撮影した、子持ち銀河の写真です。渦を巻いた銀河が明瞭に写っています。

電視観望では、F値が暗いため露光時間がかかりますが、逆に焦点距離の長さを生かして、明るく小さな惑星状星雲を撮ると面白いと思います。

なお、天体撮影メインでシュミットカセグレン式望遠鏡をお探しなら、補正レンズを最初から組み込んだ、同社のEdgeHDシリーズもあります。EdgeHDシリーズなら、ミラーシフトを防止するミラークラッチ機構も搭載されています。


まとめ

オレンジ色のセレストロンC8が日本市場に初めて登場した時、「大口径なのにコンパクト!」と天文ファンの注目を集めました。

それから30年以上経ち、光学系に目新しさは感じられませんが、大口径の入り口として依然として人気の高い、定番とも言える鏡筒です。私も今回、久しぶりにセレストロンC8を使用して、改めて使いやすい望遠鏡だと感じました。

セレストロンC8の魅力は手軽な大口径です。小口径からステップアップしたい初中級者の方だけでなく、ベテランの方にも是非手に取っていただき、その魅力を感じていただければと思います。


レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

ビクセン SD81SIIのインプレッション

ビクセン SD81SIIのインプレッション

天文入門者にも人気の高いビクセンSD81Sが、2021年10月にリニューアルされ、SD81SIIになりました。完成度が高まったSD81SIIを実写に用い、使用感を確認してみました。

なお、SD81SIIは、前モデルであるSD81Sの対物レンズのスペーサーを変更したマイナーチェンジモデルですので、レンズスペーサー交換を行ったSD81Sを使ってテストを行いました。


SD81Sとの違いは対物レンズのスペーサー

屈折式天体望遠鏡の対物レンズには、2枚の性質の異なるレンズが用いられており、この2枚のレンズの間に、スペーサーとして錫箔が挟まれています。

前モデルのSD81Sには、錫箔の小切片がレンズ外周部に3枚配置されていました。この小切片は、下画像のように対物レンズ有効径内に飛び出していたため、レンズに光が入射すると、回折により星像の周囲に放射状の欠けが生じました。

リニューアルされたSD81SIIでは、3枚の小切片がリング形状のスペーサーに変更され、対物レンズを遮らないように改善されました。

上画像は、リング形状スペーサーに交換後のレンズです。対物レンズへの飛び出しが無くなり、レンズがすっきりしているのがわかります。


実写で感じた星像の違い

リング形状スペーサーの効果を調べるため、SD81SIIを郊外に持ち出し、冷却CMOSカメラを使って実写テストを行いました。

下は、はくちょう座γ星付近を写した写真の比較画像です。

前モデルのSD81S(右側)では、輝星の周囲に放射状の欠けが発生しています。一方、リング形状スペーサーに変更されたSD81SIIでは、星の周りに欠けは発生しておらず、星像が改善されていることが確認できます。


SD81SIIで天体撮影

SD81SIIとZWO社の冷却CMOSカメラ ASI2600MCProを使用して、夏の天体、干潟星雲付近を撮影しました。なお、SD81SIIには、天体撮影用の補正レンズ「SDレデューサーHDキット」を使用しています。

上は撮影画像を、ステライメージ9で画像処理して仕上げた写真です。天候が不安定だったため、十分な露光時間を取ることができませんでしたが(8分露出×4枚)、干潟星雲だけでなく、猫の手と呼ばれる淡い星雲の色合いもよく写っています。

干潟星雲を部分拡大してみると、星雲のディテール描写も良好で、口径8センチとは思えない解像感を感じました。

写し出された明るい星にも回折による欠けは発生しておらず、星雲の周りの暗い星々もスッキリと綺麗に感じます。


タカハシFC-76DCUと比較して

ビクセンSD81SIIと並んで天文入門者に人気の高い望遠鏡が、タカハシFC-76DCUです。対物レンズがSDレンズかフローライトレンズかという違いはありますが、どちらも口径約8センチで、持ち運びしやすいため、購入時によく比較検討される望遠鏡です。

そこで、SD81SIIとタカハシFC-76DCUの2本を赤道儀に同架し、恒星像を確認してみました。

高倍率で焦点像のシャープさを比較したところ、ほとんど違いは感じられません。色収差についても、両鏡筒共によく補正されており、色づきはほとんど感じられませんでした。

次に、月を望遠鏡の視野に入れてみました。色収差の大きな望遠鏡では、月の欠け際が色づいて見えますが、どちらの望遠鏡も色づきは感じられず、スッキリとシャープな月面観望を楽しめました。

倍率を上げると、口径の大きいSD81SIIの方がやや視界が明るく感じられましたが、それほど大きな違いではないでしょう。


オプションではSD81SIIが有利か

FC-76DCUは鏡筒バンドが別売りですが、SD81SIIには鏡筒バンドやアリガタ金具だけでなく、金属製キャリーハンドルも付属しています。鏡筒さえ購入すれば架台に搭載することができる点は、購入検討時の大きなポイントでしょう。

接眼部については、FC-76DCUは1.25インチ専用タイプですが、SD81SIIは2インチにも対応しており、市販されている様々なアイピースを使用することができます。また、観望に便利なフリップミラーも標準付属しています。

天体観望時に使用するファインダーとしては、FC-76DCUには6倍30mmの光学式ファンダーが付属しています。一方、SD81SIIには、XYスポットファインダーIIが付属していますが、光学式ファインダーに比べて若干見辛い点が残念です。

天体撮影については、FC-76DCUSD81SII共に、光学性能に優れたフラットナー、レデューサーと呼ばれる補正レンズがオプション設定されていますが、FC-76DCUのレデューサーはAPS-Cサイズまでしか対応していません。

一方、SD81SIIのレデューサーHDは、35ミリフルサイズまで対応していますので、35ミリフォーマットで撮影する場合には、SD81SIIの方が適しています。


まとめ

今回のテストを通じて、SD81SIIは完成度の高い望遠鏡であることを確認できました。

天体写真時の星像をご紹介しましたが、眼視時にも星像の周りのジフラクションリングの欠けがなくなり、前モデルに比べて星像に不自然さがなくなりました。

今回のリニューアルによって、SD81SIIは、天体観測から本格的な天体撮影まで、幅広く使える望遠鏡になったと言えると思います。ビクセンの81S鏡筒シリーズの終着点とも呼べるSD81SIIで、様々な楽しみ方を試してみてはいかがでしょうか。


レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

セレストロンRASA8の使用感

セレストロンRASA8の使用感

セレストロン8″Rowe-Ackermann Schmidt Astrograph(以下、「RASA8」)は、天体撮影専用の望遠鏡(アストログラフ)です。F値が2と望遠レンズ並みに明るく、短時間露光でもよく写るので、天体撮影や電視観望用として人気の高い望遠鏡です。今回は、RASA8を使って天体撮影や電視観望を行い、使用感を確認してみました。




セレストロンRASA8について

RASA8は、セレストロンRASAシリーズの中で最も小さな望遠鏡です。RASA8は、口径約203mm、焦点距離は400mm、F値が2の光学系です。
他のRASA同様、RASA8の筒先には、シュミット補正板が固定されています。星からの光は、シュミット補正板を通ってから主鏡で集められ、補正レンズに届きます。RASA8のF値は、RASAシリーズの中で最も明るく、F2を誇ります。

補正レンズには、4枚構成の光学系が採用されています。カメラは、補正レンズの先に取り付けます。いわゆるプライムフォーカスという接続方法で、斜鏡で光を90度曲げて筒外に光を導くニュートンやイプシロン光学系と異なり、天体観望には使用できません。天体撮影での使用のみを考えた設計です。
光学系のイメージサークルは22mm、バックフォーカスは29mm(補正レンズ面から)です。イメージサークルの広さやバックフォーカス長を考えると、フォーサーズサイズの天体撮影用CMOSカメラ(ZWO社のASI294MCPro等)が適しています。カメラを取り付けるためのM42カメラアダプター、Cマウントカメラアダプターも付属しています。

RASA8の外観は、同社のシュミットカセグレン式望遠鏡(シュミカセ)の鏡筒長を少し長くしたような形状をしています。ピントも、シュミカセと同じく、主鏡を前後に動かして合わせる方式が採用されています。
RASA8鏡筒の重さは7.7キロ、同口径のシュミカセと比べると2キロほど重くなっていますが、口径20センチクラスのアストログラフとしては軽く、遠征撮影にも気軽に持ち運びできる重さです。


セレストロンRASA8へのカメラ取り付け


RASA8には、カメラを取り付けるためのアダプターが付属していますが、今回のテスト撮影では、アイダス社から販売されているドロップインフィルターアダプター・AD19.4を使って、ZWO社の冷却CMOSカメラASI294MCProを取り付けました。

標準付属のアダプターとは異なり、AD19.4はテーパーで取り付け取り外しができるので便利です。また、ドロップインフィルターボックスが装備されているので、ドロップインフィルターDiシリーズにラインナップされている、NBZフィルターやLPSシリーズを使って、フィルター効果を生かした撮影を楽しむことも可能です。
カメラに繋ぐUSBケーブルと電源ケーブルは、黒色のテープを使って1本にまとめ、筒外へ導きました。1本のケーブルが遮るため、撮影画像上の輝星には2本の光条が発生します。ケーブルの本数や位置を変えると光条の出方も変わるので、好みによって筒先のケーブルの導き方や本数を変えてみるとよいでしょう。


セレストロンRASA8を使って天体撮影


RASA8ASI294MCProを取り付けて、天体撮影を行いました。ASI294MCPro には、マイクロフォーサーズサイズのCMOSセンサー(19.1×13.0mm)が採用されているので、RASA8に取り付けたときの35ミリ換算の焦点距離は約800ミリになります。
焦点距離800ミリ前後の画角は、IC1396のような巨大な散光星雲にはやや狭く感じられますが、オリオン大星雲をはじめとしたメジャー天体を画角一杯に捉えられ、様々な天体の撮影に使用することができます。
今回、撮影対象には、アンドロメダ大銀河を選びました。赤道儀は、ビクセンSXP赤道儀、オートガイドは、オートガイダーQ5L-100GSS アルカセットを使用しています。


上は、上記機材で10枚撮影し、画像処理ソフトのステライメージ9で仕上げた写真です。画角全体にわたって星はシャープで、コントラストも良い写りです。 星像確認のため、画像中央付近を切り抜いた写真を下記に掲載しました。撮影時のカメラの設定は、ゲイン120、1枚当たりの露光時間300秒です。

F2の明るさで露光時間を300秒と長く設定したため、アンドロメダ大銀河の明るい部分が白飛びしていますが、拡大画像でも色収差の発生は感じられず、鋭い星像であることがわかります。シャープ処理等は適用していませんが、暗黒帯の描写も良好に感じられます。

上は、画像の右上隅の一部を拡大した画像です。周辺部でも星の形は丸く保たれており、色ズレも感じられません。イメージサークル内なら良好な星像を結ぶ光学系であることがわかります。


RASA8の明るさを生かしたナローバンド撮影


次に、アイダスのデュアルバンドフィルターNBZを使って、らせん星雲を撮影しました。らせん星雲は、Hα光とOIII光を強く発している惑星状星雲です。
下が、ASI294MCProを使って、300秒×8枚(ゲイン120)で撮影した画像です。 ※周囲をトリミングした画像を掲載しています。

らせん星雲は、ブロードバンド撮影ではぼんやりとしか写りませんが、デュアルバンドフィルターは、星雲が発する特定の波長のみを通すため、星雲の形がコントラスト良く写っています。
F値が明るいRASA8は、ブロードバンドだけでなく、光量が減ってしまうナローバンドにも適した光学系です。色収差の発生がほとんどないため、デュアルバンド撮影には特に適していると感じました。


