フェニックスとヘリオスター76Hαの インプレッション

フェニックスとヘリオスター76Hαの
インプレッション

近年、日中に楽しめる太陽観測が注目されています。それに伴い、アマチュア向け太陽望遠鏡の選択肢も一気に広がってきました。かつては高価でハードルが高かったHα観測機材も、今では10万円台から本格的な製品が手に入る時代です。

今回は、その中でも注目を集めているACUTER OPTICS「フェニックス」とスカイウォッチャー「ヘリオスター76Hα」を比較し、それぞれの特徴や見え味について、これからHα太陽観測を始めたい方の参考になるよう、実際に眼視で見比べたリアルな感想をお届けします。



アマチュア用太陽望遠鏡の歴史と変革

今でこそ気軽に手に入るHα太陽望遠鏡ですが、ほんの数十年前までは考えられないことでした。
筆者が学生の頃(1980年代)、アマチュアによる太陽観測といえば、屈折望遠鏡に太陽投影板を取り付け、黒い紙に映し出された太陽像から黒点を観察するのが一般的でした。

今でこそ気軽に手に入るHα太陽望遠鏡ですが、ほんの数十年前までは考えられないことでした。 筆者が学生の頃(1980年代)、アマチュアによる太陽観測といえば、屈折望遠鏡に太陽投影板を取り付け、黒い紙に映し出された太陽像から黒点を観察するのが一般的でした。直接目で見るのは非常に危険なため、あくまでも間接的な投影による観察が主流だったのです。 その後、減光用のNDフィルターや太陽観測専用フィルター(サンフィルター)が登場し、可視光で安全に観測できる方法も普及してきました。ただし、この段階で見えるのは主に黒点だけであり、太陽表面の細かな活動や彩層の様子まで捉えることはできませんでした。
太陽観測に革新をもたらしたのが、Hα(水素アルファ)フィルターの登場です。Hα光は波長656.3nmの赤い光で、太陽の彩層やプロミネンス、フレアなどの活動的な様子を映し出します。しかし、この光だけを取り出すためには非常に精密なエタロンフィルターが必要で、長らく業務用・研究用としての高価な装置しか存在しませんでした。アマチュアが手に入れるには、現実的ではない価格帯だったのです。
その状況を一変させたのが、2004年にコロナド社から発売された「P.S.T.(Personal Solar Telescope)」です。この望遠鏡はHα専用として設計されており、口径40mmとコンパクトながら、約15万円という価格で一般の天文ファンにも手が届く存在となりました。

これにより、「太陽観測は黒点だけ」という時代から、プロミネンスが赤く伸びる姿や、ダークフィラメントが太陽面を横切る様子、さらにはフレアの発生まで観測できるようになったのです。
PSTの登場以降、太陽観測用望遠鏡は急速に進化しました。コロナド社は上位機種としてSolarMaxシリーズを展開し、口径やフィルター精度を向上させることで、より高コントラストな太陽像を提供するようになります。また、Lunt社などの参入により、HαだけでなくCa-K(カルシウムK線)や白色光(ホワイトライト)、HeⅡ線など複数波長による観測も可能になり、選択肢は飛躍的に広がりました。
そして現在、フェニックスやヘリオスターといった高性能な太陽望遠鏡を、より手に入れやすい価格で購入できる時代になっています。今や太陽観測は「夜の天体観測のついで」ではなく、それ単独で楽しむための独立した分野として、確立されたと言ってよいでしょう。



製品紹介

今回比較するのは、ACUTER OPTICSのフェニックスと、スカイウォッチャーのヘリオスター76Hαという、いずれもHα観測専用の太陽望遠鏡です。

フェニックスは、中国の光学機器メーカー「ACUTER OPTICS」が手掛ける製品で、比較的新しく登場したモデルです。有効口径は40mmとコンパクトで、筒のデザインもシンプルかつ軽量に仕上げられています。
最大の特徴は、比較的安価にHα観測を始められるという点にあります。これまで「太陽観測は興味があるけど、専用機材は高価で手が出ない」と感じていた方にとって、フェニックスはそのハードルをぐっと下げてくれる存在です。実際に手にしてみると、想像以上に軽く、持ち運びも楽。小さな架台に取り付けても安定感があり、取り扱いに不安を感じることはありませんでした。

一方のヘリオスター76Hαは、スカイウォッチャーが手掛ける本格的なHα太陽望遠鏡です。こちらは口径76mmとフェニックスの約2倍の口径があり、その分、より詳細でコントラストの高い太陽像を提供してくれます。
エタロンフィルターの精度も高く、プロミネンスや彩層の細部がしっかり浮かび上がるのが特徴です。価格もそれに応じて高価になりますが、それだけの性能を体感できる製品となっています。



フェニックスの印象

フェニックスを架台に載せ、太陽を導入して初めてアイピースを覗き、ピントを合わせた瞬間、「あ、PSTよりも良く見える」と感じました。さらにエタロンフィルターの調整ノブを回すことでコントラストが増し、彩層面のディテールもよりはっきりと浮かび上がります。背景とプロミネンスのコントラストも良好で、黒点周りの明暗差もさらに豊かに見えてきました。

フェニックスで特に好印象だったのは、「よく見える」だけでなく、初心者にも使いやすいよう細かな配慮が施されていることです。太陽観察で最初に苦労するのが、太陽を視野に導入する作業です。星と違って太陽は強烈に明るく、肉眼で望遠鏡の視野内に入れようとすると目を傷めてしまいます。その点、フェニックスにはソーラーガイドが標準装備されており、太陽を直接見ることなく安全に導入することができます。
また、ドロチューブにはピントが合いやすい位置があらかじめマーキングされているのも親切な工夫です。初めて使う望遠鏡では「どのくらい引き出せばピントが合うのか」がわからず、実際には太陽が視野に入っているのに「入っていない」と思い込んでしまうことがあります。このマーキングのおかげで、そのような無駄な試行錯誤を防ぐことができました。

さらに、付属のアイピースがズーム式である点も嬉しいポイントです。倍率を簡単に変えられるため、わざわざアイピースを交換する必要がなく、太陽面の観察に集中することができます。
総じて、これまで使用してきた太陽望遠鏡の中でも、初心者に対する配慮がよく行き届いた製品だと感じました。



ヘリオスターの印象

軽量でコンパクトなフェニックスに対して、ヘリオスター76Hαは手に取った瞬間にずっしりとした重さと重厚感を感じます。決して重すぎるわけではなく、適度な重量感と所有する喜びを感じさせてくれる高級感があります。

太陽を導入してアイピースを覗いた瞬間、自然に「これはすごい」と声が漏れました。私自身、過去にコロナド社のSolarMax90で太陽を観望してきましたが、それと比べてもコントラストが高く、彩層面のディテールが鮮明に浮かび上がってきます。プロミネンスもより細く繊細に見え、太陽面に立体感が生まれるような見え方にしばし見入ってしまいました。
使い勝手の面でも本格的な装備が揃っています。ファインダーにはソーラーガイドを装備し、太陽を直接見ることなく安全に導入することが可能です。接眼部には減速装置付きのクレイフォード式フォーカサーが採用され、スムーズで細かなピント合わせができるのも嬉しいポイントです。さらに鏡筒中央部に配置されたチューニング機構(透過波長調整ノブ)を回すことで、簡単にコントラストを調整することが可能です。
性能面では、過去に使用してきた100万円クラスの太陽望遠鏡に匹敵するレベルに達しており、この価格帯でこれほどの性能を実現していることに驚きました。



フェニックスとヘリオスターの眼視での比較

フェニックスも十分よく見える太陽望遠鏡ですが、ヘリオスターと見比べると歴然とした差を感じました。具体的には、フェニックスで見えていたプロミネンスは、ヘリオスターを使うと炎の詳細な部分まで見え、プロミネンスが枝分かれしていることもわかります。

黒点付近については、ヘリオスターでは周囲の様子がある程度わかるくらいですが、ヘリオスターでは黒点付近の濃淡やフィラメントのようなものまで見え、コントラストが高く立体感が感じられます。
以上の通り、フェニックスでも紅炎や黒点観測は十分に楽しむことができますが、ヘリオスターではその一つひとつの構造がより細かく、繊細に描き出されるため、リアル感が大きく増します。特にプロミネンスの複雑な分岐や黒点周囲の彩層構造まで見えるおかげで、太陽が“動的な天体”であることを実感しました。
まとめると、フェニックスは「太陽観測の楽しさを知ることができる望遠鏡」、ヘリオスターは「活動的な太陽の姿に迫ることができる望遠鏡」と言えそうです。



写真撮影の比較

眼視で太陽の観測を楽しんだ後、フェニックスとヘリオスターに天体撮影用CMOSカメラ ASI664MC を取り付け、太陽面を撮影しました。

まずは、フェニックスで撮影した太陽の写真です。撮影には ASI Studio に含まれる動画キャプチャーソフト ASICAP を使用し、30秒間の動画を撮影してスタック処理により一枚の静止画に仕上げています。画像を見ると、彩層面の微細な構造や黒点周辺の明暗差がしっかり写っており、さらにプロミネンスも確認できるなど、臨場感のある太陽像を得ることができました。
次に、ヘリオスターで撮影した太陽の写真です。こちらは焦点距離が長いため、このカメラでは太陽全体が入りきらず、太陽の半球を撮影する形になりました。

フェニックスで撮影した画像と比べると、彩層面のディテールがさらに豊かに表現されており、模様の細部も際立っています。特にプロミネンスは細く繊細に描写され、ヘリオスターの持つ高い解像度を実感しました。
今回は条件の良いタイミングでの撮影とは言えませんでしたが、シーイングが安定した日に撮影すれば、より高精細な太陽像が期待できると感じています。



スカイウォッチャー ソーラークエストマウント

ソーラークエストマウントは、太陽の自動導入・追尾機能を搭載した太陽観測専用の架台です。今回のレビューでは、フェニックスを搭載して眼視観測や撮影に使用しました。

この架台にはGPSセンサーとソーラーセンサーが装備されており、電源を入れるとGPSで現在地を取得した後、自動的に望遠鏡を太陽の方向へ向けてくれます。実際に使用してみると、電源を入れただけで、フェニックスの視野のほぼ中央に太陽が入ってきて驚きました。太陽望遠鏡を初めて使う方には、この自動導入機能は非常に便利だと思います。
特に夏場、強い日差しの下で太陽を導入するのはなかなか骨の折れる作業ですが、このソーラークエストマウントのおかげで快適に観測を始めることができました。
搭載可能重量は約4kgなので、フェニックスとの相性も良好です。この組み合わせなら、太陽観望を気軽に、そして安全に楽しむことができるでしょう。



まとめ

今回、ACUTER OPTICS フェニックスとスカイウォッチャー ヘリオスター76Hαという2本のHα太陽望遠鏡を見比べ、実際に観望・撮影して感じた印象をお伝えしてきました。
フェニックスは、扱いやすさと実用性が非常に高く、初めてHα太陽望遠鏡を手にする方に特におすすめです。ソーラーガイドによる導入のしやすさや、ピント位置のマーク、ズームアイピースなど、初心者がつまずきやすいポイントを丁寧にカバーしてくれる配慮が随所に見られました。それでいて、彩層面やプロミネンスの描写もしっかりしており、「これが太陽の姿なのか」と驚きと感動を味わえるはずです。
一方、ヘリオスター76Hαはその本格的な描写力と解像感で、より一歩踏み込んだ太陽観測や撮影をしたい方に適したモデルです。特に彩層面の繊細なディテールやプロミネンスの描写は、これまで見慣れていた太陽像の印象を一変させてくれるものです。撮影との相性も良く、将来的に本格的にHα撮影を深めていきたい方には有力な選択肢になるでしょう。
価格の差はありますが、その差は性能・設計思想の違いとして理解できるもので、どちらを選んでもそれぞれに「太陽観測の世界の広がり」を実感できると思います。
Hα太陽望遠鏡を検討している方にとって、このレビューが参考になれば嬉しく思います。ご自身に合った1本を見つけて、是非太陽観測の世界を楽しんでいただければ幸いです。





レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。

ビクセンSDP65SSのインプレッション

ビクセンSDP65SSのインプレッション

ビクセンSDP65SS(以下「SDP65SS」)は、天体望遠鏡メーカーの株式会社ビクセンが製造・販売する天体望遠鏡です。SDP65SSは、同社のフラッグシップモデルであるVSDシリーズに迫る高い光学性能を持ちながら、より身近な価格帯で登場した意欲的なモデルで、2025年3月に発売されました。
今回は、そのSDP65SSのデモ機をお借りし、実際にフィールドへ持ち出して天体観望および天体撮影を行いました。FL55SSやVSD70SSといった既存モデルと比較しながら、光学性能や操作感、携行性など、実際の使用感について詳しくレビューしていきます。


SDP65SSの概要


SDP65SSは、口径65mmの高性能天体望遠鏡です。一般的な2枚玉アポクロマートとは異なり、本機には4群4枚構成の光学系が採用され、特に天体写真撮影に適した設計がなされています。

レンズ構成には、1枚のSDガラスと1枚の高屈折率EDガラス、さらにランタン系ガラスを含む計4枚のレンズが用いられており、それぞれのレンズは最適な位置に配置されています。この構成により、軸上色収差が大幅に低減され、非点収差に関しても、ビクセンのフラッグシップモデルであるVSDシリーズに匹敵するレベルで抑えられているとメーカーは公表しています。
下図は、メーカーが公表しているSDP65SSのスポットダイアグラムです。これを見ると、フルサイズセンサーの周辺部に至るまで星像の乱れが非常に少なく、極めてシャープな像を結んでいることが確認できます。また、比較対象としてFL55SS+フラットナーHDのスポットダイアグラムも掲載しましたが、それと比べても、SDP65SSの方が圧倒的に良好な星像を示しています。

SDP65SSは撮影可能範囲(イメージサークル)も広く、35mmフルサイズセンサーをカバーしています。周辺光量についても優れており、フルサイズ最周辺で90%以上の光量を確保しているため、周辺減光が非常に少ないのも大きな特長です。


SDP65SSの外観

SDP65SSの鏡筒は、VSD70SSと同様に白を基調としたシンプルかつ洗練されたデザインを採用しています。フードにはビクセンのロゴが控えめにあしらわれており、「Vixen」のアルファベットロゴは落ち着いたシルバーで仕上げられています。文字の一部が背景の白に溶け込むようなデザインとなっており、主張しすぎない上品さが感じられま

また、VSD70SSと同様に、SDP65SSにもデュアルスライドバーが標準装備されており、外観だけを見ると両者の違いはほとんど分かりません。しかし、よく観察すると、SDP65SSは接眼部の径がVSD70SSに比べて細くなっており、この部分で識別が可能です。

全長は約41cmで、伸縮式フードを縮めれば約36cmに短縮されます(上画像参照)。さらに、接眼アダプターとスライドバーを取り外すことで、よりコンパクトにすることも可能です。この携行性の高さにより、SDP65SSはカメラバッグへの収納も容易で、海外遠征や遠方での撮影にも適した機動力の高い鏡筒といえます。


新設計のインナーフォーカス式

SDP65SSには、VSDシリーズとは異なる新設計のインナーフォーカス式フォーカサーが採用されています。このフォーカサーは、ラック&ピニオン機構により対物レンズユニットを前後に移動させる方式で、接眼部自体は固定されたままピント調整が行えます。

接眼部の側面には、小窓が設けられており、ピント位置の目安となる目盛が表示されています。より精密なピント合わせを行うために、バーニヤ目盛も搭載。0.1mm単位で読み取ることができ、微細な調整が要求される天体撮影において活躍します。
また、天体撮影の標準装備として定着しつつあるZWO社の電動フォーカサー「EAF」にも対応。インナーフォーカス式の採用により、一般的なドロチューブ式でありがちな「電源を切る前にフォーカスチューブを縮めておく」といった手間が不要になり、運用面での扱いやすさが向上しています。

加えて、接眼部が固定されているため、カメラの重量によってスケアリング(光軸のズレ)が発生する心配もなく、より安心して高精度な撮影が可能になっている点も魅力です。


SDP65SSの写真と星像

SDP65SSを郊外へ持ち出し、実際に天体の撮影を行いました。使用したカメラは、ZWO社の冷却CMOSカメラ「ASI2600MC Pro(APS-Cサイズセンサー)」で、撮影はASIAIRアプリを使ってオートガイドによる追尾撮影で実施しました。
撮影対象には、春の天体でも有名な「しし座のトリオ銀河」を選びました。天候とスケジュールの関係で月明かりが残る夜空での撮影になりましたが、SDP65SSの結像性能を確認できました。下は、露出時間180秒で撮影した画像を4枚コンポジットした画像です。天体がわかりやすいようにコントラストを若干強調しましたが、フラット補正は行っていません。

元画像を一見した印象では、四隅に周辺減光はほとんど感じられず、色収差の発生も感じられません。まず、画像の一部を拡大して結像性能を確認しましょう。

上は、三銀河付近を拡大した画像です。贅沢な光学設計のおかげで、色収差はほとんど感じられず、星像も丸くシャープです。コントラストも良好で、それぞれの銀河の特徴もはっきり写し出されています。
次に、周辺星像を確認してみましょう。下は、撮影画像の中心と周辺の星像を、ピクセル等倍で切り取った比較画像です。

各領域の星像を確認すると、中心部・周辺部いずれも非常にシャープで、諸収差がしっかり補正されていることがわかります。画面全体を通して星像の均一性が高く、ぱっと見では中心と周辺の区別がつかないほどです。


おとめ座銀河団も撮影

後日、同じASI2600MC Proを使用して、おとめ座に広がる系外銀河群の撮影も行いました。下の画像は、25枚の撮影データをコンポジットし、画像処理を加えたものです。

フラット補正は行っておらず、PixInsightの「Automatic Background Extraction(ABE)」機能を使って明るさの傾きを補正したのみですが、周辺減光はほとんど見られず、暗い宇宙背景の中に小さな系外銀河が数多く写り込んでいます。下の画像は、特に銀河が密集する領域を拡大したものです。

これはDeconvolution(画像復元処理)を施した後の画像ですが、個々の銀河の構造がしっかり描写されており、口径65mmの望遠鏡で撮影したとは思えないほどの解像力を感じました。


SDPレデューサー0.8xの使用感

SDP65SSには、同時に発売された専用レデューサー「SDPレデューサー0.8x」を装着することが可能です。このレデューサーを使用すると、焦点距離は288mm、F値はF4.4となり、より広い写野を高速で撮影できるようになります。 下の画像は、SDP65SSにSDPレデューサー0.8xを装着し、35mmフルサイズカメラ「Astro6D」で撮影したオリオン座M42付近の星雲です。コントラストを若干強調していますが、フラット補正は行っていません。

メーカー発表では、SDP65SSのイメージサークルは直径30mmとされており、周辺に近づくにつれて減光が見られます。ただ、フラット補正を施せば、35mmフルサイズでも許容範囲内と感じました。APS-Cセンサーのカメラであれば、減光の大部分はセンサー外になるため、フラット補正なしでも実用的な画像処理が可能と思われます。
星像についてもシャープで良好です。下の図は、レデューサー使用時のスポットダイアグラムを示したもので、直焦点時に比べると星像サイズはやや大きくなりますが、実際の撮影画像では、極端に悪化した印象は受けませんでした。

さらに、FL55SSにレデューサーを装着した際のスポットダイアグラムと比較すると、SDP65SSの方が周辺星像の形状が改善されており、実写画像でも周辺の星像が丸く、像の崩れが少ないのが好印象でした。
一方、VSD70SSと専用のレデューサー「V0.71x」の組み合わせと比べると、VSD70SSの方が周辺減光が少なく、星像の鋭さもより優れている印象です。また、レデューサー自体の造りに関しても、SDPレデューサー0.8xはVSD用に比べるとやや簡素な印象があり、この点でもVSDシリーズに軍配が上がると感じました。


FL55SSやVSD70SSとの比較

SDP65SSとFL55SSを比較すると、単に口径が15mm大きいだけでなく、設計思想そのものが異なることがわかります。FL55SSは2枚玉のEDレンズを採用した、いわば標準的な設計の鏡筒で、天体撮影にはフラットナーレンズの追加が前提となっていました。
一方、SDP65SSは発売当初から天体写真用途を想定した光学設計がなされており、4群4枚構成によりフラットナーなしで高い周辺像性能を実現しています。このため、SDP65SSはFL55SSの単なる上位互換というよりも、用途や性格が異なるモデルと位置づけるのが適切でしょう。
一方、写真撮影を主目的としたVSD70SSとの比較では、いくつかの違いが見えてきます。VSD70SSは5群5枚構成の光学系を採用しており、収差補正の面ではSDP65SSより一歩上を行く設計です。口径も約5mm大きく、集光力においてわずかな差があります。F値はいずれもF5.5ですが、レデューサー使用時の開放F値は、SDP65SSがF4.4に対し、VSD70SSはF3.9と、より明るくなっています。

実際の撮影で比較してみると、VSD70SSのほうが星像のシャープさや色収差の抑制において、わずかに優れている印象を受けました。ただし、その差は小さく、気流の乱れが大きい日など、空のコンディションが悪い場合には見分けがつかなくなることもありそうです。
補正レンズのレデューサーについては、SDPレデューサー0.8xの項でも述べた通り、VSD70SS用のレデューサー「V0.71x」の方が結像性能において優れていると感じました。もちろん、SDPレデューサー0.8xも性能的に悪いわけではなく、十分に実用的です。しかし、レデューサーを常用する前提で鏡筒を選ぶのであれば、やはりVSD70SSのほうがより高い満足度を得られるでしょう。
一方、フォーカサーの使い勝手については、SDP65SSに採用されたインナーフォーカス方式が快適で、撮影中の安定性や操作性において優位性が感じられました。理想的な光学性能を追求するならVSD70SSに分がありますが、価格差を考えると、SDP65SSは手の届きやすい価格帯で本格的な天体撮影を楽しめる、コストパフォーマンスの高い望遠鏡と言えるでしょう。


撮影後の印象まとめ

  • 色収差が少なく、星像はシャープ。画像全体にわたり鋭い星像を結び、VSD70SSに迫る光学性能を備えている。
  • インナーフォーカス方式の採用により、接眼部が動かず、重いカメラを装着してもスケアリングがずれにくいのが便利。ただし、結露防止ヒーターの熱がレンズまで伝わりにくい可能性がある。
  • 周辺光量が豊富で、APS-Cサイズのセンサーでは周辺減光はほとんど感じられない。そのため、フラット補正が容易で、ミラーボックスのケラレがない冷却CMOSカメラであれば、フラット補正自体が不要に感じられた。
  • ビクセンの高性能アイピースHR 2.0mmで星像を確認したところ、VSD70SSと比べてわずかに色収差が感じられたが、星像は鋭く、ジフラクションリングも美しく観
  • 標準付属のデュアルスライドバーは、従来のアリミゾ式架台だけでなく、カメラ雲台にも装着できるのが便利。ただし、ガイド鏡の取り付けなどを考えると、専用の鏡筒バンドも用意してほしいと感じるユーザーもいる
  • レデューサーは外観こそやや安価な印象だが、結像性能は予想以上に良好で、四隅の減光が気にならなければ35mmフルサイズカメラでも実用的に使えると感じた。

SDPシリーズはちょうどいい性能と価格

SDP65SSが発表されたときは、正直、微妙な立ち位置の望遠鏡と思いましたが、実際に使用してみると、天体写真撮影の性能は高く、思っていた以上によく写る鏡筒と感じました。
絶対的な性能は上位機種のVSD70SSの方が勝りますが、SDP65SSは価格や携帯性、フォーカサーの扱いやすさといった実用面でバランスが取れており、特にこれから本格的に天体写真を始めたいという方にとって、魅力的な選択肢と言えるでしょう。
軽量かつコンパクトで持ち運びがしやすく、撮影機材一式をまとめてカメラバッグに収納できる点は、遠征撮影の多い入門者にとって大きなメリットです。また、専用フラットナーを追加購入する必要がなく、素の状態で35mmフルサイズをカバーできる点もコストパフォーマンスの面で優れています。
SDP65SSは、これまでFL55SSでは少し物足りなくなった方や、VSD70SSには手が届かなかった方にとって、「ちょうどいい」性能と価格のバランスを持った鏡筒です。これから天体撮影に本腰を入れて取り組みたい方に、ぜひ検討していただきたい1本です。



