ネイチャーショップKYOEI 大阪店

天体望遠鏡や本格双眼鏡、 天体観測・バードウオッチング機材の製造・販売。協栄産業株式会社。昭和34年創業。

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AM5赤道儀レビュー 周辺パーツ編

AM5赤道儀をより快適に

コンパクトながら搭載力に優れたZWO社のAM5赤道儀が、天体写真ファンの注目を集めています。今回は、そのAM5を更に使いやすくするパーツをご紹介します。


AM5用のハーフピラー

AM5赤道儀は小型なので、鏡筒を天頂付近に向けると、鏡筒の接眼部が三脚に干渉してしまうことがあります。特に筒の長い屈折望遠鏡の場合は注意が必要で、モーター高速回転時に鏡筒と三脚がぶつかると、駆動モーターを痛めてしまうことにもなりかねません。

そこでお勧めしたいのが、ハーフピラーです。赤道儀本体と三脚の間にハーフピラーを追加すると、不動点が上がり、接触の危険性が減るため、安心して使えるようになります。 現在、AM5赤道儀用のハーフピラーとしては、ZWO社から「PE160」と「PE200」の2種類、迷人会工房からも「鋼の柱君 HH-01」が発売されています。

上は、私が使用している「鋼の柱君 HH-01」の写真です。HH-01は、ZWO社のハーフピラーに比べると若干重量がありますが、3本の直径20㎜ステンレス製支柱に加え、ねじれ剛性を高める中央柱が装備されており、赤道儀と三脚をがっしりと固定することができます。 実際、10キロ以上の機材を載せて撮影していますが、強度不足は全く感じられません。AM5赤道儀用として、お勧めできるハーフピラーと思います。
※レビュー使用機材の「鋼の柱君 HH-01」はプロトタイプのため 、製品版と一部仕様(カラー)が異なります。

AM5用 極軸望遠鏡やPole Master取付アダプタDP31-AM5

AM5赤道儀には、極軸望遠鏡が装備されていません。メーカーは、ASIAIRで使用することを前提に設計しており、極軸合わせはASIAIRのPA機能(Polar Alignment機能)で合わせることを推奨しています。

PA機能は便利ですが、ASIAIRを持っていないユーザーには極軸を合わせる手段がありません。その問題を解消するため、Pole Masterや極軸望遠鏡を取り付けるアダプターDP31-AM5が、K-Astecから発売されました。
DP31-AM5は、アリガタ形状をしており、AM5赤道儀の側面に設けられたアリガタ金具に固定することができます。また、付属のネジを使って、AM5赤道儀本体に直接固定することも可能です。

DP31-AM5の北側にはカメラネジが固定されており、ポールマスターアダプターUNC4分の1をねじ込んで、PoleMasterを取り付けることができます。また、南側にあるネジ穴を利用して、光学式の極軸望遠鏡XY70-55PFを取り付けることもできます。
以下、実際にAM5赤道儀DP31-AM5を取り付け、PoleMasterや極軸望遠鏡を使って極軸を合わせた後、天体撮影を行ってみました。

極軸望遠鏡 XY70-55PFの使い心地

XY70-55PFを覗くと、北極星を導入するためのスケールが見えます。KYOEI オリジナル極軸望遠鏡(AP赤道儀用/SX赤道儀用)でもおなじみのiOptron社のスケールで、暗視野照明も搭載されており、都会の星空でも北極星がよく見えます。

北極星の導入位置は、スマホのアプリで確認できます。極軸望遠鏡スケールの水平垂直を合わせた後、アプリが指し示す位置に北極星を導入すれば、極軸合わせが完了です。非常に簡単で、以前から極軸望遠鏡を使っていた方にとっては、待望のアイテムだと思います。

極軸合わせの後、焦点距離500mmの望遠鏡を使ってオートガイド撮影し、追尾状況を確認していると、極軸が僅かにずれているように感じました。そこで、Pole Masterで表示された導入位置との差を調べてみたところ、約15′ずれていました。
XY70-55PF は、赤道儀の側面に取り付けるタイプの極軸望遠鏡なので、回転軸と若干ずれてしまうのが原因でしょう。しかし、ズレ量はそれほど大きくないため、電視観望、観望用途では十分な設置精度だと思います。タブレットやパソコンを開くことなく、素早く極軸を合わせたいときに重宝するアイテムでしょう。

Pole Masterでの極軸合わせ

DP31-AM5に別売りのポールマスターアダプターUNC4分の1を取り付け、そこにPole Masterを取り付けました。赤道儀の中心と少し離れていますが、北極星は無限遠の彼方にあるので導入精度には問題ありません。
パソコンにインストールしたPole Masterのソフトウェアを起動し、画面指示に従って、AM5赤道儀を回転させながら、極軸を合わせました。

その後、極軸望遠鏡の時と同じように、焦点距離500mmの望遠鏡でオートガイド撮影を実施したところ、極軸ズレは確認できませんでした。
Pole Masterを使用するにはパソコンが必要になりますが、ASIAIRを使わずに、正確に極軸合わせられる点がメリットでしょう。

バランスウェイトシャフト

AM5赤道儀には、バランスウェイト無しで13キロまでの機材を搭載することができますが、大きな機材を載せると、天頂付近に望遠鏡を向けたときにバランスを崩し、機材を転倒させる危険があります。
ビクセンFL55SSRedCat51等の小型軽量の機材の場合は問題ありませんが、大きな望遠鏡の場合はバランスウェイトを搭載する方が安全です。

ZWO社から、AM5用ウェイトシャフトが発売されています。軸径が20ミリなので、ビクセンのSX赤道儀用バランスウェイトを使うことができます。

※上は、AM5用ウェイトシャフトが手元になかったため、代用としてKYOEI AZ-GTi用20φウェイトシャフトを取り付けてテストした様子です。KYOEIオリジナルのAZ-GTi用20φウェイトシャフトも同じM12規格のため、AM5赤道儀にねじ込むことができます。しかし、本来AM5には適しておらず赤道儀へのねじ込み部分が長いので、ねじ込み過ぎると赤道儀の内部回路に接触し、破損や故障につながる恐れがあります。 上の例ではねじ込み部分にM12の蝶ナットを追加して、深くねじ込み過ぎないよう注意して使用することができましたが、決して真似はなさらないでください。純正品の使用を推奨します。

まとめ

今回は、AM5赤道儀用のハーフピラー、極軸合わせ支援ツール、それにバランスウェイトシャフトをご紹介しました。中でもハーフピラーは、是非活用したいアイテムだと思います。
ASIAIRのPA機能は便利ですが、北極星の西側の星が見えない場合は使えないなど、少々使いにくい点もあるので、極軸望遠鏡やPole Masterの取り付けアダプターDP31-AM5もおすすめです。用途に合わせて、極軸望遠鏡やPole Masterの取り付けを検討してみてはいかがでしょうか。
バランスウェイトについては、ビクセンやタカハシの赤道儀と異なり、AM5赤道儀にはクランプフリーがないため、正確にバランスを取ることはできませんが、転倒防止のために、取り付けることをお勧めします。
これらのパーツでAM5赤道儀の操作をより快適にし、天体撮影や観望を楽しんでみてはいかがでしょうか。

レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

AM5赤道儀のインプレッション

AM5赤道儀のインプレッション

AM5赤道儀は、ZWO社が開発した、波動歯車を用いた赤道儀です。2022年春の発売開始以降、天体写真ファンの注目を集めているこの赤道儀を、実際に天体撮影に使用したので、使い勝手や使用感をご紹介します。


波動歯車を用いたAM5赤道儀とは 一般的な赤道儀は、複数の歯車を用いて、モーターの力を回転軸に伝えています。赤道儀に用いられている個々の歯車は、高精度に加工されていますが、歯車同士をスムーズに動かすためには、ある程度の隙間が必要です。これが、バッククラッシュの原因となり、オートガイド時の反応の鈍さにつながっていました。

一方、AM5赤道儀の動力モーターには、波動歯車を使った駆動装置が採用されています。波動歯車駆動装置の魅力は、バックラッシュがほとんど発生しないことです。
ただ、波動歯車は産業用ロボット目的で開発されたため、歯車の精度は高くはなく、追尾精度の面では一般的な赤道儀に及びません。しかし、AM5赤道儀では、恒星時追尾に適した減速比の歯車装置とベルトドライブを採用することでこの点を克服し、バックラッシュがほとんどなく、天体撮影にも対応できる精度を実現したとメーカーはアナウンスしています。

AM5赤道儀の外観

AM5赤道儀の搭載可能重量は、ウェイトレスで約13キロ、別売りのカウンターウェイトを取り付ければ約20キロと、中型赤道儀並みです。しかし、本体重量は5キロと非常に軽く、片手でも持ち上げられる重さです。

上は、ビクセンのSXP赤道儀と並べた様子です。SXP赤道儀に比べ、一回り以上小さく感じられます。
AM5赤道儀の架台ヘッドには、ロスマンディ規格とビクセン規格のアリガタを搭載できるアリミゾが標準で付属しています。2つのクランプで固定する形式が採用されており、固定力も強く、質感も良いと感じました。

架台には、極軸を合わせるための微動装置が取り付けられています。東西方向は、両側からネジで支持棒を挟み込む仕様、高さは南側のネジで押し上げる機構です。赤道儀の側面にそれぞれの固定ネジが取り付けられており、極軸合わせ後、しっかり架台を固定できるようになっています。
AM5赤道儀の北側には、USB端子や電源端子などを差し込むパネルが装備されています。電源スイッチは、赤道儀本体側面にあります。なお、極軸望遠鏡は装備されていません。
赤道儀の色は、ZWO社のイメージカラーである赤と黒を採用しています。赤道儀は白基調が多いところ、スタイリッシュさの感じられる配色です。

AM5赤道儀の追尾精度

天体写真撮影はオートガイド撮影が主流となりましたが、やはり赤道儀の追尾精度は天体写真ファンにとって気になる点です。 個々のAM5赤道儀には、メーカーが測定したPEモーションのグラフが付いています。

上の図は、私が使用したAM5赤道儀に付いていたグラフで、約±12秒のPEエラー量となっています。

実際に恒星を使って測定した結果が上の写真です。±13秒程度と読み取れ、ほぼメーカーの測定値の性能が出ていることが確認できました。

AM5赤道儀の操作

AM5赤道儀には、ハンドコントローラーが付属しています。ジョイスティック式のハンドコントローラーを動かすと、赤道儀がスムーズに高速駆動し、まるでゲームをしているかのような感覚で赤道儀を操作することができます。

ハンドコントローラーの追尾ボタンを押すと、恒星時追尾が開始され、このままでも天体観望や初歩的な天体撮影は可能です。ただ、自動導入はできません。スマホやタブレット上で動くアプリ、ASI Mountを使えば、自動導入も可能になりますが、AM5赤道儀の機能をフルに使って天体撮影を楽しむには、ASIAIRとの連携が必要になります。
AM5赤道儀ASIAIRの接続は、USBケーブルでつなぎます。電源はどちらもDC12V電源で、AM5側面のDC出力端子から、ASIAIRに電源を供給することが可能です。

ASIAIRAM5赤道儀の他、同社のカメラやオートガイダー、周辺機器をつなげば、自動導入からプレートソルビング(自動導入補正)まで、快適に天体撮影を行えるようになります。

パソコンとの接続

ZWO社の公式Webサイトで公開されているAM5用のASCOMドライバーをパソコンにインストールすれば、パソコンからAM5赤道儀を制御することができます。
実際に、ASCOMドライバーをインストールし、ステラショット2やステラナビゲーター10で動作を確認してみました。