フラットフレーム画像


淡い天体画像の処理には、周辺減光を補正するためのフラットフレームが必要です。RASA8の場合は筒先にカメラを取り付けるため、フラット補正を正常に行えるか心配でしたが、問題ありませんでした。

上は、RASA8のフード先に白い布を被せ、天文薄明の空を利用して撮影したフラットフレームです。カメラのセンサーサイズが小さいためもありますが、周辺減光は思っていたほど大きくありませんでした。
減光も中央部から周辺部にかけてなだらかなので、画像処理ソフトウェアのコマンドでも補正できるでしょう。


RASA8で電視観望


電視観望とは、天体望遠鏡に接眼レンズを差し込む代わりに、CMOSカメラを取り付け、パソコンの画面に天体の姿を映し出して楽しむ観望方法です。夜空の明るい都会でも天体観望を楽しめるとあって、最近、注目されている新しい星空の楽しみ方です。
RASA8は明るく、口径も大きいので、電視観望に適した望遠鏡です。また色収差もほとんど発生しないため、フィルター等を使用した際の色ずれもなく、シャープな映像を楽しむことができます。

上は、電視観望で捉えたペリカン星雲です。F値の暗い望遠鏡を使用すると、1枚当たりの露光時間が長くなり、リアルタイム感が薄れてしまいますが、RASAなら短い時間で画像が切り替わり、リアルで見ているような感覚を味わえます。
またNBZフィルターとの相性も良く、都会でNBZフィルターを使った電視観望に使いやすい望遠鏡です。


撮影後の印象


今回、RASA8を天体撮影に使用して感じたことを、以下に箇条書きでまとめました。
他の光学系と異なり、補正板の前にカメラを取り付けることにやや抵抗があったが、実際に使用してみると何ら難しくはなく、逆に鏡筒の前後バランスがとりやすくなる点をメリットに感じた。
鏡筒下部には75mm幅のアリガタプレートが固定されているので、ワンタッチで赤道儀に掲載でき、設置がとても楽だった。鏡筒が軽く、SXP2クラスの赤道議に掲載できる点もよい。
天体撮影時、ガイド鏡はファインダー台座にアダプターを介して取り付けた。焦点距離400mmで露光時間も短いため、ガイドエラーは発生しなかった。ゲインを上げて露光時間を短くすれば、オートガイド無しでも撮影可能だろう。
筒先にカメラを取り付けるため、撮影時はフードが必須だ。今回のテスト撮影では、段ボールで作成して対応したが、ケーブル取り出し口を設けた専用フードの発売をお願いしたい。
ピント合わせ用のノブは軽くて回しやすいが、個人的にもう少しクリック感があった方が使いやすいと感じた。
以前、シュミカセを使用していた際は、ミラーシフトの問題に頭を悩ませたが、RASA8ではミラーシフトの発生は感じられず、快適に撮影を楽しめた。
イプシロン光学系と比べると、星像は若干大きく感じられたが、光学系はRASA8の方が明るく、同じ露光時間でも淡い星雲の写りは良好に感じられた。
光軸は調整せず、メーカーから配送された状態で撮影を行ったが、十分に合っていた。郊外に何度か持ち出したが、光軸ズレも発生しなかった。光軸調整は、補正レンズ固定部分の傾きを変更(スケアリング調整)するだけなので、ずれにくいのだろう。
筒内気流は、付属のファンを動かすと、約1時間で落ち着いた。筒内気流が残っていると、光軸がずれている時のように写るので、勘違いして光軸を動かしてしまわないようにしたい。
ZWO社のカメラを使用する場合は、動作中は赤ランプが点灯するので、迷光防止のため、パーマセルテープなどで覆う必要があった。特にフラットフレーム撮影時は注意したい。
撮影時は冷却CMOSカメラから熱が発生するため、フードを付ければ、ヒーターなしでも補正板が夜露で曇ることはなかった。


まとめ

これまで様々な鏡筒を使用してきましたが、RASA8にはそれらのどれとも違った魅力を感じました。
一番の魅力は、F2の明るさです。快晴の夜、一晩でRASA8を様々な天体に向け、短い露光時間で次々に撮り続けられるのは楽しかったですし、1対象に絞って、ナローバンドでじっくり撮影しても好結果を得られました。何気なく行っていた電視観望についても、RASA8を使ってみて「都会でもここまで映るのか」と認識を新たにしました。
RASA8は、持ち運びやすさも魅力だと思います。また、他社製の20センチクラスの望遠鏡は、鏡筒バンドが別途必要ですが、RASA8にはプレートが付属しているのでワンタッチで架台に搭載可能です。重量も軽く、中型赤道儀に搭載できるのも便利です。
RASA8を使っていると、不思議とおおらかな気持ちになり、星像の乱れが発生したときもそれほど気にならず、「次はあの天体を撮ってみよう」と楽しく天体撮影と向き合うことができました。
s 光学系の明るさから来る余裕、それがRASA8の魅力ではないでしょうか。天体撮影用としてはもちろん、電視観望にも使えるRASA8で、プライムフォーカスの世界を体験してみてはいかがでしょうか。

レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

アイダスNBZフィルターの使用感

アイダスNBZフィルターの使用感

アイダス ネビュラブースターNBZ(以下、「NBZフィルター」)は、OIII輝線とHα輝線を透過するデュアルナローバンドフィルターです。NBZフィルターは、同社のLPSシリーズ、HEIUB-IIフィルターと共に、天体撮影用として人気があります。今回は、上記フィルターとの比較画像を交えながら、NBZフィルターの使用感を確認してみました。


デュアルナローバンドフィルターとは?

銀河や恒星は連続光で輝いていますが、輝線星雲や惑星状星雲は、ある特定の波長の光を発して輝いています。天体によって多少異なりますが、輝線星雲はHα光(656nm付近の光)を発するものが多く、惑星状星雲は、OIII(波長500nm付近の光)やHαの光で輝く天体が多くなっています。デュアルナローバンドフィルターは、これらの天体が発するOIIIとHα、2つの波長の光だけを通すように設計されたフィルターです。


上は、NBZフィルターの特性図です。OIIIとHαの部分だけ透過率が突出しており、その他の波長の光の透過率は、ほぼゼロになっています。

この特性から推測できるように、撮影時にNBZフィルターを使用すると、星雲が発する光以外の光は通さないため、背景部分が暗くなり、星雲のコントラストを上げることができます。

下画像は、クリアフィルターとNBZフィルターを使って、冷却カラーCMOSカメラで撮影した、らせん星雲の写真です。撮影条件や画像処理は同じですが、クリアフィルター使用画像と比較すると、NBZフィルターの画像は星雲のコントラストが際立っており、フィルターの効果がよく感じられます。

上記のように、デュアルナローバンドフィルターは、連続光で輝く銀河の撮影には不向きですが、特定の波長の光で輝く星雲をはっきり写したい時には、大きな効果が感じられるフィルターです。


光害カットフィルターとEUIB-IIフィルター

光害カットフィルターは、その名の通り、光害の基となる波長の光だけをカットするように設計されたフィルターです。以前は、水銀灯が発する光を主にブロックする設計でしたが、最近は、LED照明が増えてきたこともあり、LEDによる光害にも対応したLPS-D2が登場しました。更に、LEDに加えて大気光にも対応したLPS-D3も登場しています。

HEUIB-IIフィルターは、Hα光で輝く輝線星雲のコントラストを強調するフィルターです。下に特性曲線を掲載しましたが、HEUIB-IIフィルターは600nm~650nmの波長の光をカットし、Hα光に
該当する波長の光のみを効率よく透過する設計になっています。

HEUIB-IIフィルターは一旦生産が終了していましたが、ユーザーからの復刻希望の声に応え、2021年9月に生産が再開されました。赤い星雲の描写に定評のあるフィルターの再生産は、天文ファンにとって嬉しいニュースですね。


都会でのフィルター効果の比較

2等星がやっと見えるくらいの都会の夜空で、はくちょう座の網状星雲を撮り比べて、アイダス社のLPS-D3HEUIB-IINBZフィルターの効果の違いを比較しました。撮影には、焦点距離200ミリの望遠レンズと、冷却CMOSカメラ ZWO社ASI2600MCPを使用しました。撮影は同条件で行い、撮影後は星雲を確認しやすいようにカラーバランス等は微調整しましたが、周辺減光等はそのままです。

上が、撮影後の画像です。クリアフィルター使用時の画像は、中央部が明るく、光害の影響で周辺減光が目立ち、星雲も背景に埋もれています。

LPS-D3を使用すると、フィルターの光害カットの効果により周辺減光が目立たなくなり、星雲もクリアフィルターに比べて写し出されています。

HEUIB-II使用時は、クリアフィルターに比べると若干背景が暗くなり、周辺減光も緩和されていますが、LPS-D3使用時に比べると光害カットの効果はやや弱いように感じます。しかし、網状星雲の赤い部分の写りは良好で、Hα光で輝く輝線星雲のコントラスト効果が感じられます。

NBZ使用時は、さすがデュアルナローバンドフィルターだけあって、網状星雲の淡い部分まで写し出され、星雲のコントラストも良好です。星がほとんど見えない都会の夜空でも、星雲がここまで写し出されたことに驚きました。

今回の結果から、光害カットの効果を考えると、LPS-D3HEUIB-II>クリアフィルターという順番になりそうです。


郊外地でのフィルター効果の比較

次に、天の川が見える郊外で、比較撮影を行いました。撮影に用いた機材は、都会での撮影と全く同じですが、空の暗さに合わせて露光時間を300秒に伸ばしました。画像処理は、星雲を確認しやすい程度にコントラスト強調だけ行っています。

上が、撮影後の画像です。光害の影響が少ないため、クリアフィルター使用時の画像でも周辺減光は目立たず、網状星雲の明るい部分がよく写っています。

LPS-D3を使用すると、背景が暗くなるので全体のコントラストが向上し、クリアフィルター使用時に比べ、写し出された網状星雲が明るく感じられます。

HEUIB-IIを使用した場合は、背景はLPS-D3ほどには暗くならないため、星雲のコントラストはやや弱く感じられますが、網状星雲の赤い部分の写りは良好です。特性曲線通り、赤い星雲を強調するのに適したフィルターと言えそうです。

NBZ使用時の画像では、網状星雲の明るい部分だけでなく、周囲に広がる淡いガス部分まで写し出されています。背景も黒く引き締まり、周辺減光もそれほど目立たないため、フラット補正も必要ないほどです。都会だけではなく、郊外地でも効果を発揮するフィルターと言えそうです。


ゴーストが発生しにくいNBZフィルター

デュアルバンドやシングルバンドのナローバンドフィルターは、ディープな天体撮影に欠かせないアイテムになりつつありますが、通す光の波長の幅が広いブロードバンドフィルター(IR-Cutフィルター等)に比べ、輝星にハロやゴーストが発生しやすいという欠点があります。


上は、他社製のナローバンドフィルター(Hαフィルター)で撮影したオリオン座三ツ星付近のモノクロ写真です。明るい星の周りに大きなハロが発生しているのがわかります。

一方、下は、セレストロンRASA8にNBZフィルターを取り付けて撮影した、はくちょう座の星雲の写真です。


写野中央に明るく写っているのは、2等星のはくちょう座γ星サドルです。星雲やハロを確認しやすいように強調処理した画像ですが、星の周りにハロはほとんど感じられません。
※輝星の上下に表れている光線は、望遠鏡の筒先に取り付けたケーブルによる回折光です。

NBZフィルターを製造しているアイダス社は、「フィルター単体の繰り返し反射を低減させることにより、先行販売していたNBXよりもNBZは低ハロになった」と発表していますが、上記の結果からもNBZフィルターはハロが出にくいフィルターと言えるでしょう。


