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天体望遠鏡や本格双眼鏡、 天体観測・バードウオッチング機材の製造・販売。協栄産業株式会社。昭和34年創業。

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ラセルタ モーターフォーカスのインプレッション

ラセルタ モーターフォーカスのインプレッション

ラセルタ モーターフォーカス

ラセルタモーターフォーカス(以下:ラセルタMFOC)は、 M-GENスーパーガイダーでお馴染みの「Lacerta(ラセルタ)」が製造している電動フォーカサーです。 今回、タカハシのε-130DFSQ-85EDラセルタMFOCを取り付けて撮影する機会を得ましたので、 ラセルタMFOCの概要と使用した印象をレビューにまとめました。


ラセルタMFOCについて

天体撮影用の電動フォーカサーには、大きく分けて、フランジ型の製品と、 望遠鏡のドロチューブ機構に取り付ける、ラック&ピニオン型の2種類があります。 ラセルタMFOCは後者のタイプで、下の写真のように、望遠鏡のピントノブを外した部分に、 付属アダプターを使ってモーターを固定し、コントローラーでこのモーターを回転させてピントを合わせます。

ラセルタ モーターフォーカス

望遠鏡の光路内に組み込むフランジ型の製品(β-SGRなど)と比べ、ラセルタMFOCは、 天体望遠鏡のピント機構を使用するので、バックフォーカスを気にする必要がありません。 また、汎用性が高く、取付アダプターを替えれば、様々な望遠鏡に使用することができます。

ラセルタMFOCには、コントローラー本体と電動モーター、望遠鏡取り付け用のアダプター、各種ケーブル類が付属します。 なお、ラセルタMFOCのコントローラーは、ボタンの配置は若干異なるものの、 M-GENスーパーガイダーとそっくりの形をしていますので、 M-GENユーザーには馴染みやすいのではないでしょうか。


ラセルタMFOCの機能について

ラセルタMFOCは、高機能な電動フォーカサーで、コントローラーを使って単純にモーターを動かしてドロチューブを前後させる機能だけではなく、 温度センサーに従ってピントを補正したり、パソコンとASCOM接続したりといった、 電動フォーカサーに必要とされる様々な機能が設けられています。

天体写真ファンには、モーターの動きの細かさが気になるところですが、取扱説明書によれば、 最小の繰り返し精度は0.001mmですので、F値の明るい望遠鏡でも十分な精度でしょう。 また、ステップ数は250,000ステップと余裕があり、 望遠鏡のドロチューブにもよりますが、必要十分なストローク(可動範囲)があると言えると思います。

モーターには、ステッピングモーターが使われています。 取扱説明書によれば、ホールド時の最大能力は5キロとありますので、 重いデジタル一眼レフカメラでも保持できそうです。

下に、ラセルタMFOCの主な機能と特徴をまとめました。 なお、細かい仕様については、カタログや販売ページをご覧ください。

・スタンドアロンモードとASCOMによる制御
・温度センサー(全長約180cmのプローブコード付属)
・バックラッシュ補正機能
・GOTO機能とフィルターオフセットポジション登録
・250,000ステップ、最小の再現性0.001mm
・パーマネントフォーカス(自動温度補正可能)
・M-GENと接続するためのシャッター信号認識
・電源オフ時はマニュアルフォーカス可能


ラセルタMFOCの取り付け方

実際の使用レビューの前に、鏡筒に取り付けた様子をご覧ください。 詳しい取り付け方は、説明書をご確認いただければと思いますが、 ここでは取り付け方のコツをご紹介します。 まず、天体写真ファンに人気の高いタカハシε-130Dへの取付です。

ラセルタ モーターフォーカス

上記のように、ε-130Dのピントノブを外してラセルタMFOCのモーターを挿し込み、 付属のアダプター(大)を使って固定します。

アダプターを接眼部に固定するネジの両側に、隙間を調整するイモネジがあります。 このイモネジを使って、ラック&ピニオンとモーターの軸が一直線になり、 ドロチューブがスムーズに動くように調整してください。 この部分の動きが悪いと、モーターに余計な負荷がかかり、エラーが発生することがあります。

ラセルタ モーターフォーカス

次は、FSQ-85EDへの取付です。上の写真のように、減速装置と逆側のノブを外し、そこにモーターを取り付けます。

アダプターは、ε-130Dとは別のものを使用します。このアダプターには、調整用のイモネジはありませんので、 ねじ込んで固定するだけです。 ただ念のために、ドロチューブの動きは確認しておきましょう。

今回、試用したラセルタMFOCには、タカハシ製望遠鏡に取り付けるためのアダプターが2種類付属していました。 このアダプターを使用すれば、一部の望遠鏡(TOA-150B等)を除き、 たいていのタカハシ製望遠鏡にモーターを取り付けることができます。


ラセルタMFOCの使い心地

ラセルタMFOCを使用して、実際に星空撮影を行い、電動フォーカサーの使い心地を確認しました。 使用した望遠鏡は、天体撮影ファンに人気の高い高橋製作所のε-130DFSQ-85EDです。 これらに、重さ約1.4キロのフルサイズ冷却デジタルカメラ、Astro6Dを取り付けて撮影を行いました。

パソコンとは接続せず、コントローラーのボタンを押して、カメラのライブビュー画面を見ながらピントを合わせました。 下の画像のように、ラセルタMFOCの液晶ディスプレイに、モーターのステップ数と動く方向が常時表示されますので、 ピントをどの方向にどれだけ動かしたかがすぐにわかります。
※下の画像の「6715」がステップ数、「In」がモーターが動いている方向です。

ラセルタ モーターフォーカス

これまでは、望遠鏡の接眼部にアナログのピントゲージを取り付け、小さなメモリを見ながらピントノブを慎重に回し、 どの方向にどれだけ動かしたかを覚える必要がありましたが、 ラセルタMFOCでは快適にピント合わせができました。

重さ約1.4キロのAstro6Dを接眼部に取り付けましたが、特に動作に問題はありませんでした。 ただ、数キロを超える非常に重い冷却CCDカメラ(FLIのProlineなど)や、 巨大なオフアキシスガイダーを接眼部に取り付ける場合は、事前に相談した方がよいでしょう。

モーターの最小移動量は十分に小さく、F値の明るいε-130Dで使用しても、ピント合わせの精度は十分でした。 F2.8クラスの望遠鏡でも、必要十分なピント精度が得られると感じました。


ASCOM接続でより高度なフォーカシング

スタンドアロンでも便利なラセルタMFOCですが、USBケーブルでパソコンに繋ぎ、 ASCOM対応のソフトウェア(FocusMaxやMaximDLなど)を使って、ピントを合わせることも可能です。 今回は、ASCOM対応のフォーカシングソフト「FocusMax」と冷却CCDカメラを使って、 実際に星空を撮影し、ラセルタMFOCの動作を確認しました。

ラセルタ モーターフォーカス

上の画像は、FocusMaxを使ってピントを合わせている時のパソコン画面です。 左のFocusMaxのダイアログボックスの「Focuser」欄に「LacertaMotorFocus」が選択されていることが確認できます。

FocusMaxは、カメラ制御ソフトと連携して、オートフォーカスが可能なソフトウェアです。 上画面の中央に、赤い丸が幾つも「V」上に並んだダイアログボックスがありますが、 この赤い丸の回数だけ、ラセルタMFOCがピントをずらして撮影を行い、 ピントの最適位置を探しました。 ラセルタMFOCは、FocusMaxとの連携も良好で、パソコン上でも快適にピントを合わせられることが確認できました。

なお、ASCOM対応ソフトウェア上でラセルタMFOCを制御するには、ASCOMドライバーのインストールなどが必要です。 若干専門的な知識や対応ソフトが必要ですが、 普段、パソコンからデジタルカメラを制御して撮影されている方にとっては、魅力的な機能でしょう。


その他の便利な機能

ラセルタMFOCは高機能なフォーカサーですので、全ての機能は試せませんでしたが、 天体撮影に役立つ、いくつかの便利な機能をご紹介しましょう。

・ハンドコントローラーのボタンを押し続ける代わりに、GOTO機能を使って、 希望のカウント位置まで一気に動かすことができます。 ピント位置を大きく動かしたいときに便利な機能です。

ラセルタ モーターフォーカス

・フォーカサーのオフセット値を、9つまで登録することができます。 具体的には、フィルター毎のピントの誤差を事前に登録しておき、 フィルターを交換するごとに、オフセット値を読み出してピントを一気に合わせることができます。

・パーマネントフォーカス機能(PermanentFocus)と呼ばれる、温度補正機能付きのモードが用意されています。 この機能は、電源を切るときのピント位置を記憶し、次回、電源を入れたときに、 温度プローブの計測値を参考にして、最適なピント位置まで自動的にモーターを動かす機能です。 この機能を正しく使用するには、温度変化時のピントの移動量、ラック&ピニオンのバックラッシュ量を事前に登録する必要がありますが、 使いこなせば便利な機能でしょう。

M-GENスーパーガイダーラセルタMFOCを繋ぐことで、シャッターが閉じている間に、 設定した温度変化時のピント移動量に基づき、ピントの温度補正を行うことができます。 また、ソフトウェアが対応していれば、パソコン上のASCOM対応プログラムでも可能です。


まとめ

今回、ラセルタMFOCを天体撮影に使用してみて、コントローラーの使い勝手の良さと、 ASCOM対応ソフトウェアと連携して高度な天体撮影にも対応できることを確認することができました。

ラセルタMFOCは、オートガイダーとして人気の同社の M-GENスーパーガイダーと同じように、 コントローラーを使って天体写真の初級者の方でも簡単に操作でき、 かつ、ベテランの方でも満足できる機能が内蔵された電動フォーカサーだと感じました。

天体写真を撮影する上で、ピント合わせは大変重要ですが、面倒な作業でもあります。 スタンドアロンからASCOM制御にまで対応したラセルタMFOCを使用すれば、 これまでより簡単かつ正確にピント合わせをすることができるでしょう。 ラセルタMFOCは、よりシャープな画像を得る上で、大きな手助けになるツールだと思います。

タカハシε-130Dのインプレッション

タカハシε-130Dのインプレッション

タカハシε-130D タカハシ ε-130Dは、高橋製作所が製造している天体望遠鏡です。

ε-130Dは、アイソン彗星(C/2012 S1)の接近(2013年12月)に合わせて開発が進められ、 2013年8月に発売開始されました。

ε-130Dは、一般的な天体望遠鏡と異なり、天体撮影専用の望遠鏡です。 開放F値が「3.3」と望遠レンズ並みに明るいので、短時間の撮影でも淡い星雲を映し出すことが可能です。

ε-130Dは、生産が終了していた先代のε-130の性能を受け継ぎつつ、 デジタル対応の補正レンズを組み込んで、最新の撮影機材に対応したモデルです。 同社の反射式望遠鏡の現行ラインナップ中で、最も小さく、安価なモデルです。


イプシロンシリーズの復活とε-130D

高橋製作所のイプシロンシリーズは、天体撮影用に開発された望遠鏡です。 主鏡には、双曲面鏡(Hyperboloid mirror)が用いられ、 焦点面の前に補正レンズを置くことによって、平坦な像を得ます。

ε-130Dは、イプシロンシリーズの中で最も小さな望遠鏡です。 先代のε-130は1984年に発売され、 長らく生産されましたが、イメージサークルが広い高性能屈折望遠鏡に人気が集まると、 やがてイプシロンシリーズは生産が終了しました。

その後、デジタル機材が天体撮影に使われ始めると、 F値の明るいイプシロンシリーズが、再び天文ファンから注目されるようになりました。 高橋製作所は、2003年にタカハシε-160を限定再生産し、 2005年にはデジタル時代を担うイプシロン鏡筒としてε-180EDを発表しました。

限定生産 タカハシε-160

2003年に限定再生産されたε-160

ε-180EDは歴代最高のF2.8という明るさで注目を集め、多くの天体写真ファンが購入しましたが、 光軸調整や平面性の調整がシビアな鏡筒でした。 2007年にタカハシFSQ-106EDが発表されると、屈折へ乗り換えるユーザーが増え、 中古市場でε-180EDをよく見かけるようになりました。

2009年に、ε-130とε-160用のデジタル対応補正レンズが限定生産されました。 そして、2013年のアイソン彗星の接近に合わせて発表されたのが、ε-130Dです。 ε-130Dはコンパクトで軽量なため、SXクラスの赤道儀にも載せられるとあって、 今でも人気機種の一つになっています。

歴代のイプシロンシリーズのスペック表

鏡筒名 生産開始年 口径 焦点距離 口径比 重さ
ε-130 1984年 130mm 430mm 3.3 5.5kg
ε-130D 2013年 130mm 430mm 3.3 4.9kg
ε-160 1984年 160mm 530mm 3.3 7.6kg
ε-180ED 2005年 180mm 500mm 2.8 10.7kg
ε-200 1984年 200mm 800mm 4.0 13.5kg
ε-210C 1993年 210mm 628mm 3.0 10.4kg
ε-210 1996年 210mm 628mm 3.0 15.3kg
ε-250 1987年 250mm 854mm 3.4 32.0kg
ε-250C 1992年 250mm 854mm 3.4 18.9kg
ε-300 1985年 300mm 1130mm 3.8 45.0kg
ε-350 1997年 350mm 1248mm 3.6 66.0kg

タカハシε-130Dの外観と先代からの変更点

ε-130Dは、鏡筒色がイエローで、鏡筒の大きさも小さいので、 初めて見たときは、かわいらしく感じました。 しかし、高橋製作所の望遠鏡らしく、鏡筒各部の造りはとてもしっかりしています。

ε-130Dを上位機種のε-180EDと比べると、5センチの口径差以上に、小さく感じられます。 下は、ε-180EDε-130Dの開口部からの写真です。

ε-180EDとε-130D

ε-180ED(左)とε-130D(右)

先代のε-130と外観を比較すると、ε-130Dには、 鏡筒の先に丈夫なトップリングが取り付けられ、斜鏡を固定するスパイダーは、このトップリングに固定されています。 ε-180EDにも採用されている方式ですが、ねじれや歪みに強いので、より光軸がずれにくくなっています。

ε-180EDとε-130Dの補正レンズ

ε-130D(左)とε-180EDの補正レンズ(右)

補正レンズは、4群4枚から2群2枚構成のものに変更されました。 メーカーによると、最小星像は、先代ε-130との比較で1/3以下になっているということです。 また、歪曲収差(ディストーション)も半分以下に補正されており、 モザイク合成を前提とした天体撮影にも使いやすくなっています。

なお、高橋製作所は、2009年と2013年に、ε-160/130用のデジタル対応補正レンズを限定で販売しています。 新型補正レンズを用いれば、ε-130でも現行モデルに近い性能が得られるということで、 今でも中古市場で人気の高い撮影パーツです。


鏡筒の前後バランスと鏡筒バンド

ε-130Dは主鏡が小さく軽いため、接眼部に重いデジタルカメラを取り付けると、 前後バランスを取る点が、鏡筒の前寄りになってしまいます。

ε-130Dの鏡筒バンド

ニコンD810Aを取り付けた様子

上の写真は、K-Astec製の鏡筒バンドとプレートセットを取り付けた様子です。 鏡筒の前後バランスを取るため、接眼部を上にして、そこにデジタルカメラを取り付けています。

ガイド鏡は、鏡筒バンドの斜めの位置に、細長いプレートを追加して固定します。 昔のようなスライディングプレートにガイド鏡と同架する方法もありますが、 上記の方法の方が追尾が安定するように思います。


ε-130Dの斜鏡と主鏡と補正レンズ

ε-130Dでは、天体撮影時の周辺減光を減らすため、短径63ミリの大きな斜鏡が採用されています。 また、周辺減光の偏りを減らすため、斜鏡は接眼部と反対側にオフセット(偏心取り付け)されています。

ε-130Dの偏心斜鏡

斜鏡は、45度に切断した円筒に、緩衝材のコルクを介して貼り付けられています。 外側には、迷光防止のための植毛紙が巻き付けられています。 ε-180EDの斜鏡と同じ固定方法です。


主鏡セル

主鏡は、主鏡セルに納められています。 ε-130Dの主鏡セルは、ε-160と同様、ミラーを3つの爪で抑える構造になっています。

ε-130Dの主鏡セル

左がε-180ED、右がε-130Dの主鏡セル

ε-180EDの立派な主鏡セルと比べると簡素に感じられますが、 13センチのミラーは軽いので、歪みなどの問題は発生しないという判断でしょう。 ただ、主鏡の爪がミラーに飛び出ているため、この部分で星の光が散乱し、 輝星に余計な光条が発生する場合があります。 これを防ぐには、爪を隠すリングを自作するとよいでしょう。

セルの構造はε-160と同じですが、光軸調整用ネジは、 親子ネジから押しネジ、引きネジが独立したタイプに変更されています。


ε-130Dの光軸調整機構

他のニュートン反射望遠鏡と同様に、タカハシε-130Dには、 主鏡と斜鏡の傾きと位置を調整するための光軸調整機構が取り付けられています。

ε-130Dの光軸調整装置

斜鏡の光軸調整装置には、中央に引きネジ1本、その周りに押しネジ3本が取り付けられています。 ε-180EDと異なり、ロック用のナットは付属していませんが、 押しネジには粘度の高いグリスが塗られています。

主鏡セルの光軸調整装置は、引きネジと押しネジが独立したタイプで、120度間隔で3箇所設けられています。 また、主鏡セルの側面には、ラジアル方向(光軸と垂直方向)の位置決めのためのイモネジがねじ込まれています。

鏡筒のトップリングには、斜鏡を吊るスパイダーが取り付けられています。 スパイダーは厚みのある羽形状のもので、 トップリングの外側から、ネジで引っ張り固定されています。 鏡筒内側のロックネジを緩めると、スパイダーの長さを調整することができます。


ε-130Dの光軸調整について

光軸調整は、補正レンズを外し、ニュートン反射望遠鏡と同じように光軸調整ツールを使って行います。 調整方法の詳細は省きますが、光軸が合っていると以下のように見えます。

ε-130Dの光軸

斜鏡のセンターマークと光軸調整ツールの十字線の交点が一致している
斜鏡の外側がドロチューブの側面と同心円になっている
主鏡のセンターマークと光軸調整ツールの十字線交点が重なっている
主鏡に写った斜鏡の側面が上下で同じ幅になっている(眼を上下に振って確認)

光軸調整のポイントは以下の通りです。

斜鏡のセンターマークと接眼部の中心を、できるだけ正確に合わせましょう。 光軸調整ツールを覗く眼の位置によって、 十字線とセンターマークが重なっているように見えることもあるので、注意が必要です。 斜鏡の位置がずれていると、周辺減光が偏ってしまいます。

レーザーコリメーターは便利な道具ですが、斜鏡の回転方向を判断することができません。 必ず、光軸調整ツールを使って、目視で確認することをお勧めします。

光軸調整の説明書に、スパイダーを調整する方法が書かれていることがありますが、 調整に慣れるまでは、スパイダーにはむやみに触らない方が無難です。

光軸が合っているように見えても、実際に撮影した星像が悪く、何度調整しても改善しないときは、 接眼部が傾くなど、他の原因が考えられます。 購入したばかりなら、メーカーに相談することとよいでしょう。


ε-130Dの星像

ε-130Dの結像性能を調べるため、接眼部に35ミリフルサイズのデジタル一眼レフカメラ「ニコンD810A」を取り付け、 夏の人気天体「北アメリカ星雲とペリカン星雲」を撮影してみました。

下が撮影したそのままの画像です。 全体画像の下に各部分の拡大写真を載せています。 なお、撮影にはAXD赤道儀を使用し、オートガイド撮影をおこないました。カメラの設定は、ISO1600、300秒露光です。

※販売店から届いた状態のままテスト撮影したため、 運搬時の振動等で、光軸やスケアリングが若干ずれている可能性があります。

ε-130Dで撮影した画像

ε-130Dで撮影した画像

ピクセル等倍画像もご覧ください

全体画像を見ると、中央から周辺に行くにつれて背景の明るさが暗くなり、周辺減光が発生していることがわかります。 周辺減光は上位機種のε-180EDに比べ、若干大きいように感じられます。

中心部の星像はシャープで、フルサイズ四隅でもそれほど星像は悪化していません。 また色収差も感じられず、写野全体に渡ってシャープな星像を結んでいます。


フラットフレーム

ε-130Dの周辺減光の様子を調べるため、ε-130DにニコンD810Aを取り付け、フラットフレームを撮影しました。

ε-130Dのフラットフレーム

上が今回撮影したフラットフレームの画像です。 写真を見ると、画面周辺が中央部に比べて暗くなっているのがわかります。 上下が暗くなっているのは、デジタル一眼レフカメラのミラーボックスのケラレによるものです。

今回は35ミリフルサイズのフラットフレームですが、上記の画像を見る限り、 センサーサイズがAPS-Cのデジタルカメラなら、周辺減光もそれほど気にならないように思います。 フルサイズ最周辺まで表現したい場合は、正確なフラット補正が必須となるでしょう。

参考までに、天体撮影で人気の高い屈折望遠鏡、FSQ-106EDと周辺減光の様子を比べてみました。

ε-130DとFSQ-106EDのフラットフレーム比較

上がε-130D、下がFSQ-106EDのフラットフレームです。 どちらもニコンD810Aで撮影した画像ですが、FSQ-106EDの方が周辺減光が少なく、 中央からの減光もなだらかです。

屈折望遠鏡に比べ、反射望遠鏡はフラット補正が難しいという話を耳にしますが、 フラットフレームの画像にも、その傾向が表れているようです。


軽量で高性能な写真鏡

タカハシε-130Dは、本体重量が約5キロと軽く、 タカハシのEM-11、ビクセンのSX赤道儀クラスでも搭載が可能です。 機材全体がコンパクトになり、遠征時の負担が減るのは大きなメリットです。