使用機材はこちら


レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。

SeestarS30のインプレッション

SeestarS30のインプレッション

Seestar S30は、天文機器メーカーであるZWO社が開発したスマート望遠鏡で、日本国内では2025年春に発売されました。2023年に登場したSeestar S50で培われた技術や操作性を受け継ぎつつ、さらにコンパクトで手頃な価格を実現したモデルです。今回はSeestar S30(以下:S30)の実機をお借りし、実際にフィールドに持ち出して使い心地や天体撮影を行いました。Seestar S50(以下:S50)との比較を交えながら、性能や使い心地を詳しくご紹介したいと思います。


使用機材
Seestar S30 スマート望遠鏡


SeestarS30の概要

S30は、スマートフォンやタブレットを用いて操作できる、ZWO社製のスマート望遠鏡です。アプリを通じて天体の自動導入・撮影・画像処理までを一括で行うことができ、初心者でも天体写真撮影を手軽に楽しむことが可能です。本機は、2023年に発売された上位モデルS50の小型・軽量版にあたる位置付けで、三脚を含めた総重量はわずか約1.7kgです。可搬性に優れ、キャンプや遠征撮影など、様々なシーンで扱いやすいのが魅力のスマート望遠鏡です。

S30には、口径30mmの3枚玉アポクロマート屈折望遠鏡が内蔵されています。色収差を抑えた3枚玉のレンズ構成により、小口径ながらシャープでクリアな星像を実現しています。焦点距離は約150mmで、F値はF5.0となっています。撮像センサーには、Sony製IMX662(1/2.8インチ、約200万画素のカラーCMOS)を採用。暗所性能と色再現性に優れ、ライブスタック機能を活用することで、星雲・星団、月面などを高品質に撮影できます。

本体カラーはS50の黒を基調とした外観とは異なり、S30は白を基調としたデザインが採用されています。暗所でも目視で本体の位置を確認しやすく、また高級感のある仕上がりとなっています。

本体下部には3/8インチインチのカメラネジ(太ネジ)が設けられており、付属の三脚のほか、市販のカメラ用三脚にも取り付け可能です。S30は、持ち運び時に便利な専用の耐衝撃キャリングケースに収納されています。さらに、日中の太陽観測に対応するための専用減光フィルターも標準で付属しており、太陽の撮影も可能です。


Seestar S30で天体撮影の手順

通常、天体撮影には望遠鏡本体のほか、赤道儀や撮影用カメラ、PCソフトウェアなど多くの機材と知識が必要ですが、S30はこれ一台で天体の自動導入から撮影、画像処理までを一貫して行えるオールインワンシステムです。


操作も非常に簡単で、スマートフォンまたはタブレットのアプリに従うだけで、初心者でも美しい天体写真を撮影できます。以下に、基本的な手順を紹介します。

撮影手順

1. 設置場所の選定と本体設置:できるだけ視界の開けた場所(周囲に建物や木の少ない場所)にS30を設置します。安定した地面に水平を意識して置くことで、その後のキャリブレーション精度が向上します。

2. アプリのインストール:スマートフォンまたはタブレットに、ZWO公式の「Seestar」アプリをインストールします(iOS / Android対応)。

3. 接続設定:S30の電源を入れ、アプリの指示に従ってWi-Fi経由で本体とスマートデバイスを接続します。初回はファームウェア更新が行われる場合があります。

4. 天体の選択:アプリ内の「天体一覧」や「おすすめ対象」から観測したい天体を選びます。星雲・星団・惑星・月など多彩な天体が登録されています。

5. 自動導入・キャリブレーション:S30が自動的に選択した天体の方向へ回転・仰角を調整し、続けて、内部センサーによるキャリブレーション(姿勢・傾き補正)、オートフォーカス(自動ピント調整)を実行します。

6. 撮影開始とライブスタック:導入と初期調整が完了すると、S30が自動で撮影を開始し、撮影した複数の画像をリアルタイムで「ライブスタック(加算平均)」処理していきます。時間が経過するにつれ、星雲などの淡い天体が次第に画面に現れてくるのが確認できます。

7. 撮影の停止と保存:画面の状態を確認し、満足のいく画像になったところで「露出停止」をタップすると、最終画像がS30本体に保存されます。必要に応じてスマートフォン側に画像を転送することも可能です。


さらに使いこなすために

操作に慣れてきたら、アプリの「詳細設定」から以下のような追加機能を試すことができます(この他にも機能があります):

・露出時間の調整
対象天体に応じた最適な露出設定が可能になります。

・結露防止ヒーターのオン/オフ
湿度の高い夜に結露を防ぐための機能です。

・極軸モードの使用(アップデートにより追加)
より高精度な追尾を行いたい場合に活用できます。


S30で撮影した画像

ここでは、前述の手順に従ってSeestar S30で実際に撮影した天体画像をご紹介します。

上の画像は、オリオン大星雲(M42)、です。月明かりのある条件下での撮影でしたが、S30の高感度センサーとリアルタイムスタック処理により、星雲の中心部から周辺の構造まで、鮮明に描写することができました。スタック時間は約10分です。

次の写真は、おおぐま座に位置するM81とM82のツーショットです。これらは約1200万光年彼方にある銀河ですが、約30分間のスタックで、特徴的な銀河の形状の違いがはっきりと浮かび上がりました。S30の優れた光学性能と画像処理技術によって、コンパクトな機材とは思えないレベルの撮影が可能です。

都会でも撮影を楽しめる光害カットフィルターが内蔵

S30には、光害カットフィルターが内蔵されており、撮影画面でオンオフを切り替えることができます。都会は夜空が明るく星が見え辛いのですが、この光害カットフィルターを使えば、都会の自宅からでも星雲を写し出すことができます。

上は2等星しか見えない都会でS30を使って撮影した亜鈴状星雲の写真です。光害カットフィルターの効果で、亜鈴の形が良く写っています。


太陽や月、風景の撮影も楽しめるS30

星空以外にも太陽や月、夜景や風景などの撮影も楽しめます。特にS30には広角カメラが搭載されているので、広角カメラの画像をファインダー代わりにして構図を合わせて撮影することもでき、S50と比べて使い勝手が向上しています。

上はS30で月を撮影中の画面です。左上の小さな窓に広角カメラの画像が表示されており、これを目安にして、画面のジョイスティックを操作して構図を調整することができます。

なお、太陽を撮影するときは、必ずS30専用の減光フィルターを使用して下さい。減光フィルターを使用しないと、光学系で収束させた太陽の光と熱でセンサーが壊れてしまいますので注意しましょう。


S30とS50の比較

Seestar S30と前モデルであるS50を比較すると、最も顕著なのはその筐体サイズと重量の違いです。S30はS50に比べて一回り以上コンパクトで、重量も約1kg軽量化されており、携帯性が大きく向上しています。これにより、バックパックなどへの収納が容易になり、海外遠征にも持っていきやすくなりました。

内蔵された光学系にも差があります。S50は口径50mm、焦点距離250mm(F5.0)のレンズを採用しています。一方、S30ではコンパクトな口径30mm、焦点距離150mm(F5.0)の光学系に変更されており、軽量化を目指した設計となっています。

撮像センサーにも違いがあります。S50にはSony製IMX462が搭載されていましたが、S30には後継となるIMX662センサーが採用されています。IMX662は暗所性能の向上や、より低ノイズ特性が期待される新しい世代のセンサーです。

S30には新たに広角カメラ(ナビゲーションカメラ)が内蔵されており、構図の確認などに活用できます。単眼構成のS50と比べると、天体導入機能が使えない風景撮影の場面では、S30の方が快適に構図を合わせられる印象を受けました。


S30とS50の撮影画像の比較

下の写真は、S30とS50でそれぞれ撮影したおおぐま座のM101銀河です。S50はS30よりも焦点距離が長いため、同じ天体でもより大きく写っています。このように、視直径の小さな天体を撮影する場合は、拡大率の高いS50の方が適していると言えるでしょう。

一方、視直径の大きな星雲の場合は、S50は画角が狭く星雲の全体像が捉えきれません。下はS30で撮影した、はくちょう座の星雲(メキシコ半島付近)です。S30では星雲の特徴的な部分は構図に収まっていますが、S50で撮影すると一部を拡大する構図になりそうです。


まとめ:S30はコンパクトで使いやすい

今回、実際にSeestar S30を使用してみて、ZWO社のスマート望遠鏡はやはり操作性に優れており、アプリの完成度も非常に高いと感じました。ユーザーインターフェースは直感的で、初めて触れる方でも迷うことなく操作できる設計になっています。ユーザーの要望を丁寧に取り入れて改良を重ねていることがよくわかります。

S30とS50は共通のアプリを使用しているため、操作感はほぼ同一ですが、S30に新たに搭載された広角カメラは構図の確認や導入の補助にとても役立ちました。

光学性能については、口径の差でS50の方が高解像ですが、実際に撮影した画像を比較してみると、S30との差は想像していた程は大きくなく、S30の携帯性や手軽さが際立って感じられました。

S30とS50、どちらを選ぶかはユーザーの用途次第ですが、携行性を重視する方や、旅行・キャンプ・海外遠征などで様々なシーンで撮影を楽しみたい方にはS30が適しています。逆に、視直径の小さい銀河や球状星団といった対象を、少しでも高解像で撮影したい方にはS50がより向いているでしょう。

いずれを選んでも、Seestarシリーズはこれまでの天体撮影のハードルを大きく下げ、誰もが気軽に宇宙の姿を記録できるスマート望遠鏡です。ぜひ、ご自身のスタイルに合った1台を見つけて、スマート天体撮影の世界を楽しんでください。



レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。

ビクセンVSD70SSのインプレッション

ビクセンVSD70SSのインプレッション ビクセンVSD70SSのインプレッション

ビクセンVSD70SS(以下「VSD70SS」)は、天体望遠鏡メーカーの株式会社ビクセンが製造・販売する天体望遠鏡です。VSD70SSは、フラッグシップ望遠鏡VSD90SSのコンパクトモデルとして、2024年10月11日に発売が開始されました。
今回は、VSD70SSのデモ機をお借りし、実際にフィールドに持ち出して天体観望や天体撮影を行いました。VSD90SSとの比較を交えながら、光学性能や使用感を詳しくレビューします。

使用機材
VSD70SS鏡筒 ZWO EAF

VSD70SSの概要

VSD70SSは、口径70mmの天体望遠鏡です。一見すると、初級者向けの80mmクラスの望遠鏡と大差ないように見えますが、その中身はまったく異なります。VSD70SSには、フラッグシップモデル「VSD90SS」の技術を受け継いだ贅沢な光学系が採用されています。


上は、VSD70SSの断面図です。まるで望遠レンズのような、5群5枚のレンズ構成になっています。凸レンズにSDレンズ2枚と高屈折率EDレンズ1枚を使用し、凹レンズには高性能ランタン系ガラスが採用されています。これらのレンズの組み合わせにより、屈折望遠鏡で発生しやすい諸収差を大きく抑え込んでいます。
徹底した収差補正の効果により、天体撮影で気になる軸上色収差と非点収差は非常に少なくなっています。下はメーカーが発表しているスポットダイアグラムですが、フルサイズ周辺まで針で付いたような星像が結ばれています。


撮影可能範囲(イメージサークル)も広く、35ミリフルサイズはもちろん、44×33ミリ中判サイズの最周辺まで鋭い星像が得られます。また周辺光量も豊富で、イメージサークルφ55mm最周辺の光量は90%以上と、周辺減光も少ない天体望遠鏡です。



VSD70SSの外観


VSD70SSのボディは、VSD90SSと同様に白を基調としたシンプルで洗練されたデザインです。フードにはビクセンのロゴがあしらわれており、Vixenのアルファベットロゴは落ち着いたシルバーで仕上げられています。文字の一部が背景の白に溶け込む控えめなデザインが特徴です。