電視観望にも適したNBZフィルター

電視観望は、都会の空でも天体観望をモニター越しに楽しめるとあって、徐々に人気が高まっています。NBZフィルターは、この電視観望際にも効果を発揮します。

上は、都会の空の下、電視観望で捉えた北アメリカ星雲の比較画像です。左から、フィルター無し、アイダス社のHEUIB-IIフィルター、同社のNBZフィルターを使って、都会で電子観望した際の画面キャプチャー画像です。NBZフィルターを使うと、他の2つの場合に比べて、星雲の形が一目瞭然です。

北アメリカ星雲だけではなく、惑星状星雲やその他の天体を電子観望した際にも大きな違いが感じられ、NBZフィルターは、電視観望にも有効なフィルターだと感じました。

さらに、星空の綺麗な場所でも電子観望してみたところ、都会での電子観望時と同様、NBZフィルターを使うと、上の比較画像の通り、背景と星雲コントラストが上がり、ペリカン星雲の姿がはっきりと映し出されました。


撮影後の印象

今回、NBZフィルターを天体撮影に使用して感じたことを以下に箇条書きでまとめました。

2等星がやっと見える都会の夜空でも、NBZフィルターを使えば、淡い星雲がはっきり写し出されたことに驚いた。

解像度の面では、モノクロ冷却CMOSカメラと各種ナローバンドフィルターを使ってカラー化した写真には及ばないが、カラーCMOSカメラとNBZフィルターを使えば、短時間でカラーのナローバンド画像を得られる点は魅力的だ。天候が不安定なときでも撮影を楽しめる組み合わせだろう。

NBZフィルターのテスト撮影には、望遠レンズや望遠鏡を使用したが、色収差が大きな屈折望遠鏡を用いると、HαとOIIIで最適なピント位置が異なるため、色ズレしたように写ってしまうことがあった。セレストロンRASA8のような、色収差が少なく、明るい光学系と組み合わせて使うのが理想的だろう。

他社製の半値幅7nmクラスのナローバンドに比べ、NBZフィルターの半値幅は約12nmで、半値幅が広い設計になっている。一般的に、半値幅が狭いほど、星雲のコントラストの向上が見込めるが、露光時間が長くなるというデメリットがある。12nmという半値幅は、星雲の描写と露光時間のバランスがよく、初心者でも使いやすいフィルターだと感じた。

半値幅が広めで恒星もある程度写るため、ブロードバンドフィルターで別途撮影した星だけの画像との合成も不自然にならないと感じた。

ナローバンド撮影では輝星のハロに悩まされることが多いため、NBZフィルターの低ハロ性能には大きな魅力を感じる。これなら明るい星を気にせず、構図撮りができると感じた。


まとめ

今回、NBZフィルターを使用してみて、デュアルバンドフィルターと冷却カラーCMOSカメラの組み合わせは、通常のシングルバンドのナローバンドフィルターと異なり、一度にHαとOIIIの画像を得られるため、天候が不安定な時でも効率的にカラー写真を得ることができて、とても魅力的に感じました。

また、LPS-D3フィルターやHEUIB-IIフィルターとの比較でも、NBZフィルターは光害カットの効果が大きいため、都会での撮影時にも星雲をコントラストよく、画面に浮かび上がらせることができました。都会での天体撮影時には、光害カットフィルターのLPSシリーズに加え、NBZフィルターも用意しておくと、撮影対象が広がり、更に楽しめるでしょう。

天体写真のベテランにとっては、NBZの低ハロ特性は大変魅力的に感じるのではないでしょうか。輝星に大きなハロやゴーストが発生してしまうと、ブロードバンド写真と合成して一枚の作品に仕上げる際に、星の周りがどうしても不自然な仕上がりになってしまいます。その点、NBZはハロの発生が少ないので、自然な感じに仕上げることができます。また、ツイン撮影システムのメインやサブ機用としても魅力的なフィルターだと感じました。

今回撮影に使用した、NBZフィルターと冷却カラーCMOSカメラの組み合わせは、肩肘張らずにナローバンド画像を得ることができ、撮影時間が限られる遠征撮影派にとっては、とても魅力的な組み合わせだと思います。NBZフィルターを追加して、気軽にナローバンド撮影を楽しんでみてはいかがでしょうか。

電子観望にチャレンジ


レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

ビクセン ED103S(SD103S) のインプレッション

ビクセン ED103S(SD103S) のインプレッション

ビクセン SD103S

ビクセンSD103SSDレデューサーHDキットの結像性能を調べるため、 「デジタル対応SD改造サービス」を行ったビクセンED103Sをフィールドに持ち出し、 実際に天体撮影を行ってみました。

なお、SD103Sは、前モデルであるED103Sのドローチューブ内の絞りの位置を変更したマイナーチェンジモデルです。 よって、「デジタル対応SD改造サービス(絞りを改造するサービス)」を実施したED103Sの撮影結果は、 SD103Sを使って撮影した場合と同じとお考えいただければと思います。


ビクセンED103について

ビクセンED103S鏡筒は、口径103mm、焦点距離795mm(F7.7)の2枚玉アポクロマート屈折望遠鏡です。 本体重量は3.6キロと比較的軽く、 鏡筒バンドにはキャリーハンドルも付けられているため、持ち運びのしやすい鏡筒です。

天体観測の入門者用として人気の高いSD81Sに比べると、ED103Sの口径は約2センチ大きいだけですが、 鏡筒の外観は二回りほども大きくなっており、口径差以上の大きさの差を感じます。 下写真は、ED103SとSD81Sを並べて置いたところです(ED103Sの鏡筒バンド類は取り外しています)。

ビクセン SD103S

口径2センチの差は、星雲星団の観望ではそれほど感じませんが、惑星を高倍率で観望すると、 集光力と分解能の差を感じます。 SD81Sではわかりにくかった木星の縞模様の様子など、ED103Sでは明るくよく見えます。

ED103Sには、暗視野照明付きの光学ファインダーが付属します。SD81S付属のスポットファインダーに比べて、 光学ファインダーでは暗い星もよく見え、天体を導入しやすいと感じました。

天体撮影用のフラットナーレンズ(SDフラットナーHD)とレデューサーレンズ(レデューサーHD)は、SD81Sと同じ製品を使用できます。 フラットナーレンズとレデューサーレンズについては、別レビューもご覧ください。


SDフラットナーHDの天体撮影

まず、ED103SにSDフラットナーHDを取り付けて、天体撮影を行ってみました。 ED103SにSDフラットナーHDを取り付けると、焦点距離は811ミリになります 。F値は暗くなりますが、天体を大きく写したいときに重宝する補正レンズです。

撮影対象には、おおぐま座で輝く系外銀河、M101を選びました。 撮影に使用したカメラは、天文用冷却デジタル一眼レフカメラのAstro6Dです。 赤道儀は、ビクセンSXP赤道儀を用い、オートガイド撮影を行いました。

ビクセン SD103S

上は、上記機材で6枚撮影し、画像処理ソフトで仕上げた写真です。 35ミリフルサイズセンサーはセンサー面積が大きいため、フラットナーレンズを用いてもM101銀河はそれほど大きく写りませんが、 漆黒の宇宙に浮かぶ銀河のイメージが得られる写真だと思います。 画像中央付近を切り抜いた写真を以下に載せました。 撮影時のカメラの設定は、ISO1600、1枚当たりの露光時間は600秒です。

ビクセン SD103S

M101銀河を拡大した画像です。星像はシャープでコントラストも良好です。 シャープ処理は一切施していませんが、銀河の腕のディテールもよく表現されています。

ビクセン SD103S

こちらは、右下隅の一部を拡大した画像です。 35ミリフルサイズ最周辺部まで、ほぼ点像を保っており、色ずれもほとんど感じられません。


SDフラットナーHD使用時の周辺減光

次に、周辺減光について見ていきましょう。 下は、ED103SにSDフラットナーHDを取り付けて撮影した際のフラットフレーム画像(未処理)です。

SDフラットナーHDの周辺減光

35ミリフルサイズの画角ですが、未処理の画像からは減光は感じられません。 次に、フラットフレーム画像を、レベル補正コマンドを使って約5倍に圧縮強調しました。

SDフラットナーHDの周辺減光

ここまで強調すると、周辺部が中央部に比べて暗くなっている様子がわかります。 しかし、画面全体として減光はなだらかで、周辺減光の補正はしやすいでしょう。 センサーサイズが小さなAPS-Cサイズのデジカメなら、フラット補正無しで仕上げることもできそうです。


ビクセンED103SとSDレデューサーHDキットで天体撮影

次に、SDレデューサーレンズも取り付けて撮影しました。 レデューサーレンズも取り付けると、焦点距離は624ミリになります。 少し珍しい焦点距離ですが、散光星雲を大きく撮影するには適当な画角でしょう。

撮影対象には、夏の天の川銀河の中で輝く、いて座のM8とM20星雲を選びました。 微恒星も多く、光学系のシャープさが問われる星域です。 撮影に使用した機材は、フラットナーレンズのみを使用した時と同じです。

ビクセン SD103S

上は、上記機材で6枚撮影し、画像処理ソフトのステライメージ8で仕上げた写真です。 画角全体にわたって星はシャープで、コントラストも良好です。星像確認のため、 画像中央付近を切り抜いた写真を以下に掲せました。 なお、撮影時のカメラの設定は、ISO1600、1枚当たりの露光時間は480秒です。

ビクセン SD103S

拡大画像から、色収差の発生もほとんど感じられず、鋭い星像を結んでいることがわかります。

ビクセン SD103S

上は、画像の右下隅の一部を拡大した画像です。 35ミリフルサイズの最周辺部になると、収差で星の形が若干放射状に崩れているものの、ほぼ真円を保っていると言えます。色ずれの発生もほとんど感じられません。星像についてはフラットナーレンズのみを使用した時の方がよりシャープな印象を受けましたが、 レデューサーHDは、焦点距離を短くしながら、諸収差も良好に補正できているという印象を受けました。


レデューサーHD使用時の周辺減光

レデューサー使用時の周辺減光について確認しましょう。 下は、ED103Sとレデューサーを取り付けた際のフラットフレーム画像(未処理)です。

レデューサーHDの周辺減光

35ミリフルサイズの画角ですが、元画像では、写野端でも減光はほとんど感じられません。 画像処理ソフトのレベル補正コマンドを使って、約5倍のコントラスト強調を実施すると、四隅に近づくにつれ、光量の落ち込みが確認できますが、 勾配はそれほど急ではなく、なだらかに減光しているイメージです。

レデューサーHDの周辺減光

周辺減光は発生しているものの、 レデューサーレンズ使用時でも極端な減光ではなく、補正しやすい光学系であることが確認できました。


撮影後の印象

今回、ビクセンED103Sを使って天体撮影に使用した印象を、以下に箇条書きでまとめました。

ED103SとSDレデューサーHDキットのマッチングは良好で、35ミリフルサイズカメラのほぼ全面にシャープな像を結ぶ。 周辺減光も少なく、天体撮影に使いやすい組み合わせであることが確認できた。

SD81Sと比べると若干ましではあるが、ED103Sでも撮影時に輝星に回折光が写りこんでしまう。 星像が良いだけに残念なので、レンズに出っ張った錫箔を隠すなどの対策をメーカーにお願いしたい。

SDフラットナーHD使用時の焦点距離は811ミリと長く、解像力も高いので、 センサーサイズの小さな冷却CMOSカメラと組み合わせれば、 春の系外銀河の撮影も楽しめそうだと感じた。

SD81Sに比べて大きく重いので、ポルタII経緯台では少々苦しく、SXクラス以上の赤道儀に搭載したい。 自動導入機能の付いた赤道儀に載せれば、 小さな系外銀河でも簡単に導入でき、このクラスの望遠鏡には適した組み合わせだと感じた。