星の写りに関しては、35ミリフルサイズ周辺でも満足できるシャープな星像です。 また、ε-180EDに比べてF値が若干暗い分、スケアリングにも寛容で、 実用的な鏡筒であると感じました。

屈折望遠鏡ユーザーにとって、反射望遠鏡は光軸合わせが面倒でフラット補正が難しいというイメージがありますが、 ε-130Dは、天体撮影用の明るい鏡筒の中では扱いやすい機材だと思います。

ε-130Dは、発表以来、天体撮影用の人気機種となっていますが、 これからもイプシロンシリーズの入門機として、広く支持されていく望遠鏡だと感じました

レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

ロスマンディー G11S 赤道儀のインプレッション

ロスマンディー G11S 赤道儀のインプレッション

ロスマンディー G11 赤道儀

ロスマンディーG11S赤道儀(以下: G11S赤道儀)は、長い間作り続けられているアメリカ製の赤道儀で、 世界中で安定した評価を得ています。 G11S赤道儀の最大搭載重量は約27キロを誇り、日本の天体写真ファンに人気の高いタカハシEM-200赤道儀を凌ぎます。 今回 G11S赤道儀にタカハシTOA130望遠鏡を搭載して天体撮影を行う機会を得ましたので、 G11S赤道儀の概略や追尾精度を交えながら、機材の使用感をまとめました。


ロスマンディー G11S 赤道儀について

G11赤道儀には、採用されているモータードライブの種類により、いくつかのタイプが用意されていますが、 今回使用したのは、赤緯と赤経モーターが付属した「G11S 両軸モーターコントローラー付モデル」です。 三脚は、ロスマンディー製の丸パイプ二段伸縮脚を使用しました。

ロスマンディー G11 赤道儀

G11S赤道儀は、ジュラルミンと呼ばれるアルミニウム合金で製造されています。 黒色アルマイト加工が施されたボディは、白っぽい色合いの日本の赤道儀とは一味違い、 引き締まった印象を受けます。 CNC旋盤を使って切削加工された仕上げは美しく、本体に触れると、各部の組み立て精度の高さを感じました。

G11S赤道儀本体でまず目を引くのは、ウォームホイルが入った大きなハウジング部分です。 ウォームホイルの直径は143cm、歯数は360枚もあり、タカハシEM-200(ウォームホイル直径92mm、歯数180枚)と比較しても、 かなり大きなギアが用いられています。 ウォームホイルは、精度や強度に影響を与える重要なパーツで、一般的に大きい方が追尾精度が高いと考えられています。

ロスマンディー G11 赤道儀

G11S赤道儀のヘッドには、大型のアリミゾ金具が取り付けられています。 このアリミゾは、ロスマンディー規格と呼ばれる75mm幅のアリガタプレートだけでなく、 ビクセン規格のアリガタプレートにも対応しています。

G11S赤道儀の赤経と赤緯のクランプは、それぞれの軸の根元に装備されています。 一般的な赤道儀のクランプは、締めるか緩めるしかできませんが、 G11S赤道儀にはクラッチ機構が設けられており、ユーザーが載せる機材の重さに合わせて、 クランプのテンションを調整することができます。

このクラッチ機構があるおかげで、 G11S赤道儀はフリーストップマウントとして使うことも可能です。 具体的には、モーターの電源を入れたまま、自由に天体望遠鏡を動かして目標の天体を導入することができ、 手を離したところで望遠鏡が固定され、恒星時追尾で目標天体を追いかけてくれます。


ロスマンディー G11S 赤道儀の追尾精度

天体写真撮影は、オートガイド撮影が主流となりましたが、赤道儀の追尾精度は天体写真ファンにとって気になる点です。 そこで G11S赤道儀のピリオディックモーションを、ウォームギア2周期分(約8分間)撮影し、実測してみました。

撮影した結果は、下の画像の通り、±10秒程度でした。 一般的にこのクラスの赤道儀では±10秒前後の場合が多いので、 標準的な基準をクリアしていると言えます。 ウォームホイルの他の部分でも実測してみましたが、いずれもほぼ同じ結果が得られました。

ロスマンディー G11 赤道儀

また、 G11S赤道儀には、ピリオディックモーションを学習させて電気的に動きを補正するPEC機能があります。 PEC機能を使うには、初めにウォームギア1周分のピリオディックモーションをコントローラーに記憶させる必要がありますが、 上手く使えばピリオディックモーションの改善が期待できます。 実際にどの程度改善されるのか、PEC機能をオンにして、ピリオディックモーションを測定してみました。

その結果は、下の画像の通り、ピリオディックモーションは、±4秒程度に改善されました。 PEC機能を使えば、焦点距離の短い光学系なら、ノータッチガイドでも撮影を楽むことができそうです。 なお、下の画像は星の軌跡が途切れがちになっていますが、これは撮影中に薄雲が通過したためです。

ロスマンディー G11 赤道儀

※ピリオディックモーションとは: 赤道儀はギアで駆動しているため、ギアの機械的誤差により、赤道儀が動く間にある程度の進み遅れが生じます。 これがピリオディックモーションという現象で、この進み遅れが小さいほど高精度と考えられています。


ロスマンディー G11S 赤道儀を使って天体撮影

G11S赤道儀を郊外に持ち出して、実際に星空を撮影してみました。 使用した天体望遠鏡は、天体写真ファンに人気の高いタカハシTOA-130望遠鏡です。 タカハシTOA-130の本体重量は約12キロですが、プレートや鏡筒バンド、ガイド鏡等を合わせると、 16キロ程度になります。 これに、重さ約1.4キロのフルサイズ冷却デジタルカメラ、Astro6Dを取り付けて撮影を行いました。

下は、赤道儀にTOA130望遠鏡と撮影機材一式を搭載した状態です。 写真では、TOA130望遠鏡が大きく、トップヘビーに感じられますが、赤道儀の搭載重量に余裕があるため、 安心してTOA130を載せることができました。 なお、バランスウェイトは、標準付属の約10キロのウェイトだけでは足りなかったため、 3キロウェイトをシャフトの端に追加して、極軸周りのバランスを取っています。

ロスマンディー G11 赤道儀

撮影を開始する前に、電子極軸望遠鏡Pole Masterを使って極軸を正確に合わせました。 次に、電源を入れて、ハーフクランプ状態にし、ファンダーを覗きながら目標天体を導入しました。 G11S赤道儀のフリーストップ機能は、天体導入に大変便利で、スムーズに目的の天体を導入することができました。

オートガイダーには、M-GENスーパーガイダーを用いましたが、途中、 雲が通過してオートガイダーが星を見失った時以外は、ガイドエラー量も少なく、 順調にオートガイド撮影を行うことができました。 下は、ガイド中のM-GENの液晶モニターに表示されたガイドグラフです。 ガイドは安定しており、 G11S赤道儀のオートガイドとの相性の良さを感じました。

ロスマンディー G11 赤道儀

この夜は、はくちょう座の北アメリカ星雲から撮影を開始し、 ケフェウス座のIC1396星雲→アンドロメダ大銀河→スバルの4対象を、 G11S赤道儀を使って撮影しました。

下の画像は、この夜に撮影したIC1396の画像です。 ISO1600、360秒露光で撮影した8枚の画像をコンポジットして、一枚の写真に仕上げています。 右側の部分拡大画像をご覧いただくと、 星が真円を保って写っていることがわかります。

ロスマンディー G11 赤道儀

観望用にも使いやすいフリーストップ機能

今回は、天体撮影メインで G11S赤道儀のテストを行いましたが、 撮影の前に、TOA130望遠鏡に広角アイピースを取り付け、 亜鈴星雲や散開星団をはじめとした、いくつかの有名天体を観望しました。

自動導入装置が付いた赤道儀と異なり、 G11S赤道儀の場合は、 ユーザー自らが望遠鏡を動かして導入しなければなりませんが、 手を離したところで天体望遠鏡が固定され、恒星時追尾が行われるフリーストップ機能は大変便利で、 天体望遠鏡を気ままに振り回す楽しさを再発見することができました。

G11S赤道儀は、天体撮影用だけでなく、天体望遠鏡を赤道儀に載せ、 自由に天体観望を楽しみたいというユーザーにも使いやすい機材だと感じました。


ロスマンディー G11S赤道儀の印象

G11S赤道儀を使用した印象や、上記で記載できなかった内容を箇条書きで列挙しました。

・外見からは細身の印象を受けるG11赤道儀だが、基本的な強度は高く、 今回のテストのように、大きくて重いタカハシTOA130でもしっかりと支えることができた。

・丸パイプ二段伸縮脚は、石突は装備されていないが、強度は高く、安定感のある三脚だ。 重いが、折りたたむとコンパクトになり、レバーのワンタッチで脚を開いて固定できるので、 ピラー脚ほど設置に手間が取られない点は助かる。

G11S赤道儀にはオプションで極軸望遠鏡が用意されているが、極軸望遠鏡自体は覗きやすいものの、 スケールパターン上の北極星の導入位置が広いため、 本格的な天体撮影目的であれば、Pole Masterを使用した方がよいと感じた。

・極軸設定時に使用する、水平・垂直微動の動きはスムーズだ。 ただ、水平微動にはノブつきの固定クランプが用意されているが、 垂直微動のクランプを締めるには、六角レンチが必要だ。 なお、赤道儀本体の座面と赤緯体に、水準器が内蔵されている。

ロスマンディー G11 赤道儀

・モーターコントローラーユニット(上写真)は、赤道儀の脚部に固定して使用するが、 表示が簡潔でわかりやすく、暗闇でもモーター速度などの設定を確認しやすい。 電源入力やオートガイド用の端子も、このユニットに装備されている。

・赤緯・赤経モーターが赤道儀の外側に出っ張っているため、撮影中に望遠鏡と干渉しないか心配したが、 赤道儀の東側に取り付けられているため、東から昇ってくる天体を撮影した場合、子午線を超えても撮影を続けることができた。 北半球で使用する分には影響がないと思われる。

・赤経、赤緯の回転軸には、刻印された大型の目盛環が装備されている。 バーニヤも刻印されているので、精度よく座標を読み取ることができる。 最近の赤道儀には目盛環が省かれることが多いが、 ロングセラーの赤道儀だけあって、基本に忠実な製造者の姿勢を感じられる。

G11S赤道儀の本体重量は18キロと重いが、細身で所々に手を掛けるところがあるので、 案外、持ちやすかった。 また、三脚への取り付けも、3箇所のネジと溝の部分を合わせてはめ込み、ネジ止めするだけなので、 簡単かつ確実に取り付けることができた。


まとめ

今回、 G11S赤道儀を天体撮影に使用してみて、ロングセラーの人気に裏付けられた使い勝手の良さと 信頼性を確認することができました。 また、精度や操作性だけでなく、黒色アルマイト加工されたボディには、 日本製の赤道儀にはない格好良さもあり、持つ喜びを感じさせてくれる機材だと感じました。

今回、使用した G11S赤道儀には自動導入機能が付けられていませんが、 クオリティの高い作品を生み出すには、何枚も同じ対象を撮り続ける必要があり、 一晩で1~2対象ということも珍しくありません。 そのような一対象をじっくり撮影するという用途に、 G11S赤道儀は適しているのではないでしょうか。

今回のテストに使用したタカハシTOA-130ε-180EDは、大きく重いため、 「EM-200赤道儀では少々不安だが、かと言って、EM-400赤道儀では大きすぎる」というユーザーの声をお聞きします。 G11S赤道儀はちょうどその要望に合う大きさ、強度を持った赤道儀だと感じました。 EM-200より、もう少し搭載重量に余裕がある赤道儀が欲しいという方に、 お勧めできる機材の一つだと思います。

レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

ビクセン AP-WM追尾撮影スターターセットのインプレッション

KYOEIオリジナル AP-WM追尾撮影スターターセットのインプレッション

KYOEIオリジナル AP-WM追尾撮影スターターセット

「KYOEIオリジナル AP-WM追尾撮影スターターセット」は、 ビクセンAP赤道儀に、天体撮影に必要なパーツを組み合わせたセットです。 今回、このスターターセットに、小型オートガイダーの「MGEN-75GSSアルカセット」を組み合わせて天体撮影を行う機会を得ましたので、 AP赤道儀の追尾精度やスターターセットの概略を交えながら、機材の使用感をまとめました。


ビクセンAP赤道儀と、KYOEI AP-WM追尾撮影スターターセットについて

AP-WM追尾撮影スターターセットは、天体写真撮影に必要なパーツを組み合わせた、KYOEIのオリジナル商品です。 ビクセンAP赤道儀本体に加えて、天体撮影に必要な赤経・赤緯の両軸モーター、 APP-TL130三脚極軸望遠鏡、それにアリガタプレート等が付属しています。 あとはオートガイダーさえ用意すれば、天体望遠鏡や望遠レンズを載せてオートガイド撮影を行うことができるセットになっています。

ビクセンAP赤道儀は、2014年末に発売開始されたモデルです。 モジュール構造が採用されているのが特徴で、ユーザーが目的に合わせて必要なパーツを組み合わせ、 様々なパターンで使用することができます。

KYOEIオリジナル AP-WM追尾撮影スターターセット

セットに付属する極軸望遠鏡は、ビクセン社の製品ではなく、KYOEIオリジナルとして発売されているK-Astec製です。 極軸望遠鏡の赤道儀への取り付けは、ユーザー自身で行います。極軸望遠鏡を赤道儀にねじ込んだ後、 付属のマニュアルに従って、赤道儀の回転軸と極軸望遠鏡のスケールの位置を合わせておきましょう。 なお、極軸望遠鏡のスケールパターンは、タカハシEM-11赤道儀と同様の、時角計算が必要なタイプです。 スマートフォンやタブレット用の極軸合わせ支援アプリを使うと、スムーズに極軸合わせを行うことができます。


AP赤道儀の使い心地

AP-WM追尾撮影スターターセットを使って、夏の星雲や星団を観望してみました。 まず、南天で輝くいて座の干潟星雲を視野に導入し、 次に付属のSTARBOOK ONEコントローラーを使って、三裂星雲、M17星雲、M16星雲を導入しました。 視野の移動には、主に恒星時60倍速を使用しましたが、 モーターの動きはスムーズで、快適に観望を楽しむことができました。

上位機種と異なり、AP赤道儀は自動導入機能には対応していません。 目標天体を視野に導入する際は、まずクランプフリーで天体望遠鏡の方向をおおよそ合わせ、 その後、STARBOOK ONEの方向キーを使って微調整します。 以前、レビューで使用したビクセンGP2赤道儀の場合は、最高で恒星時16倍速まででしたが、 AP赤道儀では恒星時60倍速で赤道儀をモーター駆動することができ、 目標天体の導入性能が向上しています。

KYOEIオリジナル AP-WM追尾撮影スターターセット

AP赤道儀の電源には、単三乾電池4本、または、USB出力付外部電源を使用することができます。 今回の天体観望では、スマートフォン充電用のUSBモバイルバッテリーを使用しました。 赤道儀動作時の消費電流を、USB 簡易電圧・電流チェッカーを使って計測してみたところ、 恒星時追尾で 5V0.31A、恒星時60倍速で両軸モーターを同時駆動させている時でも 5V0.57Aと、 自動導入機能のある同社のSXP赤道儀(12V0.45~2.2A前後)に比べて省電力でした。


AP赤道儀の追尾精度

オートガイダーを使った天体撮影が主流になりましたが、 赤道儀の追尾精度は天体写真ファンにとって大変気になる点です。 そこでAP赤道儀のピリオディックモーションをウォームギア1周期分(約10分間)撮影し、 実測してみました。

KYOEIオリジナル AP-WM追尾撮影スターターセット

撮影した結果は、上の画像の通りで、比較に用いた重星アルビレオの離隔(約35秒)から計算すると、 AP赤道儀のPEモーションは±12秒程度となります。 一般的にこのクラスの赤道儀では±15秒前後の場合が多いので、 このAP赤道儀のモーション量は標準的な基準をクリアしていると言えるでしょう。 ウォームホイルの他の部分でも実測してみましたが、いずれも同じような結果が得られました。

また、STARBOOK ONEコントローラーには、 ピリオディックモーションを学習させて電気的に動きを補正するPEC機能があります。 PEC機能を使うには、初めにウォームギア1周分のピリオディックモーションをコントローラーに記憶させる必要がありますが、 上手く使えば追尾精度をより向上させることができるでしょう。

※ピリオディックモーションとは:
赤道儀はギアで駆動しているため、ギアの機械的誤差で赤道儀が動く間にある程度の進み遅れが生じます。 これがピリオディックモーションという現象で、この進み遅れが小さいほど高精度な追尾が可能となります。


AP-WM追尾撮影スターターセットを使っての天体撮影

AP-WM追尾撮影スターターセットを郊外に持ち出して、実際に天体を撮影してみました。 使用した光学系は、天体写真ファンの間で評価の高いコーワのテレフォトレンズ「PROMINAR 500mmF5.6FL」です。 カメラは、キヤノンEOS6Dを冷却改造したAstro6Dを使い、鏡筒バンドの上に、 小型オートガイダーのMGEN-75GSSアルカセットを取り付けました。 下の写真はこれらの機材で撮影している様子ですが、赤道儀の極軸周りのバランスを取るためには、 スターターセットに含まれている1kgのバランスウェイトでは足りず、別途1.9キロのウェイトが必要でした。

KYOEIオリジナル AP-WM追尾撮影スターターセット

今回のテスト撮影の対象には、天頂付近で輝く、はくちょう座の北アメリカ星雲を選びました。 まずK-ASTEC製の極軸望遠鏡を使用して極軸を合わせ、赤道儀の電源を入れた後、 クランプフリーにして、はくちょう座の一等星デネブを視野の中央に導入しました。 その後、STARBOOK ONEコントローラーを使って、赤道儀を恒星時30倍速で動かし、 北アメリカ星雲を視野内に導入しました。

構図を決めた後、オートガイド撮影を行うために、M-GENオートガイダーのキャリブレーションを実施しました。 キャリブレーション時の動作に問題はなく、一度でキャリブレーションを成功させることができました。 なお、MGEN-75GSSアルカセットのピントは、撮影前に自宅でピントを合わせて、 ピントリングをテープで固定しておきました。 M-GENコントローラーの液晶画面は階調数が少なく、ピンボケの画像は確認しづらいという問題があります。 現地でスムーズに撮影できるように、事前にアルカセットのピント合わせを行っておくのがよいでしょう。

下は、今回、撮影した画像です。 MGEN-75GSSアルカセットには、焦点距離が75ミリと短いレンズが付属していますが、 画像を拡大してもガイド流れは発生していません。 天候の関係で合計4枚しか撮影できませんでしたが、 ガイドミスは皆無で、この撮影システムの安定性を感じました。

KYOEIオリジナル AP-WM追尾撮影スターターセット

なお、この北アメリカ星雲は、ダーク・フラット補正は行わず、コントラストを軽く調整しただけの画像です。 気温28度前後の撮影環境でしたが、Astro6Dには冷却ユニットが取り付けられており、 撮影画像にノイズは目立ちませんでした。


オートガイド撮影時の消費電流

Astro6Dの冷却ユニットの電源用としてはDC12Vのカーバッテリーを用意しましたが、 AP赤道儀M-GENオートガイダーには、容量22400mAのUSBモバイルバッテリー1台から電気を供給しました。 観望時と同じように、オートガイド撮影時の消費電流を簡易USBテスターを使って計測してみました。

KYOEIオリジナル AP-WM追尾撮影スターターセット

上の画像は撮影中の様子です。 左側にSTARBOOK ONEコントローラー、中央にUSBモバイルバッテリー、そして右側にM-GENのコントローラーが写っています。 モバイルバッテリーに取り付けたUSB簡易電圧・電流チェッカーの表示をご覧いただくと、 AP赤道儀で0.32A、M-GENオートガイダーで0.25A消費していることがわかります。 どちらも消費電流が非常に少なく、モバイルバッテリー1台で一晩中使用することが可能でした。


今回の観望や撮影で気づいた点

AP-WM追尾撮影スターターセットを使用して気付いた点を、以下にまとめました。

・ビクセンAP赤道儀は、フリーストップの使い勝手を重視していますが、 クランプを締めると見た目以上にしっかり固定され、今回のような機材を載せてもガタは発生しませんでした。

AP赤道儀の赤緯軸周りは、極軸と比べるとクランプフリーの動きがやや固く、軽い機材を載せている時は、 鏡筒の前後の微妙なバランスが取りにくいと感じました。

・STARBOOK ONEコントローラーには自動導入機能はありませんが、その分操作がシンプルで、 初めての使用でもすぐに操作に慣れることができました。 また、目的天体の導入には恒星時60倍速、写真の構図合わせには恒星時30倍速の利用が便利でした。

AP赤道儀には自動導入機能がありませんので、赤緯・赤経軸に、 ファインダーでは見えない暗い天体を導入する際に便利な目盛環を装備してほしいと思いました。

APP-TL130三脚は、縮めた時の長さが60センチ弱と短いので車のトランクにも入れやすく、 また、AP赤道儀を載せるには十分な強度があり、使い勝手の良いバランスのとれた製品だと感じました。

MGEN-75GSSアルカセットは、焦点距離が短いにも関わらず、問題なく350ミリのオートガイド撮影を行うことができました。 小型軽量のオートガイダーは、AP赤道儀にも使いやすい大きさだと感じました。

・USBモバイルバッテリーを赤道儀やオートガイダーの電源として使用できるのは大変便利でした。 消費電力のテスト結果を考えると、今回使用したUSBバッテリーであれば、2晩は持ちそうです。