鏡筒径は90mmですが、接眼部が太く設計されているため、全体的に接眼部が膨らんだ独特の形状をしています。なお、VSD70SSの接眼部のリング類は、フラッグシップモデルのVSD90SSと共通です。
VSD70SSの全長は約44cmで、VSD90SSと比べて約16cm短くなっています。さらに、伸縮式フードを縮めると約37cm、接眼アダプターを外せば約30cmまで短縮可能です。このため、カメラバッグにも収納でき、海外遠征などにも持ち運びやすい大きさになっています。



接眼部にはラック&ピニオン式が採用されており、裏側には、VSD90SSと同様のドローチューブ・クランプが設けられています。このクランプは効きが良く、重い機材もしっかりと固定可能です。また、電動フォーカサー「EAF」の固定用ネジも切られており、拡張性にも配慮されています。


VSD70SSは、別売りの鏡筒バンドで固定するVSD90SSとは異なり、鏡筒にデュアルスライドバーを標準装備しています。外観は同社のFL55SSに似た形状ですが、デュアルスライドバーは、ビクセン規格のアリミゾだけでなく、アルカスイス規格のアリミゾ金具にも対応しているため、カメラ雲台への取り付けも可能です。



VSD70SSの写真と星像

ビクセンVSD70SSを郊外に持ち出し、冬の天体を撮影してみました。 撮影に使用したカメラは、35ミリフルサイズセンサーが用いられたAstro6D(キヤノンEOS6D天体改造)です。ASIAIRアプリでオートガイド追尾撮影を行いました。
撮影対象には、オリオン座の定番構図「馬頭星雲とM42」を選びました。下は、カメラのISO感度を1600に設定し、露出時間180秒で撮影した画像を7枚重ね合わせた画像です。星雲がわかりやすいようにコントラストを強調しましたが、フラット補正は行っていません。

元画像を一見した印象では、周辺減光は感じられず、色収差の発生も感じられません。まず、画像の一部を拡大して結像性能を確認しましょう。

上は、馬頭星雲付近を拡大した画像です。贅沢な光学設計のおかげで、色収差は感じられず、星像もシャープです。コントラストも良好で、星雲の構造がはっきり写し出されています。
次に、周辺星像を確認してみましょう。下は、撮影画像の中心と周辺の星像を、ピクセル等倍で切り取った比較画像です。

各部分の星像を確認すると、中心部、35ミリフルサイズ最周辺部共に極めてシャープで、諸収差が良好に補正されていることがわかります。画面全体にわたって非常にシャープなため、パッと見た限りでは周辺部か中心部かわからないほどです。

上は、コントラストを更に強調し、彩度を上げた完成画像です。今回は天候が優れず、撮影時間が限られましたが、更に時間をかければ星雲の淡い部分までしっかりと滑らかに写し出せると思います。周辺減光が少ないため、強調処理時にフラット補正がほとんど不要で、画像処理が非常に楽な鏡筒だと感じました。



デュアルバンドフィルターで都会から撮影

都会の自宅から、デュアルバンドフィルターのアイダスNBZIIと冷却CMOSカメラASI2600MCProを使用して、バラ星雲の撮影を行いました。下は、12枚の撮影画像をコンポジットして現像処理を行った画像です。


フラット補正を行っていない画像にもかかわらず、周辺減光は全く感じられず、星雲のコントラストも優れています。下の画像は、バラ星雲の中心部を拡大したものです。星像も非常にシャープで、色ずれも見られません。都会の空で、2等星がやっと見える星空環境でも、見事にバラ星雲を撮影することができ、VSD70SSの性能の高さを実感しました。

なお、デュアルバンドフィルターは、Hα光とOIII光を通すナローバンドフィルターです。色収差や球面収差の補正が不十分な望遠鏡でデュアルバンドフィルターを使用すると、HαとOIIIでは、焦点を結ぶ位置が異なるため、星が二重ににじんで写ってしまいます。この現象は、EDレンズを使用した高価な望遠鏡でも見られることがありますが、VSD70SSでは発生せず、光学性能の高さを感じました。



レデューサーV0.71xの使用感

VSD70SSには、2024年8月に発売されたレデューサーV0.71xを取り付けることが可能です。このレデューサーを使用すると、焦点距離が273mm、F値が3.9となり、広い写野をハイスピードで撮影することができます。なお、レデューサーV0.71xの詳細についてはレデューサーV0.71xのレビューもご参照ください。
下の画像は、VSD70SSにレデューサーV0.71xを取り付け、35mmフルサイズカメラAstro6Dで撮影したプレアデス星団です。6枚の画像をコンポジットしてコントラストを強調しましたが、フラット補正は実施していません。

直焦点と比較すると、周辺部に若干の減光が見られますが、35mmフルサイズでも十分許容範囲内です。APS-Cセンサーサイズのカメラを使用する場合は、周辺部分がなくなるので、フラット補正なしでも画像処理することができそうです。

星像についても非常にシャープです。上画像は、レデューサー使用時のスポットダイアグラムを示したものです。直焦点時と比較すると星像がわずかに大きくなりますが、100μmスケール内でも鋭い星像であることがわかります。レデューサー使用時でも直焦点時と同様にシャープな星像を得られる、非常に優れた鏡筒と言えるでしょう。



VSD70SSの眼視性能

VSD70SSは撮影性能が注目されがちですが、眼視性能も非常に優れた望遠鏡です。視野中心の多波長ストレール強度は96.7%で、VSD90SSと同等です。これは、観望用としても人気の高い同社の2枚玉EDアポクロマートSD81SⅡの95.7%を上回っており、眼視でも高いパフォーマンスを発揮します。

高い結像性能のおかげで、高倍率で観望しても恒星像は非常にシャープで、焦点内外像の崩れも感じられません。月面を観望した際には、月のリムに色付きはなく、クレーターのエッジも非常に細かく解像しました。惑星の観望には口径不足の感はあるものの、木星の主要な縞模様やガリレオ衛星をシャープに見ることができ、印象的でした。
集光力を考慮すると眼視用の望遠鏡としては少し物足りないかもしれませんが、都会では月面クレーターの観望を楽しむことができ、星空の綺麗な場所では有名なメシエ天体の観望にも適しています。特に、星像が鋭いため、散開星団の観望にも適していると感じました。



VSD90SSとの比較

VSD70SSと上位機種のVSD90SSを比較すると、光学性能においては、VSD90SSの方が口径が約2センチ大きいものの、レンズ構成は共通で、F値もどちらもF5.5です。レデューサーも共用で、レデューサー使用時のF値も同じく3.9となります。
鏡筒のサイズに関しては、フードを縮めた際のVSD70SSのコンパクトさが目を引きます。また、VSD70SSは重さが3.5キロと、鏡筒バンド無しで4.3キロあるVSD90SSに比べて、約1キロ軽いため、軽量な鏡筒を求めている方にはVSD70SSをお勧めします。飛行機で持ち運ぶ際も、VSD70SSなら機内持ち込みも容易でしょう。

眼視観測では、両機とも色収差がほとんどなく、ほぼ完璧な星像を結ぶ光学系です。明るい月を観測した際は、口径の差はほとんど感じられませんでしたが、惑星観測では、口径2センチの違いによる集光力の差がわかり、VSD90SSが有利と感じました。
写真撮影については、どちらの機種も非常に優れた性能を持ち、甲乙つけがたい印象を受けました。焦点距離が異なるVSD70SSの385mmとVSD90SSの495mmでは、画角の広さが異なりますので、ユーザーが撮影したい天体の大きさに応じて選ぶのが良いでしょう。どちらの鏡筒も35mmフルサイズをカバーするイメージサークルがあり、周辺光量も豊富で、性能に不満はありません。



撮影後の印象

今回、VSD70SSを天体観望や天体撮影に使用した印象を、以下に箇条書きでまとめました。

・色収差が少なく、星像も大変シャープ。画像全域にわたって鋭い星像を結び、光の回折により生じる輝星の非軸対称フレアも抑えられている。天体写真で理想とされる星像を結ぶ最新の光学系という印象を受けた。

・星像が鋭いため、VSD70SSの光学性能を生かすには、正確なピント合わせが必要だった。標準付属のピントノブでは、ドロチューブが大きく動いてしまうため、減速装置の付いた「デュアルスピードフォーカサー」や電動フォーカサー「EAF」を是非装備したい。

・周辺光量は非常に豊富で、APS-Cサイズなら周辺減光はほとんど感じられない。そのため、フラット補正が合いやすく、ミラーボックスのケラレが発生しない冷却CMOSカメラなら、フラット補正も必要ないくらいに感じた。

・他のビクセン製天体望遠鏡と比べ、ドロチューブの摺動部分はスムーズで強度も高く感じた。ドロチューブ・クランプの効きも良く、重い撮影機材をしっかりと受け止めてくれた。

・ビクセンの高性能アイピース、HR2.0ミリを接眼部に挿し込み、星像を確認したところ、色収差は感じられず、星像も鋭く、ジフラクションリングも綺麗に見えた。VSD70SSは、写真性能だけでなく、眼視性能も優れた望遠鏡だと感じた。

・標準付属しているデュアルスライドバーは、従来のアリミゾ架台の他、カメラ雲台にも取り付けられるのが嬉しい。ただ、ガイド鏡を取り付けたいなど、鏡筒バンドも用意してほしいという要望もありそうだ。

・レデューサーとの相性も良好で、直焦点の385㎜に加えて、273㎜でも天体撮影を高次元で楽しめる。どちらの焦点距離も星雲星団の撮影に使いやすい画角なので、レデューサーも是非手に入れておきたいと感じた。



初心者の方にもお勧めしたいVSD70SS

VSD70SSを使用してみて、VSD90SS譲りの高性能な光学系が採用されていることを改めて実感しました。口径7センチの天体望遠鏡としては非常に高価ですが、その価格に見合う光学性能を持つ望遠鏡です。撮影性能と眼視性能を兼ね備えた望遠鏡として、同クラスの屈折望遠鏡の中で最高レベルの光学性能を誇るモデルと確信しました。
VSD70SSは、色収差や球面収差を徹底的に抑え込み、周辺光量も豊富な望遠鏡なので、天体撮影を始めたばかりの方でも、画像処理時の色収差や周辺減光に悩まされることなく、レベルの高い写真を撮影することができるでしょう。
以上の理由から、ベテランの方はもちろん、初心者の方にもぜひ使っていただきたい鏡筒です。高価ではありますが、余計な心配をせずに天体撮影を楽むことができると思います。また日本製ならではの優れたアフターサポートもあり、10年、20年と長期間に渡って愛用できるでしょう。


レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。

アイダスGNB フィルターの使用感

アイダスGNB フィルターの使用感

アイダス ネビュラブースターGNB(以下、「GNB フィルター」)は、新しいタイプのデュアルバンドフ ィルターです。GNBフィルターの大きな特色は、通常のデュアルバンドフィルターで透過する可視光域 の波長の光に加えて、近赤外光も透過する点です。今回は、このGNBフィルターを用いて都会で天体を 撮影し、フィルターの効果を確認してみました。


アイダス ネビュラーブースター GNB



GNB フィルターの特性

人間の目が感じることのできる光の波長は380nm~770nm程度で、可視光線と呼ばれています。一般的 に、天体撮影に使用されるフィルターは、この可視光線以外の波長の光をカットする設計になっていま すが、GNBフィルターは、780nm~900nmの波長の光(近赤外光)を透過する設計になっています。

可視光線の波長域に注目すると、GNBフィルターは、星雲が主に輝く波長(OIIIやHα)の光だけを透 す設計になっており、同社のデュアルバンドフィルターであるNB フィルターと同じ特性を持っていま す。つまり、GNB フィルターは、NB フィルターをベースに、近赤外域の光も透過するようにした新し いタイプのデュアルバンドフィルターと言えるでしょう。



近赤外光を通すメリット

天体撮影や電視観望にとって、都市部の光は、天体写真のクオリティを低下させる大きな要因です。昔 は、街灯に水銀灯が多く用いられていたので、水銀灯が発する特定の波長の光だけをカットすれば、光害 の影響を抑えることができました。しかし、現在は、可視光域全体にわたって発光するLEDが街灯に使 われるようになり、従来の光害カットフィルターでは、光害カットの効果を得られにくくなりました。