まとめ

今回のテストを通じて、ビクセンED103S(SD103S)は、口径10センチの天体望遠鏡ながら、持ち運びしやすく、 自宅での月や惑星の観望から、補正レンズを併用した天体撮影の分野まで、幅広く使用できる機材だと感じました。

天体撮影では、ビクセンのSDレデューサーHDキットとのマッチングが良好で、 35ミリフルサイズ全面にシャープな像を結ぶことが確認できました。 最近、注目されているセンサーサイズの小さい冷却CMOSカメラと組み合わせれば、 星雲星団だけではなく、春の銀河まで撮影を楽しむことができると思います。

口径10センチの屈折式天体望遠鏡は、性能と大きさのバランスが良く、屈折のスタンダードとも言える機材です。 SD81Sからのステップアップとしてはもちろん、最初からSD103Sを購入してじっくり天体観測を楽しむのもよいでしょう。 SD103Sは、入門者からベテランまで、それぞれの目的に合わせて使用できる天体望遠鏡だと感じました。

レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

ビクセン SD81Sのインプレッション

ビクセン SD81Sのインプレッション

ビクセン SD81S

ビクセンSDシリーズは、同社の天体望遠鏡ラインナップの中で、屈折望遠鏡の中核を担う鏡筒です。 SDシリーズでは、口径の異なる3つの望遠鏡が用意されていますが、ビクセンSD81Sは、最も口径の小さな天体望遠鏡です。 今回は、このコンパクトなSD81Sをフィールドに持ち出し、使い勝手や写真性能をレビューしました。


ビクセン SD81Sについて

ビクセンSD81S鏡筒は、口径81mm、焦点距離625mm(F7.7)の2枚玉アポクロマート屈折望遠鏡です。 SD81Sの対物レンズには、EDガラスの中でも特に優れた光学性能を有する素材(FPL53)で作られたSDガラスレンズが用いられており、 コンパクトながら高性能を目指した望遠鏡です。

SD81Sの本体重量は2.3キロと軽く、鏡筒バンドにはキャリーハンドルも付けられているため、 持ち運びやすく、女性でも楽に取り扱うことが可能です。 鏡筒バンド下部には、スライドバーMがネジ止めされているので、 アリミゾ式の架台にワンタッチで取り付けることができます。

ビクセン SD81S

SD81Sのドロチューブ先端は、2インチ径のスリーブ形状で、フリップミラーが標準で付属しています。フリップミラーは、 低倍率と高倍率を即座に切り替えることができる天頂ミラーで、天体観望用に便利なパーツです。

天体の導入支援装置として、SD81Sには光学ファインダーの代わりに、スポットファインダーが付属しています。 電源を入れると、ガラスの円形窓に赤い光の点が出現します。 この光点と天体を重ねることによって、望遠鏡視野内に天体が導入される仕組みです。

SD81Sには、デジタルカメラで星雲や星団を撮影するユーザー向けに、 フラットナーレンズ(SDフラットナーHD)とレデューサーレンズ(レデューサーHD)がオプション設定されています。 どちらも、天体写真ファンからの評価の高い補正レンズです。 フラットナーレンズとレデューサーレンズについては、別レビューもご覧ください。


ビクセン SD81Sの光学性能

ビクセンSD81Sの光学性能を確かめるため、鏡筒を郊外に持ち出し、星空観望を実施しました。

まずはじめに、恒星像を眼視で確認しました。 わし座のアルタイルを高倍率で確認しましたが、色収差はほとんど感じられず、恒星像は十分にシャープでした。 焦点内外像もほぼ対称に近く、諸収差の補正も良好と感じました。

続いて、さそり座のM6、M7をはじめとした、明るく大きな散開星団を低倍率で観望しました。 屈折らしいコントラストの高さで、暗い夜空を背景にして、微恒星が集まった様子がよくわかり、 星の色合いの違いも確認できました。

星空観望後、南天で輝く木星や土星も観望しました。惑星の観望では、口径不足の感は否めないものの、 木星表面の目立つ縞模様はコントラストよく見え、土星の環もはっきりと見えました。

月面は迫力ある眺めを楽しめました。100倍程度の倍率で月面を観察すると、 クレーターや月面の皺模様の立体感が感じられました。 色収差の発生は目立たず、明るい月のリムを見ても、色のにじみはほとんど感じられませんでした。


ビクセン SD81Sを使って天体撮影

星空を観望した後、SD81Sに、SDレデューサーHDキットを取り付け、天体撮影を行いました。 SD81Sにレデューサーレンズを取り付けると、焦点距離は496ミリになります。 焦点距離500ミリ前後の画角は、はくちょう座の北アメリカ星雲をはじめ、散光星雲の撮影に使いやすい画角です。

今回、撮影対象には、北アメリカ星雲と同じく、はくちょう座で輝くγ星付近の散光星雲を選びました。 γ星付近の星雲は、微恒星が多く、色合いも豊かで華やかな星域です。

撮影に使用したカメラは、天文用冷却デジタル一眼レフカメラのAstro6Dです。 赤道儀は、KYOEIオリジナルのビクセンAP-WM追尾撮影スターターセットを用いました。 オートガイドは、LacertaM-GENを使用しています。

ビクセン SD81S

上は、上記機材で4枚撮影し、画像処理ソフトのステライメージ8で仕上げた写真です。 画角全体にわたって星はシャープで、コントラストもよい写りです。 星像確認のため、画像中央付近を切り抜いた写真を下記に掲載しました。 なお、撮影時のカメラの設定は、ISO3200、1枚当たりの露光時間は300秒です。

ビクセン SD81S

拡大画像から、色収差の発生も感じられず、鋭い星像であることがわかります。 なお、輝星の周りに回折像が写っていますが、これは、SD81Sの対物レンズの間隔調整用の錫箔が、 光路に少し飛び出しているためです。 回折像が気になる場合は、錫箔を隠す円形の絞りを作って、対物レンズセルの前に貼り付けるとよいでしょう。

ビクセン SD81S

上は、画像の右上隅の一部を拡大した画像です。 35ミリフルサイズの最周辺部になると、収差で星の形が若干菱形になっていますが、 その量はわずかです。色ずれの発生もほとんど感じられず、 焦点距離を短くしながら、諸収差も良好に補正しているという印象を受けました。


SDフラットナーHDで天体撮影

次に、SDフラットナーHDSD81Sに取り付けて、天体撮影を行いました。 SD81SSDフラットナーHDを取り付けると、焦点距離が644ミリになります。 レデューサーレンズに比べると、F値が暗くなりますが、天体を更に大きく写したいときに重宝する補正レンズです。

撮影対象には、秋の夜空で輝く、アンドロメダ大銀河を選びました。 撮影に使用した機材は、レデューサー使用時と同じです。

ビクセン SD81S

上は、上記機材で撮影して仕上げた写真です。 フラットナーを用いると、ちょうどよい大きさでアンドロメダ大銀河が画角に収まりました。 画像中央付近を切り抜いた写真を下記に掲載しました。 なお、撮影時のカメラの設定は、ISO3200、露光時間は480秒です。 4枚撮影して画像処理ソフトで仕上げています。

ビクセン SD81S

アンドロメダ大銀河の中心部を拡大した画像を上に掲載しました。 レデューサー使用時と同様、星像はシャープでコントラストも良好です。 シャープ処理は一切行っていませんが、銀河の暗黒帯のディテールもよく表現されており、解像力の高さを感じさせてくれます。

ビクセン SD81S

続いて掲載したのは、右上隅の一部を拡大した画像です。 星像は35ミリフルサイズ最周辺部まで、ほぼ点像を保っており、色ずれも感じられません。 レデューサーHD使用時と比べ、SDフラットナーHD使用時の方が星像が更にシャープな印象を受けました。


使用後の印象

今回、ビクセンSD81Sを天体観望と天体撮影に使用した印象を、以下に箇条書きでまとめました。

8センチクラスの天体望遠鏡ということで、天体撮影時の解像力にはそれほど期待していなかったが、 アンドロメダ大銀河の暗黒帯の描写など、クラスを超えた写りに驚いた。

天体撮影用として人気の高い4枚玉アポクロマート望遠鏡(タカハシFSQ-85ED等)に比べると、 SD81Sは、対物レンズが2枚玉ということもあり、 温度順応が早く、気温変化によるピント位置の変動も少なく感じた。

補正レンズ使用時の星像が良いだけに、輝星に回折光が写りこむのは残念だ。 ユーザー側でも対処可能だが、メーカーで対物レンズ前に飾り環を付けるなど、 何らかの対処をしてほしいと感じた。

SDフラットナーHD使用時は、周辺減光が非常に少なく、フラット補正が合いやすいと感じた。 ミラーボックスのケラレが発生しないミラーレス一眼や天体用CMOSカメラなら、 画像処理ソフトの周辺減光コマンドで補正できそうだ。

以前レビューしたビクセンED80sfと比べ、SD81Sの方が接眼部の構造が丈夫なため、 重いカメラを取り付けてもドロチューブがずれ落ちにくかった。 高性能なSDレデューサーHDキットを使用できる点から考えても、 今後、天体撮影の予定があるなら、SD81Sをお勧めしたい。

SD81Sは、8センチクラスの中でも軽くコンパクトな上、アリガタシステムでワンタッチで架台に取り付けられるので、 天体観測入門者にも適した天体望遠鏡と感じた。 ポルタII経緯台とセットになった「KYOEIオリジナルポルタII-SD81S・EDアイピースセット」は、 天体観望用として最適のセットだろう。


まとめ

今回のテストを通じて、ビクセンSD81Sは、コンパクトな天体望遠鏡ながら、諸収差を良好に補正し、 気軽な天体観望から本格的な天体撮影まで、幅広く使用できる機材という印象を受けました。

特に天体撮影の分野では、ビクセンのSDレデューサーHDキットとのマッチングが良好で、 35ミリフルサイズ全面にシャープな像を結び、ベテランでも満足できる組み合わせだと感じました。

ビクセンSD81Sは、天体観測に興味を持った入門者の方はもちろん、 これから天体撮影に本格的に挑戦してみようと思っている方にも適した鏡筒です。 フラットナーとレデューサーレンズを使えば、 二通りの焦点距離で撮影を楽しむことができるので、撮影の対象も広がるでしょう。

また、既にSD81Sを所有している方は、是非、SDレデューサーHDキットを追加して、 天体撮影を始めてみてはいかがでしょう。 SD81Sを天体観望用だけに使うのは、少々もったいない気がします。 SD81Sを使って、是非、天体写真の扉を開けてみることをおすすめします。


SD81S鏡筒ラインナップ

SD81S鏡筒

ポルタII
EDアイピースセット

SXD2赤道儀
直焦点撮影
スターターセット

AP-SD81S


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ビクセン SDレデューサーキット のインプレッション

ビクセン SDレデューサーキット のインプレッション

ビクセン SDフラットナーHDとレデューサーHD

ビクセンSDフラットナーHDレデューサーHDは、2017年に発売開始された屈折望遠鏡用の補正レンズです。 同社のSDシリーズ屈折望遠鏡(SD81SSD103SSD115S)用として開発されましたが、 これらより古い旧製品に使用することも可能です。

SDフラットナーHDレデューサーHDは、天体撮影には欠かせないアイテムです。 今回はこの二つの補正レンズの役割や重要性を解説するとともに、実際にフィールドに持ち出し、 写真性能をレビューしました。


SDフラットナーHD と レデューサー HD

フラットナーレンズは、その名の通り、望遠鏡が作り出した像を平坦化する機能があります。 ビクセンSDシリーズ屈折望遠鏡の中心像は非常にシャープですが、 直焦点で星を撮影すると、結像面が湾曲しているため、デジタルカメラの写野周辺の星はボケたように写ってしまいます。 SDシリーズ望遠鏡にフラットナーレンズを追加することにより、 像が平坦になり、周辺でもシャープな像を結びます。