まとめ

今回、AP-WM追尾撮影スターターセットを使った天体観望と撮影を通じて、ビクセンAP赤道儀の使い勝手の良さを確認できました。 軽量でコンパクトな赤道儀は、ちょっとした機会でも気軽に天体観望してみようという気にさせてくれるでしょう。 また、赤道儀の電源として、広く流通しているUSBモバイルバッテリーが使える点も便利です。

天体撮影では、本格的な天体撮影にも使用されているコーワテレフォトレンズと、 重い冷却ユニットが取り付けられたAstro6Dを使いましたが、ガイドエラーも発生せず、 この組み合わせで十分撮影を行えるという印象を持ちました。 機材をセットアップした外観も安定感が感じられ、デザイン的にもバランスの良い組み合わせだと思いました。

最近、ベテラン天文ファンを中心に、海外遠征用の機材として、 小型軽量で信頼性の高い二軸モーター付赤道儀の要望が高まっていますが、 このAP-WM追尾撮影スターターセットは、理想的な組み合わせの一つになり得ると感じました。 これから本格的に天体写真を始めようという方の最初の赤道儀セットとしてはもちろん、 ベテランの方のサブ機材としてもお薦めの一台だと思います。




LACERTA M-GEN (エムゲン)のレビューはこちら!↓


コーワ PROMINAR 500mm F5.6 FL 標準キット のレビューはこちら!↓

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Lacerta M-GEN オートガイダーのインプレッション

Lacerta M-GEN オートガイダーのインプレッション

Lacerta M-GEN オートガイダー

Lacerta M-GENオートガイダーは、高感度のソニー製モノクロCCDチップを用いたスタンドアローン型のオートガイダーです。 今回、M-GENオートガイダーを使用して天体を撮影する機会を得ましたので、 機器の概要と操作方法をご紹介しながら、オートガイダーの使用感や性能をまとめました。


M-GEN オートガイダーの外観と概要

M-GENオートガイダーは、ハンドコントローラーとガイドカメラで構成されています。 その他に、ハンドコントローラーとガイドカメラを繋ぐケーブル、 コントローラーと赤道儀を接続するオートガイドケーブル、そしてDC12V用電源ケーブルが付属しています。

初めてM-GENオートガイダーを手にしたとき、コンパクトで軽量という印象をまず持ちました。 ハンドコントローラーに設けられたファンクションボタンは、 十字に配置された矢印ボタンとESCボタン、それにSETボタンというシンプルな構成です。 高機能なコントローラーと比べると、若干物足りなく感じられるかもしれません。

ハンドコントローラーの底部

ハンドコントローラーの底部には、上写真のように、各種ケーブルを接続するコネクタが設けられています。 左から「デジタル一眼レフカメラのシャッターを制御するためのカメラジャック」、 「ガイドカメラ用コネクタ」、「電源ジャック」、「オートガイドケーブルを接続するコネクタ」、 そして「パソコンを繋ぐためのUSBコネクタ」です。 コネクタの端子形状がそれぞれ異なっていますので、暗闇でも接続を間違える心配はないでしょう。

ガイド状況を監視するCCDは、円柱形をしたガイドカメラ内に固定されています。 CCDには、ピクセルサイズが4.85×4.65(μm)のソニー製「ICX276AL-E」CCDチップが用いられています。 総画素数は約43万画素と少ないですが、オートガイドの用途には十分な画素数です。 実際、テスト撮影中、画素数が少ないために困ることはありませんでした。

Lacerta M-GENのガイドチップ

ガイドカメラの内側には、Tネジが切られています。 今回はminiBORG50をガイド鏡として使用しましたので、 望遠鏡接眼部に取り付けられた「M57→M36.4アダプター(7522)」のTネジ部分にガイドカメラを直接ねじ込みました。


シンプルなインターフェース

M-GENオートガイダーの全ての機能は、ハンドコントローラーに設けられた液晶モニターに表示されます。 液晶モニターは、128×64ドットと解像度は低いですが、 オレンジ色の表示の視認性は良好で、暗闇で眩しすぎることもありませんでした。

Lacerta M-GENの液晶モニター

ESCキーを押してM-GENオートガイダーを起動すると、ファームウェアの表示とファイル名の設定に続いて、 メインメニューが表示されます。 メインメニューは、「Exposure」、「Guiding」、「Random Displacement」の3つのサブメニューに大きく分けられています。 また、3つのサブメニューの他に、各種設定を行う「misc」と電源を切るための「Power Off」が設けられています。 以下、3つのサブメニューの機能について、ご紹介します。

「Exposure」は、デジタル一眼レフカメラの長時間露出を制御する機能です。 露出時間とインターバルの間隔、撮影枚数を設定することができ、 タイマーリモートコントローラーと同様の操作が可能です。 また、ミラーアップに対応したデジタル一眼レフカメラを接続すれば、 ミラーアップした後の連続撮影にも対応できます。 なお、M-GENオートガイダーとの接続ケーブル(別売)が用意されているのは、 キヤノン製とニコン製のデジタル一眼レフカメラとなっています。

Lacerta M-GENの液晶モニター

「Guiding」メニューでは、オートガイド全般の操作を行います。 Guidingは、M-GENオートガイダーの要となる機能で、 ガイド鏡のピント合わせに使用するライブビューをはじめ、赤緯・赤経の反応係数の変更など、様々な設定が可能です。 パソコンを使用したオートガイダーで設定可能な機能は、ほぼ全て網羅されています。 ここでは、基本的なオートガイドの操作方法をご紹介します。

「Guiding」メニューに入ると、下の画面が現れます。 まずGuider Setupで、使用するガイド鏡の焦点距離と赤道儀の修正速度を設定します。 設定内容は、一度入力すれば本体に記憶されるので、同じガイド鏡と赤道儀を用いる場合は再設定する必要はありません。

Lacerta M-GENの液晶モニター

続いてLive View画面で、CCDチップに映っている星を表示させて、ガイド鏡のピントを合わせます。 星が暗くて見づらい場合は、露出時間(exp)を延ばすとよいでしょう。 ゲイン(gain)を上げるとカメラの感度が上がりますが、 同時にノイズが増えて画面が見づらくなりますのでご注意ください。

ガイド鏡のピントが合ったら、StarSearchを実施します。 StarSearchでは、CCDチップ上に写っている星を画面に表示し、自動的に明るい星をガイド星として選んでくれます。 ガイド鏡の視野内にオートガイドに使用できる明るい星がない場合は「No Stars」と表示されますので、 露出時間を変更して再度実施してみましょう。

Lacerta M-GENの液晶モニター

ガイド星が見つかったら、オートガイド画面へ移りましょう。 Current guidingを選択してオートガイドの設定画面を表示し、キャリブレーションを行います。 キャリブレーションはマニュアルでも可能ですが、自動で行うのが簡単でお勧めです。 キャリブレーション中は、コントローラーの矢印ボタンのLEDが光り、補正信号を赤道儀に伝達中であることがわかります。 キャリブレーションが成功したら、オートガイドを開始しましょう。

下は実際のオートガイド中の画面です。 画面左の枠の中に、ガイド星が表示されています。 画面右上には、露出時間(exp)等の各種設定情報が表示されています。 「AG Stop」という部分にカーソルを合わせてSetボタンを押すと、オートガイドを停止することができます。

なお、Current guidingは、5つの画面に分かれています。 画面右下の「pg 1/5」という部分にカーソルを移動してページをめくると、 キャリブレーション設定画面やオートガイドの反応係数を設定する画面に移動します。 また、ガイド星が表示されている枠の部分もガイドエラーの状況を示すグラフに変更することが可能です。

Lacerta M-GENの液晶モニター

最後に、メインメニューの「Random Displacement」をご紹介します。 この機能を使用するには、ハンドコントローラーとデジタル一眼レフカメラを接続して、 「Exposure」機能を使ってシャッターを制御する必要があります。

「Random Displacement」を使用すると、一コマ撮影が終わるごとにガイド星を若干移動させてから、 新たな位置でオートガイドを実行します。 具体的には、撮影画像ごとに数ピクセル程度、構図をずらして撮影していくイメージです。 デジカメのノイズは同じピクセルに発生しやすいため、 この機能を使用することによって、最終的に画像をコンポジットした際のノイズを平均化することができます。


M-GENオートガイダーでオートガイド撮影

M-GENオートガイダーを郊外に持ち出し、実際にオートガイド撮影に使用してみました。 今回使用した機材は、焦点距離350mmの天体望遠鏡とAstro60Dデジタル一眼レフカメラ、ビクセンSXP赤道儀です。 M-GENオートガイダーのガイド鏡には、miniBORG50を使用しました。

Lacerta M-GENの液晶モニター

撮影テストではオートガイドの動作をまず確認しました。 デジカメの感度をISO1600、露出時間480秒に設定して、位置の異なる天体を20枚程度撮影しましたが、 ガイド補正信号は赤道儀に的確に伝達され、写った星に流れはありませんでした。

次に、M-GENオートガイダーに使われているCCDチップの感度を確認しました。 パソコンを必要とするオートガイダー(QHY5L-Ⅱ等)に比べ、スタンドアローン型のオートガイダーは一般的に感度が低く、 ガイド星を探すため、撮影対象ごとにガイド鏡の方向を調整する必要があります。 しかし、M-GENオートガイダーには、感度の高いソニー製モノクロCCDが使われているため、 ガイド鏡を固定した状態でガイド星が見つかるか、位置の異なる天体を撮影することで検証してみました。

Lacerta M-GENの液晶モニター

まず、秋から冬の天体として、 カリフォルニア星雲、すばる、オリオン大星雲、M78星雲、バラ星雲、わし星雲を撮影しました。 上が今回撮影した写真の一覧です。 どの対象も天の川銀河に近く、周囲にたくさんの星がありますが、 短時間露出でも数多くの星がライブビューで表示され、CCD感度の高さを感じることができました。 最終的に、M-GENオートガイダーの露出時間を0.5秒(500ms)に設定し、オートガイド撮影を行いました。 どの天体を撮影する場合でも、ガイド鏡固定で問題なくガイド星を見つけることができました。

Lacerta M-GENの液晶モニター

次に周囲の星が少なく、ガイド星が見つかりにくい春の銀河として、 M81銀河とM82銀河、しし座の三銀河、ソンブレロ銀河を撮影しました。 こちらは、露出時間0.5秒ではガイド星が見つからない対象があったため、 露出時間を1秒(1000ms)に延ばしたところ、全ての対象でガイド鏡固定でガイド星が見つかりました。

M-GENオートガイダーで設定できる最大の露出時間、4秒(4000ms)です。 上記の撮影テストの結果から考えて、miniBORG50程度の集光力のある天体望遠鏡をガイド鏡に使用すれば、 ガイド鏡を固定した状態で、ほぼ全ての対象でガイド星を見つけることができると思われます。


M-GENオートガイダーの印象

M-GENオートガイダーを使用した印象や、上記で触れなかった内容を以下に箇条書きで列挙しました。

・実地テストでは、焦点距離350ミリという短めの撮影鏡筒を使用したので、後日、 ヘラクレス赤道儀にTOA130望遠鏡(焦点距離約700mm)とminiBORG50ガイド鏡を載せて、M-GENオートガイダーのテストを実施した。 300秒露出で4枚撮影したが、撮影結果は良好であったので、 700mm程度の焦点距離の撮影にも使用できる精度があると考えられる。

・オートガイドの設定画面では、ガイド信号の反応係数等を赤緯・赤経独自に設定することが可能。 赤経のみの一軸ガイドにも対応しているので、オートガイド対応のポータブル赤道儀にも使用できるとのこと。

・オートガイダーに用いられているCCDの感度が高いので、ガイド鏡固定でガイド星が見つか点は大変便利。 スタンドアローン型なので、ノートパソコンが不要であるのも利点。

・コントローラーの液晶画面が小さく、スターブックTENなどの高機能コントローラーと比べるとやや見劣りがする。 また、カメラのゲインを大きくしすぎると、フォーカス画面にノイズが映し出され、 ガイド星が判別しづらくなる点は残念。

・制御ソフトウェアをパソコンにインストール後、コントローラーとパソコンをUSBケーブルで接続すれば、 パソコンからでも操作可能。

・液晶画面が小さい分、消費電力が極めて小さい。 電源確保が難しい郊外で使用する場合は大変ありがたい。

・撮影ごとにピクセルをずらす「Random Displacement」は、 コンポジット後の画像のクオリティを上げるのに有効な機能。 デジタル一眼レフカメラを制御する「Exposure」機能と組み合わせれば、 撮影終了までオートガイダー任せで撮影することができる。


まとめ

今回のテスト撮影を通じて、Lacerta M-GENオートガイダーは、シンプルなコントローラーながら、 反応係数の設定やガイド状況のグラフ表示など、 ベテランでも満足できる機能が盛り込まれたスタンドアローン型オートガイダーであるという印象を受けました。

また、ガイド用CCDのチップの感度の高さも特筆すべき点です。 ガイドマウントを使用してガイド星を探していた方にとって、 その作業から解放されるだけでも、このオートガイダーを導入するメリットがあるのではないでしょうか。

撮影地にパソコンを持ち出したくないユーザーや、 これからオートガイド撮影を始めてみようと考えている方にも、 選択肢の一つとしてお勧めできるオートガイダーだと思います。

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※KYOEI追記

このレビューは、M-GENの販売検討のため2015年1月に実施したテストレポートをそのまま記事としたものです。コントローラ液晶画面の解像度が低いため、ライブビューにおいて星とノイズの判別がしにくく、ガイド星のピント合わせにややコツが必要なことがわかりました。また、その点さえクリアすればオートガイダーとしての性能は非常に高いこともわかりました。

→そこで、、、
ガイド星のピント合わせなど初期の導入に戸惑わない「GSSセット」をご用意させて頂いております。ガイド鏡には距離指標とピントロックねじを備えたコーワ製のCマウントレンズを採用し、セットごとに取扱説明書でピント位置の目安も明示しましたのでセッティングが容易です。





LACERTA M-GEN スーパーガイダー
LACERTA M-GEN スーパーガイダー LACERTA M-GEN スーパーガイダー
LACERTA M-GEN スーパーガイダー LACERTA M-GEN スーパーガイダー

◎バリエーション
75mmまたは100mmのレンズを用いた2バージョンをご用意。更にそれぞれに、設置に便利なアルカスイス規格のプレート&クランプを追加した「アルカセット」を設定。アルカセットがおすすめです。
◎ご購入ガイド
MGEN-75GSSアルカ・・・2000mm程度の直焦点にまで対応しますので一般的なご使用には充分な性能です。
MGEN-100GSSアルカ・・・より長焦点なタイプです。強固に設置できるオプション「SR42」を選択できます。



AP-WM追尾撮影スターターセットとMGEN-75GSSアルカセットを使ったテストレポートです!


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Explore Scientific ED102WH鏡筒のインプレッション

Explore Scientific ED102WH鏡筒のインプレッション

Explore Scientific ED102WH鏡筒

Explore Scientific社は、天体観望ファンに人気のあるメーカーで、 コストパフォーマンスの高い超広角アイピースや天体望遠鏡を製造しています。 今回、Explore Scientific ED102WHを試用する機会を得ましたので、 星空を観望した印象を交えながら、望遠鏡の使用感をまとめてみました。


Explore Scientific ED102WHの外観と各部

Explore Scientific ED102WHは、口径102mm、焦点距離714mm、口径比がF7のアポクロマート屈折望遠鏡です。 対物レンズには、EDレンズを含んだトリプレット光学系が採用され、 諸収差を補正しています。 ED102WH鏡筒には、伸縮式のフードが採用されているため、 10センチクラスの屈折望遠鏡にしてはコンパクトというのが、箱を開けたときの第一印象でした。 フードを縮めたときの長さは約55cmと、一クラス下の8センチクラスの鏡筒並です。 手元にあったビクセンED103S鏡筒と比べると、そのコンパクトさが一段と際だちました(下画像参照)。 このぐらいの大きさならば、収納場所にも困らないでしょう。

Explore Scientific ED102WH鏡筒

ED102WHの前後分離式の鏡筒バンドには、持ち運びに便利な取っ手が取り付けられています。 鏡筒バンド下面には、汎用のアリガタ金具が固定されていて、 市販の赤道儀(ビクセンSXD2赤道儀など)にワンタッチで取り付けることが可能です。
望遠鏡を箱から取り出してまず目に留まるのは、フードの中の大きな対物レンズセルです。 鏡筒部分が細いこともあって、対物レンズを入れたレンズセルは大変目立ちます。 対物レンズキャップを外すと、ED102WHの心臓部とも言える3枚玉レンズが姿を現しました。 間近に見る口径102mmのレンズは存在感のある大きさで、星空観望への期待が膨らみます。
なお、レンズセルの外側には、光軸修正用のネジが設けられているので、ユーザーによる光軸調整も可能です。 ただし、届けられた時点で光軸は完全に合っていましたので、通常の用途であればユーザー側で調整する必要はないでしょう。

Explore Scientific ED102WH鏡筒

アイピース等を取り付ける接眼部には、ラック&ピニオン式フォーカサーが採用されています。接眼装置には、減速微動装置が標準で付属していて、正確なピント合わせを支援してくれます。 また、このフォーカサーの動きは軽く滑らかで、クレイフォード式のフォーカサーのようなフィーリングです。 繰り出し機構に採用されているヘリカル形状のギアが、このスムーズな動きを生み出しているのでしょう。 フォーカサーの動きは軽快ですが、接眼部上部に設けられているドロチューブ固定用の2本のネジを締めると、 ドロチューブはしっかりと固定されます。 実際に双眼装置のような重い機材を取り付けて観望してみましたが、 機材の重みでドロチューブがズレ落ちることはありませんでした。

Explore Scientific ED102WH鏡筒

ED102WHの接眼部には、回転装置も設けられています。 フォーカサーと鏡筒部分の境目にあるネジを緩めると、接眼部を回転させることができます。 接眼部の向きを変えたりする時に便利な回転機構です。 ED102WHには、天体観望に便利な、2インチ-31.7mm変換アダプター付の2インチ天頂ミラーが標準で付属します。 一方、ファインダーはオプションとなっていて、通常の8倍50mmのタイプの他に、 照明装置が付いた正立8倍50mmタイプと、90度傾斜型の正立8倍50mmタイプを選択できます。

Explore Scientific ED102WH鏡筒

Explore Scientific ED102WH を使った観望

Explore Scientific ED102WH望遠鏡を赤道儀に載せて、天体観望を行いました。 最初は、夏の天の川の中で輝く星雲の観望です。 付属している2インチ天頂ミラーに、同社の視野68度タイプの低倍率の40ミリアイピースを取り付けて観望しました。 この組み合わせでは、倍率は約18倍になります。 天の川の方向に望遠鏡を向けると、針で突いたような微恒星が視野一杯に広がりました。 干潟星雲を視野に入れると、微恒星の中に淡いガスが浮かんでいるように見え、気持ちの良い眺めを楽しめました。 主要な星雲を観望した後、倍率を上げ、M22をはじめとした球状星団を観望しました。 星は隅までシャープで、中央部にはボール状に集まった星々がよく分解されていました。 輝星を視野に入れると、若干の色収差を感じることがありましたが、観望で気になるほどではありませんでした。 なお、ED102WHに天頂ミラーを使用する際には、付属の延長筒をドロチューブにねじ込む必要があります。

Explore Scientific ED102WH鏡筒

次に月を観望しました。 まず、月の全景を視野に入れ、月面全体の様子を確認しましたが、 屈折望遠鏡らしいコントラストの高い像で、色収差もほとんど感じられません。 更にアイピースを変えて、約150倍で月面クレーターを観望しました。 こちらもコントラストは良好で、クレーターや山脈の凹凸がよくわかります。 なお、月の欠け際を見ると、若干色収差が感じられました。 月を観望した後、南西の空で輝く土星も観望しました。 見頃を過ぎているため、土星の見かけの大きさは小さく、また暗くなっていましたが、 土星の環がよくわかりました。 入門機で人気の8センチクラスの望遠鏡と比べると、ED102WHは光量があるため、 このような惑星の観望も楽しむことができます。 ところで、ED102WHはバックフォーカスに余裕がある設計のため、 90度傾斜型の双眼装置を取り付けることが可能です。 上の写真では、バーダープラネタリウム社の双眼装置を取り付けていますが、 その他の機器も取り付け可能でしょう。 Explore ScientificED102WHは、双眼で星空を楽しみたい天文ファンにとって、 魅力的な光学系の一つではないでしょうか。


ED102WHで天体写真撮影

ED102WHは広角アイピースで人気を博している米Explore Scientific社製品であり、 どちらかというと観望用に製造された望遠鏡だと思いますが、 今回、笠井トレーディングED屈折用0.8倍レデューサーを使用して、 天体写真の撮影テストを行ってみました。 この組み合わせでは、ED102WHは焦点距離が約570mm、F値が5.6の光学系となります。 レデューサーの後ろにカメラマウントを取り付け、 天体撮影用デジタル一眼レフカメラのAstro60Dで撮影を行いました。 赤道儀には、ビクセンSXP赤道儀を使用しました。 下の写真は、この組み合わせで撮影した亜鈴星雲 M27です。 デジタルカメラの感度をISO1600に設定し、600秒露出で撮影しました。 写り具合がよくわかるように、カラーバランスを合わせただけの一枚画像を載せています。 全体画像の下に、星雲部分をトリミングした拡大画像も載せました。

Explore Scientific ED102WH鏡筒

Explore Scientific ED102WH鏡筒

撮影画像を見ると、亜鈴星雲の形がはっきり写し出されているのがわかります。 画像をよく見ると輝星の周りに青色にじみが若干発生していますが、 背景の星々はシャープで、コントラストも良好です。 下に、上の画像を各部分ごとにトリミングした拡大画像を載せました。 拡大画像を見ると、四隅でも星の形がほぼ円形を保っていることがわかります。 四隅でも光量は豊富で、周辺減光はほとんど目立ちませんでした。