近赤外域の光に注目すると、銀河や恒星はこの波長域の光も発していますが、LED照明や蛍光灯は、こ の波長域の光はほとんど発していません。従って、近赤外域の光を透過するようにすれば、光害の影響は ほとんど受けずに銀河や恒星を撮影できることになります。 このように近赤外域の光を通すことで光害カットの効果を高めたのが、GNB フィルターです。GNB フ ィルターは、可視光域では光害に強いデュアルバンドフィルターの特性を持ち、連続光で輝く恒星や銀 河のために、光害の影響の極めて少ない近赤外域の光も利用できるように設計されています。



GNB フィルターに適したカメラ

GNB フィルターの性能を最大限に発揮するには、近赤外光の感度の高いセンサーを搭載したCMOS カ メラが必要です。ZWO社製カメラの中では、ASI664MCが近赤外域の受光感度(Relative Response) が比較的近赤外光の感度が高くなっています。

上は、ASI664MC カメラの特性グラフです。横軸は光の波長、縦軸は受光感度を表しており、受けた波 長の光に対して、カメラがどのぐらい反応するかを示しています。ASI664MC は近赤外域の830nm 付 近の光の受光感度が高いことがわかります。 ASI664MC の他に、新しく発売されたASI585MCPRO にも近赤外光の感度が比較的高いセンサーが使 われています。ASI585MCPRO は、センサーサイズが664MC より一回り大きく、冷却機構も付いてい るので、星雲や銀河を本格的に撮影したい方にお勧めのカメラです。



都会で系外銀河を撮影

GNB フィルターを使用して、春を代表する系外銀河、M51 子持ち銀河を撮影しました。使用した鏡筒 は、ビクセンVSD90SS 望遠鏡です。望遠鏡の接眼部に、GNB フィルターをねじ込んだASI664MC を 取り付けて撮影しました。

上は、露出時間300 秒で撮影した24 枚コマを、ステライメージ9 で重ね合わせて強調処理した画像で す。2等星がやっと見える都会の空での撮影ですが、伴銀河もしっかり写っており、銀河周囲に広がる淡 いハロも確認できます(周囲をトリミングしています)。 比較のために、天体撮影によく使用される、可視光だけを透過する光害カットフィルター、IDAS LPSD1 フィルターを使って、同じ機材で同じ対象を撮影したのが、下の写真です。

GNBフィルターと同じ露出時間では、画像が真っ白に飽和してしまったため、約半分の180秒で撮影し ました。ステライメージ9 で同程度のコントラストになるように画像処理しましたが、銀河の淡い部分 の描写はGNBフィルターを使った場合より劣っています。また、写りの悪い画像から強調したため、ノ イズ感も増し、色合いも濁ってしまいました。



星雲の撮影にも好印象

GNB フィルターは、Hα光とOIII 光を通すデュアルバンドフィルターのNB フィルターに、近赤外光 も透過するようにしたフィルターなので、星雲撮影用としても使用することができます。実際に、都会の 自宅で星雲を撮影してみました。

上は、GNB フィルターとASI664MC を使って撮影した、亜鈴状星雲の写真です。鏡筒は、FC-35 レデ ューサー0.66×を取り付けたタカハシFC-100DFを使用しました。 露出時間300秒で撮った画像を10枚重ね合わせて画像処理したものですが、亜鈴星雲の淡い広がりがよ く写っており、コントラストの高い画像を写し出すことができました。 星像が若干大きく感じられるのは、使用した望遠鏡の近赤外域の収差が表れた影響でしょう。同社の NBZIIフィルターに比べると、GNBフィルターの半値幅は少し広いものの、デュアルバンドフィルター としても使うことができる、汎用性の高いフィルターだと感じました。



望遠鏡とGNB フィルターの相性について

市販されている天体望遠鏡は、可視光線の波長の範囲で、色収差や球面収差が発生しないように設計さ れています。しかし、GNB フィルターは近赤外域の光も透過するため、天体望遠鏡の機種によっては、 焦点像が通常よりも甘くなる(ボケたように写る)場合があります。

上は、GNBフィルターを使用し、VSD90SSとFC-100DF(レデューサー使用)で撮影したM51の比較 写真です(1枚画像です)。VSD90SS に比べて、FC-100DF で撮影した方が、星像が大きく、全体的に ボンヤリとしていることがわかります。 可視光域では、両望遠鏡の差はほとんど感じられないので、近赤外域の収差補正の差が表れたのでしょ う。理想を言えば、近赤外域でも収差の少ない反射系の望遠鏡がGNBフィルターに適していると思いま す。



まとめ

都会の街灯がLEDに置き換わるにつれ、都市部の光害の影響はますます大きくなっています。そのよう な中、光害のある自宅でGNBフィルターを撮影に使用してみて、光害カットフィルターの新しい可能性 を感じることができました。 従来の可視光だけを透過する光害カットフィルターと比較すると、GNBフィルターは、可視光ではHα 光とOIII 光のみを通しつつ、近赤外域の光も利用するので、光害カット能力は非常に優秀です。実際、 両フィルターの撮影画像を比べてみると、背景の暗さが段違いでした。 また、NBZII 等のHα光とOIII 光だけを通すデュアルバンドフィルターと比べると、GNB フィルター では、星雲のコントラストは若干落ちるものの、連続光で輝く系外銀河などで自然な色合いを得ること ができます。近赤外域の光を使ってRGBカラーを得られるGNBフィルターの利点でしょう。 GNBフィルターは、近赤外域の光を通すため、光学系との相性の問題はあるものの、光害カットの効果 が高いだけではなく、デュアルバンドフィルターとしても使用することができ、汎用性の高いフィルタ ーだと感じました。天体撮影のフィルターワークを楽しんでいる方に、是非試していただきたいフィル ターの一つです。

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タカハシTPLアイピースのインプレッション

タカハシTPLアイピースのインプレッション

2023年7月、高橋製作所からTPLアイピースが発売開始されました。従来のAbbeアイピースの後継機として開発されたモデルで、見かけ視界約50度のスタンダードタイプです。


タカハシ TPLアイピース




アイピースとは

アイピースとは、天体望遠鏡の接眼部に取り付ける接眼レンズのことです。アイピースには焦点距離が定められており、天体望遠鏡の焦点距離をアイピースの焦点距離で割り算することによって、望遠鏡の倍率が定まります。例えば、口径10cmで焦点距離1000mmの望遠鏡に、焦点距離10mmのアイピースを用いると、100倍の倍率が得られます。

焦点距離が同じアイピースでも、内部に使われているレンズの種類や枚数は様々で、レンズ構成によって視界の広さや見え方が異なります。そのため、目的や好みに合わせて適したアイピースを選ぶことが大切です。

星空観望用なら、視界が広いアイピースが一度に星空を見渡しやすく適しています。眼鏡をかけている方には、アイレリーフが長いモデルが覗きやすくてお勧めです。一方、惑星や二重星の観望なら、中心像のシャープさが重要ですので、視野が50度ぐらいの標準タイプのアイピースが適しています。

今回ご紹介するTPLアイピースは、見かけ視野が48度で、標準タイプに分類されるアイピースです。もちろん、星雲星団の観望にも使用できないことはありませんが、惑星や月面クレーター、二重星の観望に適したアイピースと言えるでしょう。

なお、惑星用アイピースには、エルンスト・カール・アッベが発明したと言われる、オルソスコピックタイプ(オルソ)のアイピースが良く使用されています。現在は、オルソの中でも、アッベが提唱したレンズ構成のものをアッベタイプ、1群と2群に同じレンズ構成を用いたものをプローセルタイプと呼び分けることが多くなりました。


TPLアイピースの特徴

TPLアイピースは、プローセルタイプのアイピースです。光学系には2群4枚のレンズが用いられ、見かけ視界は48度に統一されています。2024年4月現在、焦点距離6mm、9mm、12.5mm、18mm、25mm、33mm、50mmの7種類がラインナップされています。

惑星観望用のアイピースとして、高橋製作所はレンズ4枚構成のAbbeシリーズを販売していました。Abbeシリーズは、従来のタカハシOrアイピースをリニューアルしたモデルで、一定の評価を得ていましたが、少し前に生産が終了し、後継機の登場が待ち望まれていたところです。

待望の後継機となったTPLアイピースは、中心部の色収差がAbbeシリーズの約半分、また、タカハシLEアイピースの約2/3とメーカーはアナウンスしています。上図は視野中心のスポットダイアグラムの比較画像ですが、確かにAbbeシリーズやLEアイピースに比べて色収差が少なく、星像がより中心部分に収束していることがわかります。


アイピースの外観

TPLアイピースは、タカハシロゴ入りのブルーの箱に入っています。箱は補正レンズなどと同様の箱で、アイピースを入れるプラスチックケースさえも付属していないシンプルなものですが、高橋製作所らしいと言えばらしい梱包です。

アイピースの外観は、TPLとブルーで印字されている以外は、ごく普通の国産アイピースと言う印象を持ちました。ただ持つと適度な重さが感じられ、特に高級感を感じるデザインではありませんが、基本に忠実に作られた製品であることが感じられます。

アイピースに取り付けられているゴミ見口も丁寧なつくりで、ユーザーが覗きやすい形に接眼部が作られています。アイピース内部の艶消し塗装も上質で、像のコントラスト向上に一役買っています。

また、個人的に31.7mmバレル部分に抜け止めの溝がないことにも好感を持ちました。アイピースのバレル部分に溝があると、望遠鏡接眼部の形状によっては、アイピースを締め付けられなかったり、中心からずれたりすることがあるので、溝はない方が使いやすいと思います。


恒星像の確認

TPLアイピースを使って、恒星像を確認しました。使用した望遠鏡はMewlon-250CRSとTOA130望遠鏡です。どちらも十分に外気になじませた上で、比較的気流の良い夜に観望しました。

まず最初に、アンドロメダ座α星のアルフェラッツを視野に入れました。ピントを合わせたとき、これまでのアイピースに比べて、恒星の周りのジフラクションリングがはっきり見えるように感じました。

試しに古いビクセンLVアイピースに交換してみると、ジフラクションリングの見え方が明らかに異なります。恒星像もぽってりとして、背景とのコントラストも悪くなり、TPLアイピースとの違いを感じました。

次に、タカハシLEアイピースに交換しました。LEアイピースも優秀なアイピースですが、ピントを合わせたときの恒星像の鋭さはTPLアイピースの方が優れていました。また、ジフラクションリングの第一円もTPLアイピースの方がよく見え、フォーカスが合ったときの鋭さの違いを感じました。特にTOA130との組み合わせで違いがよくわかりました。

アルフェラッツの次に、同じアンドロメダ座のアルマクを視野に導入しました。アルマクは美しい二重星として知られる星ですが、TPLアイピースで見ると、オレンジ色の主星の傍にエメラルドグリーン色の伴星が寄り添い、実に美しい眺めです。ジフラクションリングもはっきり見えて、シャープな星像で二重星の観察を楽しむことができました。


惑星を観望

TPLアイピースの性能を最大限に発揮できるのは、惑星の観望時でしょう。TOA130とMewlon-250CRSとTPLアイピースを使って、天頂で輝く木星を観望しました。

木星を視野に入れたとき、まず感じたのは「像が明るいな」ということです。縞模様のコントラストも良好で、赤道縞の乱れた様子もよくわかります。木星と背景の境目も暗く、宇宙に浮かんだ木星というイメージで見えました。

古いビクセンLVアイピースに交換して比べると、LVアイピースの像は背景が若干白っぽく、木星の周りもうっすらと明るく、コントラストが悪いと感じます。木星の模様のコントラストも低下しており、TPLアイピースと比べると見え方に大きな違いを感じました。

タカハシLEアイピースとも見比べました。LEアイピースもコントラストが高く、真っ暗な宇宙に浮かぶ木星というイメージで見えましたが、木星本体の明るさは、TPLの方がやや明るく見えるでしょうか。また、模様も、TPLアイピースの方が赤道縞の乱れた様子などがよく見える印象を受けました。特にTOA130との組み合わせの時に顕著で、TPLの方が像のシャープネスが高く感じました。

また惑星観望用として評判が高く、惜しくも生産終了になったビクセンHRシリーズのアイピースでも木星を見比べてみました。倍率は異なりますが、どちらもコントラストは良好で背景宇宙も真っ暗です。縞模様もよく見えますが、TPLアイピースの方が見かけ視野が広い分、視界が広く感じられました。評価の高いアイピースとの比較でも、TPLアイピースの性能の高さを感じました。