接続手順としては、まず、AM5赤道儀とパソコンをUSBケーブルで接続します。次に、ソフトウェアの赤道儀の接続ダイアログ上でASCOMを選択し、AM5が接続されているcomポートを選択しましょう。ASCOMのダイアログボックス上でASI Mountを選んで接続ボタンを押すと、ASI Mount ASCOM Serverというプログラムが自動的に起動し、ソフトウェアとAM5赤道儀の接続が確立されます。
AM5赤道儀をパソコンから動かしている間は、ASI Mount ASCOM Serverを閉じることはできません。このプログラムを介して、ステラショット2やステラナビゲーターが動いているのでしょう。
接続さえ確立されれば、他の赤道儀と同じように、星図を見ながら自動導入を行うことができます。ちなみに、今でも使用者が多いTheSky6は、LX200互換モードで接続することができました。
なお、ZWO社では現在、パソコン上で動く自動導入アプリを開発しているようです。今後は純正ソフトを使って、パソコンからも自動導入が可能になると思われます。

AM5赤道儀を使って天体撮影

AM5赤道儀を使って、実際に星空を撮影してみました。 使用した天体望遠鏡は、タカハシFC-100DZ望遠鏡です。タカハシFC-100DZの本体重量は約4キロですが、プレートや鏡筒バンド、ガイド鏡、カメラ等を合わせると、7キロほどになりました。

上は、赤道儀に機材一式を搭載した様子です。バランスウェイト無しですが、機材の転倒を防止するため、三脚のストーンバックに3キロのウェイトを入れて重心を下げています。
まず、極軸を合わせます。AM5赤道儀には極軸望遠鏡が装備されていないため、ASIAIRのポーラーアライメント機能(以下「PA機能」)を使って、極軸を合わせました。PA機能を動かすと、天の北極付近の星を撮影した後、赤道儀が極軸に向かって左回りに約90度回転し、天の北極と回転軸のズレを解析します。必要な修正量や向きが表示されるので、架台の微動ネジを回して調整を繰り返します。

網状星雲を自動導入して撮影しました。撮影中、オートガイドのエラー値を注視していましたが、EM-200等に比べると、赤経方向のエラー値が若干大きく感じられたものの、収束は早く、モーターのレスポンスの良さを感じました。

上は、実際に撮影した画像です。拡大しても星像の流れは感じられず、撮影した全ての画像で点像を保っていました。バランスウェイト無しでも十分な追尾精度を得られると感じました。 AM5赤道儀で惑星撮影 ”波動歯車を使った赤道儀は、惑星撮影などの高倍率での天体撮影には不向き”という意見も耳にします。AM5赤道儀にセレストロンEdgeHD800-CG5を載せて、木星を撮影し、確認してみました。

セレストロンEdgeHD800-CG5は、口径約20センチのシュミットカセグレン式天体望遠鏡です。約6.4キロのこの鏡筒をAM5赤道儀に載せ、バランスウェイト無しで木星を観望しました。
木星を約300倍で見たところ、縞模様もよく見え、振動も感じられません。一般的なウォームギアを使った赤道儀に比べて、特に像が大きくぶれるということは感じられませんでした。
次に、望遠鏡にバローレンズ(パワーメイト)を取り付け、惑星撮影用のCMOSカメラ、ASI662MCで木星を撮影しました。

上は、撮影後、画像処理して仕上げた木星の写真です。気流が良くなかったためか、詳細な模様は写っていませんが、特徴的な大きな模様はよく写りました。
上記の結果から、AM5赤道儀は、惑星観望や撮影にも使用できると感じました。

AM5赤道儀の印象

AM5赤道儀を使用した印象や、上記で記載できなかった内容を以下に列挙します。
軽量でコンパクトなAM5赤道儀だが、セレストロンEdgeHD800-CG5とガイド鏡等を載せても動作はスムーズで、思った以上に強度があると感じられた。
PA機能は便利だが、北極星の西側の星を使って解析するため、我が家のように北極星の西側の視界が悪い場合は、極軸合わせに失敗してしまう。何か他の方法も追加してほしいところだ。ちなみに、私はPole Masterを付けられるアダプターを自作して対応した。(※AM5用のポールマスター&光学極望アダプターは現在開発中でKYOEIより近日発売予定です)
バランスウェイト無しで運用できるのは便利だが、鏡筒を天頂付近に向けたときにバランスを崩し、機材を転倒させてしまう恐れを感じる。安全のため、三脚のストーンバックに重りを置くか、面倒でもバランスウェイトを取り付けた方が安心だ。
ZWO社の純正三脚は、軽いが強度もあり、使い勝手は良好だった。アダプターを製作してジッツォ三脚にAM5赤道儀を取り付けようとも考えたが、純正三脚の方が、下からボルトで締めあげるので、強度的に有利だと思う。
AM5赤道儀はコンパクトなため、FC-100DZのような筒が長い屈折望遠鏡を載せると、カメラが三脚に干渉してしまう。迷人会工房製のハーフピラー(※近日発売予定)を追加したところ、三脚への干渉も減り、快適に使用できた。
ZWO社の純正赤道儀ということもあり、同社のASIAIRとの連携は良好で使いやすい。今後、ソフトウェアのアップデートで機能が追加される予定もあり、可能性を秘めた機材だと思う。
AM5赤道儀とパソコンは、Wifiで接続可能だが、私が試した限り、ステラショット2やステラナビゲーターでは、USBケーブルをつなぐ必要があった。ソフトウェアアップデートで、Wifiでも繋がるようにしてほしいところだ。

まとめ

実際に天体撮影に使用してみて、AM5は、ZWO社初の赤道儀ということを感じさせない、基本性能に優れた架台だと感じました。追尾精度も良好で、従来のウォームギア式赤道儀と比べても遜色ありませんでした。 小型軽量にもかかわらず、バランスウェイト無しでも10キロ程度の機材を搭載できる強度があり、モーターにパワーがあるためでしょう、撮影中は中型クラスの赤道儀を使っているような安定感がありました。 これまで、波動歯車を搭載した赤道儀は非常に高価だったため、あまり普及しませんでしたが、コストパフォーマンスの優れたAM5赤道儀の登場で、一気に様子が変わってきたように感じます。まさに、天体撮影のゲームチェンジャーではないでしょうか。是非、このAM5赤道儀を使って、新しい世界を体感してみてはいかがでしょうか。

レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

セレストロンC8 SCT OTA CG5のインプレッション

セレストロンC8 SCT OTA CG5のインプレッション

セレストロンC8 SCT OTA CG((以下「セレストロンC8」)は、セレストロン社が製造している口径203㎜(8インチ)、焦点距離2032㎜のシュミットカセグレン式天体望遠鏡です。


セレストロンC8は、惑星や月から星雲・星団の観察までオールマイティに使用できるため、天文ファンに人気の高い鏡筒です。今回は、セレストロンC8の使い勝手や使用感についてご紹介します。


コンパクトなシュミットカセグレン式天体望遠鏡

セレストロンC8の光学系には、シュミットカセグレン式(正確には、コンパクト・シュミットカセグレン式)が採用されています。


鏡筒の底部には、光を集める主鏡(凹面鏡)が取り付けられています。主鏡で集められた星の光は、筒先にある副鏡(凸面鏡)で反射し、接眼部に導かれますが、この2つの鏡は球面鏡のため、諸収差が発生します。この収差を補正するため、筒先にシュミット補正板が取り付けられています。

シュミットカセグレン式は、同口径の20センチニュートン反射式と比べると、筒長を短くできる点がメリットです。下画像は、同じ口径のニュートン式反射(F6)と並べた写真ですが、長さの違いがよくわかります。


セレストロンC8はコンパクトなため、鏡筒本体重量も約5.7キロと軽量です。自宅だけでなく、キャンプ場などにも持ち運びやすい望遠鏡です。女性でも気軽に持ち運ぶことができるでしょう。


セレストロンC8の使い勝手

セレストロンC8は、コンパクトで軽いだけでなく、使い勝手も良好です。

望遠鏡の底部には、架台に載せるためのアリガタ金具が固定されており、鏡筒バンドを別途購入する必要はありません。購入してすぐにアリミゾ台座が設けられた赤道儀や経緯台に載せて使用することができます。

鏡筒の底部には、持ち手が取り付けられています。ちょっとしたことですが、持ち手があると、安心して持ち運び、架台に載せることができます。

セレストロンC8のピント合わせ機構には、主鏡を前後に動かす方式が採用されています。本格的な天体撮影では、ミラーシフトが生じる場合があり、この方式を避ける方もいますが、初心者にとってはピント合わせのイメージがしやすく、操作しやすいでしょう。


大口径で楽しむ天体観望の世界

口径20センチは、大口径天体望遠鏡の入り口です。肉眼の 841 倍の集光力は素晴らしく、口径8センチや10センチとは明らかに異なる世界が広がります。


夜空の綺麗な場所での天体観望では、小口径とは集光力に大きな違いを感じます。小口径では見えづらかった系外銀河の腕もよりはっきりと見えますし、小口径ではそもそも見えなかった天体の姿を確認することもできます。

都会での天体観望で人気の高い木星や土星について、同じ倍率の小口径と比べると、覗いた瞬間、像が明るいと感じます。倍率を上げれば、木星の縞模様も小口径より詳細に見えますし、土星の環にあるカッシーニの隙間もよりはっきり見えます。


上の写真は、セレストロンC8とZWO社のCMOSカメラで撮影したものです。惑星の撮影では、コンパクトで大口径を得られるセレストロンのシュミカセシリーズの人気は高いです。

天体撮影や電視観望にも使用可能

セレストロンC8にオプションのTアダプターとカメラマウントを取り付ければ、天体撮影や電視観望を楽しむことも可能です。

さらに、オプションの「レデューサー 0.63x SCT用」を使用すると、像面湾曲が改善され、焦点距離も0.63倍に短縮され、F値も10から6.3と明るくなり、天体撮影や電視観望に使いやすいでしょう。

上は、私が以前、所有していた、ミード社の同口径の20センチのシュミットカセグレン望遠鏡にレデューサー0.63xを使用して撮影した、子持ち銀河の写真です。渦を巻いた銀河が明瞭に写っています。

電視観望では、F値が暗いため露光時間がかかりますが、逆に焦点距離の長さを生かして、明るく小さな惑星状星雲を撮ると面白いと思います。

なお、天体撮影メインでシュミットカセグレン式望遠鏡をお探しなら、補正レンズを最初から組み込んだ、同社のEdgeHDシリーズもあります。EdgeHDシリーズなら、ミラーシフトを防止するミラークラッチ機構も搭載されています。


まとめ

オレンジ色のセレストロンC8が日本市場に初めて登場した時、「大口径なのにコンパクト!」と天文ファンの注目を集めました。

それから30年以上経ち、光学系に目新しさは感じられませんが、大口径の入り口として依然として人気の高い、定番とも言える鏡筒です。私も今回、久しぶりにセレストロンC8を使用して、改めて使いやすい望遠鏡だと感じました。

セレストロンC8の魅力は手軽な大口径です。小口径からステップアップしたい初中級者の方だけでなく、ベテランの方にも是非手に取っていただき、その魅力を感じていただければと思います。


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ビクセン SD81SIIのインプレッション

ビクセン SD81SIIのインプレッション

天文入門者にも人気の高いビクセンSD81Sが、2021年10月にリニューアルされ、SD81SIIになりました。完成度が高まったSD81SIIを実写に用い、使用感を確認してみました。

なお、SD81SIIは、前モデルであるSD81Sの対物レンズのスペーサーを変更したマイナーチェンジモデルですので、レンズスペーサー交換を行ったSD81Sを使ってテストを行いました。