フラットナーレンズの効果

ビクセンSDシリーズのフラットナーレンズは、「SDフラットナー HDキット」というキットで販売されており、 レンズが入ったフラットナー本体と、延長筒(EXチューブ66)、SD81S用のスペーサーリングSD81で構成されています。 使用するときは、EXチューブにフラットナーレンズ本体をねじ込み、鏡筒内に挿入して使います。 フラットナーレンズを使用したときの合成F値は、F7.7からF7.9へ、直焦点と比べて僅かですが暗くなります。

レデューサーレンズは、焦点距離を短縮し、F値を明るく補正するための補正レンズです。 レデューサーレンズを使用すると、下表のように焦点距離が短くなり、F値は7.7から6.1へ、 絞り約2/3段分明るくなります。

鏡筒名 焦点距離/F値 SDフラットナーHD使用時 レデューサーHD使用時
SD81S 625mm / F7.7 644mm / F7.9 496mm / F6.1
SD103S 795mm / F7.7 811mm / F7.9 624mm / F6.1
SD115S 890mm / F7.7 908mm / F7.9 699mm / F6.1

レデューサーレンズを使用するときは、EXチューブ66を取り外し、フラットナーレンズの後ろ直接ねじ込みます。 従来のビクセン鏡筒用のレデューサーED(F7.7用)と異なり、レデューサーレンズ単体では使用できないので、注意が必要です。 購入する際は、SDフラットナーHDキットにレデューサーHDがセットされた「SDレデューサーHDキット」がお勧めです。

ビクセン SDフラットナーHDとレデューサーHD

フラットナーレンズ、レデューサーレンズともに、ASコーティングという反射防止コーティングが施されており、 透過率の高さを感じさせてくれます。 艶消し塗装も丁寧で、外観も高級感を感じさせる仕上がりになっています。


SDフラットナーHDの結像星像

SDフラットナーHDの結像性能を調べるため、 ビクセンSD81Sを郊外に持ち出し、星空撮影を実施しました。 撮影に使用したカメラは、天文用に改造された冷却デジタル一眼レフカメラのAstro6Dです。 赤道儀は、協栄産業オリジナル仕様のビクセンAP-WM赤道儀を使用し、ラセルタM-GENでオートガイド追尾を行いました。

星像の確認のため、はくちょう座のデネブを撮影対象に選びました。 下は、カメラの感度をISO6400に設定し、露出時間90秒で撮影した画像の全景です。 画像処理は行っておらず、液晶モニターに映し出されたままの画像です。

ビクセン SDフラットナーHD

元画像を一見した印象では、周辺減光は感じられず、色収差の発生も感じられません。 次に、画像の一部を拡大して結像性能を確認しましょう。 下は、35ミリフルサイズの撮影画像の中心と周辺星像を切り抜き、ピクセル等倍で切り取った比較画像です。

ビクセン SDフラットナーHD

各部分の星像を確認すると、中心部は非常にシャープで、 35ミリフルサイズの最周辺部でも星像はほぼ円形を保っています。 全体に渡って色収差の発生もほとんど感じられず、均質で鋭い星像だと感じました。

なお、中央に写っている輝星(デネブ)に回折像が写っていますが、 これは、SD81Sの対物レンズの間隔調整用の錫箔が、光路に少し飛び出しているためです。 回折像が気になる場合は、錫箔を隠す円形の絞りを作って、対物レンズセルの前に貼り付けるとよいでしょう。


SDフラットナーHDの周辺減光

SD81SSDフラットナーHDを付けた時の周辺減光について見ていきましょう。 下は、SD81SSDフラットナーHDを取り付けた際のフラットフレーム画像(未処理)です。

SDフラットナーHDの周辺減光

35ミリフルサイズの画角ですが、未処理の画像からは減光は感じられません。 次に、フラットフレーム画像を、レベル補正コマンドを使って、約5倍に圧縮強調しました。

SDフラットナーHDの周辺減光

ここまで強調すると、周辺部が中央部に比べて暗くなっている様子がわかります。 しかし、画面全体として減光はなだらかで、周辺減光の補正はしやすいでしょう。 センサーサイズが小さなAPS-Cサイズのデジカメなら、フラット補正無しで仕上げることもできそうです。


レデューサーHDの写真と星像

続いて、レデューサーレンズを使用した時の星像をチェックしました。 使用したカメラや機材は、SDフラットナーHDテスト時と全く同じです。 撮影対象は、ヘラクレス座の球状星団M13です。 ISO1600、180秒露光で撮影しました。

SDフラットナーHDの周辺減光

元画像を一見した印象では周辺減光は感じられず、色収差の発生も感じられません。 次に、球状星団の部分を拡大して結像性能を確認しましょう。

SDフラットナーHDの周辺減光

フラットナー同様、レデューサーを使用した場合も色収差は感じられず、 星像もシャープで、微恒星までよく分解しています。 コントラストも良好です。 更に、周辺星像を確認してみましょう。 下は、35ミリフルサイズの撮影画像の中心と周辺星像を、ピクセル等倍で切り取った比較画像です。

ビクセン SDフラットナーHD

各部分の星像を確認すると、中心部は極めてシャープです。 35ミリフルサイズの最周辺部は、よく見ると星像が若干菱形に崩れていますが、 その割合は少なく、ほぼ円形を保っていると言えるでしょう。


レデューサーHD使用時の周辺減光

レデューサー使用時の周辺減光についても確認しましょう。 下は、SD81Sとレデューサーを取り付けた際のフラットフレーム画像です。

レデューサーHDの周辺減光

35ミリフルサイズの画角ですが、元画像からは写野端でも減光は、ほとんど感じられません。 画像処理ソフトで画像を強調してみると、四隅に近づくにつれ、 光量の落ち込みが確認できますが、勾配はそれほど急ではなく、なだらかに減光するイメージです。

レデューサーHDの周辺減光

フラットナーレンズでの撮影時と比べると、周辺減光は増加しているものの、 レデューサーレンズ使用時でも極端な減光ではなく、補正がしやすい光学系であることが確認できました。


ビクセン SDフラットナーHDとレデューサーHDの印象

今回、SDレデューサーHDキット(SDフラットナーHDレデューサーHDのセット)を使って、 実際に天体撮影に使用した印象を、以下に箇条書きでまとめました。

従来のレデューサー(レデューサーED(F7.7用))に比べ、結像性能は段違いで、大幅な性能進化が感じられた。 外観も高級感があり、造りもしっかりしている。

結像性能が非常に優れているため、シャープな光学性能を生かすには、正確なピント合わせが必要だと感じた。 標準付属のピントノブでは、ドロチューブが大きく動いてしまうため、 減速装置の付いた「デュアルスピードフォーカサー」を、是非用意しておきたい。

レデューサーHD使用時、カメラのスケアリングがずれていると、左右で星像の伸び方や色ずれが異なるケースがあった。 重いカメラを取り付けるときは、ビクセンFL55SS用のK-ASTEC製TB-80/65ASのような、 補正レンズ部分を支持するバンドがあれば安心だろう。

SDフラットナーHD使用時は、周辺減光が非常に少なく、フラット補正が合いやすいと感じた。 ミラーボックスのケラレが発生しないミラーレス一眼や天体用CMOSカメラなら、 画像処理ソフトの周辺減光コマンドで補正できそうだ。

レデューサーHDは、他のレデューサーと比べて、焦点距離を短くする力が弱く(0.79倍)、F値はそれほど明るくならない。 そのため、露光時間はあまり短縮できないが、星像は良好で周辺減光も比較的少ないと感じた。 最近のデジカメは高感度特性が優れているので、明るさよりも星像に優れた補正レンズの方が、 画像処理時のストレスが少ないと思われる。


まとめ

ビクセン製の補正レンズは、以前は、高橋製作所製に比べて性能の点で今一歩という印象でしたが、 2015年8月にR200SS用の補正レンズ「コレクターPH」が発売されて一変しました。 コレクターPHは、天体写真ファンから絶賛され、 その後に発売された同望遠鏡用のエクステンダーPHも高い評価を得ています。

SDフラットナーHDレデューサーHDも、コレクターPHの流れを汲む補正レンズで、 今回、実際に使用してみて、改めてその結像性能の良さを実感しました。 以前のビクセン製補正レンズに満足できなかったベテランユーザーでも、 納得できる仕上がりになっていると思います。

元々はSDシリーズ用の補正レンズですが、EDシリーズはもちろん、 それより古い旧製品にも使用できる汎用性の高さも魅力です。 接続アダプターを工夫すれば、他社製の2枚玉屈折望遠鏡にも流用できるかもしれません。

個人的に、ビクセンのSDフラットナーHDレデューサーHDは、 他社製を含めても一二を争う、優れた補正レンズだと感じました。 ビクセンSDやED望遠鏡をお持ちなら、是非、SDレデューサーキットも手に入れて、 天体撮影を楽しんでみてはいかがでしょうか。


SDレデューサーHDキットは以下の鏡筒に対応

SD81S鏡筒

SD103S鏡筒

SD115S鏡筒

AX103S鏡筒

VC200L鏡筒


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ビクセン FL55SS のインプレッション

ビクセン FL55SS のインプレッション

ビクセン FL55SS

ビクセンFL55SSは、株式会社ビクセンが製造する天体望遠鏡で、2018年7月に発売開始されました。 有効口径55mmのコンパクトな望遠鏡ですが、対物レンズにフローライトレンズを採用しており、小さいながら高性能な天体望遠鏡です。

FL55SS用の天体撮影用のオプションとして、フラットナーレンズレデューサーレンズも用意されています。 天体撮影向けオプションを用いた際の結像性能を調べるため、このコンパクトな高性能機をフィールドに持ち出し、 写真性能を中心にレビューしました。


ビクセン FL55SS について

ビクセンFL55SS鏡筒は、口径55mm、焦点距離300mm(F5.5)のフローライトアポクロマート屈折望遠鏡です。 本体重量は1.5キロと軽く、外観も200ミリ望遠レンズを一回り大きくした程度のコンパクトな天体望遠鏡です。

ビクセン FL55SS

FL55SS鏡筒の下部には、スライドバーMがパーツを介してネジ止めされています。 他の望遠鏡に採用されている鏡筒バンド固定式と異なり、FL55SSはこのスライドバーMを用いて、 アリミゾ式の架台にワンタッチで取り付けることができます。 外観上、小さな鏡筒本体に比べて、スライドバーMが大きく感じられますが、 デジタルカメラを取り付けたときの前後バランスを考えてのことでしょう。

FL55SSには、デジタルカメラで星雲や星団を撮影するユーザー向けに、 フラットナーレンズフラットナーHDforFL55SS)とレデューサーレンズ(レデューサーHD5.5)が用意されています。 どちらも、高性能な補正レンズと評価が高く、FL55SSを天体撮影に使用するなら、 是非そろえておきたいオプションです。 フラットナーレンズレデューサーレンズについては、以下の項目で詳しく見て行きます。


フラットナーHD と レデューサーHD

フラットナーレンズは、その名の通り、望遠鏡が作り出した像を平坦化する機能があります。 FL55SSの中心像は非常にシャープですが、直焦点で星を撮影すると、結像面が湾曲しているため、 デジタルカメラの写野周辺の星はボケたように写ってしまいます。 FL55SSフラットナーレンズを追加することにより、像が平坦になり、周辺でもシャープな像を結びます。

ビクセン FL55SS

FL55SSフラットナーレンズは、「フラットナーHDキットforFL55SS>」というキットで販売されており、 レンズが入ったフラットナー本体と、延長筒(EXチューブ)で構成されています。 使用するときは、上の写真のようにEXチューブにフラットナーレンズ本体をねじ込み、鏡筒内に挿入して使います。 フラットナーレンズを使用したときの合成F値は、直焦点(F5.5)と比べて僅かに暗くなり、F5.7になります。