TPLアイピースのアイレリーフについて

アイレリーフとは、接眼レンズ最終面から全視野がケラレなく観察できる目の位置までの距離のことです。アイレリーフが長いと、接眼レンズから離れていても、全視野を見渡すことができます。

シャープで結像性能が高いTPLアイピースですが、アイレリーフは長くありません。最も高い倍率が得られるTPL-6mmでアイレリーフは4.5㎜、最も低い倍率のTPL-50mmで37mmです。

アイレリーフの短いTPL-6mmでは、全視野を見渡そうと思えば、ゴム見口に目を押し付けるようにして使用する必要があります。一般的に、眼鏡をかけて全視野を見渡すには、アイレリーフが15mm程度は必要と言われていますので、眼鏡をかけてTPL-6mmの全視野を見渡すのは難しいでしょう。

眼鏡が必要な場合は、アイレリーフ13mmのTPL-18mmに、高性能バローレンズ(タカハシ2×オルソバロー等)を組み合わせる方法もあります。販売店に相談しながらベストな組み合わせを選んでください。


まとめ

今回、発売されたTPLアイピースは非常に評判が高く、惑星観望に使うのを楽しみにしていました。実際に使ってみると、確かに評判通りの見え味で、Abbeアイピースをさらに進化させた光学性能という印象を受けました。

今まで様々なアイピースで惑星を見てきましたが、色が暖色系に転ぶことが多く、色の濁りが苦手な私には、不自然に感じることがありました。その点、タカハシのTPLアイピースの像はニュートラルで、一皮むけたような印象を受けました。

TPLアイピースは、現在購入できる惑星や二重星観望用のアイピースの中で、最も高い結像性能を持ったアイピースと言えるでしょう。是非、このアイピースで奥行きのある宇宙の姿をお楽しみください。

レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

ビクセンVSD90SSのインプレッション

ビクセンVSD90SSのインプレッション


ビクセンVSD90SS(以下「VSD90SS」)は、天体望遠鏡メーカーの株式会社ビクセンが製造・販売する天体望遠鏡です。2023年11月30日に発売開始され、ビクセンのフラッグシップ望遠鏡に位置づけられています。

今回は、VSD90SSをフィールドに持ち出し、天体観望や天体撮影を行いました。VSD90SSの結像性能と共に、前機種であるVSD100F3.8(以下「VSD100」)との比較についてもご紹介します。




ビクセン
VSD90SS鏡筒

K-ASTEC
TB115N

K-ASTEC
DP75-187

K-ASTEC
TTP60-117M

K-ASTEC
H35-100

K-ASTEC
DS38-45R-88

ZWO
ASI 2600MC PRO

ZWO
AM5



VSD90SSの概要

VSD90SSは、口径90ミリの天体望遠鏡です。口径だけを見ると、初級者が使用する口径80ミリの望遠鏡を一回り大きくしただけのようですが、望遠鏡の中身は大きく異なり、VSD90SSの望遠鏡内部には5枚ものレンズが使用されています。


上は、VSD90SSの断面図です。まるで望遠レンズのような、5群5枚のレンズ構成になっています。凸レンズにSDレンズ2枚と高屈折率EDレンズ1枚を使用し、凹レンズには新開発の高性能ランタン系ガラスが採用されています。これらのレンズの組み合わせにより、屈折望遠鏡で発生しやすい諸収差を大きく抑え込んでいます。

徹底した収差補正の効果により、天体撮影で気になる軸上色収差と非点収差は非常に少なくなっています。下はメーカーが発表しているスポットダイアグラムですが、フルサイズ周辺まで針で付いたような星像が結ばれています。


撮影可能範囲(イメージサークル)も広く、35ミリフルサイズはもちろん、44×33ミリ中判サイズの最周辺まで鋭い星像が得られる光学系になっています。


VSD90SSの外観

VSD90SSは白を基調としたボディで、フードにビクセンのロゴがあしらわれています。Vixenのアルファベットロゴは落ち着いたシルバーで、文字の一部が背景の白に溶け込んだ、控えめなデザインです。


VSD90SSの全長は約60センチで、前機種のVSD100に比べて10センチほど長くなりました。しかし、鏡筒フードを取り外しできるようになり、取り外すと約40センチまで短くなります。VSD100より可搬性が高まったと言えるでしょう。

接眼部は、ラック&ピニオン式が採用されています。ヘリコイドフォーカサーが採用されていたVSD100は望遠レンズのような外観でしたが、VSD90SSは天体望遠鏡らしい外観に変わりました。ラック&ピニオン接眼部の裏側には、ドローチューブクランプが設けられています。ビクセンの天体望遠鏡では初めての試みで、重い機材もしっかり固定できるようになりました。


VSD90SSの発売と同時に、VSD90SSに適合する鏡筒バンド「VSD鏡筒バンド115S」も発売開始されました。シングル型の鏡筒バンドで、VSD90SSに合わせると美しくマッチします。


VSD90SSの写真と星像

ビクセンVSD90SSを郊外に持ち出し、春の天体を撮影してみました。 撮影に使用したカメラは、ZWO社のAPS-Cサイズの冷却CMOSカメラASI2600MCProです。ASIAIRアプリでオートガイド追尾撮影を行いました。

撮影対象には、春の有名な系外銀河「M81とM82銀河」を選びました。下は、カメラのゲインを100に設定し、露出時間300秒で撮影した画像です。銀河がわかりやすいようにコントラストを強調しましたが、ダーク補正は行っていません。


元画像を一見した印象では、周辺減光は感じられず、色収差の発生も感じられません。まず、画像の一部を拡大して結像性能を確認しましょう。


上は、M81銀河を拡大した画像です。贅沢な光学設計のおかげで、色収差は感じられず、星像もシャープです。コントラストも良好で、M81銀河がはっきり写し出されています。

次に、周辺星像を確認してみましょう。下は、撮影画像の中心と周辺の星像を、ピクセル等倍で切り取った比較画像です。


各部分の星像を確認すると、中心部、APS-C最周辺部共に極めてシャープで、非点収差が良好に補正されていることがわかります。右下の星像が若干流れているのは、カメラのスケアリングの調整不足のためでしょう。画面全体にわたって非常にシャープなため、パッと見た限りでは周辺部か中心部かわからないほどです。


最後に、10枚画像を重ね合わせて画像処理後、銀河部分をトリミングした作例を掲載します。VSD90SSは色収差が良好に補正されているので、画像を強調しても星の色付が気になりません。また周辺光量が豊富なので、フラット補正を施さなくても作品に仕上げることができました。


VSD90SSの眼視性能

VSD90SSは撮影性能ばかりがクローズアップされますが、VSD90SSの視野中心は多波長ストレール強度96.7%と、同社の2枚玉EDアポクロマートSD81SⅡの95.7%を上回り、眼視性能も優れた望遠鏡です。


高い結像性能のおかげで、高倍率で観望しても恒星像は鋭く、焦点内外像も綺麗です。月面を観望しましたが、月のリムに色付きなどは感じられず、クレーターのエッジもよく解像しました。惑星の観望には少々口径不足の感がありますが、土星の環のエッジがシャープに見えたのが印象的でした。

非点収差が良好に補正されているので、広角アイピースと組み合わせて星空観望に使うのも面白いでしょう。少々贅沢ですが、星雲や星団の観望用としてもお勧めできる望遠鏡だと思います。


ただ、VSD90SSに付属している2インチアイピース用のVSD60.2-50.8アダプターは、接眼部に挿入する方式で使いにくく、いただけません。アダプターの内径の精度も低いようで、2インチアイピースを差し込んでも、アイピースがグラついてしまいます。せっかくのフラッグシップ機ですので、この点は改善してほしいところです。


VSD100F3.8との比較

VSD90SSと前機種のVSD100を比べると、光学性能の上では、VSD100の方が口径が約1センチ大きく、F値もVSD90がF5.5のところ、VSD100はF3.8とVSD100の方が約1段明るくなっています。

実際に撮り比べてみると、VSD100の方が、光学系が明るい分、露出時間が短く済みます。しかし、星像はVSD90SSの方がシャープで、系外銀河などを撮影すると、得られる画像の解像力の違いを感じました。


上画像は、ASI2600Mカメラを使用してVSD100とVSD90SSで撮影した、オリオン大星雲の写真の一部拡大画像です。見比べると、VSD90SSで撮影した画像の方が、星雲のディテールがよく写っており、星像も小さく鋭くなっています。

また、眼視性能でも違いが感じられました。VSD100で恒星像を見ると、VSD90SSと比べて鋭さに欠け、高倍率での観測は不向きです。もっともVSD100は、元々明るさ重視の光学設計で、眼視には向かないと発表されているため、この点については仕方ないでしょう。

周辺光量についても、VSD90SSはVSD100を上回っています。両望遠鏡を併用してみて、VSD90SSは、VSD100の光学設計を見直し、より一段、性能を高めた改善モデルだと感じました。


撮影後の印象

今回、ビクセンVSD90SSを天体観望や天体撮影に使用した印象を、以下に箇条書きでまとめました。


・色収差が少なく、星像も大変シャープ。画像全域にわたって鋭い星像を結び、光の回折により生じる輝星の非軸対称フレアも抑えられている。天体写真で理想とされる星像を結ぶ最新の光学系という印象を受けた。

・星像が鋭いため、VSD90SSの光学性能を生かすには、正確なピント合わせが必要と思われる。標準付属のピントノブでは、ドロチューブが大きく動いてしまうため、減速装置の付いた「デュアルスピードフォーカサー」や電動フォーカサー「EAF」を是非装備したい。

・周辺光量は非常に豊富で、APS-Cサイズなら周辺減光はほとんど感じられない。そのため、フラット補正が合いやすく、ミラーボックスのケラレが発生しない冷却CMOSカメラなら、フラット補正も必要ないくらいに感じた。

・他のビクセン製天体望遠鏡と比べ、ドロチューブの摺動部分はスムーズで強度も高く感じた。ドロチューブクランプの効きも良く、重い撮影機材をしっかりと受け止めてくれた。ただ、2インチアダプターは使いにくいので、是非、改善してほしい。

・ビクセンの高性能アイピース、HR2.0ミリを接眼部に挿し込み、星像を確認したところ、色収差は感じられず、星像も鋭く、ジフラクションリングも綺麗に見えた。VSD90SSは、写真性能だけでなく、眼視性能も優れた望遠鏡だと感じた。

・星像が鋭いので、温度変化によるピントズレには敏感だが、他社製の高性能天体望遠鏡(FSQ-106ED等)に比べると、ピント位置の変化が若干マイルドに感じた。

・VSD90SS鏡筒バンド115Sは、軽量で取り回しが良い一方、個体差かもしれないが、一杯に締め付けても締め付け力が若干弱いように感じる。撮影用途なら、支持幅を広げられる、K-Astecの鏡筒バンドシステムの方が、固定力や安定感の点で優れていると感じた。

・CP+2024でVSD90SS専用のレデューサーが発表されたが、眼視性能が良いだけに、是非エクステンダーも発表してほしい。補正レンズが揃えば、マルチに楽しめる一本となるだろう。


まとめ -VSD100ユーザーとして-

VSD100ユーザーとして、VSD90SSは、プロトタイプが展示された頃から気になっていました。口径と明るさは一段小さく、暗くなりましたが、VSD100についてメーカーに改善をお願いしていた点を最大限改良した鏡筒ということで発売を楽しみにしていました。

今回、実際に撮影等に使用して、VSD100で気になっていた点が全て改善されていること、星像も一段とシャープになり、完成度の高い鏡筒に仕上がっていることを確認できました。正直、ここまでの性能の望遠鏡になるとは思っていなかったほどです。

VSD90SSは、贅沢な光学系を採用しているため、口径9センチの望遠鏡としては非常に高価です。しかし、撮影性能と眼視性能を兼ね備え、撮影用として高レベルな作品も期待できる、頼もしい一本と言えるでしょう。