SD81Sとの違いは対物レンズのスペーサー

屈折式天体望遠鏡の対物レンズには、2枚の性質の異なるレンズが用いられており、この2枚のレンズの間に、スペーサーとして錫箔が挟まれています。

前モデルのSD81Sには、錫箔の小切片がレンズ外周部に3枚配置されていました。この小切片は、下画像のように対物レンズ有効径内に飛び出していたため、レンズに光が入射すると、回折により星像の周囲に放射状の欠けが生じました。

リニューアルされたSD81SIIでは、3枚の小切片がリング形状のスペーサーに変更され、対物レンズを遮らないように改善されました。

上画像は、リング形状スペーサーに交換後のレンズです。対物レンズへの飛び出しが無くなり、レンズがすっきりしているのがわかります。


実写で感じた星像の違い

リング形状スペーサーの効果を調べるため、SD81SIIを郊外に持ち出し、冷却CMOSカメラを使って実写テストを行いました。

下は、はくちょう座γ星付近を写した写真の比較画像です。

前モデルのSD81S(右側)では、輝星の周囲に放射状の欠けが発生しています。一方、リング形状スペーサーに変更されたSD81SIIでは、星の周りに欠けは発生しておらず、星像が改善されていることが確認できます。


SD81SIIで天体撮影

SD81SIIとZWO社の冷却CMOSカメラ ASI2600MCProを使用して、夏の天体、干潟星雲付近を撮影しました。なお、SD81SIIには、天体撮影用の補正レンズ「SDレデューサーHDキット」を使用しています。

上は撮影画像を、ステライメージ9で画像処理して仕上げた写真です。天候が不安定だったため、十分な露光時間を取ることができませんでしたが(8分露出×4枚)、干潟星雲だけでなく、猫の手と呼ばれる淡い星雲の色合いもよく写っています。

干潟星雲を部分拡大してみると、星雲のディテール描写も良好で、口径8センチとは思えない解像感を感じました。

写し出された明るい星にも回折による欠けは発生しておらず、星雲の周りの暗い星々もスッキリと綺麗に感じます。


タカハシFC-76DCUと比較して

ビクセンSD81SIIと並んで天文入門者に人気の高い望遠鏡が、タカハシFC-76DCUです。対物レンズがSDレンズかフローライトレンズかという違いはありますが、どちらも口径約8センチで、持ち運びしやすいため、購入時によく比較検討される望遠鏡です。

そこで、SD81SIIとタカハシFC-76DCUの2本を赤道儀に同架し、恒星像を確認してみました。

高倍率で焦点像のシャープさを比較したところ、ほとんど違いは感じられません。色収差についても、両鏡筒共によく補正されており、色づきはほとんど感じられませんでした。

次に、月を望遠鏡の視野に入れてみました。色収差の大きな望遠鏡では、月の欠け際が色づいて見えますが、どちらの望遠鏡も色づきは感じられず、スッキリとシャープな月面観望を楽しめました。

倍率を上げると、口径の大きいSD81SIIの方がやや視界が明るく感じられましたが、それほど大きな違いではないでしょう。


オプションではSD81SIIが有利か

FC-76DCUは鏡筒バンドが別売りですが、SD81SIIには鏡筒バンドやアリガタ金具だけでなく、金属製キャリーハンドルも付属しています。鏡筒さえ購入すれば架台に搭載することができる点は、購入検討時の大きなポイントでしょう。

接眼部については、FC-76DCUは1.25インチ専用タイプですが、SD81SIIは2インチにも対応しており、市販されている様々なアイピースを使用することができます。また、観望に便利なフリップミラーも標準付属しています。

天体観望時に使用するファインダーとしては、FC-76DCUには6倍30mmの光学式ファンダーが付属しています。一方、SD81SIIには、XYスポットファインダーIIが付属していますが、光学式ファインダーに比べて若干見辛い点が残念です。

天体撮影については、FC-76DCUSD81SII共に、光学性能に優れたフラットナー、レデューサーと呼ばれる補正レンズがオプション設定されていますが、FC-76DCUのレデューサーはAPS-Cサイズまでしか対応していません。

一方、SD81SIIのレデューサーHDは、35ミリフルサイズまで対応していますので、35ミリフォーマットで撮影する場合には、SD81SIIの方が適しています。


まとめ

今回のテストを通じて、SD81SIIは完成度の高い望遠鏡であることを確認できました。

天体写真時の星像をご紹介しましたが、眼視時にも星像の周りのジフラクションリングの欠けがなくなり、前モデルに比べて星像に不自然さがなくなりました。

今回のリニューアルによって、SD81SIIは、天体観測から本格的な天体撮影まで、幅広く使える望遠鏡になったと言えると思います。ビクセンの81S鏡筒シリーズの終着点とも呼べるSD81SIIで、様々な楽しみ方を試してみてはいかがでしょうか。


レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

セレストロンRASA8の使用感

セレストロンRASA8の使用感

セレストロン8″Rowe-Ackermann Schmidt Astrograph(以下、「RASA8」)は、天体撮影専用の望遠鏡(アストログラフ)です。F値が2と望遠レンズ並みに明るく、短時間露光でもよく写るので、天体撮影や電視観望用として人気の高い望遠鏡です。今回は、RASA8を使って天体撮影や電視観望を行い、使用感を確認してみました。




セレストロンRASA8について

RASA8は、セレストロンRASAシリーズの中で最も小さな望遠鏡です。RASA8は、口径約203mm、焦点距離は400mm、F値が2の光学系です。
他のRASA同様、RASA8の筒先には、シュミット補正板が固定されています。星からの光は、シュミット補正板を通ってから主鏡で集められ、補正レンズに届きます。RASA8のF値は、RASAシリーズの中で最も明るく、F2を誇ります。

補正レンズには、4枚構成の光学系が採用されています。カメラは、補正レンズの先に取り付けます。いわゆるプライムフォーカスという接続方法で、斜鏡で光を90度曲げて筒外に光を導くニュートンやイプシロン光学系と異なり、天体観望には使用できません。天体撮影での使用のみを考えた設計です。
光学系のイメージサークルは22mm、バックフォーカスは29mm(補正レンズ面から)です。イメージサークルの広さやバックフォーカス長を考えると、フォーサーズサイズの天体撮影用CMOSカメラ(ZWO社のASI294MCPro等)が適しています。カメラを取り付けるためのM42カメラアダプター、Cマウントカメラアダプターも付属しています。

RASA8の外観は、同社のシュミットカセグレン式望遠鏡(シュミカセ)の鏡筒長を少し長くしたような形状をしています。ピントも、シュミカセと同じく、主鏡を前後に動かして合わせる方式が採用されています。
RASA8鏡筒の重さは7.7キロ、同口径のシュミカセと比べると2キロほど重くなっていますが、口径20センチクラスのアストログラフとしては軽く、遠征撮影にも気軽に持ち運びできる重さです。


セレストロンRASA8へのカメラ取り付け


RASA8には、カメラを取り付けるためのアダプターが付属していますが、今回のテスト撮影では、アイダス社から販売されているドロップインフィルターアダプター・AD19.4を使って、ZWO社の冷却CMOSカメラASI294MCProを取り付けました。

標準付属のアダプターとは異なり、AD19.4はテーパーで取り付け取り外しができるので便利です。また、ドロップインフィルターボックスが装備されているので、ドロップインフィルターDiシリーズにラインナップされている、NBZフィルターやLPSシリーズを使って、フィルター効果を生かした撮影を楽しむことも可能です。
カメラに繋ぐUSBケーブルと電源ケーブルは、黒色のテープを使って1本にまとめ、筒外へ導きました。1本のケーブルが遮るため、撮影画像上の輝星には2本の光条が発生します。ケーブルの本数や位置を変えると光条の出方も変わるので、好みによって筒先のケーブルの導き方や本数を変えてみるとよいでしょう。


セレストロンRASA8を使って天体撮影


RASA8ASI294MCProを取り付けて、天体撮影を行いました。ASI294MCPro には、マイクロフォーサーズサイズのCMOSセンサー(19.1×13.0mm)が採用されているので、RASA8に取り付けたときの35ミリ換算の焦点距離は約800ミリになります。
焦点距離800ミリ前後の画角は、IC1396のような巨大な散光星雲にはやや狭く感じられますが、オリオン大星雲をはじめとしたメジャー天体を画角一杯に捉えられ、様々な天体の撮影に使用することができます。
今回、撮影対象には、アンドロメダ大銀河を選びました。赤道儀は、ビクセンSXP赤道儀、オートガイドは、オートガイダーQ5L-100GSS アルカセットを使用しています。


上は、上記機材で10枚撮影し、画像処理ソフトのステライメージ9で仕上げた写真です。画角全体にわたって星はシャープで、コントラストも良い写りです。 星像確認のため、画像中央付近を切り抜いた写真を下記に掲載しました。撮影時のカメラの設定は、ゲイン120、1枚当たりの露光時間300秒です。

F2の明るさで露光時間を300秒と長く設定したため、アンドロメダ大銀河の明るい部分が白飛びしていますが、拡大画像でも色収差の発生は感じられず、鋭い星像であることがわかります。シャープ処理等は適用していませんが、暗黒帯の描写も良好に感じられます。

上は、画像の右上隅の一部を拡大した画像です。周辺部でも星の形は丸く保たれており、色ズレも感じられません。イメージサークル内なら良好な星像を結ぶ光学系であることがわかります。


RASA8の明るさを生かしたナローバンド撮影


次に、アイダスのデュアルバンドフィルターNBZを使って、らせん星雲を撮影しました。らせん星雲は、Hα光とOIII光を強く発している惑星状星雲です。
下が、ASI294MCProを使って、300秒×8枚(ゲイン120)で撮影した画像です。 ※周囲をトリミングした画像を掲載しています。

らせん星雲は、ブロードバンド撮影ではぼんやりとしか写りませんが、デュアルバンドフィルターは、星雲が発する特定の波長のみを通すため、星雲の形がコントラスト良く写っています。
F値が明るいRASA8は、ブロードバンドだけでなく、光量が減ってしまうナローバンドにも適した光学系です。色収差の発生がほとんどないため、デュアルバンド撮影には特に適していると感じました。


フラットフレーム画像


淡い天体画像の処理には、周辺減光を補正するためのフラットフレームが必要です。RASA8の場合は筒先にカメラを取り付けるため、フラット補正を正常に行えるか心配でしたが、問題ありませんでした。

上は、RASA8のフード先に白い布を被せ、天文薄明の空を利用して撮影したフラットフレームです。カメラのセンサーサイズが小さいためもありますが、周辺減光は思っていたほど大きくありませんでした。
減光も中央部から周辺部にかけてなだらかなので、画像処理ソフトウェアのコマンドでも補正できるでしょう。


RASA8で電視観望


電視観望とは、天体望遠鏡に接眼レンズを差し込む代わりに、CMOSカメラを取り付け、パソコンの画面に天体の姿を映し出して楽しむ観望方法です。夜空の明るい都会でも天体観望を楽しめるとあって、最近、注目されている新しい星空の楽しみ方です。
RASA8は明るく、口径も大きいので、電視観望に適した望遠鏡です。また色収差もほとんど発生しないため、フィルター等を使用した際の色ずれもなく、シャープな映像を楽しむことができます。

上は、電視観望で捉えたペリカン星雲です。F値の暗い望遠鏡を使用すると、1枚当たりの露光時間が長くなり、リアルタイム感が薄れてしまいますが、RASAなら短い時間で画像が切り替わり、リアルで見ているような感覚を味わえます。
またNBZフィルターとの相性も良く、都会でNBZフィルターを使った電視観望に使いやすい望遠鏡です。