レデューサーレンズは、焦点距離を短縮し、F値を明るく補正するための補正レンズです。 FL55SSレデューサーレンズを使用すると、焦点距離は300ミリから237ミリに短くなり、F値は5.5から4.3へと、 絞り約2/3段分明るくなります。

ビクセン FL55SS

レデューサーレンズを使用するときは、EXチューブを取り外し、フラットナーレンズの後ろ直接ねじ込みます。 従来のビクセンの補正レンズと異なり、レデューサーレンズ単体では使用できないので、注意が必要です。 購入する際は、フラットナーHDキットforFL55SS>にレデューサーがセットされた「レデューサーHDキットforFL55SS」がお勧めです。

また、フラットナーレンズレデューサーレンズともに、ASコーティングという反射防止コーティングが施されており、 透過率の高さを感じさせてくれます。


FL55SSとフラットナーHDの写真と星像

ビクセンFL55SSを郊外に持ち出し、フラットナーHDを取り付けて、冬の星雲を撮影してみました。 撮影に使用したカメラは、天文用に改造された冷却デジタル一眼レフカメラのAstro6Dです。 赤道儀はビクセンのSXP赤道儀を使用し、ラセルタM-GENでオートガイド追尾を行いました。

撮影対象には、冬の定番構図「オリオン座の馬頭星雲からM42」を選びました。 下は、カメラの感度をISO3200に設定し、露出時間240秒で撮影した画像の全景です。 画像処理は行っておらず、液晶モニターに映し出されたままの画像です。

ビクセン FL55SS

元画像を一見した印象では周辺減光は感じられず、色収差の発生も感じられません。 まず、画像の一部を拡大して結像性能を確認しましょう。

ビクセン FL55SS

上は、馬頭星雲付近を拡大した画像です。 対物レンズにフローライトレンズを使っている効果でしょう、色収差は感じられず、星像もシャープです。 コントラストも良好で、未処理の画像ながら、馬頭星雲の周囲に広がる赤い星雲がよく写し出されています。

次に、周辺星像を確認してみましょう。 下は、35ミリフルサイズの撮影画像の中心と周辺星像を、ピクセル等倍で切り取った比較画像です。

ビクセン FL55SS

各部分の星像を確認すると、中心部は極めてシャープですが、35ミリフルサイズの最周辺部は、 星像が菱形に崩れています。残存している非点収差等の影響だと思います。 ただ、周辺部でも色ズレの発生は感じられず、改めて色収差の少ない光学系だと感じました。

さらに、天体撮影によく用いられている、APS-Cサイズのデジタルカメラの画角の星像を確認してみましょう。 35ミリフルサイズの画像を、APS-Cサイズにトリミングしてみました。

ビクセン FL55SS

上画像のように、APS-Cの画角では、最周辺部まで星像は丸く、写野全面に渡って鋭い星像を結んでいます。 APS-Cセンサーのデジタルカメラなら、周辺部まで、全面に渡って鋭い星像を結ぶでしょう。


FL55SSとフラットナーHDの周辺減光

FL55SSフラットナーHDを付けた時の周辺減光について見ていきましょう。 下は、FL55SSフラットナーHDを取り付けた際のフラットフレーム画像です。

ビクセン FL55SS

35ミリフルサイズの画角ですが、写野端でも減光は感じられません。 画像処理ソフトで画像を強調しても、四隅の光量の落ち込みは感じられませんでした。

確認のため、オリオン座の星雲の写真を強調処理してみましょう。 ステライメージ8を使用し、オリオン大星雲の東側に広がる分子雲が出るまでレベル補正コマンドで強調しましたが、 周辺減光は感じられません。 使用するカメラによっては、ミラーボックスのケラレが生じることはあるかもしれませんが、 FL55SSフラットナーHDの周辺減光の少なさがよくわかりました。

ビクセン FL55SS

参考までに、天体撮影によく使用される、所謂サンニッパの300mmF2.8レンズで撮影した画像を下に掲載しました。

ビクセン FL55SS

300ミリレンズは周辺減光を減らすため、絞りを約1/3段絞っていますが、 それでもFL55SSと比べると周辺減光が目立ちます。 FL55SSには対物レンズと比較して口径の大きなフラットナーレンズを使用していることもあり、 周辺光量はカメラレンズに比べて豊富なのでしょう。


FL55SSとレデューサーHDの写真と星像

続いて、レデューサーレンズを使用した時の星像もチェックしました。 使用したカメラや機材は、フラットナーHDテスト時と全く同じです。 撮影対象も、同じくオリオン座の星雲群です。 F値が明るい分、露光時間は若干短く、ISO3200で180秒露光で撮影しています。

ビクセン FL55SS

焦点距離が短くなった分、フラットナーレンズでの撮影時と比べると、 オリオン座の三ツ星も写野内に入り、画角が一回り広くなっているのがわかります。 元画像を一見した印象では周辺減光は感じられず、色収差の発生も感じられません。 まず、画像の一部を拡大して結像性能を確認しましょう。

ビクセン FL55SS

今回も、馬頭星雲付近を拡大してみました。レデューサーを使用した場合も色収差は感じられず、 星像もシャープです。コントラストも良好で、輝星の輝きから光学系の抜けの良さが感じられます。

次に、周辺星像を確認してみましょう。 下は、35ミリフルサイズの撮影画像の中心と周辺星像を、ピクセル等倍で切り取った比較画像です。

ビクセン FL55SS

各部分の星像を確認すると、中心部は極めてシャープですが、 35ミリフルサイズの最周辺部は、星像が崩れています。 ただ、星像の崩れは放射状に伸びるのではなく、 円周方向にボケたような崩れ方なので、それほど目立たないように感じました。

続いて、天体撮影によく用いられている、APS-Cサイズのデジタルカメラの画角の星像を確認してみましょう。 35ミリフルサイズの画像を、APS-Cサイズにトリミングしてみました。

ビクセン FL55SS

上画像のように、APS-Cの画角では、最周辺部の星像は若干崩れますが、崩れは極めて小さく収まっています。 上記結果から、レデューサーを用いた場合でも、APS-Cセンサーのデジタルカメラなら、 写野全面に渡って、ほぼ丸い星像を結ぶと言えると思います。


FL55SSとレデューサー使用時の周辺減光

レデューサー使用時の周辺減光についても確認しましょう。 下は、FL55SSとレデューサーを取り付けた際のフラットフレーム画像です。

ビクセン FL55SS

35ミリフルサイズの画角ですが、元画像からは写野端でも減光は感じられません。 画像処理ソフトで画像を強調してみると、四隅に近づくにつれ、 光量の落ち込みが確認できますが、その程度は軽微です。

確認のため、先ほどのオリオン座の星雲の写真を強調処理してみましょう。 ステライメージ8を使用し、オリオン大星雲の東側に広がる分子雲が出るまでレベル補正コマンドで強調したところ 、四隅が暗くなっているのがわかります。

ビクセン FL55SS

フラットナーレンズでの撮影時と比べると、周辺減光が発生していますが、 その量はごく軽微で、レデューサーレンズ使用時も周辺光量の豊富な光学系であることが確認できました。

オリオン座の馬頭星雲からM42
大きい写真はコチラ 

大きい写真はコチラ 
撮影機材:ビクセン FL55SS鏡筒フラットナーHDキットSXP赤道儀
使用カメラ:Astro6D
露出時間:300秒×16コマ
撮影条件:RAWモード、ISO3200、M-genにて追尾撮影
撮影機材:ビクセン FL55SS鏡筒フラットナーHDキットSWAT-350 V-spec
使用カメラ:Astro6D
露出時間:180秒露光×16枚
撮影条件:SWAT-350 V-specにてノータッチ追尾

オートガイダーの取り付けについて

ビクセンFL55SSは、鏡筒バンドを使った固定方式ではないため、 通常の天体望遠鏡撮影システムのようにオートガイダーを親子亀方式で取り付けることはできません。 そこで、当初は、タカハシのガイド専用望遠鏡GT-40を赤道儀に取り付け、 その上にアリガタ金具を介して、FL55SSを搭載していました。

ビクセン FL55SS

この方式でオートガイドには問題ありませんでしたが、撮影に使用したところ、 ピントノブを回してドロチューブを前後させると、 拡大したデジカメの画像内で星がぴょんぴょんと動き回ることに気づきました。

また、ドロチューブの固定ネジを締めた際、星の位置がずれる点も気になりました。 ドロチューブが大きく傾くと、スケアリングのズレに繋がり、撮影画像にも影響が出ます。 実際、この組み合わせで撮影した画像を確認すると、左右で星像の写り方が違っている場合がありました。

対策として、スライドバーMを外し、K-Astec製の鏡筒バンド「TB-80/65AS」を使った固定方法に変更しました。赤道儀への装着は、同じK-Astec製のアルカスイス規格プレートDP38-190で固定します。 このように変更してみると、上記で感じた写野内での星の動きは小さくなり、 偏っていた周辺星像も改善しました。

ビクセン FL55SS

TB-80/65ASを使用すると、FL55SS鏡筒は裏返しになりますが、 スライドバーMを取り外した台座部に天文用アルカスイス規格クランプDS38を追加し、 ガイド鏡を載せることができます。

実際に一連のK-Astecパーツを試したところ、FL55SSを快適に使用できるようになりました。 フラットナーとレデューサーを使って本格的に天体撮影を楽しもうという方には、 是非K-Astecパーツを追加されることをお勧めします。


撮影後の印象

今回、ビクセンFL55SSを実際に天体撮影に使用した印象を、以下に箇条書きでまとめました。

色収差が少なく、星像も大変シャープ。 FL55SSの光学性能を生かすには、正確なピント合わせが必要だと感じた。 標準付属のピントノブでは、ドロチューブが大きく動いてしまうため、 減速装置が付いた「デュアルスピードフォーカサー」は、是非装備しておきたい。

補正レンズを使用した際の周辺光量は非常に豊富で、特にフラットナーHD使用時は、周辺減光はほとんど感じられない。 周辺減光が少ないので、フラット補正が合いやすく、 ミラーボックスのケラレが発生しないミラーレス一眼なら、フラット補正も必要ないくらいに感じた。

上記したとおり、ドロチューブの摺動部分の公差が大きいのか、ピントノブを回すと視野内で星が動く点が気になる。 メーカーとして予め対策をお願いしたいところだが、K-Astec製のTB-80/65ASを使用すれば解決する。

ビクセンの高性能アイピース、HR2.0ミリを接眼部に挿し込み、星像を確認したところ、 色収差は感じられず、シャープで、ジフラクションリングも綺麗に見えた。 FL55SSは、写真性能だけでなく、眼視性能も優れた望遠鏡だと感じた。

口径55ミリの望遠鏡とは思えないほど、よく写ると感じた。 焦点距離200ミリ~300ミリ前後の光学系となるとカメラレンズも候補になってくるが、 星像の美しさやコントラストの点で、やはりFL55SSの方が優れているだろう。

軽くてコンパクトなので、ポータブル赤道儀にも搭載しやすい。 実際、ユニテック社のSWAT-350 V-specに載せて撮影したが、ノータッチ追尾で天体撮影を楽しめるのは、とても快適だった。 2020年に発売される予定のポラリエUに搭載してもよさそうだ。


まとめ

焦点距離200ミリ~300ミリ前後の画角の撮影ではカメラレンズを使用することが多く、 小型望遠鏡にはこれまであまり興味を引かれませんでしたが、 今回、ビクセンFL55SSを使用してみて、考えが180度変わりました。

FL55SSは、色収差が良好に補正されているので、青ハロの発生は皆無です。 周辺星像もカメラレンズと比べて良好で、周辺光量が豊富なので、フラット補正に悩むこともありません。 これは、フローライトレンズを採用した効果だけではなく、丁寧に作られたフラットナーレンズレデューサーレンズによるところも大きいでしょう。