下に、上の画像を各部分ごとにトリミングした拡大画像を載せました。 拡大画像をご覧いただくと、四隅でも星の形がほぼ円形を保っていることがわかります。 周辺光量が豊富なこともこの光学系の強みです。 空の条件にもよりますが、フラット補正を行わなくても天体写真の作品作りを楽しめそうです。

Explore Scientific ED102WH鏡筒

まとめ

Explore Scientific ED102WH望遠鏡は、同社の超広角アイピースを使って、 夜空に浮かぶ星雲・星団や月・惑星の観望を楽しむ方のために作られた天体望遠鏡という印象を受けました。 天体観望用アイピースを製造しているメーカーだけあって、 星空観望時に便利な2インチ天頂ミラーや接眼部の減速微動装置を標準で装備している点は、 観望ファンに喜ばれるでしょう。 口径10センチという大きさも、星空観望を気軽に楽しむのに適した大きさと言えます。 これ以上口径が大きくなると、より大きな架台が必要になり、取扱いも難しくなります。 一方、8センチクラスでは、天体を観望するには、少々物足りないと感じる時もあります。 ED102WHは、フードを縮めるとコンパクトになるので、フィールドに持ち出しやすく、 天体観測を始めたばかりの方でも扱いやすい大きさだと思います。 ED102WHは、光学性能や細部の造りという点では、国産の高級機には敵いませんが、 コストパフォーマンスの点で秀でた望遠鏡です。 双眼装置や広角アイピースを使って天体観望を楽しみたいユーザーにとって、 Explore Scientific ED102WHは一つの選択肢になるのではないでしょうか。

レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

ビクセンED81SⅡ望遠鏡の実写テスト

ビクセンED81SⅡ望遠鏡の実写テスト

ビクセン鏡筒

ビクセンの天体望遠鏡は、天体観測入門者からベテランまで幅広い層に人気があります。 望遠鏡のラインナップの中でも、対物レンズに特殊低分散ガラス(SDガラス)を使った屈折望遠鏡のシリーズは、 価格と性能のバランスが良く、特に天体撮影を始めてみようという入門者の方に人気があります。 今回は、このシリーズの中で天体撮影に人気の高いED81SⅡ鏡筒を使って天体撮影を行い、 その実力を探ってみました。


ビクセンED81Ⅱ鏡筒について

笠井トレーディングED屈折用0.8xレデューサー ビクセンのED81SⅡ鏡筒は、口径81mm、焦点距離625mm(F7.7)のアポクロマート屈折望遠鏡です。 本体のみの重さは2.3キロと軽く、手軽に持ち運びできる大きさで、鏡筒バンドには取っ手も付属しています

ED81SⅡを使って星雲や星団を撮影する際は、レデューサーレンズを使用します。 ビクセンからは、純正オプションとして、ED(F7.7用)レデューサーが用意されています。 この純正レデューサーを使用すると、焦点距離が625mmから419mmに短くなり、 光学系のF値も7.7から5.2へと明るくなるので、暗い天体も撮影しやすくなります。

今回の実写テストでは、純正のレデューサーではなく、 笠井トレーディングから発売されている、ED屈折用0.8xレデューサーを使用しました。 笠井トレーディングのレデューサーを使用すると、ED81SⅡは焦点距離が500mm、F値は6.2前後となります。 ビクセンのレデューサーはドロチューブにねじ込んで固定しますが、 笠井トレーディングのレデューサーは、右上画像のようにTリングを使ってデジタル一眼レフカメラに接続し、 望遠鏡の2インチスリーブに差し込んで使用します。 純正に比べるとF値はやや暗くなりますが、汎用性が高いので、他社製屈折望遠鏡にも使用できる利点があります。

ところで今回テストしたビクセンED81SⅡは、ED81S鏡筒の後継機です。 新旧モデルでは、光学系には変更はありませんが、 鏡筒バンドを固定しているアリガタ金具(スライドバーM)の形状が異なっています。 今回の実写テストでは、ED81SⅡの鏡筒バンドを固定しているスライドバーを取り外し、 協栄産業オリジナルの汎用アリミゾプレートDXを使用して赤道儀に固定しました。


オートガイドシステムについて

K-Astecオートガイドシステム 赤道儀の追尾状況を監視するオートガイドシステムには、K-ASTEC Q5L-100GSS アルカセットを使用しました。 このセットには、オートガイダーとして定評のあるQHYCCD社のQHY5IL-IIM小型カメラと、 コーワの焦点距離100mmのCマウントレンズ、それらを固定するための専用バンドとフード、 アルカスイス規格のプレートとクランプが付属しています。
右上は、このオートガイドシステムをビクセンED81SⅡに載せたところです。 写真をご覧いただければわかる通り、非常にコンパクトなオートガイドシステムになっています。 ビクセンED81SⅡとの接続方法は、まず鏡筒バンドに取り付けられた取っ手を外し、 そこにK-ASTEC ビクセン純正バンド用トッププレート TTP40-190を取り付け、 K-Astecのアルカスイス規格のクランプを取り付けています。
なお、QHYCCD社のQHY5IL-IIMカメラはUSBカメラですので、このオートガイドシステムを動かすには、パソコンが必要です。 今回は小型のノートパソコンを使用し、PHDGuidingを使ってオートガイド撮影を行いました。










実際の撮影

上記の機材を郊外に持ち出し、夏の星雲を撮影しました。 撮影に使用したカメラは、天文用冷却デジタル一眼レフカメラのAstro60Dで、 赤い星雲を強調するため、アイダス社のHEUIB-IIフィルターをEOS-MFA アダプターを用いてカメラマウント内に装着しています。 赤道儀はビクセンのSXD赤道儀を使用しています。

撮影対象には、はくちょう座で輝く網状星雲を選びました。 下は、カメラの感度をISO1600に設定し、露出時間600秒で撮影した画像です。 画像処理は行っておらず、液晶モニターに映し出されたままの画像です。

網状星雲

撮影に使用したHEUIB-IIフィルターの効果もあるかもしれませんが、目立つような周辺減光は発生していません。 これならフラット補正を施さなくても良さそうです。 次に、この画像の各部分における星像を、画像を拡大して確認してみましょう。

ピクセル等倍画像

上が撮影画像の各ポイントでのピクセル等倍画像です。 細かく見ると、四隅で若干星の流れ方が異なっていますが、隅までほぼ真円を保っていると言えるでしょう。 色収差も目立たず、画面全体で星像がほぼ均一に保たれていることがわかります。

下は、画像処理後の網状星雲の写真です。 同じ条件で2枚連続撮影した画像をコンポジットした後、 トーンカーブでコントラストを高め、若干色彩も強調しています。 周辺減光は目立たなかったので、フラット補正は行っていません。

画像処理後の網状星雲

撮影時は黄砂の影響もある透明度の悪い夜空でしたが、HEUIB-IIフィルターの効果もあって、 星雲をコントラストよく浮かび上がらせることが出来ました。 前回のレビューで、HEUIB-IIフィルターとアイダスLPS-D1フィルターとの比較テストを行いましたが、 HEUIB-IIフィルターは、赤い星雲の撮影に使いやすいという印象を改めて受けました。


まとめ

撮影の様子 ビクセンED81SⅡと笠井トレーディングのED屈折用0.8xレデューサーを使用した今回の天体撮影では、 まず四隅まで星像が均一であることに良い印象を持ちました。 また、撮影画像の周辺減光が少ない点も好印象でした。

一方、純正レデューサーと比べて、F値が暗いのがこの補正レンズの弱点と言えそうです。 F値が約6.2と最近の光学系の中では少々暗いので、天体を明瞭に写し出すために、ISO1600で10分間の露出が必要でした。 しかし、天体撮影を始めたばかりの方にとって、フラット補正(周辺減光補正)は大変面倒です。 フラット補正の処理を省くことが出来るのは、この組み合わせの魅力と言えるでしょう。

K-Astecの小型オートガイドシステムは、銀塩フィルム時代のオートガイダーを知っている世代にとっては不安になってしまうほど小さなシステムですが、 今回の撮影では十分に機能を果たしてくれました。 ビクセンED81SⅡのコンパクトな鏡筒と相まって、軽量でかつ使いやすい直焦点撮影システムになっています。 長焦点撮影の場合を除き、今後はこのようなガイドシステムが主流になっていくのかもしれません。

今回のテスト撮影を通じて、ビクセンED81SⅡの天体写真適正を改めて確認することが出来ました。 500ミリという焦点距離は、夏や冬の夜空に輝く星雲や星団の撮影に使いやすい焦点距離です。 これから天体撮影を本格的に始めたいと考えている方や、 今まで300ミリ前後の望遠レンズで撮影してきた方のステップアップ機材として、 お勧めできる組み合わせだと思います。

レビューはこのセットで撮影しました↓ ビクセンED81S鏡筒+SXD2赤道儀オートガイド撮影スターターセット

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レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

ビクセンSXD赤道儀 1.【準備編】

ビクセンSXD赤道儀 準備編

SXD赤道儀

ビクセンから天体写真ファン待望のSXD赤道儀が登場しました。SX赤道儀を内部の素材から見直し、剛性も精度もアップしたその赤道儀の実力はどれほどのものでしょう。今回、天体写真撮影に使用してみましたので、気になる使用感をまとめてみました。


SXD赤道儀の外観

SXD赤道儀+ED103S望遠鏡

今回使用したのはピラー仕様のSXD赤道儀。組み立てたときの外観は、ホワイト色のピラーがすらっと立ち上がっている こともあって、とてもすっきりした印象を受けます。強度的にも安定感がある立ち姿をしています。

SX赤道儀と比べると、モーターカバーがブルーからホワイトに変わったことで、より高級感が感じられるようになりました。全体的に従来の赤道儀のように無骨な感じはなく、女性的でスマートな赤道儀だと思いました。赤道儀表面もフラッシュサーフェイス化されていますので、モーターの出っ張り等を気にせず持ち運びができるのが美点です。遠征で移動させるときには助かる構造ですね。

右の写真はこのSXD赤道儀ビクセンED103S望遠鏡を載せた全景写真です。SX赤道儀シリーズは極軸の下側にモーターが内蔵されているので、バランスウェイトが少なくて済むのが美点の一つです。このシステムでは1.9キロのウェイト一つでバランスが取れています。



SXD赤道儀の組み立て

まずはピラーの組み立てです。ピラーの脚部分は3つの大きなネジを用いてピラー柱に締め上げる構造です。少し手間がかかりますが、一度組み上げてしまえば外すことはほとんどない部分です。というのはこのピラー柱部分は、(取扱説明書に記載されているわけではありませんが、)市販のレンチを使えば下の写真のように上下に分割できます。ピラー柱の下部分に上部分を被せて横からのネジで固定する方式です(下写真の左から右のように)。

ピラーの3つの脚部分を毎回取り外す必要がないので、これならピラーを遠征撮影に持っていっても素早く設置することができます。

ピラー取付の様子(右から左へ)

SXD赤道儀本体は、ピラー架頭を本体底に取り付けた後、ピラー柱に載せて横からネジで締め上げます。一般的な方法ですが、少し残念なのは取付ネジのサイズがピラー分割部分と異なることです。同じネジサイズだと使用する六角レンチも1種類で助かります。遠征撮影時の設置、撤収作業はなるべくシンプルにいきたいですから、できれば今後の改善をお願いしたいところです。

ピラーに赤道儀を載せる様子

後は引き出し式のバランスシャフトを伸ばしてウェイトを取り付け、鏡筒を載せてスターブックを繋げば設置完了です。要領さえ得れば10分程度で組み立てられるでしょう。今回使用したビクセンED103S望遠鏡は、取っ手がついているので、赤道儀に載せるのも楽々でした。こういうちょっとした装備はありがたいです。

赤道儀に望遠鏡を載せる様子


極軸設定とホームポジション

天体写真を撮る時は正確な極軸合わせが必須です。マニュアルを読みながら、赤道儀の極軸を天の北極に正確に合わせましょう。このSXD赤道儀には極軸望遠鏡が標準装備されています。時角計算の必要ないタイプですから、順を追えばどなたでも簡単正確に極軸を合わせることができると思います。水平出しに必要な水準器も極軸望遠鏡部分に装備されています。

付属している極軸望遠鏡は6倍20mmで南北対応のモデルです。暗視野照明装置も内蔵されており、覗きやすいモデルです。できればもう少し倍率が高いと見やすい気もしますが、上位機種のアトラクスと同じタイプですので十分な備え付け精度を得ることができるでしょう。

極軸望遠鏡

極軸を合わせたら、いよいよ目的の天体を視野に導入してみましょう。まずは鏡筒を西向きに向け、ホームポジションを取るところから始めます。最初はマニュアルを読みながら順を追って操作していきましょう。簡単な操作ですから操作方法にとまどうことはないと思います。何度か使って慣れてしまえば、マニュアル無しで操作できると思います。


スターブック(STAR BOOK)

SXD赤道儀とスターブック

SXD赤道儀にはSX赤道儀同様、赤道儀をコントロールするスターブックが付属しています。SXD赤道儀に標準付属するスターブックは最新バージョンですので、PEC機能やバックラッシュ補正機能など、撮影を助けてくれる多種多様な機能を使うことができます。

もちろん従来のSXユーザーもビクセンの公式サイトでバージョンアップすることができます。SXユーザーでまだバージョンアップされていない方は、是非ご利用ください。

このスターブックは、今回初めて使ってみたのですがとても便利なツールです。大きなカラー液晶画面にビジュアルで表示されますから、イメージも掴みやすく楽しく操作することができます。赤道儀を使い慣れているベテランの方ですと、なんだか子供だましのような気がして敬遠されるかもしれませんが、全くそんなことはありません。実は私も今回使ってみるまでは「そんな携帯ゲームみたいなもので・・・」と思っていましたが、使ってみてちょっとしたカルチャーショックを受けました。

このスターブック、SX赤道儀発売当初の初期バージョンのものは、動きも遅く画面が切り替わるまで数秒かかったそうですが、SXD赤道儀に付属する最新バージョンは全くストレスを感じさせず、サクサク動いてくれます。パソコンともクロスLANケーブルを繋ぐと通信が可能になります。アストロアーツ社のステラナビゲーター7,8からも赤道儀の制御が 可能ですから、本格的な撮影派の方にも助かるでしょう。

ちなみにスターブックの接続は赤道儀と専用ケーブル1本で結ぶだけです。電源も赤道儀側から供給されますので、コードが多くて絡まることもなくスッキリしています。赤道儀から外せば、単独のスターチャートとしても利用可能になります(この場合はスターブック本体に12V電源を差し込む必要があります)。



自動導入と恒星時追尾

赤道儀を設置し極軸を合わせた後、ホームポジションを取れば自動導入を開始できます。スターブックに表示される任意の星を選べば、その方向へと赤道儀はスイングを始めます。もちろんまだアライメントが済んでいませんので、視野内中央に目的の星は捕らえられませんが、おおよその方向は向いてくれます。

自動導入中のSXD赤道儀

自動導入が終わって目的方向におおよそ向いた後、モーターを動かして目的星を正確に視野中央に導入します(これを「アライメント」と呼びます)。1つの星でアライメントを行えば、次からは100倍の視野内に目標の天体が入ってきてくれます。デジタル撮影目的なら2つの星でアライメントしておけば十分でしょう。

自動導入は恒星時の1200倍速というだけあって、見た目もとても速く動き、素早く目標天体を捕らえてくれます。導入中の動作音は少し大き目ですが、設定で導入速度を落とすことで音を小さくすることも可能です。音が気になるベランダなどで夜間使用するときにはありがたい機能です。

恒星時追尾中の音はDCモーター独特のものです。比較的低い音ですので嫌な感じはしませんが、ステッピングモーターを使った赤道儀とは明らかに動作音が違います。言葉で表現すると「ジィンジィン」という感じでしょうか。

モーターの粗動と微動は、スターブックで細かく変えることができます。 スターブック上に表示されるチャートの拡大率に合わせてモーターの動作量が変更されますので、使い初めは少し使いづらいかもしれませんが、慣れればこちらの方が移動量をビジュアル的にイメージできて分かりやすいです。 モーター粗動時に望遠鏡視野内を覗くと、DCモーターらしいカクカクした動きですが、微動時はほとんど気になりませんでした。



PEC機能

SXD赤道儀発売と合わせたスターブックのバージョンアップで、PEC機能が追加されました。PEC機能は天体写真撮影を快適に行うための機能ですが、どのくらい効果があるのか実験してみました。

スターブック

その前にPECという言葉の説明です。SXD赤道儀をはじめ、星を追尾する赤道儀はギアとギアが組み合わされて駆動しています。ですので、どんなに精度良く作っても、ある程度は機械的誤差が生じてしまいます。もちろん観望では全く問題にならない程度のエラーですが、天体写真を撮るときには問題になってくるときがあります。そのエラーのことを「ピリオディック・エラー」とか「PE」と呼んでいます。

今回スターブックに追加されたPEC機能は、それらのエラーをソフトウェア上で補正する機能です。実際に使用するときは、コントローラーにピリオディックエラー量を学習、記憶させた後、それを再現することでソフトウェア的にエラーを低減させるようになっています。

デジタルカメラ(冷却CCDカメラ)を望遠鏡に取り付けて、ピリオディックエラーの量を測定してみました。オートガイダーの登場であまり問題にならなくなりましたが、やはり気になりますものね。下がその結果です。ピリオディックエラー量は±9秒角程度のようです。
※画像は10分露出のものです(SXD赤道儀はウォームホイール1周が約8分間となっています)。

ピリオディックエラー

次にPEC機能も利用してみました。実際にこの機能を利用してみるとPE量が大きく減るのがよくわかりました。そのPEC機能を使用したときのエラー量の様子が下の画像です。上と比べると見た目にも大きくエラー量が減っているのがわかります。測定すると±3秒角程度までエラー量が改善されています。私も今回初めて使ってみて、PECが優秀な機能であることがよくわかりました。

PEC機能を使ったときのエラー量

上記したように、PEC機能を利用するときには、あらかじめスターブックにPE量を学習させる必要があります。学習のためにウォームホイール1周分(約8分間)ガイドするのは手間がかかりますが、ガイド鏡を使いにくい星野撮影時などに威力を発揮しそうです。この結果を見ると、うまく使えばオートガイド無しで簡単な直焦点撮影もできるかもしれませんね。


オートガイド機能について

SXD赤道儀はオートガイド端子も備えています(スターブック本体にあります)。接続はRJ11端子ですので、SBIG社等の市販オートガイダーに接続することができます。 以前販売されていたビクセンのオートガイダーも接続できますが、この場合はマニュアルに従ってジャンパーピンを変更する必要があります。

オートガイド時のモーター修正速度は、スターブック上で変更することができます。恒星時の0.1倍というように変更できますので、使う撮影光学系にあった数値に設定可能です。この辺りはご自分の光学系に合わせて、いろいろな数値で試してみるのがよいでしょう。

▼SXD赤道儀は、SXD2赤道儀に生まれ変わりました。
ビクセン SXD2赤道儀

ビクセン
SXD2マウント

タカハシFSQ-85ED鏡筒 + ビクセンSXD2赤道儀 +
K-ASTECバンド撮影・眼視セット

レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

ビクセンSXD赤道儀4. 【タカハシSKY90編】

ネイチャーショップKYOEIオススメ!初めての天体望遠鏡☆購入ガイド
これから天体観測を始めてみたいけど、「どの望遠鏡を選んだらいいのかなぁ」とお悩みの皆様に、KYOEIがオススメする初心者にも安心な望遠鏡をご紹介します!
小~中学生でも扱えます
ビクセン ポルタII A80Mf

Vixen(ビクセン)ポルタII A80Mf

ビクセンのベストセラー「ポルタII経緯台」に、口径8cmの屈折望遠鏡「A80Mf」を搭載したセットです。この「ポルタ経緯台」は大変頑丈なので、初心者の方にも細かい操作が容易で扱いやすいです。また、組み合わされるA80Mf鏡筒は、オーソドックスな口径と焦点距離で性能が安定しており、月・惑星・二重星・明るい星団などが楽しめます。小学校高学年の方向けに当店一番人気の製品ですが、大人でも充分楽しめる性能を持っています。少し手を加えると更によくなりますので商品ページに掲載のおすすめオプションもあわせてご検討ください。

スカイウォッチャー DOB 8 (S) 【20cmドブソニアン】

Sky-Watcher(スカイウォッチャー)DOB 8 (S) 【20cmドブソニアン】

ドブソニアンですので組み立てるたびに光軸あわせをしなければならない、微動装置がないので導入・追尾が大変、など不便なことはたくさんあります。そのかわりに20cmの大口径望遠鏡がぐっとお求めやすい価格で手に入ります。望遠鏡を組み立てて、調整をして、星を追いかける。一連の作業すべてをエンジョイしてください。はじめは四苦八苦すると思いますが、ふと気がつけばあなたはびっくりするほどの上級者になっているかも知れません。

CELESTRON(セレストロン)C8AL-XLT鏡筒+ADVANCED-VX赤道儀セット

望遠鏡にはそれぞれに得意分野があり、すべてを完璧にこなす万能な望遠鏡というものは存在しません。そんな中でも比較的オールマイティに楽しめる鏡筒のひとつとして人気なのがC8AL-XLT鏡筒です。2000mmの長焦点とシュミット補正板による穏やかな遮蔽は月や惑星の高倍率観望に威力を発揮し、200mmの大口径による集光力は球状星団や惑星状星雲を余裕を持って捉えます。自動導入赤道儀を組み合わせた当セットなら宇宙の隅々まで飽きることなく探訪できるでしょう。弱点としては広がりのある星雲星団に必要な低倍率があまり出せないので下記のような双眼鏡が併用できればベストです。

セレストロン C8AL-XLT鏡筒+ADVANCED-VX赤道儀セット

セレストロンサファリ BC25x100双眼鏡

大口径10cmの双眼鏡です。ひとみ径4mmという天体観測に適した明るさで、25倍・3度の実視界が得られます。この明るさと広い実視界というのは双眼鏡だからこそ実現するもので、長焦点の望遠鏡では決して得られません。アンドロメダ銀河、H-χ二重星団、オリオン大星雲、プレアデス星団等々、一度は見てみたかった星雲星団を捉えるもよし、天の川周辺など夜空を悠々と流すもよしです。最低限マスター三脚クラス以上の頑丈なカメラ三脚を別途ご用意の上でお使いください。上記のC8AL-XLT+Advanced-VX赤道儀セットと組めば良いコンビになります。

笠井/ビクセン CAPRI-102ED+GP2赤道儀・三脚セット
大人の趣味・入門機に!