撮影後の印象


今回、RASA8を天体撮影に使用して感じたことを、以下に箇条書きでまとめました。
他の光学系と異なり、補正板の前にカメラを取り付けることにやや抵抗があったが、実際に使用してみると何ら難しくはなく、逆に鏡筒の前後バランスがとりやすくなる点をメリットに感じた。
鏡筒下部には75mm幅のアリガタプレートが固定されているので、ワンタッチで赤道儀に掲載でき、設置がとても楽だった。鏡筒が軽く、SXP2クラスの赤道議に掲載できる点もよい。
天体撮影時、ガイド鏡はファインダー台座にアダプターを介して取り付けた。焦点距離400mmで露光時間も短いため、ガイドエラーは発生しなかった。ゲインを上げて露光時間を短くすれば、オートガイド無しでも撮影可能だろう。
筒先にカメラを取り付けるため、撮影時はフードが必須だ。今回のテスト撮影では、段ボールで作成して対応したが、ケーブル取り出し口を設けた専用フードの発売をお願いしたい。
ピント合わせ用のノブは軽くて回しやすいが、個人的にもう少しクリック感があった方が使いやすいと感じた。
以前、シュミカセを使用していた際は、ミラーシフトの問題に頭を悩ませたが、RASA8ではミラーシフトの発生は感じられず、快適に撮影を楽しめた。
イプシロン光学系と比べると、星像は若干大きく感じられたが、光学系はRASA8の方が明るく、同じ露光時間でも淡い星雲の写りは良好に感じられた。
光軸は調整せず、メーカーから配送された状態で撮影を行ったが、十分に合っていた。郊外に何度か持ち出したが、光軸ズレも発生しなかった。光軸調整は、補正レンズ固定部分の傾きを変更(スケアリング調整)するだけなので、ずれにくいのだろう。
筒内気流は、付属のファンを動かすと、約1時間で落ち着いた。筒内気流が残っていると、光軸がずれている時のように写るので、勘違いして光軸を動かしてしまわないようにしたい。
ZWO社のカメラを使用する場合は、動作中は赤ランプが点灯するので、迷光防止のため、パーマセルテープなどで覆う必要があった。特にフラットフレーム撮影時は注意したい。
撮影時は冷却CMOSカメラから熱が発生するため、フードを付ければ、ヒーターなしでも補正板が夜露で曇ることはなかった。


まとめ

これまで様々な鏡筒を使用してきましたが、RASA8にはそれらのどれとも違った魅力を感じました。
一番の魅力は、F2の明るさです。快晴の夜、一晩でRASA8を様々な天体に向け、短い露光時間で次々に撮り続けられるのは楽しかったですし、1対象に絞って、ナローバンドでじっくり撮影しても好結果を得られました。何気なく行っていた電視観望についても、RASA8を使ってみて「都会でもここまで映るのか」と認識を新たにしました。
RASA8は、持ち運びやすさも魅力だと思います。また、他社製の20センチクラスの望遠鏡は、鏡筒バンドが別途必要ですが、RASA8にはプレートが付属しているのでワンタッチで架台に搭載可能です。重量も軽く、中型赤道儀に搭載できるのも便利です。
RASA8を使っていると、不思議とおおらかな気持ちになり、星像の乱れが発生したときもそれほど気にならず、「次はあの天体を撮ってみよう」と楽しく天体撮影と向き合うことができました。
s 光学系の明るさから来る余裕、それがRASA8の魅力ではないでしょうか。天体撮影用としてはもちろん、電視観望にも使えるRASA8で、プライムフォーカスの世界を体験してみてはいかがでしょうか。

レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

アイダスNBZフィルターの使用感

アイダスNBZフィルターの使用感

アイダス ネビュラブースターNBZ(以下、「NBZフィルター」)は、OIII輝線とHα輝線を透過するデュアルナローバンドフィルターです。NBZフィルターは、同社のLPSシリーズ、HEIUB-IIフィルターと共に、天体撮影用として人気があります。今回は、上記フィルターとの比較画像を交えながら、NBZフィルターの使用感を確認してみました。


デュアルナローバンドフィルターとは?

銀河や恒星は連続光で輝いていますが、輝線星雲や惑星状星雲は、ある特定の波長の光を発して輝いています。天体によって多少異なりますが、輝線星雲はHα光(656nm付近の光)を発するものが多く、惑星状星雲は、OIII(波長500nm付近の光)やHαの光で輝く天体が多くなっています。デュアルナローバンドフィルターは、これらの天体が発するOIIIとHα、2つの波長の光だけを通すように設計されたフィルターです。


上は、NBZフィルターの特性図です。OIIIとHαの部分だけ透過率が突出しており、その他の波長の光の透過率は、ほぼゼロになっています。

この特性から推測できるように、撮影時にNBZフィルターを使用すると、星雲が発する光以外の光は通さないため、背景部分が暗くなり、星雲のコントラストを上げることができます。

下画像は、クリアフィルターとNBZフィルターを使って、冷却カラーCMOSカメラで撮影した、らせん星雲の写真です。撮影条件や画像処理は同じですが、クリアフィルター使用画像と比較すると、NBZフィルターの画像は星雲のコントラストが際立っており、フィルターの効果がよく感じられます。

上記のように、デュアルナローバンドフィルターは、連続光で輝く銀河の撮影には不向きですが、特定の波長の光で輝く星雲をはっきり写したい時には、大きな効果が感じられるフィルターです。


光害カットフィルターとEUIB-IIフィルター

光害カットフィルターは、その名の通り、光害の基となる波長の光だけをカットするように設計されたフィルターです。以前は、水銀灯が発する光を主にブロックする設計でしたが、最近は、LED照明が増えてきたこともあり、LEDによる光害にも対応したLPS-D2が登場しました。更に、LEDに加えて大気光にも対応したLPS-D3も登場しています。

HEUIB-IIフィルターは、Hα光で輝く輝線星雲のコントラストを強調するフィルターです。下に特性曲線を掲載しましたが、HEUIB-IIフィルターは600nm~650nmの波長の光をカットし、Hα光に
該当する波長の光のみを効率よく透過する設計になっています。

HEUIB-IIフィルターは一旦生産が終了していましたが、ユーザーからの復刻希望の声に応え、2021年9月に生産が再開されました。赤い星雲の描写に定評のあるフィルターの再生産は、天文ファンにとって嬉しいニュースですね。


都会でのフィルター効果の比較

2等星がやっと見えるくらいの都会の夜空で、はくちょう座の網状星雲を撮り比べて、アイダス社のLPS-D3HEUIB-IINBZフィルターの効果の違いを比較しました。撮影には、焦点距離200ミリの望遠レンズと、冷却CMOSカメラ ZWO社ASI2600MCPを使用しました。撮影は同条件で行い、撮影後は星雲を確認しやすいようにカラーバランス等は微調整しましたが、周辺減光等はそのままです。

上が、撮影後の画像です。クリアフィルター使用時の画像は、中央部が明るく、光害の影響で周辺減光が目立ち、星雲も背景に埋もれています。

LPS-D3を使用すると、フィルターの光害カットの効果により周辺減光が目立たなくなり、星雲もクリアフィルターに比べて写し出されています。

HEUIB-II使用時は、クリアフィルターに比べると若干背景が暗くなり、周辺減光も緩和されていますが、LPS-D3使用時に比べると光害カットの効果はやや弱いように感じます。しかし、網状星雲の赤い部分の写りは良好で、Hα光で輝く輝線星雲のコントラスト効果が感じられます。

NBZ使用時は、さすがデュアルナローバンドフィルターだけあって、網状星雲の淡い部分まで写し出され、星雲のコントラストも良好です。星がほとんど見えない都会の夜空でも、星雲がここまで写し出されたことに驚きました。

今回の結果から、光害カットの効果を考えると、LPS-D3HEUIB-II>クリアフィルターという順番になりそうです。


郊外地でのフィルター効果の比較

次に、天の川が見える郊外で、比較撮影を行いました。撮影に用いた機材は、都会での撮影と全く同じですが、空の暗さに合わせて露光時間を300秒に伸ばしました。画像処理は、星雲を確認しやすい程度にコントラスト強調だけ行っています。

上が、撮影後の画像です。光害の影響が少ないため、クリアフィルター使用時の画像でも周辺減光は目立たず、網状星雲の明るい部分がよく写っています。

LPS-D3を使用すると、背景が暗くなるので全体のコントラストが向上し、クリアフィルター使用時に比べ、写し出された網状星雲が明るく感じられます。

HEUIB-IIを使用した場合は、背景はLPS-D3ほどには暗くならないため、星雲のコントラストはやや弱く感じられますが、網状星雲の赤い部分の写りは良好です。特性曲線通り、赤い星雲を強調するのに適したフィルターと言えそうです。

NBZ使用時の画像では、網状星雲の明るい部分だけでなく、周囲に広がる淡いガス部分まで写し出されています。背景も黒く引き締まり、周辺減光もそれほど目立たないため、フラット補正も必要ないほどです。都会だけではなく、郊外地でも効果を発揮するフィルターと言えそうです。


ゴーストが発生しにくいNBZフィルター

デュアルバンドやシングルバンドのナローバンドフィルターは、ディープな天体撮影に欠かせないアイテムになりつつありますが、通す光の波長の幅が広いブロードバンドフィルター(IR-Cutフィルター等)に比べ、輝星にハロやゴーストが発生しやすいという欠点があります。


上は、他社製のナローバンドフィルター(Hαフィルター)で撮影したオリオン座三ツ星付近のモノクロ写真です。明るい星の周りに大きなハロが発生しているのがわかります。

一方、下は、セレストロンRASA8にNBZフィルターを取り付けて撮影した、はくちょう座の星雲の写真です。


写野中央に明るく写っているのは、2等星のはくちょう座γ星サドルです。星雲やハロを確認しやすいように強調処理した画像ですが、星の周りにハロはほとんど感じられません。
※輝星の上下に表れている光線は、望遠鏡の筒先に取り付けたケーブルによる回折光です。

NBZフィルターを製造しているアイダス社は、「フィルター単体の繰り返し反射を低減させることにより、先行販売していたNBXよりもNBZは低ハロになった」と発表していますが、上記の結果からもNBZフィルターはハロが出にくいフィルターと言えるでしょう。


電視観望にも適したNBZフィルター

電視観望は、都会の空でも天体観望をモニター越しに楽しめるとあって、徐々に人気が高まっています。NBZフィルターは、この電視観望際にも効果を発揮します。

上は、都会の空の下、電視観望で捉えた北アメリカ星雲の比較画像です。左から、フィルター無し、アイダス社のHEUIB-IIフィルター、同社のNBZフィルターを使って、都会で電子観望した際の画面キャプチャー画像です。NBZフィルターを使うと、他の2つの場合に比べて、星雲の形が一目瞭然です。

北アメリカ星雲だけではなく、惑星状星雲やその他の天体を電子観望した際にも大きな違いが感じられ、NBZフィルターは、電視観望にも有効なフィルターだと感じました。

さらに、星空の綺麗な場所でも電子観望してみたところ、都会での電子観望時と同様、NBZフィルターを使うと、上の比較画像の通り、背景と星雲コントラストが上がり、ペリカン星雲の姿がはっきりと映し出されました。


撮影後の印象

今回、NBZフィルターを天体撮影に使用して感じたことを以下に箇条書きでまとめました。

2等星がやっと見える都会の夜空でも、NBZフィルターを使えば、淡い星雲がはっきり写し出されたことに驚いた。

解像度の面では、モノクロ冷却CMOSカメラと各種ナローバンドフィルターを使ってカラー化した写真には及ばないが、カラーCMOSカメラとNBZフィルターを使えば、短時間でカラーのナローバンド画像を得られる点は魅力的だ。天候が不安定なときでも撮影を楽しめる組み合わせだろう。