現在、市場で入手できる屈折式望遠鏡の中で、VSD90SSは最高レベルの光学性能を持った撮影用鏡筒の一つと断言できます。是非、ビクセンの新しいフラッグシップ機、VSD90SSを手に取って、その性能を体感してみてください。

レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

ビクセンSX2赤道儀WLリミテッドのインプレッション

ビクセンSX2赤道儀WLリミテッドのインプレッション

ビクセンSX2赤道儀WLは、自動導入機能搭載のワイヤレスユニット(WL)を付属した赤道儀です。ビクセンのラインナップの中では比較的廉価なモデルになりますが、SXD2と同じステッピングモーターを採用するなど、中身は本格的な仕様になっています。

このSX2赤道儀WL(以下「SX2赤道儀」)にKYOEI特別仕様を施したSX2赤道儀WLリミテッドが登場しました。望遠鏡取り付け部分を高剛性のヘッドに換装するなど、使いやすさを高めたモデルです。今回は、このSX2赤道儀WLリミテッド(以下「SX2リミテッド」)を使って天体観測や天体撮影を行い、そのポテンシャルを探ってみました。

SX2赤道儀について


SX2赤道儀は、以前販売されていたSX赤道儀(スフィンクス赤道儀)の後継機種として、2014年に発表されました。SX赤道儀は、天体ナビゲーション用のSTARBOOKを付属しており、天体観望ファンには一定の評価を得ていましたが、DCモーターを使っていたためパワーが不足しがちで、天体写真撮影には使いづらいという声もありました。

そこで、SX2赤道儀には、上位機種に用いられていたステッピングモーターを採用し、ベアリングの数もSX赤道儀の1個から5個に増やして、天体撮影にも使いやすいモデルに進化しました。

発売開始当初は、上位機種のSTARBOOK TENコントローラーではなくSTARBOOK ONEハンドコントローラー(上画像)が付属していたため、自動導入ができませんでした。しかし現在はSX2赤道儀にもワイヤレスユニット(WL)が付属し、上位機種と同じように、スマホのアプリから自動導入することができます。

SX2赤道儀とSX2リミテッドとの違い

SX2赤道儀とSX2リミテッドの大きな違いは、望遠鏡を取り付ける架頭部分です。


上は、架頭部分の比較写真です。左がSX2赤道儀で、右がSX2リミテッドです。SX2赤道儀の架頭にはアリガタプレートを受けるアリミゾ金具がありますが、SX2リミテッドの架頭にはありません。その代わり、プレートに、他社製のアリガタ金具などを固定できるネジ穴が切られており、ビクセン規格以外の他社製のアリミゾ金具も取り付けることができます。

下画像は、K-Astec製のアルカスイス/ビクセン規格両用のアリミゾDS38/45R-88をリミテッド仕様に取り付けたところです。アルカスイスとビクセン規格のどちらのアリガタも取り付けられる便利なアリミゾ金具で、SX2リミテッドの架頭はユーザーの幅広いニーズに対応できるようになっています。


また、SX2リミテッドの架頭は大径のボールベアリングを2個内蔵しており、強度や滑らかさの点でSX2赤道儀より優れています。実際に使ってみるとこの違いは大きく、赤緯方向のバランスをとりやすいなど、使い勝手も向上しています。

さらに、SX2リミテッドには、3.7キロと1.0キロの2種類のバランスウェイトと延長シャフトが付属しています。SX2赤道儀には1.9キロのバランスウェイトが一つ付属しているだけなので、望遠鏡を載せるにはウェイトを買い足す必要がありますが、SX2リミテッドでは、付属のウェイトと延長シャフトを組み合わせるだけで、軽い機材から重い機材まで搭載することができます。

なお、SX2赤道儀、SX2リミテッド共に、赤道儀の極軸を合わせるための極軸望遠鏡はオプション設定です。極軸合わせの方法はいくつかあるので、極軸合わせの方法のページをご覧いただき、やりやすい方法で合わせてください。今回は、KYOEIオリジナルの照明装置付極軸望遠鏡 AP/SX赤道儀用を使って極軸を合わせました。

SX2赤道儀の操作

SX2赤道儀の操作は、専用アプリ「STAR BOOK for Wireless Unit」をインストールしたスマートフォンやタブレット端末で行います。


まず、SX2赤道儀の端子に付属のワイヤレスユニットを取り付け、DC12Vの電源ケーブルを赤道儀本体の電源入力端子につなぎます。赤道儀の電源を入れると、ワイヤレスユニットから電波が発せられるので、それをスマホやタブレットと接続し、アプリで操作します。操作方法の詳細はワイヤレスユニットの使用方法にまとめていますので、そちらをご覧ください。

自動導入ができると、天体観望や天体撮影時の負担がかなり軽減されます。自動導入の操作や機能はAXD2赤道儀やSXD2赤道儀といった上位機種と全く同じですので、それらのユーザーならすぐに使いこなせるでしょう。

天体観望時の使い心地

SX2赤道儀に同社の屈折望遠鏡ビクセンED103S(SD103SIIの旧モデル)を載せて、木星を観望してみました。 ED103Sの本体重量は、約6.3キロです。SX2リミテッドに付属している2つのバランスウェイトと延長シャフトを使うと、バランスにまだ余裕があります。10キロ程度の機材でも十分バランスが取れそうです。

ED103Sは鏡筒が長く、決して小さな望遠鏡ではありませんが、自動導入時の赤道儀の動きはスムーズで、恒星でアライメントを行った後に木星を選ぶと、視野ほぼ中央に木星をとらえることができました。

200倍前後の倍率で木星を観望しましたが、気流の揺らぎは感じられるものの、振動などは感じられません。この夜は冬にしては気流が安定していたようで、木星の縞模様も綺麗に見えました。


また、SX2赤道儀に本体重量約1.5キロのビクセンFL55SSを搭載してみたところ、SX2リミテッドに付属の1キロのウェイトでバランスが釣り合いました(上画像)。リミテッド付属の2つのウェイトとシャフトを使えば、小型の望遠鏡からSX2赤道儀の搭載能力いっぱいの機材まで幅広く対応できるでしょう。

天体撮影時の使い心地

SX2リミテッド赤道儀に載せたED103Sに冷却CMOSカメラASI2600MCProを取り付け、天体撮影を行いました。ED103Sには、天体撮影用の補正レンズ「SDレデューサーHDキット」を使用し、口径40ミリのガイド鏡を赤道儀に同架して撮影しました。

上が、これらのセットで撮影した、オリオン座の馬頭星雲の写真です。8分露出した画像を10枚重ね合わせ、ステライメージ9でコントラストを高めています。

8分という比較的長めの露光時間でしたが、ガイドエラーは発生せず、どのコマも星はほぼ真円に写りました。下はオートガイド中のグラフですが、修正動作も問題なく実行されています。

馬頭星雲のディテール描写も良好で、さらに時間をかけてじっくり撮影すれば、迫力のある馬頭星雲の写真に仕上げることができそうです。

上位機種と比べてみて

SX2赤道儀の上位機種であるSXD2赤道儀は、ロゴが異なるだけで、外観はSX2赤道儀とほぼ同じですが、赤経赤緯の回転軸をアルミ軽合金から肉厚のスチール材に変更するなど、剛性を高めています。SX2赤道儀とSXD2赤道儀は、購入を比較検討する方も多いと思いますので、2つを使用した印象を比べてみました。

まず持ち運びの点ですが、SX2赤道儀の重量は7キロ、SXD2赤道儀は9.2キロです。2キロの違いですが、実際に持った時の印象はかなり違います。SX2赤道儀は、三脚から取り外す時も扱いやすく、持ち運びも苦になりませんが、SXD2赤道儀はずっしり感があり、三脚と取り外す時は負担感がありました。

観望や撮影では、SXD2赤道儀の方が重量がある分、安定感があります。しかし、ED103Sを使った撮影では、SX2赤道儀について、特にガイドエラーが大きく不安定といった印象は受けませんでした。架台の軽さが気になる場合は、三脚にストーンバックなどを付けて下方向の重量を足してやれば、安定感が増すと思います。

もちろん、耐荷重は異なるため、口径10センチを超えるSD115SS屈折望遠鏡R200SS反射望遠鏡を載せるなら、SXD2赤道儀が良いでしょう。逆に言えば、口径の小さな望遠鏡であれば、SX2赤道儀の方が軽くて扱いやすいので、気軽に観望や撮影を楽しめると思います。

SX2リミテッドは一つの有力な選択肢に

SX2赤道儀が発売開始されたときは、付属のハンドコントローラーでは自動導入もできず、あまり魅力を感じませんでしたが、現在は上位機種と同じワイヤレスユニットが標準装備され、有力な選択肢の一つになりました。

SX2リミテッドはそこに、3.7キロ+1.0キロのウェイトと延長シャフトを組み合わせ、SX2赤道儀の搭載性能をフルに発揮できるようにしました。

また、評価の高いSXP用架頭部分を採用した点もメリットです。昔に比べれば、SX2赤道儀の架頭の赤緯軸の動きもスムーズになりましたが、やはりベアリングを使用したSXP用架頭とは滑らかさが違います。アリミゾ金具が別途必要なりますが、SX2リミテッドの架頭の方が快適に使えるでしょう。

まとめ

SX2赤道儀の使用感は想像していたより良好で、口径10センチの天体望遠鏡を載せて天体観望や撮影を楽しむことができました。上位機種と同じモーターやワイヤレスユニットを採用している点が大きいのでしょう。 SX2リミテッドでは、赤緯軸周りの剛性も向上し、SXP赤道儀とほぼ同じような操作感が得られました。所有しているSXP赤道儀(11キロ)より4キロほど軽く、持ち運びしやすいので、今後はSX2リミテッドを遠征時のサブ機に使いたいと思ったほどです。 最近、ZWO社のスマート望遠鏡Seestarや電視観望をきっかけとして、天体写真に興味を持つ方が増えてきています。SX2リミテッドは、このような「これから天体撮影を始めてみたい」という方にとって、大きな選択肢の一つになると感じました。

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ビクセンSD103SIIのインプレッション

ビクセンSD103SIIのインプレッション


ビクセンの2枚玉SDアポクロマート望遠鏡SD103Sが、2023年6月にリニューアルされ、SD103SIIになりました。更に完成度の高まったSD103SIIを観望や実写に用い、使用感を確認してみました。
なお、前モデルであるSD103Sは、その前のモデルであるED103Sの接眼部を変更したものであり、最新モデルのSD103SIIは、SD103Sの対物レンズのスペーサーを変更したモデルです。そこで今回は、ED103Sのレンズスペーサーと接眼部を交換し、SD103SIIと同等の性能になったものを使ってテストしました。


対物レンズのリングスペーサー

屈折望遠鏡の対物レンズには、性質の異なる2枚のレンズが用いられており、この2枚のレンズの間に、スペーサーとして錫箔が挟まれています。

前モデルのSD103Sやその前のED103Sには、錫箔の小切片がレンズ外周部に3枚配置されていました。この小切片は、下画像のように対物レンズ有効径内に飛び出していたため、レンズに光が入射すると、回折により星像の周囲に放射状の欠けが生じました。

リニューアルされたSD103SIIでは、3枚の小切片がリング形状のスペーサーに変更され、対物レンズを遮らないように改善されました。

上画像は、リング形状スペーサーに交換後のレンズです。対物レンズへの飛び出しが無くなり、レンズがすっきりしました。


眼視で感じた星像の違い

光害のある自宅前で、リングスペーサーに変更されたSD103SIIを用いて木星を観望してみました。幸いこの日は気流が良く、縞模様がよく見えました。あくまで個人的な印象ですが、リングスペーサーに交換する前と比べて、縞模様のコントラストが向上したように感じました。

次に、恒星や二重星を用いて星像を確認しました。まず、アンドロメダ座α星のアルフェラッツを視野に入れました。

高倍率で見ると、錫箔が飛び出していた時は、星の外周部分にスパイダーの回折光のような突起が発生していましたが、SD103SIIでは改善され、滑らかになりました。また焦点内外像でも切れ込みがなくなり、星像が一段と引き締まった印象を受けました。

続いて、美しい二重星として知られるアンドロメダ座のアルマクを視野に入れます。2等星の主星と5等星の伴星が、オレンジとエメラルドグリーンに輝きながら寄り添っている姿がシャープに見え、色合いの違いもよくわかりました。