Kenko(ケンコー)Vixen(ビクセン)KYOEIオリジナル
SE102鏡筒+ポルタII経緯台 オリジナルフルセット

アクロマート10cmの大口径ながら、焦点距離は500mmという短焦点な設計となっています。EDレンズを使用せずに短焦点化しているため、盛大な色収差が出てしまい高倍率は苦手である反面、大きな射出瞳径で広い視野を明るく見ることが得意です。こういった望遠鏡をRFT(リッチフィールドテレスコープ)と呼び、星雲・星団・銀河などディープスカイの観望には大変適しています。玩具級の望遠鏡で「月しか見られなかった」という準初心者の方の買い直しにもお勧めです。

KYOEIオリジナル ケンコー SE120鏡筒 + ビクセン ポルタII経緯台 オリジナルフルセット
KYOEIオリジナル ポルタII ED80Sf ESセット

Vixen(ビクセン)Explore Scientific(エクスプローラー・サイエンティフィック)KYOEIオリジナル ポルタII ED80Sf ESセット

月のクレーターや土星の輪っかを綺麗に見たい。将来天体写真にも対応できるくらいの良いモノが欲しい。となりますとEDレンズを使用した屈折がおすすめです。ED屈折鏡筒は色にじみが少なく、ノーマルレンズの鏡筒と見比べれば同じ倍率でも細部まで綺麗にくっきりと見え、より感動的です。同じ画面サイズのテレビでも、アナログ放送よりフルハイビジョン放送のほうがより臨場感があるのと似ています。初めてのちょっと良いED屈折のセットなら「ポルタII ED80Sf ESセット」がおすすめ。低価格ながら扱いやすい「ポルタII経緯台」に、高いポテンシャルを持った「ED80Sf鏡筒」と、高品質で広視界なESアイピースを組み合わせました。いずれも当面買い換える必要のない高性能な製品ばかりで将来無駄になるものがありません。天体写真に発展するには赤道儀の買い足しが必要ですが、赤道儀を買ってからもチョイ見のときには「ポルタII経緯台」が便利で活躍します。

スカイウォッチャー New GOTO DOB 12 【30cm自動導入ドブソニアン】

Sky-Watcher(スカイウォッチャー)New GOTO DOB12 【30cm自動導入ドブソニアン】

まるで公共天文台に設置してある望遠鏡ような口径を個人で所有する。これこそドブソニアンの醍醐味です。DOB GOTOなら自動導入・自動追尾付きなので、セッティングさえ完了すれば、あとは楽々と観望を楽しむことができます。30cmあれば見えるものが違ってきます。ちょっとかさばりますが頑張って車に積み込んでアウトドアへ持ち出せば、そこには別世界があなたを待っています。

ご予算1~2万円での天体観測

1~2万円のご予算であれば、双眼鏡を用いた天体観測がオススメ。
その際のポイントは「三脚」です。三脚を使用して双眼鏡を固定すれば、
見える星の数はグッと増え、ブレのない安定した星像を楽しむことができます。

セレストロン SkyMaster 15x70

CELESTRON(セレストロン)SkyMaster (スカイマスター) 15x70

15倍の高倍率と70mmの大口径を持つ対空双眼鏡。このクラスは天体観測が大変おもしろく、「フジノン 16x70FMT-SX」「ニコン 18x70IF WF」「キヤノン 15x50IS」の3機種が各メーカーを代表する天体観測向き双眼鏡として知られています。これら3機種の価格帯が10万円前後であるのに対し、「セレストロン スカイマスター15x70」は、わずか10分の1程度のお値段で手に入ります。さすがに、フジノン・ニコン・キヤノンと同等というわけにはいかず、像の鮮明さ・明るさ・視界の見やすさなど見え方に違いはありますが、それでも迫力ある月のクレーター、木星のガリレオ衛星、散開星団などが初心者の方に存分に楽しめます。倍率が高いため、使用には三脚が必須です。家庭用の小型三脚でも使えますが、大きく伸びて頑丈な三脚でご使用頂くと、より快適に、より鮮明な像を楽しめます。



天体写真を撮ってみたい方にはこちら↓

初めての赤道儀購入ガイド


天体写真を撮影するには赤道儀が必要です。写真においては追尾性能の良し悪しが如実に表れますので高性能な赤道儀を選択することが重要となります。用途やご予算にあった適切な選択をしてください。

ビクセンSXD赤道儀 2.【天体写真編】

ビクセンSXD赤道儀 天体写真に挑戦編

SXD赤道儀+ED103S望遠鏡

ビクセンSXD赤道儀ED103S屈折望遠鏡を載せて、本格的な天体写真撮影に挑戦です。 今回は、Webカメラや冷却CCDカメラなどのデジタル機材を用いて、SXD赤道儀の実力を探ってみました。


惑星の観望と撮影

今は木星が見頃です。SXD赤道儀ED103S望遠鏡を載せて、シーズンを迎えた木星を観望してみました。今年の木星は南中高度が低く、条件はとても悪いのですが、SXD赤道儀に載せたED103Sは屈折望遠鏡らしい安定した像を見せてくれました。コントラストも良好で縞模様が濃く見えます。色収差もほとんど気になりません。 できればもう少し口径が大きい方が惑星観望には理想的ですが、使い勝手の良さと見え味を考えると素晴らしいものでした。

ED103Sで撮影した木星

観望の後、Webカメラ(ToUcamPro)を取り付けて木星の撮影も行いました。上が今回撮影した木星の画像です。木星本体の縞模様の様子もよく写ってくれました。このくらい写ってくれると惑星写真も楽しいですね。なお撮影システムは、LV20mmアイピースを使って像を拡大し、カメラアダプターSXの後ろにカメラマウントを介してWebカメラを取り付けています。


直焦点撮影に挑戦

SXD赤道儀とED103Sで撮影したペリカン星雲

SXD赤道儀ED103S望遠鏡、それに天体用デジタルカメラのST2000XM冷却CCDカメラを使って、直焦点撮影も行ってみました。今回のターゲットは、夏に人気がある散光星雲「ペリカン星雲」です。

今回の撮影システムでは、ED103SにビクセンのEDレデューサーを取り付けて撮影を行いました。また撮影は光害が多い都市で行いましたので、Hαフィルターを使用しました。

右の画像がその撮影した写真です。大きな画像はSXDギャラリーページに載せていますので、あわせてご覧ください。

気になる撮影中のガイド精度ですが、結論から言うとオートガイドの動作はとても安定していました。撮影した画像を見ても星は正円を保っており、ST2000XMの小さなCCDチップ内でオートガイドが成功したのを物語っています。今回、20分露出の4枚連続撮影を2晩に分けて実施しましたが、すべてガイドは成功していました。

オートガイドの様子を順を追って見ていきましょう。今回用いたオートガイダーは、撮影に使った冷却CCDカメラST2000XMに内蔵されているガイド用CCDです。オートガイド接続端子は「準備編」に記載したようにスターブックに付属しています。その端子にケーブルを繋いでオートガイドを実施しました。

オートガイドを実施する前には、赤道儀の動きを学習させるための「キャリブレーション」という作業が必要です。 オートガイド用ソフトのボタンを押すだけの簡単な作業ですが、赤道儀によっては失敗が多い項目でもあります。今回のSXD赤道儀では、このキャリブーレーション作業は、すんなりと成功しました。下がキャリブレーション実施後の様子を移動量と角度で示した結果です。 これを見ると赤緯と赤経軸はきっちり直交していて、SXD赤道儀の機械精度の良さを感じました。

キャリブレーションの様子

またオートガイド時の修正動作の様子も、修正信号のログファイルを保存して検証してみました。

下は20分露出中のエラー量の推移を示したグラフです。これを見ると、赤緯軸、赤経軸とも大きく暴れることなく安定してガイドしていることがわかります。実際のガイド撮影中もオートガイド画面を安心して見ていることができました。
※画像をクリックすると大きなグラフをご覧頂けます

ガイド中のエラー量推移グラフ

今回の撮影システムは、530mmという比較的短い焦点距離でしたが、撮影に用いたCCDチップはとても小さく感度の高い ものです。APS-Cサイズが一般的なデジタル一眼レフカメラに換算すると、1000mm程度の望遠鏡を用いたときと同じ拡大率です。 その中でしっかりガイドを成功させるSXD赤道儀は、なかなか安定感がある赤道儀だと再認識できました。ハイアマチュアの期待にも応えてくれる赤道儀だと思います。

なお、今回の天体写真撮影はPEC機能OFFで実施しました。PEC機能を使えば、より精度の高いガイド撮影も可能になってくると思います。


撮影者から

最後まで読んで頂きまして、ありがとうございます。撮影時期がちょうど梅雨の時期にかかってしまいましたので、SXD赤道儀の使い方を練習する時間もほとんど取れず、いきなりの本撮影になってしまいましたが、赤道儀はしっかりと星をガイドしてくれました。 お陰で満足できる写真を撮ることができ、SXD赤道儀には感謝しています。

今回は撮影画像がHα写真だけとなってしまいましたが、SXD赤道儀を使った天体写真をギャラリーページに掲載しています。

また、SXD赤道儀を使うに当たってのポイントや、ちょっとしたアドバイスを今後掲載していく予定です。どんな高価な機材でも、その特性を活かさないとコンスタントによい天体写真は撮れません。 私がSXD赤道儀を使う上で注意していること、注意して欲しいことなどを中心に、天体写真撮影に役立つ情報を掲載していくつもりです。お楽しみに!

▼SXD赤道儀は、SXD2赤道儀に生まれ変わりました。
ビクセン SXD2赤道儀

ビクセン
SXD2マウント

タカハシFSQ-85ED鏡筒 + ビクセンSXD2赤道儀 +
K-ASTECバンド撮影・眼視セット

レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

ビクセンSXD赤道儀 3.【SXDギャラリー】

ビクセンSXD赤道儀 天体写真ギャラリー

SXD赤道儀を使って撮影した天体写真を展示しています。

サムネイル画像をクリックすると大きな画像が表示されます。是非ご覧ください。新しい写真を撮り次第、更新していきますのでお楽しみに。


アンドロメダ大銀河 撮影機材
アンドロメダ銀河

タカハシSKY90望遠鏡SXD赤道儀

フラットナーレデューサー使用

ニコンD50カメラ

露出時間:50分
(ISO1600,5分×10枚)

撮影地:兵庫県神河町


網状星雲 撮影機材
網状星雲

ビクセンED103S望遠鏡, SXD赤道儀

ビクセンEDレデューサー使用

SBIG ST2000XMカメラ

露出時間:180分
(L:15分×8枚,RGB:各10分×2枚)

撮影地:岡山県吉永町


ペリカン星雲 撮影機材
ペリカン星雲

ビクセンED103S望遠鏡, SXD赤道儀

ビクセンEDレデューサー使用

SBIG ST2000XMカメラ

露出時間:160分(20分×8枚)

撮影地:兵庫県宝塚市

※こちらに載せている画像のプリントは店頭に展示しています。
協栄産業大阪店にお立ち寄りの際には是非ご覧ください。

▼SXD赤道儀は、SXD2赤道儀に生まれ変わりました。
ビクセン SXD2赤道儀

ビクセン
SXD2マウント

タカハシFSQ-85ED鏡筒 + ビクセンSXD2赤道儀 +
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SXD赤道儀インプレッション 1.【撮影のコツ編】

天体写真撮影のコツ

SXD赤道儀+タカハシSKY90望遠鏡

望遠鏡を使った天体写真撮影は、正確に星を追尾する必要があるため、初めて撮影してみるとなかなか上手くいかないものです。でもちょっとした点さえ注意して撮影すれば、撮影の成功率がグンと上がり、天体写真撮影がより楽しくなること請け合いです。天体写真撮影で役立つコツをまとめてみました。


望遠鏡の設置場所に注意

望遠鏡を使った星空の観望でしたら、どんな場所に機材を設置してもあまり問題は起きませんが、写真撮影となると少し注意が必要となってきます。それは天体写真撮影では、何十分(時には何時間)も星を連続して撮影するのです。ですから地面が柔らかかったり、ぐらぐら不安定だと写真撮影中に天体望遠鏡が動いてしまいます。せっかく赤道儀が星をキッチリ追いかけてくれていても、これでは星が流れて写ってしまいます。注意したい点です。

望遠鏡を設置する地面には、コンクリートやアスファルト、土、砂利などいろいろあります。私の経験ではコンクリートが最も安定していました。アスファルトも見た目は硬そうですが、場所によってはひび割れたり、柔らかくなっているところがあるので設置するときは注意が必要です。

望遠鏡の設置場所いろいろ


三脚フラットナーを使おう

特に望遠鏡の接地面が土などの柔らかい地面の場合は、三脚やピラーをそのまま立てると、時間と共に機材が徐々に沈み込んでいってしまいます。このときは三脚フラットナーと呼ばれる、三脚の下敷きを使用するようにしましょう。これを使うと接地面の面積が広がり、安定度が格段に増します。

またフラットナーの中には、アジャスター機能が付いた製品もあります。これを使用すると三脚やピラーの高さを微妙に調整できるようになります。SXD赤道儀の極軸望遠鏡は水平出しは不要ですが、ある程度は水平に保っていた方が機材が安定します。それにいつも架台の水平を確認するようにすれば、北極星の導入がスムーズに行えるようになります(大きく撮影地の緯度が変わらない限り、赤道儀を水平に振るだけで北極星が導入できます)。特に地面が傾いた観測地で撮影される方は、こちらがお勧めでしょう。

三脚フラットナー


バランスを合わせよう

機材を設置し終えたら、必ず赤道儀の赤緯赤経回りのバランスを確認しましょう。下の比較写真でもわかりますが、カメラを付ける前と後では望遠鏡のバランス位置や、バランスウェイトの量などが変わってきます。観望から撮影に移る際には、チェックするようにしましょう。

SXD赤道儀のバランス

バランスが大きく崩れたまま撮影を行うと、星の追尾状態が悪くなり、時には赤道儀がカクッと動いて星が二重に写ったりすることがあります。赤道儀にも悪い影響を与えることがありますから、必ずチェックするようにしましょう。オートガイドを使って追尾するときも、もちろんバランスは重要です。

マッチプレートなどを使って、撮影用鏡筒とガイド鏡を赤道儀に同架するときには、特に赤緯回りのバランスが崩れやすくなります。完全にバランスを合わせることは困難ですが、どちらか一方が極端に重くならないように注意しましょう。 SXD赤道儀用に発売されているビクセンのマッチプレートやKYOEIオリジナルスライディングプレートは、プレートをスライドして赤緯側のバランスを取りやすく作られています。撮影ごとに載せる機材が変わる方は、こういった載せてからバランスを調整できるアイテムを使うのがお勧めです。


極軸合わせは正確に

SXD赤道儀には、赤道儀の赤経軸(中心軸)と天の北極を正確に合わすための極軸望遠鏡が付属しています。観望の時はラフな極軸合わせでかまいませんが、写真撮影の時は極軸合わせは重要です。時間がかかってもできるだけ正確に合わせましょう。

極軸合わせはマニュアルに沿って、リングレベルの水平出し、観測地の経度補正、時刻と日付の設定を行い、極軸望遠鏡の視野内に今現在の北極星の導入位置を表示させます。その後、写真の水平と垂直を調整するレバーを使って北極星を指定位置まで移動させていきます。そして最後に高度を固定するためクランプを締めますが、この時強く締めすぎると、せっかく導入した位置が狂ってしまいます。それほど強く締めなくても問題ありませんので、軽く締めるようにしましょう。

また、このクランプを締めたまま垂直微動ネジを動かそうとすると、ネジが滑って垂直微動ネジのねじ山を舐めてしまうことがあります。垂直微動ネジを動かすときは、かならず高度固定クランプは緩めるようにしましょう。

SXD赤道儀の方位調整ネジ


夜露対策は重要です

冬の満天の星空を見ながらの天体写真撮影はとても寒いものの、一晩中晴れれば撮影結果も楽しみで気持ちのよいものです。でも機材を片づけるときに、撮影に使った望遠鏡やカメラレンズのレンズを見ると『夜露が落ちてレンズが真っ白!今日一晩の撮影の努力が水の泡・・・』ということも天体写真を撮るようになると一度は経験することです。こんなことのないよう、望遠鏡のレンズやカメラレンズには必ずヒーターを巻くようにしましょう。

レンズをヒーターで少し温めておくと、夜露はレンズつかなくなり一晩中クリアな視界で撮影を楽しめます。これは撮影に限ったことでなく、観望の時にも重要なアイテムです。夜露が付いたレンズをそのまま放置しておくと、レンズにカビが生えてしまうこともあります。望遠鏡を長持ちさせる上でも、湿度が高い時には必ず望遠鏡やカメラレンズにヒーターを巻くようにしましょう。

使用するヒーターは12Vバッテリーで動くタイプが便利です。レンズを温めることができればよいので、カイロでもよいのですが、市販のポケットカイロは屋外に放置しておくとすぐに発熱しなくなり、意味をなさなくなります。また熱くなりすぎることもありますので、パワーを調整できる望遠鏡用のヒーターが使いやすいでしょう。

ケンドリックヒーター

▼SXD赤道儀は、SXD2赤道儀に生まれ変わりました。
ビクセン SXD2赤道儀

ビクセン
SXD2マウント

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SXD赤道儀インプレッション 2.【ピント合わせのコツ】

ピント合わせ 天体写真撮影のコツ

ピントの位置

天体写真を撮る上で最も重要なポイントは、正確にピントが合わせられるかどうかです。 ピントがずれていると、シャープな像を結ぶ高性能望遠鏡でも、星はボーッとして曇ったガラス越しに 撮った写真のようになってしまいます。 オートフォーカスが働かない天体望遠鏡でのピント合わせは意外と難しいですが、コツさえ掴めば 比較的簡単に合わせられるようになります。ここではそのピント合わせのコツをまとめました。


カメラのファインダー越しでは難しい

一眼レフカメラにはファインダーが付いていて、天体望遠鏡に取り付ければ今見えている視野を確認 できます。でもこのファインダーから見える星は意外と暗いものです。月などの明るい対象でしたら いざ知らず、星ですと1等星や2等星の明るい星しか見えません。

それにファインダーは視野の拡大率が低いので、これを見ながら正確にピントを合わせるのは至難の 業です。ファインダーを通して「これで合ったかな」と思って撮ってみたのが下の左の写真です。 同じ望遠鏡で撮った右の写真と比べると、星が呆けているのがわかります。 ファインダー越しでのピント合わせは、おおよそのピント位置を確認することはできますが、 正確に合わせるには不向きと言うしかないでしょう。

ピントの違い


マグニファイアーを使う

カメラによっては、ファインダーの像を拡大できる「マグニファイヤー」というオプションツールが利用できます。 これを使えばファインダーの像を何倍かに拡大できて便利です。しかし、ただでさえ暗いファインダーの像が より暗くなってしまうという弊害があります。 ですので、マグニファイヤーを使うときには、まずは一等星などの明るい星を視野中央に導入し、その星でまず ピントを合わせるのがよいでしょう。

ただこの方法も慣れないとなかなか難しいものです。ファインダースクリーンが透過式のものに交換できる タイプのカメラでしたらまだ合わせやすいですが、デジタル一眼レフカメラなら下の実際に撮ってみる方法 が確実です。

マグニファイアー


デジタルなら撮ってみるのが一番確実

デジタル一眼レフカメラなら撮った画像をすぐにモニタで確認できます。 こんな便利な機能を天体写真に活かさない手はありません。これを使ってピント合わせをしてみましょう。

まずは視野中心に明るめの星(2等星くらい)を導入します。例えばオリオン座の星々ですと 三ツ星のどれかの星が最適でしょう。 そしてファインダーを覗いてある程度までピントを合わせます。もちろんおおよそでかまいません。 その後実際にこの星を撮ってみるのですが、その前にカメラの感度をめいっぱいまで上げておきましょう。 ISO1600などに設定して数秒の露出で星が写るようにするわけです。 この状態でまずは星を写してみます。

液晶モニタに星を映した例

星を写したら液晶モニタでその星を確認するのですが、そのままモニタで見ただけですと星が小さくて わかりづらいものです。モニタの拡大率を上げて星の表示を大きくして確認します。 もちろん一枚撮っただけですと、合っているのかどうかよくわかりません。次に少しだけドロチューブを 移動させて同じ星を同じ条件で撮影してみます。そして同じようにモニタで拡大表示させてみましょう (キャノンのカメラですと、拡大率を維持したまま画像を切り替えることができて便利です)。

先ほどの星の大きさと比べてどうでしょう。小さくなっていれば、ドロチューブの移動方向は正しくピント位置に 近づいています。大きくなっていれば、残念ながら逆にドロチューブを移動させていたようです。 今度は逆に移動させてみましょう。これを繰り返して星がもうこれ以上小さくならない位置を捜していきます。 非常に手間に感じますが一番確実な方法で、慣れれば数分で正確にピントを合わせられるでしょう。