NBZフィルターのテスト撮影には、望遠レンズや望遠鏡を使用したが、色収差が大きな屈折望遠鏡を用いると、HαとOIIIで最適なピント位置が異なるため、色ズレしたように写ってしまうことがあった。セレストロンRASA8のような、色収差が少なく、明るい光学系と組み合わせて使うのが理想的だろう。

他社製の半値幅7nmクラスのナローバンドに比べ、NBZフィルターの半値幅は約12nmで、半値幅が広い設計になっている。一般的に、半値幅が狭いほど、星雲のコントラストの向上が見込めるが、露光時間が長くなるというデメリットがある。12nmという半値幅は、星雲の描写と露光時間のバランスがよく、初心者でも使いやすいフィルターだと感じた。

半値幅が広めで恒星もある程度写るため、ブロードバンドフィルターで別途撮影した星だけの画像との合成も不自然にならないと感じた。

ナローバンド撮影では輝星のハロに悩まされることが多いため、NBZフィルターの低ハロ性能には大きな魅力を感じる。これなら明るい星を気にせず、構図撮りができると感じた。


まとめ

今回、NBZフィルターを使用してみて、デュアルバンドフィルターと冷却カラーCMOSカメラの組み合わせは、通常のシングルバンドのナローバンドフィルターと異なり、一度にHαとOIIIの画像を得られるため、天候が不安定な時でも効率的にカラー写真を得ることができて、とても魅力的に感じました。

また、LPS-D3フィルターやHEUIB-IIフィルターとの比較でも、NBZフィルターは光害カットの効果が大きいため、都会での撮影時にも星雲をコントラストよく、画面に浮かび上がらせることができました。都会での天体撮影時には、光害カットフィルターのLPSシリーズに加え、NBZフィルターも用意しておくと、撮影対象が広がり、更に楽しめるでしょう。

天体写真のベテランにとっては、NBZの低ハロ特性は大変魅力的に感じるのではないでしょうか。輝星に大きなハロやゴーストが発生してしまうと、ブロードバンド写真と合成して一枚の作品に仕上げる際に、星の周りがどうしても不自然な仕上がりになってしまいます。その点、NBZはハロの発生が少ないので、自然な感じに仕上げることができます。また、ツイン撮影システムのメインやサブ機用としても魅力的なフィルターだと感じました。

今回撮影に使用した、NBZフィルターと冷却カラーCMOSカメラの組み合わせは、肩肘張らずにナローバンド画像を得ることができ、撮影時間が限られる遠征撮影派にとっては、とても魅力的な組み合わせだと思います。NBZフィルターを追加して、気軽にナローバンド撮影を楽しんでみてはいかがでしょうか。

電子観望にチャレンジ


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ビクセン ED103S(SD103S) のインプレッション

ビクセン ED103S(SD103S) のインプレッション

ビクセン SD103S

ビクセンSD103SSDレデューサーHDキットの結像性能を調べるため、 「デジタル対応SD改造サービス」を行ったビクセンED103Sをフィールドに持ち出し、 実際に天体撮影を行ってみました。

なお、SD103Sは、前モデルであるED103Sのドローチューブ内の絞りの位置を変更したマイナーチェンジモデルです。 よって、「デジタル対応SD改造サービス(絞りを改造するサービス)」を実施したED103Sの撮影結果は、 SD103Sを使って撮影した場合と同じとお考えいただければと思います。


ビクセンED103について

ビクセンED103S鏡筒は、口径103mm、焦点距離795mm(F7.7)の2枚玉アポクロマート屈折望遠鏡です。 本体重量は3.6キロと比較的軽く、 鏡筒バンドにはキャリーハンドルも付けられているため、持ち運びのしやすい鏡筒です。

天体観測の入門者用として人気の高いSD81Sに比べると、ED103Sの口径は約2センチ大きいだけですが、 鏡筒の外観は二回りほども大きくなっており、口径差以上の大きさの差を感じます。 下写真は、ED103SとSD81Sを並べて置いたところです(ED103Sの鏡筒バンド類は取り外しています)。

ビクセン SD103S

口径2センチの差は、星雲星団の観望ではそれほど感じませんが、惑星を高倍率で観望すると、 集光力と分解能の差を感じます。 SD81Sではわかりにくかった木星の縞模様の様子など、ED103Sでは明るくよく見えます。

ED103Sには、暗視野照明付きの光学ファインダーが付属します。SD81S付属のスポットファインダーに比べて、 光学ファインダーでは暗い星もよく見え、天体を導入しやすいと感じました。

天体撮影用のフラットナーレンズ(SDフラットナーHD)とレデューサーレンズ(レデューサーHD)は、SD81Sと同じ製品を使用できます。 フラットナーレンズとレデューサーレンズについては、別レビューもご覧ください。


SDフラットナーHDの天体撮影

まず、ED103SにSDフラットナーHDを取り付けて、天体撮影を行ってみました。 ED103SにSDフラットナーHDを取り付けると、焦点距離は811ミリになります 。F値は暗くなりますが、天体を大きく写したいときに重宝する補正レンズです。

撮影対象には、おおぐま座で輝く系外銀河、M101を選びました。 撮影に使用したカメラは、天文用冷却デジタル一眼レフカメラのAstro6Dです。 赤道儀は、ビクセンSXP赤道儀を用い、オートガイド撮影を行いました。

ビクセン SD103S

上は、上記機材で6枚撮影し、画像処理ソフトで仕上げた写真です。 35ミリフルサイズセンサーはセンサー面積が大きいため、フラットナーレンズを用いてもM101銀河はそれほど大きく写りませんが、 漆黒の宇宙に浮かぶ銀河のイメージが得られる写真だと思います。 画像中央付近を切り抜いた写真を以下に載せました。 撮影時のカメラの設定は、ISO1600、1枚当たりの露光時間は600秒です。

ビクセン SD103S

M101銀河を拡大した画像です。星像はシャープでコントラストも良好です。 シャープ処理は一切施していませんが、銀河の腕のディテールもよく表現されています。

ビクセン SD103S

こちらは、右下隅の一部を拡大した画像です。 35ミリフルサイズ最周辺部まで、ほぼ点像を保っており、色ずれもほとんど感じられません。


SDフラットナーHD使用時の周辺減光

次に、周辺減光について見ていきましょう。 下は、ED103SにSDフラットナーHDを取り付けて撮影した際のフラットフレーム画像(未処理)です。

SDフラットナーHDの周辺減光

35ミリフルサイズの画角ですが、未処理の画像からは減光は感じられません。 次に、フラットフレーム画像を、レベル補正コマンドを使って約5倍に圧縮強調しました。

SDフラットナーHDの周辺減光

ここまで強調すると、周辺部が中央部に比べて暗くなっている様子がわかります。 しかし、画面全体として減光はなだらかで、周辺減光の補正はしやすいでしょう。 センサーサイズが小さなAPS-Cサイズのデジカメなら、フラット補正無しで仕上げることもできそうです。


ビクセンED103SとSDレデューサーHDキットで天体撮影

次に、SDレデューサーレンズも取り付けて撮影しました。 レデューサーレンズも取り付けると、焦点距離は624ミリになります。 少し珍しい焦点距離ですが、散光星雲を大きく撮影するには適当な画角でしょう。

撮影対象には、夏の天の川銀河の中で輝く、いて座のM8とM20星雲を選びました。 微恒星も多く、光学系のシャープさが問われる星域です。 撮影に使用した機材は、フラットナーレンズのみを使用した時と同じです。

ビクセン SD103S

上は、上記機材で6枚撮影し、画像処理ソフトのステライメージ8で仕上げた写真です。 画角全体にわたって星はシャープで、コントラストも良好です。星像確認のため、 画像中央付近を切り抜いた写真を以下に掲せました。 なお、撮影時のカメラの設定は、ISO1600、1枚当たりの露光時間は480秒です。

ビクセン SD103S

拡大画像から、色収差の発生もほとんど感じられず、鋭い星像を結んでいることがわかります。

ビクセン SD103S

上は、画像の右下隅の一部を拡大した画像です。 35ミリフルサイズの最周辺部になると、収差で星の形が若干放射状に崩れているものの、ほぼ真円を保っていると言えます。色ずれの発生もほとんど感じられません。星像についてはフラットナーレンズのみを使用した時の方がよりシャープな印象を受けましたが、 レデューサーHDは、焦点距離を短くしながら、諸収差も良好に補正できているという印象を受けました。


レデューサーHD使用時の周辺減光

レデューサー使用時の周辺減光について確認しましょう。 下は、ED103Sとレデューサーを取り付けた際のフラットフレーム画像(未処理)です。

レデューサーHDの周辺減光

35ミリフルサイズの画角ですが、元画像では、写野端でも減光はほとんど感じられません。 画像処理ソフトのレベル補正コマンドを使って、約5倍のコントラスト強調を実施すると、四隅に近づくにつれ、光量の落ち込みが確認できますが、 勾配はそれほど急ではなく、なだらかに減光しているイメージです。

レデューサーHDの周辺減光

周辺減光は発生しているものの、 レデューサーレンズ使用時でも極端な減光ではなく、補正しやすい光学系であることが確認できました。


撮影後の印象

今回、ビクセンED103Sを使って天体撮影に使用した印象を、以下に箇条書きでまとめました。

ED103SとSDレデューサーHDキットのマッチングは良好で、35ミリフルサイズカメラのほぼ全面にシャープな像を結ぶ。 周辺減光も少なく、天体撮影に使いやすい組み合わせであることが確認できた。

SD81Sと比べると若干ましではあるが、ED103Sでも撮影時に輝星に回折光が写りこんでしまう。 星像が良いだけに残念なので、レンズに出っ張った錫箔を隠すなどの対策をメーカーにお願いしたい。

SDフラットナーHD使用時の焦点距離は811ミリと長く、解像力も高いので、 センサーサイズの小さな冷却CMOSカメラと組み合わせれば、 春の系外銀河の撮影も楽しめそうだと感じた。

SD81Sに比べて大きく重いので、ポルタII経緯台では少々苦しく、SXクラス以上の赤道儀に搭載したい。 自動導入機能の付いた赤道儀に載せれば、 小さな系外銀河でも簡単に導入でき、このクラスの望遠鏡には適した組み合わせだと感じた。


まとめ

今回のテストを通じて、ビクセンED103S(SD103S)は、口径10センチの天体望遠鏡ながら、持ち運びしやすく、 自宅での月や惑星の観望から、補正レンズを併用した天体撮影の分野まで、幅広く使用できる機材だと感じました。

天体撮影では、ビクセンのSDレデューサーHDキットとのマッチングが良好で、 35ミリフルサイズ全面にシャープな像を結ぶことが確認できました。 最近、注目されているセンサーサイズの小さい冷却CMOSカメラと組み合わせれば、 星雲星団だけではなく、春の銀河まで撮影を楽しむことができると思います。

口径10センチの屈折式天体望遠鏡は、性能と大きさのバランスが良く、屈折のスタンダードとも言える機材です。 SD81Sからのステップアップとしてはもちろん、最初からSD103Sを購入してじっくり天体観測を楽しむのもよいでしょう。 SD103Sは、入門者からベテランまで、それぞれの目的に合わせて使用できる天体望遠鏡だと感じました。

レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

ビクセン SD81Sのインプレッション

ビクセン SD81Sのインプレッション

ビクセン SD81S

ビクセンSDシリーズは、同社の天体望遠鏡ラインナップの中で、屈折望遠鏡の中核を担う鏡筒です。 SDシリーズでは、口径の異なる3つの望遠鏡が用意されていますが、ビクセンSD81Sは、最も口径の小さな天体望遠鏡です。 今回は、このコンパクトなSD81Sをフィールドに持ち出し、使い勝手や写真性能をレビューしました。