撮影画像で確かめた星像の違い

次に、SD103SIIと冷却CMOSカメラASI2600MCProを使って、明るい星をテスト撮影してみました。

下は、撮影した画像の全体像と、はくちょう座γ星の部分を拡大した画像です。

リングスペーサー交換前の鏡筒では、輝星の周囲に放射状の欠けが発生していましたが、リング形状スペーサーになったSD103SIIでは、星の周りに欠けは発生せず、星像が改善されていることが撮影画像からも確認できました。


SD103SIIで天体撮影

SD103SIIとZWO社の冷却CMOSカメラ ASI2600MCProを使用して、アンドロメダ大銀河を撮影しました。SD103S望遠鏡には、撮影用の補正レンズ「SDレデューサーHDキット」を使用しました。

上が撮影した画像です。8分露出した画像を8枚重ね合わせて、ステライメージ9でコントラストを高めています。

アンドロメダ大銀河の腕の部分も良く写っており、暗黒帯のディテール描写も良好です。また、明るい星にも回折による欠けは発生しておらず、銀河の周りの暗い星々もスッキリと綺麗に感じます。解像感も高く、露出時間をさらに増やせば、迫力のある写真に仕上がりそうです。



10センチ屈折は天文ファンのスタンダード

口径10センチクラスの屈折式望遠鏡は、国内外のメーカーから様々な機種が発売されています。特にF7クラスの2枚玉アポクロマート屈折望遠鏡は、オールマイティに使える天体望遠鏡として、天文ファンに根強い人気があります。

国内メーカーでは、高橋製作所がFC-100Dシリーズを発売しています。鏡筒径やF値を変えて、眼視用や写真用に3種類もラインナップしていることからも、10センチクラスの2枚玉アポクロマート天体望遠鏡の人気が高いことがうかがえます。

口径が10センチになると、天文入門者用の8センチクラスと比べて集光力に余裕があるので、倍率を上げることができ、惑星の模様もよく見えるようになります。それ以上の口径になると、一気に価格が上がり、望遠鏡も大きく重くなるので、扱いやすさの点でもバランスの取れた大きさでしょう。

基本に忠実なSD103SII

ライバル機の多い口径10センチクラスの望遠鏡の中で、ビクセンSD103SIIは、ED103Sの頃から安定した人気を集めてきました

長く人気を保ってきた理由は、基本に忠実に作られた製品だからでしょう。795mmという焦点距離は、今の時代としては少々暗めの設定ですが、高倍率を得やすく、惑星や月の観望に適しています。 撮影時の補正レンズとして、SDレデューサーHDキットも用意されており、これを使用すれば、焦点距離は624mmまで短縮され、F値も6.1まで明るくなります。このように本格的な天体撮影にも対応できるオプションが揃っている点も魅力です。



まとめ

今回のテストにより、SD103SIIはより完成度を高めた望遠鏡であることが確認できました。

撮影時の星像だけでなく、眼視時にも星像の周りのジフラクションリングの欠けがなくなり、前モデルに比べて星像に不自然さがなくなったと感じます。

今回のリニューアルによって、SD103SIIは、天体観測から本格的な天体撮影まで、幅広く使える望遠鏡になったと言えるでしょう。

上述の通り、口径10センチの天体望遠鏡は使い勝手が良く、一本は手元に置きたい望遠鏡です。ビクセンSD103SIIは、様々な楽しみ方ができる有力な候補になると思います。

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ビクセン ワイヤレスユニットの概要と使い方

ビクセン ワイヤレスユニットの概要と使い方


ビクセンのワイヤレスユニットは、同社製の赤道儀を無線で制御できるコントローラーユニットです。半導体不足の影響で一時は受注停止していましたが、受注再開後、徐々に人気が高まってきました。今回はワイヤレスユニットに興味を持ちつつも、使用したことがない方向けに、ワイヤレスユニットの概要や使い方をご紹介します。

コンパクトなワイヤレスユニット

ワイヤレスユニット本体は、従来のSTARBOOK TENコントローラーに比べると、液晶画面やボタンなどがないため、非常にコンパクトです。

ワイヤレスユニットは、ケーブル接続が必要だったSTARBOOK TENコントローラーと異なり、赤道儀に直接取り付けることができます。電源は赤道儀から供給されるので、別途電源を用意する必要はありません。注意すれば、赤道儀に取り付けたまま遠征に持ち出すこともできるでしょう。
ワイヤレスユニット本体には、LEDアクセスランプと、SBIG社製オートガイダーに準拠したオートガイダー端子が設けられています。

スマホアプリ STAR BOOK Wireless

ワイヤレスユニットを動かすには、スマホアプリ STARBOOK Wireless(以下「ワイヤレスアプリ」)をインストールしたスマートフォンかタブレットが必要です。 ワイヤレスアプリは無料で、各スマホのアプリストア又はビクセン公式サイトのQRコードを読み取ってダウンロードすることができます。


ワイヤレスアプリは、従来のSTARBOOK TENコントローラーに似た操作感になっています。ビクセンのSTARBOOK TENユーザーなら、違和感なく使用できるでしょう。初めての方は、以下の説明を読みながら動かしてみてください。

ワイヤレスユニットの初期設定と接続方法

ワイヤレスユニットとワイヤレスアプリを使って、天体導入を行う手順をご紹介します。まずは初期設定と接続方法です。ワイヤレスアプリのバージョンは、Ver1.4.2の画面で紹介しています。

ワイヤレスユニットを赤道儀に接続

赤道儀にワイヤレスユニットを取り付けましょう。固定ネジを締めて取り付けが完了したら、赤道儀の電源を入れてください。

ワイヤレスアプリを立ち上げる

スマホにインストールしたワイヤレスアプリを起動します。起動すると、ワイヤレスユニットの接続画面が表示されます。スマホがインターネットに接続している場合は、彗星軌道要素ファイルのダウンロードが可能です。


ワイヤレスユニットとスマホを接続

「次へ」のボタンをタップすると、スマホのWifi設定画面が開きますのでワイヤレスユニットを接続しましょう。


ワイヤレスユニットのSSIDは「VixenWirelessUnit????(「????」は4桁の数字)です。パスワードの初期値は「1234567890」です。
ワイヤレスユニットをスマホに接続できた場合は、以下のように「接続完了」という表示に変わります。


架台の設定

「接続完了」ボタンを押すと、架台の画面に切り替わります。ワイヤレスアプリを初めて使用する場合は、左下の「設定」ボタンを押して、アプリや架台の設定を行いましょう。


設定画面では、星図の表示モードや架台の詳細設定が可能です。天体を撮影する場合は、架台の詳細設定画面を開き、極軸、オートガイドの補正値を変更しておきましょう。おすすめの設定は、赤道儀の極軸合わせ「合わせている」、補正値「0.5倍」です。


設定が終わったら、最初の画面に戻って「前回の設定を使用する」を押すと、次回からその設定でワイヤレスアプリが立ち上がります。
なお、架台の設定は、星図画面からいつでも呼び出せるので、どのような設定がよいか迷う場合は一旦デフォルトで使ってみるとよいでしょう。

赤道儀の操作

ワイヤレスアプリの星図は、ピンチアウトで拡大したり、縮小したりすることができます。また画面右のスライダーでも拡大縮小が可能です。
赤道儀の移動は、タッチ&スライドで操作します。指で画面をスライドした方向に赤道儀も動きます。


赤道儀を大きく動かしたいときは、星図を縮小してスライド。少しだけ動かしたいときは、星図を拡大してスライドするとよいでしょう。
また、星図の上で、SCOPE MODEとCHART MODEを切り替えることができます。SCOPE MODEでは星図と望遠鏡の動作がリンクするので、赤道儀を動かすときは、SCOPE MODEで操作します。

自動導入の方法 その1

画面下に表示されている天体選択のアイコンを押すと、天体の一覧が表示されます。希望する天体を選択すると、「○〇を導入しますか」というダイアログボックスが表示され、OKを押すと自動導入が始まります。


導入速度は、架台の詳細設定の導入速度の項目で変更することができます。なお、赤道儀によって最大速度は変わりますので、その点は注意しましょう。

自動導入の方法 その2

CHART MODEにすると、星図と望遠鏡のリンクが外れるので、赤道儀を動かすことなく、自由に星図を動かすことができます。


星図上で天体を自動導入する際は、CHART MODEで目的の天体を探します。目的の天体が入るよう視野円を移動し、星マークを押しましょう。視野円内にある天体が表示され、目的の天体の名称を押すと自動導入が始まります。
なお、視野円内にワイヤレスアプリに登録されている天体がない場合は、天体名は表示されません。その場合は、星図中心を選ぶと、表示されている視野円の中心が導入されます。

アライメント

特に初めて自動導入を行った場合、実際に天体望遠鏡が向いている方向と、星図上に表示された円の中心がずれてしまうことがあります。

その時は、天体望遠鏡を覗きながら、タッチ&スライドで赤道儀を動かし、自動導入した天体を望遠鏡の視野中央に導きましょう。その後、右上の「ALIGN」ボタンを押すと、ワイヤレスアプリが位置を補正し、アライメントされます。一度アライメントを行えば、次回からは正確に自動導入できます。
なお、アライメントした天体の数は、画面右上のALIGNに表示されます。

LOCKについて

画面上に、「LOCK」ボタンがあります。「LOCKボタン」を押すと、タブレットやスマホ画面に不用意に触ってしまっても、赤道儀は動きません。

撮影中に赤道儀が動くと、星が流れて写ってしまうので、撮影中はLOCKするようにしましょう。

ワイヤレスユニットの通信について

発売当初、ワイヤレスユニットとスマホのWifi接続が切れやすいという声がありました。Wifi接続が切れると、赤道儀を操作することができません。しかしその後、ワイヤレスアプリのアップデートによって問題は改善され、現在は接続が安定するようになったようです。
実際に使用したところ、赤道儀から数mスマホを離しても通信は途絶えませんでした。また、車の横に設置した赤道儀を、車内から操作することもできました。


以前は、一晩中撮影していると、スマホを遠く離したわけでもないのに、接続が切れてしまうことがありましたが、アップデート以降は、切れてしまうこともなくなりました。
万一、ワイヤレスアプリやワイヤレスユニットのアップデート後も接続が安定しない場合は、スマホの機内モードへの変更やワイヤレスアプリのチャンネル変更をメーカーは推奨しています。Wifiが切れる場合は、このような方法も試してみましょう。
なお、Wi-Fi接続が不安定な場合や切れてしまった場合でも、ワイヤレスユニットの電源をOFFにしない限り、赤道儀側の追尾は継続されているので、大きな実害はないでしょう。実際、一度通信が切れてしまった時も、オートガイド撮影は問題なく成功していました。

ASCOMドライバーについて

2023年春、ワイヤレスユニットのASCOMドライバーが公開されました。ASCOMドライバーは、メーカーWebサイトからダウンロードすることができます。ASCOMドライバーを使用すると、ワイヤレスユニットをパソコンで接続し、操作できるようになります。
早速パソコンにインストールし、星空シミュレーションソフト、ステラナビゲーター10で使用してみました。


まず、ワイヤレスユニットとパソコンをWifi接続し、ステラナビゲーター10を立ち上げます。ステラナビゲーター10の望遠鏡コントロール画面を開き、ASCOM→ビクセン ワイヤレスユニットを選択してプロパティを押すと、下のようなセットアップ画面が表示されます。


セットアップ画面右上のコネクトボタンを押すと、ワイヤレスユニットを接続することができます。
接続後は、通常の赤道儀と同じように自動導入が可能です。天体撮影ソフトのステラショット2でも動作を確認できました。2023年8月現在、公開されているのは試作段階のβ版ですが、正規版が登場すれば、パソコンでも便利に使えるようになるでしょう。

最後に

ワイヤレスユニットは、発売当初はWifi接続が不安定でしたが、ファームウェアとアプリのアップデートを経て、現在は安定して接続できるようになりました。
STARBOOK TENコントローラーに比べてコンパクトで、ケーブル接続も不要なため、身軽に郊外に持ち出してタブレットやスマホで操作できるため、大変便利です。是非、ワイヤレスユニットを使った快適な天体観望や撮影をお楽しみください。

レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

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