天体撮影用の屈折望遠鏡と言えば、口径8センチ~10センチ前後の鏡筒がメジャーでしたが、 ここ数年、口径6センチ前後のコンパクトな高性能機も注目されています。 ビクセンFL55SSは、その中では高価な機種になりますが、眼視性能の高さや高品質な補正レンズなど、 今回のレビューを通じて、価格相応の品質を備えた望遠鏡だと感じました。

ビクセンFL55SSは、星景写真から天体撮影にも挑戦してみようという方に、特にお勧めしたい望遠鏡です。 また、ベテランのサブ機や海外遠征機材としても、確実に結果を残せる優れた望遠鏡だと感じました。



かもめ星雲(IC2177)
大きい写真はコチラ 

撮影機材:ビクセン FL55SS鏡筒フラットナーHDキットSXP赤道儀M-genにてオートガイド追尾
使用カメラ:Astro6D
撮影条件:300秒×6枚、ISO3200

ラセルタ モーターフォーカスのインプレッション

ラセルタ モーターフォーカスのインプレッション

ラセルタ モーターフォーカス

ラセルタモーターフォーカス(以下:ラセルタMFOC)は、 M-GENスーパーガイダーでお馴染みの「Lacerta(ラセルタ)」が製造している電動フォーカサーです。 今回、タカハシのε-130DFSQ-85EDラセルタMFOCを取り付けて撮影する機会を得ましたので、 ラセルタMFOCの概要と使用した印象をレビューにまとめました。


ラセルタMFOCについて

天体撮影用の電動フォーカサーには、大きく分けて、フランジ型の製品と、 望遠鏡のドロチューブ機構に取り付ける、ラック&ピニオン型の2種類があります。 ラセルタMFOCは後者のタイプで、下の写真のように、望遠鏡のピントノブを外した部分に、 付属アダプターを使ってモーターを固定し、コントローラーでこのモーターを回転させてピントを合わせます。

ラセルタ モーターフォーカス

望遠鏡の光路内に組み込むフランジ型の製品(β-SGRなど)と比べ、ラセルタMFOCは、 天体望遠鏡のピント機構を使用するので、バックフォーカスを気にする必要がありません。 また、汎用性が高く、取付アダプターを替えれば、様々な望遠鏡に使用することができます。

ラセルタMFOCには、コントローラー本体と電動モーター、望遠鏡取り付け用のアダプター、各種ケーブル類が付属します。 なお、ラセルタMFOCのコントローラーは、ボタンの配置は若干異なるものの、 M-GENスーパーガイダーとそっくりの形をしていますので、 M-GENユーザーには馴染みやすいのではないでしょうか。


ラセルタMFOCの機能について

ラセルタMFOCは、高機能な電動フォーカサーで、コントローラーを使って単純にモーターを動かしてドロチューブを前後させる機能だけではなく、 温度センサーに従ってピントを補正したり、パソコンとASCOM接続したりといった、 電動フォーカサーに必要とされる様々な機能が設けられています。

天体写真ファンには、モーターの動きの細かさが気になるところですが、取扱説明書によれば、 最小の繰り返し精度は0.001mmですので、F値の明るい望遠鏡でも十分な精度でしょう。 また、ステップ数は250,000ステップと余裕があり、 望遠鏡のドロチューブにもよりますが、必要十分なストローク(可動範囲)があると言えると思います。

モーターには、ステッピングモーターが使われています。 取扱説明書によれば、ホールド時の最大能力は5キロとありますので、 重いデジタル一眼レフカメラでも保持できそうです。

下に、ラセルタMFOCの主な機能と特徴をまとめました。 なお、細かい仕様については、カタログや販売ページをご覧ください。

・スタンドアロンモードとASCOMによる制御
・温度センサー(全長約180cmのプローブコード付属)
・バックラッシュ補正機能
・GOTO機能とフィルターオフセットポジション登録
・250,000ステップ、最小の再現性0.001mm
・パーマネントフォーカス(自動温度補正可能)
・M-GENと接続するためのシャッター信号認識
・電源オフ時はマニュアルフォーカス可能


ラセルタMFOCの取り付け方

実際の使用レビューの前に、鏡筒に取り付けた様子をご覧ください。 詳しい取り付け方は、説明書をご確認いただければと思いますが、 ここでは取り付け方のコツをご紹介します。 まず、天体写真ファンに人気の高いタカハシε-130Dへの取付です。

ラセルタ モーターフォーカス

上記のように、ε-130Dのピントノブを外してラセルタMFOCのモーターを挿し込み、 付属のアダプター(大)を使って固定します。

アダプターを接眼部に固定するネジの両側に、隙間を調整するイモネジがあります。 このイモネジを使って、ラック&ピニオンとモーターの軸が一直線になり、 ドロチューブがスムーズに動くように調整してください。 この部分の動きが悪いと、モーターに余計な負荷がかかり、エラーが発生することがあります。

ラセルタ モーターフォーカス

次は、FSQ-85EDへの取付です。上の写真のように、減速装置と逆側のノブを外し、そこにモーターを取り付けます。

アダプターは、ε-130Dとは別のものを使用します。このアダプターには、調整用のイモネジはありませんので、 ねじ込んで固定するだけです。 ただ念のために、ドロチューブの動きは確認しておきましょう。

今回、試用したラセルタMFOCには、タカハシ製望遠鏡に取り付けるためのアダプターが2種類付属していました。 このアダプターを使用すれば、一部の望遠鏡(TOA-150B等)を除き、 たいていのタカハシ製望遠鏡にモーターを取り付けることができます。


ラセルタMFOCの使い心地

ラセルタMFOCを使用して、実際に星空撮影を行い、電動フォーカサーの使い心地を確認しました。 使用した望遠鏡は、天体撮影ファンに人気の高い高橋製作所のε-130DFSQ-85EDです。 これらに、重さ約1.4キロのフルサイズ冷却デジタルカメラ、Astro6Dを取り付けて撮影を行いました。

パソコンとは接続せず、コントローラーのボタンを押して、カメラのライブビュー画面を見ながらピントを合わせました。 下の画像のように、ラセルタMFOCの液晶ディスプレイに、モーターのステップ数と動く方向が常時表示されますので、 ピントをどの方向にどれだけ動かしたかがすぐにわかります。
※下の画像の「6715」がステップ数、「In」がモーターが動いている方向です。

ラセルタ モーターフォーカス

これまでは、望遠鏡の接眼部にアナログのピントゲージを取り付け、小さなメモリを見ながらピントノブを慎重に回し、 どの方向にどれだけ動かしたかを覚える必要がありましたが、 ラセルタMFOCでは快適にピント合わせができました。

重さ約1.4キロのAstro6Dを接眼部に取り付けましたが、特に動作に問題はありませんでした。 ただ、数キロを超える非常に重い冷却CCDカメラ(FLIのProlineなど)や、 巨大なオフアキシスガイダーを接眼部に取り付ける場合は、事前に相談した方がよいでしょう。

モーターの最小移動量は十分に小さく、F値の明るいε-130Dで使用しても、ピント合わせの精度は十分でした。 F2.8クラスの望遠鏡でも、必要十分なピント精度が得られると感じました。


ASCOM接続でより高度なフォーカシング

スタンドアロンでも便利なラセルタMFOCですが、USBケーブルでパソコンに繋ぎ、 ASCOM対応のソフトウェア(FocusMaxやMaximDLなど)を使って、ピントを合わせることも可能です。 今回は、ASCOM対応のフォーカシングソフト「FocusMax」と冷却CCDカメラを使って、 実際に星空を撮影し、ラセルタMFOCの動作を確認しました。

ラセルタ モーターフォーカス

上の画像は、FocusMaxを使ってピントを合わせている時のパソコン画面です。 左のFocusMaxのダイアログボックスの「Focuser」欄に「LacertaMotorFocus」が選択されていることが確認できます。

FocusMaxは、カメラ制御ソフトと連携して、オートフォーカスが可能なソフトウェアです。 上画面の中央に、赤い丸が幾つも「V」上に並んだダイアログボックスがありますが、 この赤い丸の回数だけ、ラセルタMFOCがピントをずらして撮影を行い、 ピントの最適位置を探しました。 ラセルタMFOCは、FocusMaxとの連携も良好で、パソコン上でも快適にピントを合わせられることが確認できました。

なお、ASCOM対応ソフトウェア上でラセルタMFOCを制御するには、ASCOMドライバーのインストールなどが必要です。 若干専門的な知識や対応ソフトが必要ですが、 普段、パソコンからデジタルカメラを制御して撮影されている方にとっては、魅力的な機能でしょう。


その他の便利な機能

ラセルタMFOCは高機能なフォーカサーですので、全ての機能は試せませんでしたが、 天体撮影に役立つ、いくつかの便利な機能をご紹介しましょう。

・ハンドコントローラーのボタンを押し続ける代わりに、GOTO機能を使って、 希望のカウント位置まで一気に動かすことができます。 ピント位置を大きく動かしたいときに便利な機能です。

ラセルタ モーターフォーカス

・フォーカサーのオフセット値を、9つまで登録することができます。 具体的には、フィルター毎のピントの誤差を事前に登録しておき、 フィルターを交換するごとに、オフセット値を読み出してピントを一気に合わせることができます。

・パーマネントフォーカス機能(PermanentFocus)と呼ばれる、温度補正機能付きのモードが用意されています。 この機能は、電源を切るときのピント位置を記憶し、次回、電源を入れたときに、 温度プローブの計測値を参考にして、最適なピント位置まで自動的にモーターを動かす機能です。 この機能を正しく使用するには、温度変化時のピントの移動量、ラック&ピニオンのバックラッシュ量を事前に登録する必要がありますが、 使いこなせば便利な機能でしょう。

M-GENスーパーガイダーラセルタMFOCを繋ぐことで、シャッターが閉じている間に、 設定した温度変化時のピント移動量に基づき、ピントの温度補正を行うことができます。 また、ソフトウェアが対応していれば、パソコン上のASCOM対応プログラムでも可能です。


まとめ

今回、ラセルタMFOCを天体撮影に使用してみて、コントローラーの使い勝手の良さと、 ASCOM対応ソフトウェアと連携して高度な天体撮影にも対応できることを確認することができました。

ラセルタMFOCは、オートガイダーとして人気の同社の M-GENスーパーガイダーと同じように、 コントローラーを使って天体写真の初級者の方でも簡単に操作でき、 かつ、ベテランの方でも満足できる機能が内蔵された電動フォーカサーだと感じました。

天体写真を撮影する上で、ピント合わせは大変重要ですが、面倒な作業でもあります。 スタンドアロンからASCOM制御にまで対応したラセルタMFOCを使用すれば、 これまでより簡単かつ正確にピント合わせをすることができるでしょう。 ラセルタMFOCは、よりシャープな画像を得る上で、大きな手助けになるツールだと思います。

タカハシε-130Dのインプレッション

タカハシε-130Dのインプレッション

タカハシε-130D タカハシ ε-130Dは、高橋製作所が製造している天体望遠鏡です。

ε-130Dは、アイソン彗星(C/2012 S1)の接近(2013年12月)に合わせて開発が進められ、 2013年8月に発売開始されました。

ε-130Dは、一般的な天体望遠鏡と異なり、天体撮影専用の望遠鏡です。 開放F値が「3.3」と望遠レンズ並みに明るいので、短時間の撮影でも淡い星雲を映し出すことが可能です。

ε-130Dは、生産が終了していた先代のε-130の性能を受け継ぎつつ、 デジタル対応の補正レンズを組み込んで、最新の撮影機材に対応したモデルです。 同社の反射式望遠鏡の現行ラインナップ中で、最も小さく、安価なモデルです。