ビクセン SD81Sについて

ビクセンSD81S鏡筒は、口径81mm、焦点距離625mm(F7.7)の2枚玉アポクロマート屈折望遠鏡です。 SD81Sの対物レンズには、EDガラスの中でも特に優れた光学性能を有する素材(FPL53)で作られたSDガラスレンズが用いられており、 コンパクトながら高性能を目指した望遠鏡です。

SD81Sの本体重量は2.3キロと軽く、鏡筒バンドにはキャリーハンドルも付けられているため、 持ち運びやすく、女性でも楽に取り扱うことが可能です。 鏡筒バンド下部には、スライドバーMがネジ止めされているので、 アリミゾ式の架台にワンタッチで取り付けることができます。

ビクセン SD81S

SD81Sのドロチューブ先端は、2インチ径のスリーブ形状で、フリップミラーが標準で付属しています。フリップミラーは、 低倍率と高倍率を即座に切り替えることができる天頂ミラーで、天体観望用に便利なパーツです。

天体の導入支援装置として、SD81Sには光学ファインダーの代わりに、スポットファインダーが付属しています。 電源を入れると、ガラスの円形窓に赤い光の点が出現します。 この光点と天体を重ねることによって、望遠鏡視野内に天体が導入される仕組みです。

SD81Sには、デジタルカメラで星雲や星団を撮影するユーザー向けに、 フラットナーレンズ(SDフラットナーHD)とレデューサーレンズ(レデューサーHD)がオプション設定されています。 どちらも、天体写真ファンからの評価の高い補正レンズです。 フラットナーレンズとレデューサーレンズについては、別レビューもご覧ください。


ビクセン SD81Sの光学性能

ビクセンSD81Sの光学性能を確かめるため、鏡筒を郊外に持ち出し、星空観望を実施しました。

まずはじめに、恒星像を眼視で確認しました。 わし座のアルタイルを高倍率で確認しましたが、色収差はほとんど感じられず、恒星像は十分にシャープでした。 焦点内外像もほぼ対称に近く、諸収差の補正も良好と感じました。

続いて、さそり座のM6、M7をはじめとした、明るく大きな散開星団を低倍率で観望しました。 屈折らしいコントラストの高さで、暗い夜空を背景にして、微恒星が集まった様子がよくわかり、 星の色合いの違いも確認できました。

星空観望後、南天で輝く木星や土星も観望しました。惑星の観望では、口径不足の感は否めないものの、 木星表面の目立つ縞模様はコントラストよく見え、土星の環もはっきりと見えました。

月面は迫力ある眺めを楽しめました。100倍程度の倍率で月面を観察すると、 クレーターや月面の皺模様の立体感が感じられました。 色収差の発生は目立たず、明るい月のリムを見ても、色のにじみはほとんど感じられませんでした。


ビクセン SD81Sを使って天体撮影

星空を観望した後、SD81Sに、SDレデューサーHDキットを取り付け、天体撮影を行いました。 SD81Sにレデューサーレンズを取り付けると、焦点距離は496ミリになります。 焦点距離500ミリ前後の画角は、はくちょう座の北アメリカ星雲をはじめ、散光星雲の撮影に使いやすい画角です。

今回、撮影対象には、北アメリカ星雲と同じく、はくちょう座で輝くγ星付近の散光星雲を選びました。 γ星付近の星雲は、微恒星が多く、色合いも豊かで華やかな星域です。

撮影に使用したカメラは、天文用冷却デジタル一眼レフカメラのAstro6Dです。 赤道儀は、KYOEIオリジナルのビクセンAP-WM追尾撮影スターターセットを用いました。 オートガイドは、LacertaM-GENを使用しています。

ビクセン SD81S

上は、上記機材で4枚撮影し、画像処理ソフトのステライメージ8で仕上げた写真です。 画角全体にわたって星はシャープで、コントラストもよい写りです。 星像確認のため、画像中央付近を切り抜いた写真を下記に掲載しました。 なお、撮影時のカメラの設定は、ISO3200、1枚当たりの露光時間は300秒です。

ビクセン SD81S

拡大画像から、色収差の発生も感じられず、鋭い星像であることがわかります。 なお、輝星の周りに回折像が写っていますが、これは、SD81Sの対物レンズの間隔調整用の錫箔が、 光路に少し飛び出しているためです。 回折像が気になる場合は、錫箔を隠す円形の絞りを作って、対物レンズセルの前に貼り付けるとよいでしょう。

ビクセン SD81S

上は、画像の右上隅の一部を拡大した画像です。 35ミリフルサイズの最周辺部になると、収差で星の形が若干菱形になっていますが、 その量はわずかです。色ずれの発生もほとんど感じられず、 焦点距離を短くしながら、諸収差も良好に補正しているという印象を受けました。


SDフラットナーHDで天体撮影

次に、SDフラットナーHDSD81Sに取り付けて、天体撮影を行いました。 SD81SSDフラットナーHDを取り付けると、焦点距離が644ミリになります。 レデューサーレンズに比べると、F値が暗くなりますが、天体を更に大きく写したいときに重宝する補正レンズです。

撮影対象には、秋の夜空で輝く、アンドロメダ大銀河を選びました。 撮影に使用した機材は、レデューサー使用時と同じです。

ビクセン SD81S

上は、上記機材で撮影して仕上げた写真です。 フラットナーを用いると、ちょうどよい大きさでアンドロメダ大銀河が画角に収まりました。 画像中央付近を切り抜いた写真を下記に掲載しました。 なお、撮影時のカメラの設定は、ISO3200、露光時間は480秒です。 4枚撮影して画像処理ソフトで仕上げています。

ビクセン SD81S

アンドロメダ大銀河の中心部を拡大した画像を上に掲載しました。 レデューサー使用時と同様、星像はシャープでコントラストも良好です。 シャープ処理は一切行っていませんが、銀河の暗黒帯のディテールもよく表現されており、解像力の高さを感じさせてくれます。

ビクセン SD81S

続いて掲載したのは、右上隅の一部を拡大した画像です。 星像は35ミリフルサイズ最周辺部まで、ほぼ点像を保っており、色ずれも感じられません。 レデューサーHD使用時と比べ、SDフラットナーHD使用時の方が星像が更にシャープな印象を受けました。


使用後の印象

今回、ビクセンSD81Sを天体観望と天体撮影に使用した印象を、以下に箇条書きでまとめました。

8センチクラスの天体望遠鏡ということで、天体撮影時の解像力にはそれほど期待していなかったが、 アンドロメダ大銀河の暗黒帯の描写など、クラスを超えた写りに驚いた。

天体撮影用として人気の高い4枚玉アポクロマート望遠鏡(タカハシFSQ-85ED等)に比べると、 SD81Sは、対物レンズが2枚玉ということもあり、 温度順応が早く、気温変化によるピント位置の変動も少なく感じた。

補正レンズ使用時の星像が良いだけに、輝星に回折光が写りこむのは残念だ。 ユーザー側でも対処可能だが、メーカーで対物レンズ前に飾り環を付けるなど、 何らかの対処をしてほしいと感じた。

SDフラットナーHD使用時は、周辺減光が非常に少なく、フラット補正が合いやすいと感じた。 ミラーボックスのケラレが発生しないミラーレス一眼や天体用CMOSカメラなら、 画像処理ソフトの周辺減光コマンドで補正できそうだ。

以前レビューしたビクセンED80sfと比べ、SD81Sの方が接眼部の構造が丈夫なため、 重いカメラを取り付けてもドロチューブがずれ落ちにくかった。 高性能なSDレデューサーHDキットを使用できる点から考えても、 今後、天体撮影の予定があるなら、SD81Sをお勧めしたい。

SD81Sは、8センチクラスの中でも軽くコンパクトな上、アリガタシステムでワンタッチで架台に取り付けられるので、 天体観測入門者にも適した天体望遠鏡と感じた。 ポルタII経緯台とセットになった「KYOEIオリジナルポルタII-SD81S・EDアイピースセット」は、 天体観望用として最適のセットだろう。


まとめ

今回のテストを通じて、ビクセンSD81Sは、コンパクトな天体望遠鏡ながら、諸収差を良好に補正し、 気軽な天体観望から本格的な天体撮影まで、幅広く使用できる機材という印象を受けました。

特に天体撮影の分野では、ビクセンのSDレデューサーHDキットとのマッチングが良好で、 35ミリフルサイズ全面にシャープな像を結び、ベテランでも満足できる組み合わせだと感じました。

ビクセンSD81Sは、天体観測に興味を持った入門者の方はもちろん、 これから天体撮影に本格的に挑戦してみようと思っている方にも適した鏡筒です。 フラットナーとレデューサーレンズを使えば、 二通りの焦点距離で撮影を楽しむことができるので、撮影の対象も広がるでしょう。

また、既にSD81Sを所有している方は、是非、SDレデューサーHDキットを追加して、 天体撮影を始めてみてはいかがでしょう。 SD81Sを天体観望用だけに使うのは、少々もったいない気がします。 SD81Sを使って、是非、天体写真の扉を開けてみることをおすすめします。


SD81S鏡筒ラインナップ

SD81S鏡筒

ポルタII
EDアイピースセット

SXD2赤道儀
直焦点撮影
スターターセット

AP-SD81S


レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

ビクセン SDレデューサーキット のインプレッション

ビクセン SDレデューサーキット のインプレッション

ビクセン SDフラットナーHDとレデューサーHD

ビクセンSDフラットナーHDレデューサーHDは、2017年に発売開始された屈折望遠鏡用の補正レンズです。 同社のSDシリーズ屈折望遠鏡(SD81SSD103SSD115S)用として開発されましたが、 これらより古い旧製品に使用することも可能です。

SDフラットナーHDレデューサーHDは、天体撮影には欠かせないアイテムです。 今回はこの二つの補正レンズの役割や重要性を解説するとともに、実際にフィールドに持ち出し、 写真性能をレビューしました。


SDフラットナーHD と レデューサー HD

フラットナーレンズは、その名の通り、望遠鏡が作り出した像を平坦化する機能があります。 ビクセンSDシリーズ屈折望遠鏡の中心像は非常にシャープですが、 直焦点で星を撮影すると、結像面が湾曲しているため、デジタルカメラの写野周辺の星はボケたように写ってしまいます。 SDシリーズ望遠鏡にフラットナーレンズを追加することにより、 像が平坦になり、周辺でもシャープな像を結びます。

フラットナーレンズの効果

ビクセンSDシリーズのフラットナーレンズは、「SDフラットナー HDキット」というキットで販売されており、 レンズが入ったフラットナー本体と、延長筒(EXチューブ66)、SD81S用のスペーサーリングSD81で構成されています。 使用するときは、EXチューブにフラットナーレンズ本体をねじ込み、鏡筒内に挿入して使います。 フラットナーレンズを使用したときの合成F値は、F7.7からF7.9へ、直焦点と比べて僅かですが暗くなります。

レデューサーレンズは、焦点距離を短縮し、F値を明るく補正するための補正レンズです。 レデューサーレンズを使用すると、下表のように焦点距離が短くなり、F値は7.7から6.1へ、 絞り約2/3段分明るくなります。

鏡筒名 焦点距離/F値 SDフラットナーHD使用時 レデューサーHD使用時
SD81S 625mm / F7.7 644mm / F7.9 496mm / F6.1
SD103S 795mm / F7.7 811mm / F7.9 624mm / F6.1
SD115S 890mm / F7.7 908mm / F7.9 699mm / F6.1