スパイダーの光状を使えばわかりやすい

反射望遠鏡で星を写すと、明るい星の回りに下の写真のような回折光が写ります。これはピントが合っていないとき には二重にぼやけますので、ピント位置のよい目安になります。

反射望遠鏡でなくとも光が回折するようにしさえすればよいので、屈折望遠鏡のフードの前に細めのテープやひもを クロスするように貼り付けてもOKです。本当にピント合わせが楽になりますから、是非やってみましょう。 ただし回折光はファンダーで見てもほとんど見えません。上の撮って確かめる方法でピントを追い込んでいきましょう。

回折光の例


おおよそのピント位置を自宅でゆっくり確認

初めてピントを合わせようとすると、誰でもなかなか合わずに時間ばかりが経っていくものです。 特に郊外に望遠鏡を持ち出して撮影する場合は、時間が過ぎると焦ってしまいます。 時間があるときにご自宅で「この日はピント合わせの確認の日にしよう」と決めて、じっくりピント合わせをして みましょう。

自宅でパソコンが使えたら、パソコンとカメラをケーブルで結び、画像をダウンロードしながらピントを合わせて みてもよいでしょう。これならより大きな画面で拡大しながら確認することが出来ます。 自宅ですから時間をかけて正確にピントを合わせましょう。

ピントが上手くあったら、その位置をドロチューブにメモしておきましょう。鉛筆でもペンでもかまいませんので、 わかりやすいように線を引いておきます。そうしておけば、次回からはその位置に合わせば、ほぼよいピントで 撮ることが出来るようになります。


ピントノブの微調整

ピントを合わせる時には、望遠鏡のピントノブをほんの少しずつ動かさなければなりません。 特に最後の追い込みの時には、回したか回していないかぐらいの移動量になります。 これを天体望遠鏡を買ったときに普通に付いてくるピントノブで行うのは至難の業です。

そこで、各望遠鏡用に微調整用のピントノブが販売されています。これを使えば快適にピント合わせができるようになります。特に下のオリジナル ビクセン用減速微動装置 DSF-V1(ビクセン望遠鏡用)は、目盛も振られているので、どれだけ回した かのよい目安になります。ピント合わせにはとても便利なアイテムです。

協栄オリジナルピントノブ


※上記商品は、生産完了となりました。
同等品として、ビクセンより「デュアルスピードフォーカサー」が発売されております。


ピント位置は気温で変わります

ところでこのピントの位置ですが、この良いピント位置は気温の変化で少しずつ移動します。 これはレンズやミラーなどが気温によって収縮膨張し、光の焦点を結ぶ位置が変わるためです。 無視できる量かというとそうでもなく、天体望遠鏡によってはとても大きく位置が変わるものもあります。

そのため、望遠鏡を室外に出してすぐと、時間が経って外気に馴染んだときでは、ピントの位置が変わって います。天体写真を撮るときにはこのことを覚えておかれるとよいでしょう。 「最初の方は綺麗な点像だったのに、途中からはボケボケ・・・」では悲しいですからね。 ピントさえ上手く合わせられるようになれば、天体写真がグッと綺麗に写るようになり、より楽しくなります。 少し面倒で地味な作業ですが、是非チャレンジされてみてください。

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SXD赤道儀インプレッション 3.【コンパクトデジカメで月を撮ってみよう】

コンパクトデジカメで月を撮ってみよう

天体望遠鏡で月を狙う

「星雲や銀河の撮影はちょっと敷居が高い・・」という方には、月の写真から始めるのがお勧めです。
月は大変明るいので、大都会の真ん中でも明るく輝いています。それに、月は私たちの地球から最も近い天体で人類がたどり着いた唯一の天体です。今回は天体望遠鏡とコンパクトデジカメを使って、その月を手軽に撮影してみましょう。


まずは望遠鏡で月を観望してみよう

まずは天体望遠鏡の視野の中に月を入れてみましょう。月は大きいですから、ファインダーがしっかり調整できていれば、すぐに天体望遠鏡の視野の中に入ってくるはずです。まずは月の全景が見渡せる50倍ぐらいのアイピースを使って、月面を観望してみましょう。10センチくらいの天体望遠鏡をお使いですと、明るく輝く月が目にまぶしく感じられるかもしれません。その場合はもう少し高い倍率のアイピースに変えてみてください。

月はどの月齢でも見応えがあるものですが、半月の頃が見やすくクレーターも美しく見えます。この月齢の頃は、小さな天体望遠鏡でも欠け際のクレーターが立体的に見えて、迫力ある月の姿を楽しめます。

月の全景で気になるクレーターや山脈があったら、高倍率のアイピースを使って詳細に観察してみましょう。空の状態が良ければ、切り立つ山脈や小さなクレーターが見えてくるはずです。月面ガイドブック片手に、クレーターの名前と特徴をチェックしながら、月面観望するのも楽しい時間です。

写真のクレーターは、コペルニクスと名付けられた大きなクレーターです。
大変見ごたえがするクレーターですので、天体望遠鏡を購入したら一度は観望してみましょう。

コペルニクスクレーター


デジカメを使って手持ちで撮影

まずは、月の全景写真を撮ってみましょう。撮影自体はとても簡単です。月の全景を観望した後、自分の目の代わりにコンパクトデジカメのレンズをアイピースに押し当ててシャッターを切るだけです。
「そんなので撮れるの?」と疑ってしまいますが、本当にそれだけで月の写真を撮れてしまいます。

手持ち撮影の様子

と言ってもコツがあります。
まず気をつけたいのは、コンパクトデジカメの測光モードです。測光モードというのは、被写体のどの部分の露出を測るかを決定する方式のことです。普段の日中の写真撮影では、マルチモードがよく使われています。
このモードは、光が十分ある時の撮影では便利ですが、月の撮影には不向きです。なぜかと言えば、月自体は明るいですが月の周りは真っ暗の宇宙だからです。ですのでマルチモードで撮ってしまうと、月は露出オーバーになってしまいます。

撮影前にはこの測光モードをまずは変更しましょう。変更方法は、カメラの説明書をご覧になってください。
きっとスポット測光や中央重点測光というのがあるはずです。スポット測光があればそれに、なければ中央重点測光を選択しましょう。そして月がカメラモニターの中央に入るよう気をつけながら、静かにシャッターを押してください。

下は、ビクセンのED103S天体望遠鏡とカシオのコンパクトデジカメを使って、カメラ手持ちで撮影した月の写真です。観望したときの記念撮影にもなりそうですね。

三日月の写真


デジカメアダプターを使おう

デジカメを手持ちで撮影してみると、なかなか上手くデジカメのモニターに写らず、いらいらしてしまうことがあります。これは、望遠鏡の中心軸(光軸)とカメラレンズの軸がずれているためです。それを改善するために、デジカメアダプターを使ってみましょう。

ビクセンのデジカメアダプター

デジカメアダプターには様々な種類がありますが、ここでは汎用性の高い、ビクセンのデジタルカメラクィックブラケットを使ってみましょう。
このアダプターなら、カメラにフィルターネジが切られていなくても簡単に使うことが出来ます。 もちろんその他にも、ねじ込みタイプから微動装置が付いたアダプターまで、様々な製品がありますので、カメラの型番をメモしてお店で聞いてみるとよいでしょう。

このビクセンのアダプターの取り付けは簡単で、クランプで望遠鏡の接眼部を挟み込み、デジカメをステーに載せるだけです。クリック感があるステーは、横に回転させることができるので、観望から撮影へと素早く移ることができます。月の観望を楽しみつつ、コンパクトデジカメで月面写真を撮ってみたいという方に最適なアダプターでしょう。

このアダプターを使って撮影した月面の拡大写真を下に載せました。使った天体望遠鏡やデジカメは上の写真と同じものです。アダプターを使うと安定して撮影できるようになるので、こうしたクレーターの拡大撮影も楽しめます。

アルフォンススとプトレマイオス


綺麗な月を撮影するためには

1.まず重要なのは、天体望遠鏡とカメラの光軸を合わせることです。カメラの光軸をしっかり合わせていないと、 せっかくの天体望遠鏡の性能が生かされず、色収差や片ボケが起こったりしてしまいます。 なるべく光軸はしっかり合わせるようにしましょう。

2.大きく撮りたいと思うと、ズーム機能を使って目一杯望遠で写してしまいがちです。でもこれは像が暗くなり、 お勧めできません。大きく撮りたいときは、高倍率のアイピースに変えてから撮影しましょう。 もちろんアイピースを変えても像は暗くなりますから、ほどほどの倍率で写すことが大切です。

3.大きく撮りたいというのとも関連しますが、ISO感度はほどほどにしておきましょう。コンパクトデジカメの 弱点はノイズが多いことです。ISO感度を上げてしまうと、せっかく滑らかで美しい月が ノイズで荒れた月になってしまいます。そういう意味でも、撮影倍率はほどほどで写しましょう。

4.シャッターブレにも気をつけましょう。カメラのシャッターを直接押すと、撮影された画像はぶれてピント がずれたように写ってしまいがちです。セルフタイマーモードやケーブルレリーズを使って撮影を行いましょう。

5.気流の良さそうな日を選んで撮りましょう。月は地球から一番近いといっても、大気圏を越えたずっと遠くです。 ですから風が強かったり、大気がユラユラ揺らいでいる日に撮影しても、ピンぼけしたような写真になってしまいます。 デジカメで写真を撮るときは、クレーターがはっきり見えている日にしましょう。そうすればシャープな 月面の写真を撮ることが出来ます。

6.月の撮影も少しずつ慣れていくことが大切です。どんなことでもそうですが、初めから上手くいくことは希です。 月の観望の合間に撮影を楽しむ、といったスタンスで、ゆっくり月の撮影を楽しんでいかれてはいかがでしょう。 月の地名を覚えれば、より月に親近感が沸き、その地形を写真に撮ってみたいと思うはずです。 そいうことを繰り返しながら撮影していれば、いつのまにかエキスパートも驚く月の写真が撮れると思います。

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120ED PRO望遠鏡インプレッション

120ED PRO望遠鏡インプレッション

Sky-Watcher120ED PRO望遠鏡とSXD赤道儀

今回テストした120ED PRO鏡筒は、協栄産業が販売する望遠鏡でEDレンズを含む2枚玉の対物レンズが使われ高性能化が計られたモデルです。 今回はこの120EDPRO望遠鏡をお借りして、ゴールドに輝く天体望遠鏡の見え味を確かめてみました。


天体望遠鏡の外観

 このPROシリーズ望遠鏡のトレードマークの一つとなっているのが、天体望遠鏡のカラーです。上の写真からもご覧頂ける通り、金色のボディーカラーが特徴です。ホワイトカラーが多い日本の天体望遠鏡の世界では異色ですが、ビクセンのSXD赤道儀に載せてみたところ、思った以上にフィットして精悍に感じました。

120EDPRO鏡筒自体の大きさはコンパクトで、鏡筒の長さ太さ共にビクセンのED103S望遠鏡と同じ程度しかありません(下写真参照)。しかし、レンズがED103に比べると約20ミリ大きいので、重さは120EDPRO望遠鏡の方が1.5キロほど重く約5.1キロあります。またレンズが大きく重いため、鏡筒のバランス位置は少し前よりになっています。

天体望遠鏡には、上の写真のように鏡筒バンドとアリミゾ金具が付属しています。赤道儀への取付は、このアリミゾ金具を使って行いますので、ビクセン製赤道儀でしたらワンタッチで取り付けることができます。

Sky-WatcherED120PROとビクセンED103S
ED120PROとビクセンED103S


120EDPROのスペック

120EDPRO望遠鏡は口径120mm、焦点距離900mm、F/7.5のEDアポクロマート天体望遠鏡です。2枚玉の対物レンズにEDレンズが使われていますので、色収差の発生が少ない像を楽しめます。この対物レンズを収めるレンズセルには光軸調整機能はなく、メンテナンスフリータイプになっています。最近の望遠鏡では、こうした調整機能のないレンズセルが用いられることが多くなってきました。

ピントを合わせる接眼部には、クレイフォード式のフォーカサーが用いられています。動きはスムーズですがロックする力は弱いので、大きく重いカメラなどを取り付けるときは注意しましょう。この接眼部には、アメリカンサイズアイピースと2インチサイズのアイピースを使うことができます。なおこの望遠鏡には、標準で2インチ天頂ミラーが付属してきます。観望時にはこれを使うのがよいでしょう。

ファインダーはアリガタアリミゾ式で、ワンタッチで取り付け取り外しが可能のタイプです。口径は50mmで倍率は9倍のものが使用されています。

ED120PROの接眼部とレンズセル
ED120PROの接眼部とレンズセル


月や惑星の観望に

この天体望遠鏡をSXD赤道儀に載せて、半月を少し過ぎた月を観望してみました。まずは約50倍の倍率で月の全景を見てみると、月は明るすぎてまぶしいくらいです。10センチの天体望遠鏡よりも明らかに像が明るく、集光力の違いを感じました。そこで、もう少し倍率の高くなるアイピースに交換して月を観望してみました。

視界の中には屈折望遠鏡らしいコントラストの高い像が広がってくれました。EDアポクロマート望遠鏡なので、月の欠け際やクレーターを見ても色収差は感じられません。スッキリした見え味で、月面クレーターの落ち込む様子や、山脈の切り立った姿を楽しむことができました。

その後、西空に傾き始めた土星も観望してみました。やはり口径12センチの集光力は大きく、10センチの望遠鏡 よりも土星が明るく見えます。また、土星の環は傾きが小さくなって見づらくなっていますが、カッシニの空隙も確認することができました。もう少し条件がよければ、土星の環に走るカッシニ空隙をしっかりと見ることができるでしょう。

ED120PROとデジカメで撮影した月
ED120PROとキャノンEOSKissDXで撮影した月全景


ED120PRO VS ED115S

ED120PROにとって一番のライバルとなるのは、ビクセンのED115S望遠鏡でしょう。口径、焦点距離共に ほぼ同じでスペックを持った望遠鏡です。この二つの望遠鏡を使って、星空を見比べてみました。

まずは外観ですが、ED120PROの方が鏡筒の太さが一回り細くて長さも短くなっています。鏡筒の色もゴールド色なので、見た目は実際よりスマートに感じます。ED115Sには持ち手が鏡筒バンドに付いていますが、ED120PROには付属しません。その分赤道儀への載せ易さという点では、ED115Sの方が楽でしょう。

この二つの望遠鏡をSXD赤道儀に同架して月を観望してみました。どちらも同じような見え方でしたが、倍率を上げてみると、コペルニクスの周りにある小クレーターは、120EDPROの方がよく見えます。明らかに違いがわかるほどの差ではありませんが、5mmの口径差が効いているのかもしれません。この後、土星や恒星も見てみましたが、色収差の出方などは同じような印象でした。

この後、デジタルカメラを付けて月の撮影も行ってみました。画像を見比べても同じような写り具合で、画像ファイルを混ぜてしまうと、どの画像がどちらの望遠鏡で撮ったかわからないぐらいです。光学性能的には、ほぼ同じと言っても間違いはないでしょう。

Sky-WatcherED120PROとビクセンED115S
ED120PROとビクセンED115S


観望向きの120EDPRO

Sky-WatcherED120PROとビクセンSXD赤道儀 120EDPROとED115Sの大きな違いは接眼部です。120EDPROは上記したようにクレイフォード式のフォーカーサーが用いられていますが、ED115Sには昔ながらのラックアンドピニオン式のものが使われています。どちらも動きはスムーズで問題有りませんが、重いカメラを取り付けるなら、しっかりロックできるラックアンドピニオン式の方が有利です。

また、ドロチューブの径もED115Sの方が太くなっています。それにED115Sにはメーカーから直焦点撮影用のレデューサーレンズも発売されていますので、これとカメラと組み合わせることで、星雲や銀河の写真撮影にも使うことができるようになっています。現在のところ、120EDPROにはこうしたコンバージョンレンズのラインナップはないようです。

こうしたことを考えると、写真撮影用途ならED115Sの方が向いています。もちろん120EDPROでも写真撮影は可能ですが、どちらかと言えば観望専用に作られた天体望遠鏡です。コンパクトなボディと大口径の集光力を生かして、自宅から月や惑星を観望したり、星空の綺麗な場所で星雲星団を見るのに適した望遠鏡です。

口径120mmという大口径屈折望遠鏡としては非常にコンパクトに作られていますから、比較的小さな架台にも搭載できるのが、この望遠鏡の美点です。8センチ~10センチの天体望遠鏡一式をお持ちでしたら、望遠鏡だけをアップグレードすることも可能でしょう。ゴールドに輝く精悍なボディカラーも、この天体望遠鏡の魅力の一つだと思います。

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天体写真とデジタルカメラ

天体写真とデジタルカメラ

天体写真とデジカメ

天体写真の撮影には、いろいろなデジタルカメラが使われています。撮影に使用されているデジカメの主流は、 デジタル一眼レフカメラと冷却CCDカメラです。中でもデジタル一眼レフカメラは、フィルター改造モデルや冷却モデルなどラインナップが多くて、初心者の方には分かりづらい面があります。そこで、それぞれのデジカメの特徴をこちらにまとめてみました。


冷却CCDカメラ

冷却CCDカメラは、その名前の通り撮像素子のCCDチップを冷却して撮影するカメラです。 天体写真撮影用としては、SBIG社とビットラン社の製品が有名です。 一般のカメラ店では販売されておらず、天文専門ショップでのみ購入することができます。

冷却CCDカメラの美点は、撮像素子を冷却しているのでノイズが少ないことです。 また、天体写真専用に設計されているので、フィルターワークなどの多彩な撮影が楽しめます。 モノクロタイプのCCDチップを選択できるのも、冷却CCDカメラのよいところです。 他には、モデルチェンジの期間が長いので、長く愛用できることも上げられます。

デメリットとしては、天体写真専用モデルなので他の撮影には使えないことです。 撮影には、パソコンと外部電源が必ず必要で、すべての操作はパソコンの専用ソフトから行う必要があります。ファインダーもありませんから、構図確認からすべての作業はパソコンの画面で行います。また、値段がデジタル一眼レフカメラに比べて高いのも問題の一つです。

初めて使われる方には、とっつきにくい冷却CCDカメラですが、慣れると使い安いカメラです。 特にモノクロタイプのCCDチップが使われたモデルは、究極の天体写真を撮影したいという方から人気があります。

冷却CCDカメラ STL11000M


デジタル一眼レフカメラ

デジタル一眼レフカメラは、毎年のように新しいモデルが登場してカメラ市場をわかしています。 天体写真撮影の世界でも人気があり、初めて星の写真を撮る方から絶大な人気を集めています。

デジタル一眼レフカメラのよい点は、使い易いことです。 普通のカメラですから、ファインダーで構図を決定することができ、一般撮影もこなせます。 また価格が安いのも大きな魅力です。初級者向けモデルなら、6万円前後で手に入れることができます。

デメリットとしては、赤い星雲がほとんど写らないことがあります。これはデジタル一眼レフカメラに付けられているフィルターが、その星雲の光を遮ってしまうからです。 赤い星雲は天体写真の中で一番人気がある被写体ですから、これが大きな問題となっています。 そこで登場したのが下の改造モデルです。

ニコンD60


デジタル一眼アストロカメラ

デジタル一眼レフカメラには、上記のような弱点があります。そこでそのデジタル一眼レフカメラに付いている フィルターを換装するサービスが始まりました。これが、よく言われるIRフィルター改造です。

こうして改造されたデジタル一眼レフカメラには、赤い星雲の光がよく通すフィルターが取り付けられています。その結果、今まで写らなかった赤い星雲がよく写るようになります。 外観や使用感はデジタル一眼レフカメラのままで、星雲がよく写るアストロデジカメになるのです。 これが大きな美点です。

逆に改造のデメリットは、一般撮影がしづらくなることです。撮影することはできますが、全体に赤く被った ように写ります。画像処理ソフトである程度補正が可能ですが、ほとんど天体写真撮影専用カメラになって しまいます。

このフィルター換装サービスは、アイダス社などで行われています。すでにデジタル一眼レフカメラをお持ちの方も、改造だけ依頼することができます。もちろん既に改造されたカメラを購入することも可能です。 天体写真ファンの間で一番人気があるデジカメが、このデジタル一眼レフカメラの改造モデルです。

フィルター改造キャノンEOSKissDX


冷却改造デジタル一眼アストロカメラ

最近になって、冷却システムを搭載したデジタル一眼レフカメラが登場しました。 これは、市販のデジタル一眼レフカメラに、冷却システムを取り付た改造モデルです。 もちろんフィルターも換装されていますので、赤い星雲を撮影することができます。

この冷却改造のメリットは、撮像素子を冷やすことで得られる低ノイズです。 常温から約18度もCCD温度を下げられますので、ノイズの量はノーマルモデルとは比べものになりません。 冷却キャノンEOS40Dのノイズ画像を見ていただくと、低ノイズの様子がよくわかるでしょう。 この冷却改造デジカメは、冷却CCDカメラとデジタル一眼レフカメラのよい部分を一緒にしたようなカメラです。

冷却改造モデルのデメリットとしては、まずは電気をたくさん必要とすることです。 デジタル一眼レフカメラの電源だけでは持ちませんので、外部電源を必要とします。 また、ボディサイズが大きくなり、価格もデジカメに比べると高くなっています。 しかし暑い夏場の撮影でもノイズが少ないので、天体写真ファンに徐々に人気が出てきているデジカメです。

 この後、デジタルカメラを付けて月の撮影も行ってみました。画像を見比べても同じような写り具合で、画像ファイルを混ぜてしまうと、どの画像がどちらの望遠鏡で撮ったかわからないぐらいです。光学性能的には、ほぼ同じと言っても間違いはないでしょう。