イプシロンシリーズの復活とε-130D

高橋製作所のイプシロンシリーズは、天体撮影用に開発された望遠鏡です。 主鏡には、双曲面鏡(Hyperboloid mirror)が用いられ、 焦点面の前に補正レンズを置くことによって、平坦な像を得ます。

ε-130Dは、イプシロンシリーズの中で最も小さな望遠鏡です。 先代のε-130は1984年に発売され、 長らく生産されましたが、イメージサークルが広い高性能屈折望遠鏡に人気が集まると、 やがてイプシロンシリーズは生産が終了しました。

その後、デジタル機材が天体撮影に使われ始めると、 F値の明るいイプシロンシリーズが、再び天文ファンから注目されるようになりました。 高橋製作所は、2003年にタカハシε-160を限定再生産し、 2005年にはデジタル時代を担うイプシロン鏡筒としてε-180EDを発表しました。

限定生産 タカハシε-160

2003年に限定再生産されたε-160

ε-180EDは歴代最高のF2.8という明るさで注目を集め、多くの天体写真ファンが購入しましたが、 光軸調整や平面性の調整がシビアな鏡筒でした。 2007年にタカハシFSQ-106EDが発表されると、屈折へ乗り換えるユーザーが増え、 中古市場でε-180EDをよく見かけるようになりました。

2009年に、ε-130とε-160用のデジタル対応補正レンズが限定生産されました。 そして、2013年のアイソン彗星の接近に合わせて発表されたのが、ε-130Dです。 ε-130Dはコンパクトで軽量なため、SXクラスの赤道儀にも載せられるとあって、 今でも人気機種の一つになっています。

歴代のイプシロンシリーズのスペック表

鏡筒名 生産開始年 口径 焦点距離 口径比 重さ
ε-130 1984年 130mm 430mm 3.3 5.5kg
ε-130D 2013年 130mm 430mm 3.3 4.9kg
ε-160 1984年 160mm 530mm 3.3 7.6kg
ε-180ED 2005年 180mm 500mm 2.8 10.7kg
ε-200 1984年 200mm 800mm 4.0 13.5kg
ε-210C 1993年 210mm 628mm 3.0 10.4kg
ε-210 1996年 210mm 628mm 3.0 15.3kg
ε-250 1987年 250mm 854mm 3.4 32.0kg
ε-250C 1992年 250mm 854mm 3.4 18.9kg
ε-300 1985年 300mm 1130mm 3.8 45.0kg
ε-350 1997年 350mm 1248mm 3.6 66.0kg

タカハシε-130Dの外観と先代からの変更点

ε-130Dは、鏡筒色がイエローで、鏡筒の大きさも小さいので、 初めて見たときは、かわいらしく感じました。 しかし、高橋製作所の望遠鏡らしく、鏡筒各部の造りはとてもしっかりしています。

ε-130Dを上位機種のε-180EDと比べると、5センチの口径差以上に、小さく感じられます。 下は、ε-180EDε-130Dの開口部からの写真です。

ε-180EDとε-130D

ε-180ED(左)とε-130D(右)

先代のε-130と外観を比較すると、ε-130Dには、 鏡筒の先に丈夫なトップリングが取り付けられ、斜鏡を固定するスパイダーは、このトップリングに固定されています。 ε-180EDにも採用されている方式ですが、ねじれや歪みに強いので、より光軸がずれにくくなっています。

ε-180EDとε-130Dの補正レンズ

ε-130D(左)とε-180EDの補正レンズ(右)

補正レンズは、4群4枚から2群2枚構成のものに変更されました。 メーカーによると、最小星像は、先代ε-130との比較で1/3以下になっているということです。 また、歪曲収差(ディストーション)も半分以下に補正されており、 モザイク合成を前提とした天体撮影にも使いやすくなっています。

なお、高橋製作所は、2009年と2013年に、ε-160/130用のデジタル対応補正レンズを限定で販売しています。 新型補正レンズを用いれば、ε-130でも現行モデルに近い性能が得られるということで、 今でも中古市場で人気の高い撮影パーツです。


鏡筒の前後バランスと鏡筒バンド

ε-130Dは主鏡が小さく軽いため、接眼部に重いデジタルカメラを取り付けると、 前後バランスを取る点が、鏡筒の前寄りになってしまいます。

ε-130Dの鏡筒バンド

ニコンD810Aを取り付けた様子

上の写真は、K-Astec製の鏡筒バンドとプレートセットを取り付けた様子です。 鏡筒の前後バランスを取るため、接眼部を上にして、そこにデジタルカメラを取り付けています。

ガイド鏡は、鏡筒バンドの斜めの位置に、細長いプレートを追加して固定します。 昔のようなスライディングプレートにガイド鏡と同架する方法もありますが、 上記の方法の方が追尾が安定するように思います。


ε-130Dの斜鏡と主鏡と補正レンズ

ε-130Dでは、天体撮影時の周辺減光を減らすため、短径63ミリの大きな斜鏡が採用されています。 また、周辺減光の偏りを減らすため、斜鏡は接眼部と反対側にオフセット(偏心取り付け)されています。

ε-130Dの偏心斜鏡

斜鏡は、45度に切断した円筒に、緩衝材のコルクを介して貼り付けられています。 外側には、迷光防止のための植毛紙が巻き付けられています。 ε-180EDの斜鏡と同じ固定方法です。


主鏡セル

主鏡は、主鏡セルに納められています。 ε-130Dの主鏡セルは、ε-160と同様、ミラーを3つの爪で抑える構造になっています。

ε-130Dの主鏡セル

左がε-180ED、右がε-130Dの主鏡セル

ε-180EDの立派な主鏡セルと比べると簡素に感じられますが、 13センチのミラーは軽いので、歪みなどの問題は発生しないという判断でしょう。 ただ、主鏡の爪がミラーに飛び出ているため、この部分で星の光が散乱し、 輝星に余計な光条が発生する場合があります。 これを防ぐには、爪を隠すリングを自作するとよいでしょう。

セルの構造はε-160と同じですが、光軸調整用ネジは、 親子ネジから押しネジ、引きネジが独立したタイプに変更されています。


ε-130Dの光軸調整機構

他のニュートン反射望遠鏡と同様に、タカハシε-130Dには、 主鏡と斜鏡の傾きと位置を調整するための光軸調整機構が取り付けられています。

ε-130Dの光軸調整装置

斜鏡の光軸調整装置には、中央に引きネジ1本、その周りに押しネジ3本が取り付けられています。 ε-180EDと異なり、ロック用のナットは付属していませんが、 押しネジには粘度の高いグリスが塗られています。

主鏡セルの光軸調整装置は、引きネジと押しネジが独立したタイプで、120度間隔で3箇所設けられています。 また、主鏡セルの側面には、ラジアル方向(光軸と垂直方向)の位置決めのためのイモネジがねじ込まれています。

鏡筒のトップリングには、斜鏡を吊るスパイダーが取り付けられています。 スパイダーは厚みのある羽形状のもので、 トップリングの外側から、ネジで引っ張り固定されています。 鏡筒内側のロックネジを緩めると、スパイダーの長さを調整することができます。


ε-130Dの光軸調整について

光軸調整は、補正レンズを外し、ニュートン反射望遠鏡と同じように光軸調整ツールを使って行います。 調整方法の詳細は省きますが、光軸が合っていると以下のように見えます。

ε-130Dの光軸

斜鏡のセンターマークと光軸調整ツールの十字線の交点が一致している
斜鏡の外側がドロチューブの側面と同心円になっている
主鏡のセンターマークと光軸調整ツールの十字線交点が重なっている
主鏡に写った斜鏡の側面が上下で同じ幅になっている(眼を上下に振って確認)

光軸調整のポイントは以下の通りです。

斜鏡のセンターマークと接眼部の中心を、できるだけ正確に合わせましょう。 光軸調整ツールを覗く眼の位置によって、 十字線とセンターマークが重なっているように見えることもあるので、注意が必要です。 斜鏡の位置がずれていると、周辺減光が偏ってしまいます。

レーザーコリメーターは便利な道具ですが、斜鏡の回転方向を判断することができません。 必ず、光軸調整ツールを使って、目視で確認することをお勧めします。

光軸調整の説明書に、スパイダーを調整する方法が書かれていることがありますが、 調整に慣れるまでは、スパイダーにはむやみに触らない方が無難です。

光軸が合っているように見えても、実際に撮影した星像が悪く、何度調整しても改善しないときは、 接眼部が傾くなど、他の原因が考えられます。 購入したばかりなら、メーカーに相談することとよいでしょう。


ε-130Dの星像

ε-130Dの結像性能を調べるため、接眼部に35ミリフルサイズのデジタル一眼レフカメラ「ニコンD810A」を取り付け、 夏の人気天体「北アメリカ星雲とペリカン星雲」を撮影してみました。

下が撮影したそのままの画像です。 全体画像の下に各部分の拡大写真を載せています。 なお、撮影にはAXD赤道儀を使用し、オートガイド撮影をおこないました。カメラの設定は、ISO1600、300秒露光です。

※販売店から届いた状態のままテスト撮影したため、 運搬時の振動等で、光軸やスケアリングが若干ずれている可能性があります。

ε-130Dで撮影した画像

ε-130Dで撮影した画像

ピクセル等倍画像もご覧ください

全体画像を見ると、中央から周辺に行くにつれて背景の明るさが暗くなり、周辺減光が発生していることがわかります。 周辺減光は上位機種のε-180EDに比べ、若干大きいように感じられます。

中心部の星像はシャープで、フルサイズ四隅でもそれほど星像は悪化していません。 また色収差も感じられず、写野全体に渡ってシャープな星像を結んでいます。


フラットフレーム

ε-130Dの周辺減光の様子を調べるため、ε-130DにニコンD810Aを取り付け、フラットフレームを撮影しました。

ε-130Dのフラットフレーム

上が今回撮影したフラットフレームの画像です。 写真を見ると、画面周辺が中央部に比べて暗くなっているのがわかります。 上下が暗くなっているのは、デジタル一眼レフカメラのミラーボックスのケラレによるものです。

今回は35ミリフルサイズのフラットフレームですが、上記の画像を見る限り、 センサーサイズがAPS-Cのデジタルカメラなら、周辺減光もそれほど気にならないように思います。 フルサイズ最周辺まで表現したい場合は、正確なフラット補正が必須となるでしょう。

参考までに、天体撮影で人気の高い屈折望遠鏡、FSQ-106EDと周辺減光の様子を比べてみました。

ε-130DとFSQ-106EDのフラットフレーム比較

上がε-130D、下がFSQ-106EDのフラットフレームです。 どちらもニコンD810Aで撮影した画像ですが、FSQ-106EDの方が周辺減光が少なく、 中央からの減光もなだらかです。

屈折望遠鏡に比べ、反射望遠鏡はフラット補正が難しいという話を耳にしますが、 フラットフレームの画像にも、その傾向が表れているようです。


軽量で高性能な写真鏡

タカハシε-130Dは、本体重量が約5キロと軽く、 タカハシのEM-11、ビクセンのSX赤道儀クラスでも搭載が可能です。 機材全体がコンパクトになり、遠征時の負担が減るのは大きなメリットです。

星の写りに関しては、35ミリフルサイズ周辺でも満足できるシャープな星像です。 また、ε-180EDに比べてF値が若干暗い分、スケアリングにも寛容で、 実用的な鏡筒であると感じました。

屈折望遠鏡ユーザーにとって、反射望遠鏡は光軸合わせが面倒でフラット補正が難しいというイメージがありますが、 ε-130Dは、天体撮影用の明るい鏡筒の中では扱いやすい機材だと思います。

ε-130Dは、発表以来、天体撮影用の人気機種となっていますが、 これからもイプシロンシリーズの入門機として、広く支持されていく望遠鏡だと感じました

レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

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