レデューサーレンズを使用するときは、EXチューブ66を取り外し、フラットナーレンズの後ろ直接ねじ込みます。 従来のビクセン鏡筒用のレデューサーED(F7.7用)と異なり、レデューサーレンズ単体では使用できないので、注意が必要です。 購入する際は、SDフラットナーHDキットにレデューサーHDがセットされた「SDレデューサーHDキット」がお勧めです。

ビクセン SDフラットナーHDとレデューサーHD

フラットナーレンズ、レデューサーレンズともに、ASコーティングという反射防止コーティングが施されており、 透過率の高さを感じさせてくれます。 艶消し塗装も丁寧で、外観も高級感を感じさせる仕上がりになっています。


SDフラットナーHDの結像星像

SDフラットナーHDの結像性能を調べるため、 ビクセンSD81Sを郊外に持ち出し、星空撮影を実施しました。 撮影に使用したカメラは、天文用に改造された冷却デジタル一眼レフカメラのAstro6Dです。 赤道儀は、協栄産業オリジナル仕様のビクセンAP-WM赤道儀を使用し、ラセルタM-GENでオートガイド追尾を行いました。

星像の確認のため、はくちょう座のデネブを撮影対象に選びました。 下は、カメラの感度をISO6400に設定し、露出時間90秒で撮影した画像の全景です。 画像処理は行っておらず、液晶モニターに映し出されたままの画像です。

ビクセン SDフラットナーHD

元画像を一見した印象では、周辺減光は感じられず、色収差の発生も感じられません。 次に、画像の一部を拡大して結像性能を確認しましょう。 下は、35ミリフルサイズの撮影画像の中心と周辺星像を切り抜き、ピクセル等倍で切り取った比較画像です。

ビクセン SDフラットナーHD

各部分の星像を確認すると、中心部は非常にシャープで、 35ミリフルサイズの最周辺部でも星像はほぼ円形を保っています。 全体に渡って色収差の発生もほとんど感じられず、均質で鋭い星像だと感じました。

なお、中央に写っている輝星(デネブ)に回折像が写っていますが、 これは、SD81Sの対物レンズの間隔調整用の錫箔が、光路に少し飛び出しているためです。 回折像が気になる場合は、錫箔を隠す円形の絞りを作って、対物レンズセルの前に貼り付けるとよいでしょう。


SDフラットナーHDの周辺減光

SD81SSDフラットナーHDを付けた時の周辺減光について見ていきましょう。 下は、SD81SSDフラットナーHDを取り付けた際のフラットフレーム画像(未処理)です。

SDフラットナーHDの周辺減光

35ミリフルサイズの画角ですが、未処理の画像からは減光は感じられません。 次に、フラットフレーム画像を、レベル補正コマンドを使って、約5倍に圧縮強調しました。

SDフラットナーHDの周辺減光

ここまで強調すると、周辺部が中央部に比べて暗くなっている様子がわかります。 しかし、画面全体として減光はなだらかで、周辺減光の補正はしやすいでしょう。 センサーサイズが小さなAPS-Cサイズのデジカメなら、フラット補正無しで仕上げることもできそうです。


レデューサーHDの写真と星像

続いて、レデューサーレンズを使用した時の星像をチェックしました。 使用したカメラや機材は、SDフラットナーHDテスト時と全く同じです。 撮影対象は、ヘラクレス座の球状星団M13です。 ISO1600、180秒露光で撮影しました。

SDフラットナーHDの周辺減光

元画像を一見した印象では周辺減光は感じられず、色収差の発生も感じられません。 次に、球状星団の部分を拡大して結像性能を確認しましょう。

SDフラットナーHDの周辺減光

フラットナー同様、レデューサーを使用した場合も色収差は感じられず、 星像もシャープで、微恒星までよく分解しています。 コントラストも良好です。 更に、周辺星像を確認してみましょう。 下は、35ミリフルサイズの撮影画像の中心と周辺星像を、ピクセル等倍で切り取った比較画像です。

ビクセン SDフラットナーHD

各部分の星像を確認すると、中心部は極めてシャープです。 35ミリフルサイズの最周辺部は、よく見ると星像が若干菱形に崩れていますが、 その割合は少なく、ほぼ円形を保っていると言えるでしょう。


レデューサーHD使用時の周辺減光

レデューサー使用時の周辺減光についても確認しましょう。 下は、SD81Sとレデューサーを取り付けた際のフラットフレーム画像です。

レデューサーHDの周辺減光

35ミリフルサイズの画角ですが、元画像からは写野端でも減光は、ほとんど感じられません。 画像処理ソフトで画像を強調してみると、四隅に近づくにつれ、 光量の落ち込みが確認できますが、勾配はそれほど急ではなく、なだらかに減光するイメージです。

レデューサーHDの周辺減光

フラットナーレンズでの撮影時と比べると、周辺減光は増加しているものの、 レデューサーレンズ使用時でも極端な減光ではなく、補正がしやすい光学系であることが確認できました。


ビクセン SDフラットナーHDとレデューサーHDの印象

今回、SDレデューサーHDキット(SDフラットナーHDレデューサーHDのセット)を使って、 実際に天体撮影に使用した印象を、以下に箇条書きでまとめました。

従来のレデューサー(レデューサーED(F7.7用))に比べ、結像性能は段違いで、大幅な性能進化が感じられた。 外観も高級感があり、造りもしっかりしている。

結像性能が非常に優れているため、シャープな光学性能を生かすには、正確なピント合わせが必要だと感じた。 標準付属のピントノブでは、ドロチューブが大きく動いてしまうため、 減速装置の付いた「デュアルスピードフォーカサー」を、是非用意しておきたい。

レデューサーHD使用時、カメラのスケアリングがずれていると、左右で星像の伸び方や色ずれが異なるケースがあった。 重いカメラを取り付けるときは、ビクセンFL55SS用のK-ASTEC製TB-80/65ASのような、 補正レンズ部分を支持するバンドがあれば安心だろう。

SDフラットナーHD使用時は、周辺減光が非常に少なく、フラット補正が合いやすいと感じた。 ミラーボックスのケラレが発生しないミラーレス一眼や天体用CMOSカメラなら、 画像処理ソフトの周辺減光コマンドで補正できそうだ。

レデューサーHDは、他のレデューサーと比べて、焦点距離を短くする力が弱く(0.79倍)、F値はそれほど明るくならない。 そのため、露光時間はあまり短縮できないが、星像は良好で周辺減光も比較的少ないと感じた。 最近のデジカメは高感度特性が優れているので、明るさよりも星像に優れた補正レンズの方が、 画像処理時のストレスが少ないと思われる。


まとめ

ビクセン製の補正レンズは、以前は、高橋製作所製に比べて性能の点で今一歩という印象でしたが、 2015年8月にR200SS用の補正レンズ「コレクターPH」が発売されて一変しました。 コレクターPHは、天体写真ファンから絶賛され、 その後に発売された同望遠鏡用のエクステンダーPHも高い評価を得ています。

SDフラットナーHDレデューサーHDも、コレクターPHの流れを汲む補正レンズで、 今回、実際に使用してみて、改めてその結像性能の良さを実感しました。 以前のビクセン製補正レンズに満足できなかったベテランユーザーでも、 納得できる仕上がりになっていると思います。

元々はSDシリーズ用の補正レンズですが、EDシリーズはもちろん、 それより古い旧製品にも使用できる汎用性の高さも魅力です。 接続アダプターを工夫すれば、他社製の2枚玉屈折望遠鏡にも流用できるかもしれません。

個人的に、ビクセンのSDフラットナーHDレデューサーHDは、 他社製を含めても一二を争う、優れた補正レンズだと感じました。 ビクセンSDやED望遠鏡をお持ちなら、是非、SDレデューサーキットも手に入れて、 天体撮影を楽しんでみてはいかがでしょうか。


SDレデューサーHDキットは以下の鏡筒に対応

SD81S鏡筒

SD103S鏡筒

SD115S鏡筒

AX103S鏡筒

VC200L鏡筒


レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

ビクセン FL55SS のインプレッション

ビクセン FL55SS のインプレッション

ビクセン FL55SS

ビクセンFL55SSは、株式会社ビクセンが製造する天体望遠鏡で、2018年7月に発売開始されました。 有効口径55mmのコンパクトな望遠鏡ですが、対物レンズにフローライトレンズを採用しており、小さいながら高性能な天体望遠鏡です。

FL55SS用の天体撮影用のオプションとして、フラットナーレンズレデューサーレンズも用意されています。 天体撮影向けオプションを用いた際の結像性能を調べるため、このコンパクトな高性能機をフィールドに持ち出し、 写真性能を中心にレビューしました。


ビクセン FL55SS について

ビクセンFL55SS鏡筒は、口径55mm、焦点距離300mm(F5.5)のフローライトアポクロマート屈折望遠鏡です。 本体重量は1.5キロと軽く、外観も200ミリ望遠レンズを一回り大きくした程度のコンパクトな天体望遠鏡です。

ビクセン FL55SS

FL55SS鏡筒の下部には、スライドバーMがパーツを介してネジ止めされています。 他の望遠鏡に採用されている鏡筒バンド固定式と異なり、FL55SSはこのスライドバーMを用いて、 アリミゾ式の架台にワンタッチで取り付けることができます。 外観上、小さな鏡筒本体に比べて、スライドバーMが大きく感じられますが、 デジタルカメラを取り付けたときの前後バランスを考えてのことでしょう。

FL55SSには、デジタルカメラで星雲や星団を撮影するユーザー向けに、 フラットナーレンズフラットナーHDforFL55SS)とレデューサーレンズ(レデューサーHD5.5)が用意されています。 どちらも、高性能な補正レンズと評価が高く、FL55SSを天体撮影に使用するなら、 是非そろえておきたいオプションです。 フラットナーレンズレデューサーレンズについては、以下の項目で詳しく見て行きます。


フラットナーHD と レデューサーHD

フラットナーレンズは、その名の通り、望遠鏡が作り出した像を平坦化する機能があります。 FL55SSの中心像は非常にシャープですが、直焦点で星を撮影すると、結像面が湾曲しているため、 デジタルカメラの写野周辺の星はボケたように写ってしまいます。 FL55SSフラットナーレンズを追加することにより、像が平坦になり、周辺でもシャープな像を結びます。

ビクセン FL55SS

FL55SSフラットナーレンズは、「フラットナーHDキットforFL55SS>」というキットで販売されており、 レンズが入ったフラットナー本体と、延長筒(EXチューブ)で構成されています。 使用するときは、上の写真のようにEXチューブにフラットナーレンズ本体をねじ込み、鏡筒内に挿入して使います。 フラットナーレンズを使用したときの合成F値は、直焦点(F5.5)と比べて僅かに暗くなり、F5.7になります。

レデューサーレンズは、焦点距離を短縮し、F値を明るく補正するための補正レンズです。 FL55SSレデューサーレンズを使用すると、焦点距離は300ミリから237ミリに短くなり、F値は5.5から4.3へと、 絞り約2/3段分明るくなります。

ビクセン FL55SS

レデューサーレンズを使用するときは、EXチューブを取り外し、フラットナーレンズの後ろ直接ねじ込みます。 従来のビクセンの補正レンズと異なり、レデューサーレンズ単体では使用できないので、注意が必要です。 購入する際は、フラットナーHDキットforFL55SS>にレデューサーがセットされた「レデューサーHDキットforFL55SS」がお勧めです。

また、フラットナーレンズレデューサーレンズともに、ASコーティングという反射防止コーティングが施されており、 透過率の高さを感じさせてくれます。


FL55SSとフラットナーHDの写真と星像

ビクセンFL55SSを郊外に持ち出し、フラットナーHDを取り付けて、冬の星雲を撮影してみました。 撮影に使用したカメラは、天文用に改造された冷却デジタル一眼レフカメラのAstro6Dです。 赤道儀はビクセンのSXP赤道儀を使用し、ラセルタM-GENでオートガイド追尾を行いました。