冷却キャノンEOS40D

レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

ビクセンED80Sf鏡筒の実力

ビクセンED80Sf鏡筒の実力

天体写真とデジカメ

ビクセンのED80Sf望遠鏡は、EDレンズを使いながらもコストパフォーマンスが高いモデルです。 上位モデルのビクセンED81S鏡筒に比べると、オプションや細部に違いが見られますが、この価格でEDレンズを使った8センチ鏡筒が手に入るのは魅力的です。今回はこの望遠鏡の写真性能について、 実写を交えて迫ってみました。


ウィリアムオプティクス製レデューサー

屈折望遠鏡で天体写真を撮るときには、像面をフラットにするフラットナーレンズ、もしくはレデューサーレンズを用いて撮影を行いたいところです。特にレデューサーレンズは、口径比(F値)を明るくするので、天体写真には有効な補正光学系です。

今回テストしたED80Sfは、価格が安く魅力的な存在ではありますが、ビクセン純正のレデューサーレンズが使えない点が問題でした。そこで、ウィリアムオプティクスから発売されている、汎用性のあるレデューサーレンズを撮影に用いました。このレデューサーユニットは、望遠鏡取り付け部分が2インチスリーブになっているので、ED80Sf鏡筒の接眼部にそのまま差し込むことができます。

このレデューサーレンズは、望遠鏡の焦点距離を約0.8倍にします。ED80Sfの焦点距離は600ミリでF7.5ですので、このレデューサーを用いると480mmF6となり、天体写真向きの性能になります。

ウィリアムオプティクス製レデューサーレンズ

※レビュー作成時、ビクセンED80Sf用レデューサーが未発売でした。
現在は専用設計の「レデューサーED80Sf」が発売されていますのでこちらをご利用ください。


ビクセンED80Sfの実写性能

このビクセンED80Sf望遠鏡を郊外に持ち出して、オリオン大星雲をデジタル一眼レフカメラで撮影してみました。撮影に使ったカメラは、ニコンD50のフィルター改造モデルです。フィルター改造モデルは赤い星雲の光が通りやすく、赤く輝く星雲撮影に適したカメラです。

下の画像がこのED80Sfで撮影したオリオン大星雲です。デジタルカメラの感度はISO800に設定し、露出時間は10分です。ホワイトバランスを合わせただけの生の撮影画像です。小さい画像なのでわかりづらいですが、星はシャープで色収差も目立たず、EDレンズの性能がよく発揮されています。

オリオン大星雲

下に上の画像のオリオン大星雲部分をトリミングした画像を載せました。ED80Sfは口径8センチの望遠鏡ですが、デジタルの威力でオリオン大星雲の暗黒帯のディテールまでよく写っています。この画像を見ても、ED80Sfが色収差が少ない光学系であることがわかります。

オリオン大星雲のディテール


ED80Sfの星像と周辺減光

実写画像を用いて、ED80Sfの実力をもう少し検証してみましょう。天体写真撮影で気になるのが、光学系の周辺減光と星像です。周辺減光が大きい光学系を用いると、撮影後の画像補正作業が大変になり、楽しいはずの作品作りが面倒になってしまいます。また、星像を後で補正することはほとんど不可能で、これは撮影に使った光学系の性能で決まってしまいます。この二点は、撮影用の望遠鏡を購入するときに、気をつけておきたいところです。

上に載せたオリオン大星雲画像の、中心部と四隅の画像を下に掲載しました。四隅と中央に載せた四角内の画像は、ピクセル等倍になっています。このピクセル等倍画像を見ると、中心部の星像はしっかり丸く写っているのがわかります。四隅の画像では、わずかに星が伸びているものの、目立つほとではありません。今回使ったAPS-Cサイズのデジタル一眼レフカメラなら、十分な性能でしょう。

中心部と周辺部のピクセル等倍画像

続いてビクセンED80Sfの周辺減光を見てみましょう。今回は、周辺減光を見るために、フラットフレーム画像を撮影してきました。下がそのフラット画像です。使用したカメラや光学系は上と同じです。

撮影したままのフラット画像ですと、ほとんど周辺減光がわかりませんでした。そこで、下の画像はレベル補正コマンドを使って、ヒストグラムを約3倍に圧縮して見やすく強調しています。ここまで強調すると、四隅が黒くなっていることわかります。しかし、この減光の度合いが大きいのは最周辺部だけで、その内側の減光はなだらかです。この減光の度合いは、他の高性能望遠鏡に比べて大きいものではなく、写真撮影に十分使えるものです。

なお、画像の中にポツポツと黒い影がありますが、これはデジカメの撮像素子上に載ったゴミが写ったものです。上の撮影画像と見比べてみると、同じ位置に黒い影が出ていることがわかります。

フラットフレーム画像


実際に使って気になった点

撮影画像を見てみると、ビクセンED80Sfは星雲写真撮影にも魅力的な存在であることがわかりました。ここでは、ED80Sfを写真撮影に実際に使ってみて、いくつか気になった点をお伝えいたします。

撮影していてまず気になったのは、ED80Sfの接眼部です。上位モデルのビクセンED81Sの接眼部は、昔ながらのラックピニオン式ですが、ED80Sfはクレイフォード式が使われています。このクレイフォード式は滑らかな動きが特徴ですが、重いカメラを取り付けるようには設計されていません。今回はボディが軽いニコンD50でしたから問題ありませんでしたが、ニコンD3などのヘビー級カメラを取り付けるときには、気をつけた方がよいでしょう。

次に気になった点は、鏡筒バンドです。これも上位機種のED81Sと比べると若干強度が低いタイプのようです。今回の撮影では問題が出ませんでしたが、長時間撮影をし続けるときには不安要素になります。他の鏡筒のものを流用できるなら、そちらを利用すれば、よりしっかりと架台に取り付けられるでしょう。鏡筒自体は径も大きく、しっかりした造りになっていますので安心感があります。

今回用いたウィリアムオプティクスのレデューサーレンズは、0.8倍のII型というモデル(※)です。2インチスリーブに差し込めるので汎用性が高いレデューサーです。ただレンズ最後部のレンズ径が小さいので、APS-Cサイズのデジカメ用と考えた方がよいでしょう。35ミリフルサイズデジカメに使用すると、周辺部がけられてしまう恐れがあります。

以上、いくつか気になった点を書きましたが、ED80Sfは基本的な光学性能が高い望遠鏡です。いつかはステップアップして、天体写真も撮ってみたいと考えているユーザーにお勧めの望遠鏡です。また、上記の問題がクリアできれば、より天体写真撮影に適した一本として生まれ変わります。今回のテスト撮影を経て、ビクセンED80Sfは、写真撮影にも使用できるハイコストパフォーマンスの望遠鏡であることがわかりました。

※レビュー作成時、ビクセンED80Sf用レデューサーが未発売でした。
現在は専用設計の「レデューサーED80Sf」が発売されていますのでこちらをご利用ください。

ビクセンED80SfとSXD赤道儀


ビクセン
ED80Sf鏡筒

ビクセン
ポルタII ED80Sf

ビクセン
スカイポッド ED80Sf

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ビクセンAX103S鏡筒の実力

ビクセンAX103S鏡筒の実力

AX103S

ビクセンのAX103S望遠鏡は、3枚玉の対物レンズとフィールドフラットナーレンズを組み込んだ最新鋭の屈折望遠鏡です。ビクセンのカタログの中でも、フォトビジュアルタイプのフラッグシップモデルとして紹介されています。今回、試写する機会が得られましたので、写真性能を中心にその使い心地を探ってみました。


AX103S望遠鏡の特徴

この望遠鏡を持ってみると、同じビクセンの10センチ望遠鏡ED103Sよりも重いことがすぐにわかります。実際、鏡筒の重量は6.4キログラムで、口径の一回り大きなED115Sよりも重量があることがカタログスペックからわかります。対物レンズが3枚玉であることで鏡筒重量が増したのでしょう、鏡筒の前後のバランスもずいぶんと前寄りになっていました。

鏡筒の対物フードの周りには、ゴールドのラインが走っています。ED103S望遠鏡がブルーのラインですから、すぐにこの望遠鏡がAX103Sであることが外観からわかります。また、対物レンズ側からフード内をのぞき込むと、レンズのセルには下の写真のような飾り環が取り付けられています。周りには「VIXEN APO MAXIMUM OPTICS」と刻印されていて、ビクセンのこだわりが感じられます。

この対物レンズ自体も、ED103Sと比べて透過率がよく感じられました。ビクセン社によれば、PrecisionMuliticoatingという技術を採用して透過率を99.5%まで高めたとのことです。レンズを前から見ただけでもその効果が感じられるほどで、レンズがより透き通った印象です。店頭で見比べてみられると、その様子がよくわかると思います。なお、AX103Sのフードは伸縮式になっています。

AX103Sの画像

AX103S望遠鏡の一番大きな特徴は、フィールドフラットナーレンズが標準装備されていることでしょう。ドロチューブ側からのぞき込むと、少し奥にフラットナーレンズが装備されていることがわかります。ドロチューブの動きに合わせて前後に動くので、きっとレンズはドロチューブ内に固定されているのでしょう。このフィールドフラットナーレンズの効果によって、視野周辺まで鋭像を期待できるのが、このAX103S望遠鏡の大きな魅力です。


ビクセンAX103S望遠鏡の実写性能

このビクセンAX103S望遠鏡を郊外に持ち出して、デジタル一眼レフカメラと組み合わせて撮影してみました。今回撮影に使用したカメラはキャノンEOSKissDXです。キャノンEOSKissDXはフィルター改造を施していない普通のデジタル一眼レフカメラです。

下の画像がこのAX103S望遠鏡で撮影した球状星団です。デジタルカメラの感度はISO1600に設定し、露出時間は5分で撮影しました。ホワイトバランスを合わせただけの一枚画像です。小さい画像なのでわかりづらいですが、星像は非常にシャープで球状星団の星の集まりもよく分解されています。フィールドフラットナーの効果も発揮されていて、端まで星は点像を保っています。

AX103Sの画像

下に上の画像の球状星団部分をトリミングした画像を載せました。露出時間が短かったため、画像には少しノイズが目立ちますが、色収差などは感じられず、AX103S光学系の特徴がよくわかります。もう少し空の条件が良いところでじっくり撮影すれば、より滑らかな画像が得られるでしょう。

AX103Sの画像

冷却CCDカメラST2000XMを使って撮影も行いました。残念ながら天候状態が悪く、十分な撮影時間をかけられませんでしたが、それでも下のように美しい渦巻銀河を写し出してくれました。AX103S望遠鏡は焦点距離が825ミリと長いので、冷却CCDカメラと組み合わせればこうした春の銀河の撮影も楽しむことが出来ます。

AX103Sの画像


AX103Sの星像と周辺減光

実写画像を用いて、AX103Sの実力をもう少し検証してみましょう。上に載せた球状星団の撮影画像の中心部と四隅の画像を下に掲載しました。四隅と中央に載せた四角内の画像は、ピクセル等倍の画像になっています。このピクセル等倍画像を見ると、端まで綺麗な星像を保っていることがわかります。AX103Sに装備されたフィールドコレクターレンズの効果が十分に発揮されているといえるでしょう。

AX103Sの画像

ところでキャノンEOSKissDXカメラは、APS-Cサイズの撮像素子が用いられたデジタル一眼レフカメラです。最近は35ミリフルサイズカメラが数多く登場しているので、よりワイドに撮影できるようになっています。広い撮影視野を得られるのは魅力ですが、光学系にとっては求められる性能が増します。そこで、同じフルサイズのチップを持つSTL11000M冷却CCDカメラを用いて、AX103Sの星像を確認してみました。それが下の画像です。

AX103Sの画像

テスト用に光害地で撮影した画像ですので、特に目立つ天体は写っていませんが、星の様子と周辺減光の様子がよくわかります。さすがにフルサイズとなると、最周辺部は暗くなっていて光量が減少していることが見て取れます。この中心部と周辺部をピクセル等倍で載せたのが下の画像です。周辺の星像が若干変形していますが、それほど大きなものではありません。周辺光量の落ち込みは若干気になりますが、フルサイズでも十分使える望遠鏡という印象を得ました。もちろんAPS-Cサイズのデジカメなら、全面にわたってシャープな星像が得られると思います。

AX103Sの画像

最後に、ST11000Mカメラを使って撮影したフラットフレームを下に掲載しました。これを見ると、中心からある部分までは光量が均質ですが、一番隅になると一気に光量が減っているのがわかります。AX103Sにフルサイズのデジカメを使ったときの周辺減光の参考になれば幸いです。なお、画像に写っている薄暗い影は、撮像素子の上に載ったゴミが写ってしまったものです。

AX103Sの画像


実際に使って気が付いた点

ほんの短い間でしたが、ビクセンAX103Sをお借りして天体を試写する機会に恵まれました。ここでは、AX103Sを写真撮影に実際に使ってみて、いくつか気がついた点をお伝えします。

所有しているビクセンED103SAX103Sを並べて恒星や惑星を観望すると、AX103Sの方がより色収差が少ないことに気づきました。また、AX103Sにはフィールドコレクターレンズが入っているので、視野の隅でも星の形はほとんど崩れません。視野内の恒星は隅までピンポイントで、高級アイピースを使っているような使い心地でした。

ビクセンの撮影システム構成図によれば、AX103Sを直焦点撮影に使う時には、フリップミラーの後ろにデジカメを取り付けるように紹介されています。しかしこの組み合わせで撮影すると、フリップミラー内の開口径が十分でないため、ケラレが生じてしまいます。せっかくフラットフィールドを楽しめる望遠鏡ですので、専用のアタッチメントを新たに販売して欲しいところです。なお、上の写真撮影では、他社製のアダプターを介して撮影を行いました。フリップミラーの後ろにSTL11000Mカメラを取り付けてフラットフレームを撮影すると、下のような少しけられた画像になります。

AX103Sの画像

フィールドコレクターレンズを標準装備し、フォトビジュアルタイプとして開発されたAX103Sですが、口径比がF8と暗いのが撮影時のネックになります。 光学系の明るさがF8ですから、十分滑らかな画像を得ようとすると、非常に長い露出時間が必要となります。実際上のST2000XMの画像も、合計で2時間弱という露出時間をかけましたが、まだ若干の露出不足が感じられます。開発中の専用レデューサーの登場が待ち遠しいところです。

F8と暗いですが、フィールドコレクターレンズのお陰で、焦点距離825ミリの撮影が楽しめるのは魅力です。春の銀河をはじめとした小さな天体も大きく写し出すことができ、レデューサーが発売されれば多目的に使うことが出来ます。また、今回は試写できませんでしたが、月面撮影にも優れた性能を発揮できるのではないかと思っています。

以上、いくつか気がついた点を書きましたが、AX103Sはビクセンが自信を持って市場に送り出した高性能屈折望遠鏡です。現在は口径10センチのモデルだけですが、これからラインナップを増やしていってくれることでしょう。専用レデューサーが未発売なのが残念ですが、これが発売されればデジカメ天体写真ファンにも魅力的な天体望遠鏡になるでしょう。これからの充実が楽しみなビクセンAX103S望遠鏡でした。

ビクセンAX103S

※このレビューテストは2009年4月に行っています。発売モデルとは若干異なる場合があります。


ビクセン
AX103S鏡筒

ビクセン
SXD2-AX103S

ビクセン
SXP-AX103S

ビクセン
AXD-AX103S

ビクセン
AXD-AX103S-P

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ビクセンSXP赤道儀 インプレッションVol.01

ビクセンSXP赤道儀 インプレッション Vol.01

ビクセンSXP赤道儀

ビクセンから、SXD赤道儀の上位機種となるSXP赤道儀が登場しました。AXD赤道儀と同じコントローラ(スターブックテンを使用し、駆動系をステッピングモーターへ改良したSXP赤道儀はどの程度性能が向上したのでしょう。今回、SXP赤道儀を試用する機会を得られたので、SXD赤道儀との比較を行ってみました。


SXP赤道儀の外観

SXD赤道儀とSXP赤道儀 SXP赤道儀を箱から出してまず感じたのは、SXDに比べてかなり重いということでした。SXD赤道儀との仕様上の重量の差は2キロほどですが、それ以上に重さの違いを感じました。ステッピングモーターが入っている赤緯体がかなり重くなっているために、そのように感じたのかもしれません。

赤道儀の外観上の違いは、赤緯体のモーターカバーのデザインが変わった程度です。よく見ると、SXP赤道儀の台座部分にはシリアルナンバーが刻まれたプレートが取り付けられていたり、赤緯体のクランプが一方だけになっていたり、極軸望遠鏡の北側部分がガラス窓になっていたりと他にも変更点はありますが、全体の大きさもあまり変わらないので、遠目で見ればSXDSXP赤道儀を区別できないかもしれません。

基本的な規格は同じですので、SXD赤道儀で使っていた三脚やバランスウェイトを使うことができます。ただし、赤道儀の架台ヘッド(赤緯体の頭部分)の形式が変更されたので、ビクセン鏡筒を従来のようにアリガタ・アリミゾ形式で取り付けようとすると、プレートホルダーSXというオプション品が必要になります。


改善・変更された点

SXP赤道儀の架台ヘッド SXP赤道儀を組み上げてまず気付いたことは、赤緯・赤経軸共にクランプフリーの動きが非常に軽くなっていることです。SXD赤道儀ではこの動きが固く、鏡筒の前後バランスが取りにくいという意見があったので、これは大きな改善と言ってよいでしょう。SXP赤道儀には15個のベアリングが使われているとのことで、それらがこの滑らかな動きを作り出しているのかもしれません。このクランプフリーの感覚は、タカハシのEM200赤道儀のそれと同じように感じました。

次に望遠鏡を載せる架台ヘッドが、SXD赤道儀のアリガタ・アリミゾ形式から、ネジ止め形式へ変更されました。アリミゾ形式は確かに便利ですが、初めから赤道儀にアリミゾが装備されていると、他社製のアリミゾ器具と交換できないなど、 既にアリミゾをお持ちの方ににとっては不便な場合もあります。SXP赤道儀はSXシリーズの最上位機種という位置づけなので、今回のようなネジ止めの方が上級者にも使いやすくてよいでしょう。ネジの間隔は35ミリで、タカハシ製鏡筒バンドと汎用性があるように作られています。

中でも最大の変更点は、SXD赤道儀のDCモーターからステッピングモーターへ変更された点でしょう。 モーターの変更と同時に、スターブックはスターブックテンとなり、上位機種のAXDと同じコントロール機構が与えられました。この二つの効果については、実際の観望を通して検証していきたいと思います。

なお、極軸望遠鏡や赤道儀の方位・高度調整ネジの機構はSXD赤道儀と共通です。よって、スターブックテンの以外の操作はSXDとほぼ同様なので、SXDユーザーがSXP赤道儀に買い換えてもスムーズに移行できるでしょう。

ところで、SXD赤道儀は赤緯側のクランプが鏡筒に接近しているため、手が届きにくく力を入れにくいという批評がありました。今回のSXP赤道儀では、架台ヘッドがネジ式になったために、どの方向でも天体望遠鏡を取り付けられるようになり、SXDの時の天体望遠鏡にクランプが干渉して締めにくいという問題は解消されています。 しかし、クランプハンドルの形状は変わらず、やはり手がかじかんだ夜は力が入りづらい形をしています。このクランプハンドルの形状の見直しも、是非お願いしたいところです。


実際に観望に使ってみて

SXP赤道儀とタカハシTOA130S SXP赤道儀に実際に天体望遠鏡を載せて、惑星や月の観望に使用してみました。使用した天体望遠鏡は、タカハシのTOA130S望遠鏡です。TOA130Sは本体重量だけで約11キロ。プレートや鏡筒バンド等を合わせると13キロ程度となる大型の屈折望遠鏡ですが、1.9キロと3.7キロのウェイトで釣り合ってくれました。この辺りはSXD赤道儀と同様、モーターやウォーム軸などの重量のある主要パーツをウェイト側に置いたレイアウトが有効に働いています。

鏡筒を載せて電源を入れた後、恒星時追尾でしばらくモーター音を確認してみました。SXD赤道儀の時は「ウィンウィンウィン」という音が赤道儀から響いてきましたが、SXPではモーター音はほとんどわからないほどです。耳を赤緯体に近づけてみると「ウィー」という高い音が中の方から聞こえますが、赤道儀に近づかない限り、ほとんど気づかないほどの音量でしょう。

その後、モーター最高倍速の恒星時1000倍で赤道儀を動かしてみました。コントローラーのボタンを押すと、「ウィーン」と音が一気に大きくなり、望遠鏡の向きが変わっていきます。この時の音は恒星時と比べるとかなりの音量ですが、SXD赤道儀の「ガー」という音に比べると、幾分静かになっていると思います。音の質は恒星時と同様にかなり周波数が高く、「ギュィーン」というドリルを回しているような音です。

ところで、最高速で動かしているときにモーターの脱調(※モーターのトルクが落ちて追従できなくなること)が起こらないだろうか と注意していましたが、そのような現象は起こりませんでした。細かいマイクロステップでステッピングモーターを制御すると、脱調が起きやすいですが、TOA130のような大きな機材を載せても大丈夫のようです。ちなみにメーカーに問い合わせたところ、モーターは上位機種のAXD赤道儀と同じモデルが使用されているとのことです。


自動導入とモーターのレスポンス

極軸合わせと赤道儀のアライメントを3つの星を使って行った後、スターブックテンを使って幾つかの主要天体を導入してみました。TOA130NLV20ミリのアイピースを用いて、約50倍の倍率で観望しましたが、どの天体もほぼ視野の中央に入ってきました。自動導入の精度としては満足できるレベルと言えるでしょう。