撮影対象には、冬の定番構図「オリオン座の馬頭星雲からM42」を選びました。 下は、カメラの感度をISO3200に設定し、露出時間240秒で撮影した画像の全景です。 画像処理は行っておらず、液晶モニターに映し出されたままの画像です。

ビクセン FL55SS

元画像を一見した印象では周辺減光は感じられず、色収差の発生も感じられません。 まず、画像の一部を拡大して結像性能を確認しましょう。

ビクセン FL55SS

上は、馬頭星雲付近を拡大した画像です。 対物レンズにフローライトレンズを使っている効果でしょう、色収差は感じられず、星像もシャープです。 コントラストも良好で、未処理の画像ながら、馬頭星雲の周囲に広がる赤い星雲がよく写し出されています。

次に、周辺星像を確認してみましょう。 下は、35ミリフルサイズの撮影画像の中心と周辺星像を、ピクセル等倍で切り取った比較画像です。

ビクセン FL55SS

各部分の星像を確認すると、中心部は極めてシャープですが、35ミリフルサイズの最周辺部は、 星像が菱形に崩れています。残存している非点収差等の影響だと思います。 ただ、周辺部でも色ズレの発生は感じられず、改めて色収差の少ない光学系だと感じました。

さらに、天体撮影によく用いられている、APS-Cサイズのデジタルカメラの画角の星像を確認してみましょう。 35ミリフルサイズの画像を、APS-Cサイズにトリミングしてみました。

ビクセン FL55SS

上画像のように、APS-Cの画角では、最周辺部まで星像は丸く、写野全面に渡って鋭い星像を結んでいます。 APS-Cセンサーのデジタルカメラなら、周辺部まで、全面に渡って鋭い星像を結ぶでしょう。


FL55SSとフラットナーHDの周辺減光

FL55SSフラットナーHDを付けた時の周辺減光について見ていきましょう。 下は、FL55SSフラットナーHDを取り付けた際のフラットフレーム画像です。

ビクセン FL55SS

35ミリフルサイズの画角ですが、写野端でも減光は感じられません。 画像処理ソフトで画像を強調しても、四隅の光量の落ち込みは感じられませんでした。

確認のため、オリオン座の星雲の写真を強調処理してみましょう。 ステライメージ8を使用し、オリオン大星雲の東側に広がる分子雲が出るまでレベル補正コマンドで強調しましたが、 周辺減光は感じられません。 使用するカメラによっては、ミラーボックスのケラレが生じることはあるかもしれませんが、 FL55SSフラットナーHDの周辺減光の少なさがよくわかりました。

ビクセン FL55SS

参考までに、天体撮影によく使用される、所謂サンニッパの300mmF2.8レンズで撮影した画像を下に掲載しました。

ビクセン FL55SS

300ミリレンズは周辺減光を減らすため、絞りを約1/3段絞っていますが、 それでもFL55SSと比べると周辺減光が目立ちます。 FL55SSには対物レンズと比較して口径の大きなフラットナーレンズを使用していることもあり、 周辺光量はカメラレンズに比べて豊富なのでしょう。


FL55SSとレデューサーHDの写真と星像

続いて、レデューサーレンズを使用した時の星像もチェックしました。 使用したカメラや機材は、フラットナーHDテスト時と全く同じです。 撮影対象も、同じくオリオン座の星雲群です。 F値が明るい分、露光時間は若干短く、ISO3200で180秒露光で撮影しています。

ビクセン FL55SS

焦点距離が短くなった分、フラットナーレンズでの撮影時と比べると、 オリオン座の三ツ星も写野内に入り、画角が一回り広くなっているのがわかります。 元画像を一見した印象では周辺減光は感じられず、色収差の発生も感じられません。 まず、画像の一部を拡大して結像性能を確認しましょう。

ビクセン FL55SS

今回も、馬頭星雲付近を拡大してみました。レデューサーを使用した場合も色収差は感じられず、 星像もシャープです。コントラストも良好で、輝星の輝きから光学系の抜けの良さが感じられます。

次に、周辺星像を確認してみましょう。 下は、35ミリフルサイズの撮影画像の中心と周辺星像を、ピクセル等倍で切り取った比較画像です。

ビクセン FL55SS

各部分の星像を確認すると、中心部は極めてシャープですが、 35ミリフルサイズの最周辺部は、星像が崩れています。 ただ、星像の崩れは放射状に伸びるのではなく、 円周方向にボケたような崩れ方なので、それほど目立たないように感じました。

続いて、天体撮影によく用いられている、APS-Cサイズのデジタルカメラの画角の星像を確認してみましょう。 35ミリフルサイズの画像を、APS-Cサイズにトリミングしてみました。

ビクセン FL55SS

上画像のように、APS-Cの画角では、最周辺部の星像は若干崩れますが、崩れは極めて小さく収まっています。 上記結果から、レデューサーを用いた場合でも、APS-Cセンサーのデジタルカメラなら、 写野全面に渡って、ほぼ丸い星像を結ぶと言えると思います。


FL55SSとレデューサー使用時の周辺減光

レデューサー使用時の周辺減光についても確認しましょう。 下は、FL55SSとレデューサーを取り付けた際のフラットフレーム画像です。

ビクセン FL55SS

35ミリフルサイズの画角ですが、元画像からは写野端でも減光は感じられません。 画像処理ソフトで画像を強調してみると、四隅に近づくにつれ、 光量の落ち込みが確認できますが、その程度は軽微です。

確認のため、先ほどのオリオン座の星雲の写真を強調処理してみましょう。 ステライメージ8を使用し、オリオン大星雲の東側に広がる分子雲が出るまでレベル補正コマンドで強調したところ 、四隅が暗くなっているのがわかります。

ビクセン FL55SS

フラットナーレンズでの撮影時と比べると、周辺減光が発生していますが、 その量はごく軽微で、レデューサーレンズ使用時も周辺光量の豊富な光学系であることが確認できました。

オリオン座の馬頭星雲からM42
大きい写真はコチラ 

大きい写真はコチラ 
撮影機材:ビクセン FL55SS鏡筒フラットナーHDキットSXP赤道儀
使用カメラ:Astro6D
露出時間:300秒×16コマ
撮影条件:RAWモード、ISO3200、M-genにて追尾撮影
撮影機材:ビクセン FL55SS鏡筒フラットナーHDキットSWAT-350 V-spec
使用カメラ:Astro6D
露出時間:180秒露光×16枚
撮影条件:SWAT-350 V-specにてノータッチ追尾

オートガイダーの取り付けについて

ビクセンFL55SSは、鏡筒バンドを使った固定方式ではないため、 通常の天体望遠鏡撮影システムのようにオートガイダーを親子亀方式で取り付けることはできません。 そこで、当初は、タカハシのガイド専用望遠鏡GT-40を赤道儀に取り付け、 その上にアリガタ金具を介して、FL55SSを搭載していました。

ビクセン FL55SS

この方式でオートガイドには問題ありませんでしたが、撮影に使用したところ、 ピントノブを回してドロチューブを前後させると、 拡大したデジカメの画像内で星がぴょんぴょんと動き回ることに気づきました。

また、ドロチューブの固定ネジを締めた際、星の位置がずれる点も気になりました。 ドロチューブが大きく傾くと、スケアリングのズレに繋がり、撮影画像にも影響が出ます。 実際、この組み合わせで撮影した画像を確認すると、左右で星像の写り方が違っている場合がありました。

対策として、スライドバーMを外し、K-Astec製の鏡筒バンド「TB-80/65AS」を使った固定方法に変更しました。赤道儀への装着は、同じK-Astec製のアルカスイス規格プレートDP38-190で固定します。 このように変更してみると、上記で感じた写野内での星の動きは小さくなり、 偏っていた周辺星像も改善しました。

ビクセン FL55SS

TB-80/65ASを使用すると、FL55SS鏡筒は裏返しになりますが、 スライドバーMを取り外した台座部に天文用アルカスイス規格クランプDS38を追加し、 ガイド鏡を載せることができます。

実際に一連のK-Astecパーツを試したところ、FL55SSを快適に使用できるようになりました。 フラットナーとレデューサーを使って本格的に天体撮影を楽しもうという方には、 是非K-Astecパーツを追加されることをお勧めします。


撮影後の印象

今回、ビクセンFL55SSを実際に天体撮影に使用した印象を、以下に箇条書きでまとめました。

色収差が少なく、星像も大変シャープ。 FL55SSの光学性能を生かすには、正確なピント合わせが必要だと感じた。 標準付属のピントノブでは、ドロチューブが大きく動いてしまうため、 減速装置が付いた「デュアルスピードフォーカサー」は、是非装備しておきたい。

補正レンズを使用した際の周辺光量は非常に豊富で、特にフラットナーHD使用時は、周辺減光はほとんど感じられない。 周辺減光が少ないので、フラット補正が合いやすく、 ミラーボックスのケラレが発生しないミラーレス一眼なら、フラット補正も必要ないくらいに感じた。

上記したとおり、ドロチューブの摺動部分の公差が大きいのか、ピントノブを回すと視野内で星が動く点が気になる。 メーカーとして予め対策をお願いしたいところだが、K-Astec製のTB-80/65ASを使用すれば解決する。

ビクセンの高性能アイピース、HR2.0ミリを接眼部に挿し込み、星像を確認したところ、 色収差は感じられず、シャープで、ジフラクションリングも綺麗に見えた。 FL55SSは、写真性能だけでなく、眼視性能も優れた望遠鏡だと感じた。

口径55ミリの望遠鏡とは思えないほど、よく写ると感じた。 焦点距離200ミリ~300ミリ前後の光学系となるとカメラレンズも候補になってくるが、 星像の美しさやコントラストの点で、やはりFL55SSの方が優れているだろう。

軽くてコンパクトなので、ポータブル赤道儀にも搭載しやすい。 実際、ユニテック社のSWAT-350 V-specに載せて撮影したが、ノータッチ追尾で天体撮影を楽しめるのは、とても快適だった。 2020年に発売される予定のポラリエUに搭載してもよさそうだ。


まとめ

焦点距離200ミリ~300ミリ前後の画角の撮影ではカメラレンズを使用することが多く、 小型望遠鏡にはこれまであまり興味を引かれませんでしたが、 今回、ビクセンFL55SSを使用してみて、考えが180度変わりました。

FL55SSは、色収差が良好に補正されているので、青ハロの発生は皆無です。 周辺星像もカメラレンズと比べて良好で、周辺光量が豊富なので、フラット補正に悩むこともありません。 これは、フローライトレンズを採用した効果だけではなく、丁寧に作られたフラットナーレンズレデューサーレンズによるところも大きいでしょう。

天体撮影用の屈折望遠鏡と言えば、口径8センチ~10センチ前後の鏡筒がメジャーでしたが、 ここ数年、口径6センチ前後のコンパクトな高性能機も注目されています。 ビクセンFL55SSは、その中では高価な機種になりますが、眼視性能の高さや高品質な補正レンズなど、 今回のレビューを通じて、価格相応の品質を備えた望遠鏡だと感じました。

ビクセンFL55SSは、星景写真から天体撮影にも挑戦してみようという方に、特にお勧めしたい望遠鏡です。 また、ベテランのサブ機や海外遠征機材としても、確実に結果を残せる優れた望遠鏡だと感じました。



かもめ星雲(IC2177)
大きい写真はコチラ 

撮影機材:ビクセン FL55SS鏡筒フラットナーHDキットSXP赤道儀M-genにてオートガイド追尾
使用カメラ:Astro6D
撮影条件:300秒×6枚、ISO3200

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