モーターが変わって最も改良されたのは、モーターのレスポンスの良さでしょう。特に高倍率で惑星を覗いていて、恒星時の数倍に設定してモーターのボタンを押したとき、タイムラグなく視野内で惑星が移動するのを見るのは非常に快適です。これは、今回のSXP赤道儀で最も大きな改良点の一つと言えるでしょう。赤緯方向はバックラッシュで特にレスポンスが悪くなりがちですが、そのようなことも感じられず、コントローラーの操作がダイレクトに反映されている印象を持ちました。

ところで、モーターがステッピングモーターに変更されたことにより、SXP赤道儀の消費電流はSXD赤道儀に比べてかなり大きくなっています。そのため、SXD赤道儀では付属していた電池ボックスがなくなり、マニュアルでも12Vバッテリーの使用が推奨されています。説明書によれば最大消費電流は約2.5Aとありますので、SXP赤道儀を使うなら容量の大きなポータブル電源を用意した方がよいでしょう。


スターブックTEN

スターブックとスターブックテン SXP赤道儀のコントローラーには、AXD赤道儀と同じスターブックテン(STAR BOOK TEN)が標準装備されています。 他のSXシリーズに使われているスターブックに比べると、大きさはほぼ同じで、丸みを帯びたデザインになっています。色合いは白に薄いグレーと高級感のある仕上がりです。厚みがあるので見た目は重そうですが、実際に持ってみるとスターブックより若干軽く感じました。

スターブックと大きく異なる点は、テンキーが装備された点でしょう。限られたボタンで操作していたスターブックに比べると、 操作性が格段に向上しています。また、スターブックテンの画面は、コントラストが高くて解像度が高い800×640ドットの液晶が用いられているため、320×240ドットのスターブックの液晶と比べて、視認性も向上しています。

スターブックテンの機能は非常に多く、SXP赤道儀のマニュアルでも、コントローラーの機能の説明にかなりの枚数を割いています。 ここでは全てをご紹介できませんが、スターブックと比較して大きく改善された機能をいくつか取り上げてみましょう。

まず第一の改善点は、子午線越えの設定ができるようになったことでしょう。スターブックでは、赤道儀が子午線を超えてしばらくすると 強制的に鏡筒が反転させられます。これは特に天体写真ファンには不評で、強く改善が望まれていた点です。スターブックテンでは、強制追尾停止を行う角度をユーザーが設定できるようになり、この問題が解消されています。

スターブックテンのオートガイダー端子 次に架台の種類で「極軸を合わせた赤道儀」というモードを選べるようになりました。 スターブックではこのような選択はなく、SXD赤道儀で極軸を合わせた後にアライメントを数点行ってから写真撮影すると、オートガイド撮影でエラーを起こすケースがありました。 これは、スターブックがアライメントの情報に基づいて極軸のずれを補正するべく赤緯モーターを動かしているためだと思われますが、 天体写真撮影ではかえって障害となっていました。今回、モードを選択できるようになったのは、天体写真ファンにとって大変便利なことだと思います。

さらに、固有名がない暗い恒星でも、星座のバイエル記号(例:いっかくじゅう座ε星)を使って自動導入できるようになりました。ベテランの方は、星座名とバイエル記号で星の位置を覚えていることも多いので、この機能も便利だと思います。

なお、スターブックテンの底面には、右上の写真のようにパソコンと接続するためのLANコネクタと、オートガイダーと繋ぐためのオートガイド端子が付いています。その横には拡張用のスロットも設けられており、将来的には内蔵型オートガイドも開発される予定とのことです。


赤道儀の精度

オートガイド撮影が主流となった今でも、赤道儀の追尾精度は天体写真ファンにとって大変気になる点です。そこでSXP赤道儀のピリオディックモーションをウォームギア2周期分(約16分間)撮影し、実測してみました。

撮影した結果は下の画像の通りで±12秒程度です。一般的にこのクラスの赤道儀では±15秒前後の場合が多いので、このSXP赤道儀のモーション量は標準的な基準をクリアしていると言えます。ウォームホイルの他の部分でも実測してみましたが、いずれも同じような結果が得られました。

SXP赤道儀のピリオディックモーション

また、SXP赤道儀にはピリオディックモーションを学習させて電気的に動きを補正するPEC機能があります。PEC機能を使うには、初めにウォームギア1周分のピリオディックモーションをスターブックTENに記憶させる必要がありますが、上手く使えばピリオディックモーションの改善が期待できるでしょう。

※ピリオディックモーションとは:
赤道儀はギアで駆動しているため、ギアの機械的誤差で赤道儀が動く間にある程度の進み遅れが生じます。
これがピリオディックモーションという現象で、この進み遅れが小さいほど高精度な追尾が可能となります。


まとめ

今回、SXP赤道儀を天体観望に使用してみて、SXD赤道儀から確実に進化していることが確認できました。モーターがステッピングモーターに変わった点は、天体写真ファンにとって大きな進化でしょう。今回は天体写真撮影は行いませんでしたが、モーターのレスポンスの良さはオートガイドの安定性に繋がると思います。

また、新しくなったスターブックテンは、正直なところ最初は機能の多さにとまどいましたが、使うに従って使い易いコントローラーだと実感するようになりました。子午線越えの設定ができるなど、スターブックで要望が多かった機能が追加された点は、高く評価できると思います。

全体として、SXP赤道儀SXD赤道儀で問題とされていた点を見直し、より進化させた完成形という印象を持ちました。SXシリーズの三代目の赤道儀、またSXシリーズの最高機種として、SXPはそれにふさわしい機能を持ち合わせたという印象です。

次回は、このSXP赤道儀に撮影用鏡筒を載せて、天体写真撮影での性能適正を確認する予定です。

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SXP赤道儀

ビクセン SXP赤道儀 定価¥399,000→KYOEI特価¥338,000(※プレートホルダーSXは別売です。)

SXD赤道儀下取りの場合 通常特価338,800円-100,000円→238,000円
SXD赤道儀+三脚下取りの場合 通常特価338,800円-110,000円→228,000円
ビクセン SXP赤道儀 セット品 ビクセン SXP-R200SS KYOEI特価504,000円(定価593,250円) ビクセン SXP-VC200L KYOEI特価538,000円(定価633,150円)
ビクセン SXP-ED103S KYOEI特価577,000円(定価679,350円) ビクセン SXP-ED115S KYOEI特価653,000円(定価768,600円) ビクセン SXP-AX103S KYOEI特価702,000円(定価826,350円)

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ビクセンSXP赤道儀 インプレッションVol.02

ビクセンSXP赤道儀 インプレッション Vol.02

ビクセンSXP赤道儀

前回に続いてのSXP赤道儀についてのレポートです。
今回は、SXP赤道儀を郊外に持ち出して天体写真を撮影してみました。そのレポートをお届けします。


PEC機能について

撮影レポートの前に、PEC機能についてテストを行いましたので、まずそちらからご報告します。PEC機能とは、赤道儀のピリオディックモーションの動きをスターブックTENに記憶させ、それを再生することによって、より高い追尾精度を発揮する機能です。まず、天体望遠鏡にガイドアイピースを取り付け、赤道儀のエラーをウォームギア1周分(約8分間)スターブックTENに記憶させました。その後、PEC機能をオンにして、ピリオディックモーションを撮影してみたのが下の画像です。

PEC機能を使った時のピリオディックモーション

PEC機能を使わないときは±12秒程度だったピリオディックモーションが、±4秒程度に減少し、PEC機能が有効に働いているのがわかります。この結果を見ると、PEC機能を上手く活用すれば、焦点距離の短い望遠鏡や望遠レンズなら、ノータッチガイド撮影が可能かもしれません。

なお、今回PEC機能を使うにあたって、スターブックTENのバージョンを最新のものへ変更しています。 古いバージョンのままPEC機能を使うと、逆にピリオディックエラーが逆に大きくなるケースがあるようですので、 バージョンアップされることをお勧めします。 新しいバージョンは、メーカーのホームページからダウンロードし、お手持ちのスターブックTENにインストールすることができます。 バージョンアップの際は、マニュアルとメーカーのHPの注意書きをご参照ください。


SXP赤道儀を使っての撮影

M42を撮影中の様子 SXP赤道儀を郊外に持ち出して、実際に星空を撮影してみました。使用した天体望遠鏡は、天体写真ファンの間で人気の高いタカハシのε180ED鏡筒です。タカハシε180EDは本体重量が約11キロ、プレートや鏡筒バンド等を合わせると13キロ程度となる撮影専用望遠鏡です。これに重さ約2キロのフルサイズ冷却CCDカメラ、STL11000Mを取り付けて撮影を行いました。この機材を釣り合わせるために使用したバランスウェイトは、3.7キロが2個。SXP赤道儀の搭載限界(16キロ)に近い機材を載せての撮影です。

今回のテスト撮影の対象として、オリオン座のM42大星雲を選びました。まず初めに極軸を正確に合わせた後、望遠鏡をテレスコープウェストで設置します。それから赤道儀のモーターを動かし、オリオン座の一等星ベテルギウスでアライメントした後、M42を自動導入で視野に導きました。これら一連の赤道儀の動きは力強いもので、モーターに力があることを実感しました。

この後、オートガイド撮影を行うために、オートガイダーのキャリブレーションを行いました。キャリブレーション時の赤道儀の動作はスムーズで、下の画像のように赤緯・赤経軸とも綺麗なキャリブレーション結果を容易に得ることができました。ここでも、バックラッシュが少ないステッピングモーターが有効に働いているようです。

PEC機能を使った時のピリオディックモーション

撮影時の天候は晴。気温はマイナス6度。幸いにも風はほとんどありませんでしたが、時折、強めの風が吹きつけることがありました。

撮影開始時、M42星雲は南中直前で、撮影中に子午線を超えることになりました。子午線付近の撮影はバランスが崩れやすく、赤道儀の性能を知るにはよい機会です。南中直前から撮影を開始し、露出時間10分で4コマ撮影(L,R,G,B画像各1枚)しました。


撮影結果を検証

撮影中は、SXP赤道儀の動作を確認するため、パソコンモニター上でオートガイドのエラー値を追っていました。全体としてエラー値は小さな値にとどまり、安定したガイドを行っていました。しかし、少し強い風が吹くと機材が揺れるようで、一時的にエラー値が跳ね上がります。モーターの反応がよいため、エラーはすぐに収まりますが、この風が今回の撮影でのネックになりました。

下に10分間のオートガイドのエラー量のグラフを掲載しました。ほとんどは、小さな範囲でエラー修正が行われていますが、中央に突発的に値が増加した部分があります。これは強い風が吹き、機材が揺れたためだと思われます。ε180EDは鏡筒が大きいので、風の影響を大きく受けてしまいます。しかし増加したエラーは、すぐに収束しているのがこのグラフからわかります。

オートガイドエラーの量

このような状況の中で撮影した4枚の画像を、パソコン上でカラー合成したのが下の写真です。今回、撮影に使用したタカハシε180EDは、口径比が1:2.8と非常に明るいため、10分間の露出でM42の中心部は白く飛んでしまいましたが、全体として星も大きく流れたりせず、まずまずの写りです。

オリオン大星雲

さらに詳細にガイドの状況を確認するため、この画像の中央部を切り取ってピクセル等倍した画像を以下に載せました。この画像を見ると、若干ですが左右方向(赤経方向)に星が膨らんでいるのがわかります。強い風で揺れたときにずれたのが原因でしょう。最近のデジタル機材は感度が高いので、このような突発的な揺れも敏感に反映します。

オリオン大星雲のピクセル等倍画像


今回の撮影で気づいた点

今回、ε180EDを載せて撮影してみて、SXP赤道儀のモーターのレスポンスの良さを再確認できました。SXD赤道儀と比べて一段とモーターの反応が良くなっており、オートガイドの反応もとても良いです。自動導入も高速で、重い鏡筒を載せているにも関わらず、子午線を超える反転動作も軽々と行ってくれました。

スターブックTENの使い勝手は素晴らしいと思います。まず、夜間モードにすると全体が赤色照明となり、眩しさを感じません。また、画面が詳細なので、画面を見ながら微妙な構図調整をできたりと、想像以上に便利でした。普段は赤道儀とパソコンをケーブルで繋ぎ、ステライメージやTheSkyといった星図ソフトをパソコン上で立ち上げて天体を導入していましたが、このスターブックTENなら、そのような手間から解放されそうです。

SXD赤道儀に比べて、クランプフリーの動きが軽くなった分、SXP赤道儀では、前後左右のバランスがシビアになっています。これは良い面もありますが、今回のように重い機材を載せて、方向を変えようとクランプを緩めると、鏡筒が一気に回転したり、落下したりする可能性があります。この点、気をつけて操作した方が良いでしょう。

今回使ったε180EDは、鏡筒が短いために前後のバランスが取りづらく、前側に重量が偏った状態で撮影を行いました。 撮影中のオートガイドの様子を見ると、赤緯のエラーは少なく、多少のバランス崩れは問題がないように感じました。この辺りにもリニューアルされたモーターのパワーが発揮されているのでしょう。

メーカーの仕様書によれば、SXP赤道儀の搭載可能重量はSXD赤道儀より1キロ増えて16キロとありますが、ε180EDのような鏡筒径が大きく、また重い鏡筒を載せると、今回のように風の影響を大きく受けてしまいます。観望用途では問題のない範囲だと思いますが、天体写真撮影においては、搭載重量に余裕を見た組み合わせにしておいた方が無難だと感じました。


まとめ

今回、ε180EDSXP赤道儀を使った撮影を通じて、SXP赤道儀の駆動系の反応の良さを改めて確認できました。大きな鏡筒を載せたため、外見上は若干トップヘビーな印象を持ちましたが、高速での自動導入もスムーズに行うその姿は頼もしく感じました。

とはいうものの、やはり赤道儀自体の大きさはSXD赤道儀とそれほど変わらず、赤道儀のクラスとしても同じ中型クラスなので、それほど大きな機材は載せない方が無難でしょう。今回は冷却CCDカメラのセルフガイド機能を使って、ガイド鏡を使わずに撮影しましたが、デジタル一眼レフカメラでの撮影では、撮影鏡筒と共にガイド鏡とオートガイダーを載せる必要があります。これらを考慮すると、もう少し小さな鏡筒の方がSXP赤道儀には合うと感じました。

今回は、SXP赤道儀には少々負担の大きいテスト撮影でしたが、そのような不安もはねのけてしっかりと結果を出してくれました。これならベテランも満足できる赤道儀になったと言えるでしょう。ステッピングモーターの心地よい反応と力強さ、それにスターブックTENの使い勝手の良さは、天体写真をさらに身近なものにしてくれるでしょう。これから天体写真撮影を本格的に始めてみようと考えている人にも、お勧めできる赤道儀だと思います。

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SXP赤道儀

ビクセン SXP赤道儀 定価¥399,000→KYOEI特価¥338,000(※プレートホルダーSXは別売です。)

SXD赤道儀下取りの場合 通常特価338,800円-100,000円→238,000円
SXD赤道儀+三脚下取りの場合 通常特価338,800円-110,000円→228,000円
ビクセン SXP赤道儀 セット品 ビクセン SXP-R200SS KYOEI特価504,000円(定価593,250円) ビクセン SXP-VC200L KYOEI特価538,000円(定価633,150円)
ビクセン SXP-ED103S KYOEI特価577,000円(定価679,350円) ビクセン SXP-ED115S KYOEI特価653,000円(定価768,600円) ビクセン SXP-AX103S KYOEI特価702,000円(定価826,350円)

レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

ビクセンSXP赤道儀 インプレッションVol.03

ビクセンSXP赤道儀 インプレッション Vol.03 「ビクセンアドバンスユニット」

ビクセンSXP赤道儀

スターブックTENコントローラーの機能拡張ユニットとして、アドバンスユニットが発売されました。AXD赤道儀が登場した頃から待ち望まれていたこの拡張ユニットの性能はどの程度なのか気になるところです。今回、試用する機会を得ましたので、ガイド機能を中心にテストを行ってみました。


アドバンスユニットについて

ビクセンアドバンスユニット アドバンスユニットは、スターブックTEN専用の拡張ユニットですので、SX赤道儀シリーズに装備されているスターブックには対応していません。現在のところ、スターブックTENを搭載しているAXD赤道儀SXP赤道儀がこのアドバンスユニットを使用できる赤道儀となっています。

アドバンスユニットは、スターブックTENの拡張スロットの中に差し込んで使用します。スターブックTENの中にすっぽりと収まるので、出っ張りもなくかさばりません。アドバンスユニット自体はプラスチック製で、非常に軽くできています。

アドバンスユニットには、CCDビデオカメラの信号を受けるアナログ映像端子、デジタル一眼レフカメラのシャッターをコントロールするレリーズ端子、SDカードスロット、それにUSB端子が付いています。
なお、アドバンスユニットを使う前に、スターブックTENのプログラムのバージョンを最新版へアップデートしておきましょう。
アップデートの方法は、メーカーのホームページやSXP赤道儀のマニュアルに記載されています。


オートガイドに必要な機器

ビクセンCCDビデオカメラ アドバンスユニットの最大の魅力は、スターブックTENを使ったオートガイド機能です。この機能を使えば、パソコンが必要な外付けオートガイダーの代わりに、スターブックTENの画面上でオートガイドの操作ができます。撮影時にパソコンを使いたくない方には、大変魅力的な機能と言えるでしょう。

オートガイド機能を使用するには、アドバンスユニットの他に、星の動きを監視するCCDビデオカメラが必要です。CCDビデオカメラは、アナログ信号(NTSCコンポジット信号)を扱えるものなら、アドバンスユニットに繋ぐことができます。アナログCCDビデオカメラを既にお持ちであれば、お手持ちの機種が対応しているか、販売店で相談されるとよいでしょう。

今回のテストでは、ビクセンのカラーCCDビデオカメラC0014-3M(右写真)を使用しました。このカメラには、1/3インチのカラーCCDセンサー(41万画素)が使われています。

ところで、メーカーでは、このアドバンスユニットを使ったオートガイドのことを、外付けオートガイダーを使った操作と区別するために「ビデオガイド」と呼んでいます。それに従って、本記事でも以下「ビデオガイド」と記載します。


操作の手順

スターブックTENの画面 まず、アドバンスユニットを入れたスターブックTENと、CCDビデオカメラをケーブルで繋ぎます。次に、スターブックTENのメニューにある拡張機能から、映像信号表示を選ぶと、画面にCCDビデオカメラで捉えた映像が表示されます。この画面は全画面表示と画面半分が選べるようになっており、右の写真はその半画面表示の様子です。スターブックの星図の横に、CCDビデオカメラからの映像が表示されているのが分かります。

ビデオガイドまでの手順としては、まずスターブックTENの画面を見ながらガイド鏡のピント合わせを行います。次に、キャリブレーション、ガイド範囲の選択を行い、ビデオガイド開始となります。アドバンスユニットには、詳しい手順を記載した取扱説明書が付いていますので、戸惑うことなくビデオガイドできるでしょう。

ビデオガイドのパラメーターとして、補正率、しきい値、ガイド速度が用意されています。補正率は、アドバンスユニットから赤道儀に送られる修正信号の強さを変えるパラメーターです。しきい値は、補正を行う最小のガイドエラーを設定するパラメーターで、エラー値がこの値以下の時は、赤道儀に信号を送りません。ガイド速度は、赤道儀がアドバンスユニットから信号を受けた時に、どれだけの量動くかを設定するものです。
以上の3つは他のオートガイドソフトでも一般的に使われているパラメーターで、アドバンスユニットも同様の仕組みに基づいています。


オートガイドの精度など

ビデオガイド中キャリブレーションの後、画面で星を選択してビデオガイドを開始すると、選択したガイドエリアの中央に星が移動します。星がエリアの中央に到達すると、そこにガイド星が留まるよう信号が赤道儀に送られ、ビデオガイドが始まります。同時に、右の画面のように「ガイド中」と画面に表示されます。

ガイド中は、CCDビデオカメラの画像の下に、ビデオガイドのエラー量とガイド星の明るさが表示されます。リアルタイムで値が更新されていきますので、ビデオガイドが成功しているかどうかが一目瞭然です。

アドバンスユニットの優れた点は、ビデオガイド動作中でもパラメーターを変えることができることです。例えば、ガイドエラーがゼロ点を境に大きくぶれている時には、補正率を下げるとガイドが安定する場合があります。このようなパラメーターの変更を随時可行うことできるのは、特筆すべき点でしょう。

テスト撮影中、画面でガイドエラー量を追っていましたが、ビデオガイドは大きな乱れもなく安定していました。今回のテストでは、撮影望遠鏡としてビクセンED103Sとデジタル一眼レフカメラを使用しましたが、撮影画像の星は真円を保っており、アドバンスユニットのビデオガイドの精度は十分と言えるでしょう。

ところで、アドバンスユニットでガイド星として使える星の明るさは、使用するCCDビデオカメラの感度に依存します。CCDビデオカメラの感度が高いほど、暗い星でもガイド星として使うことができます。アドバンスユニットのメニューには、平均化回数という機能があり、この回数を増やすことでより暗い星を使うことができます。取扱説明書によれば、口径8センチの望遠鏡とC0014-3Mビデオカメラを使って平均化回数を99回に設定した場合、約8等級の星までガイド星として使えるとのことです。


カメラのリモートコントロール機能

リモートコントロール機能 アドバンスユニットには、ビデオガイド機能の他に、デジタル一眼レフカメラのシャッターを制御するリモートコントロール機能が用意されています。この機能を使うと、露出時間、インターバル時間、露出回数をスターブックTENから制御できます。デジタル一眼レフカメラを使って天体写真を撮影する際に大変便利な機能です。

具体的には、スターブックTENの拡張機能の中からリモートコントロールを選択し、各パラメーターの値を設定し、露出開始するという流れになります。ミラーアップができるデジタル一眼レフカメラでは、ミラーアップの時間も設定できるようになっています。


今回のテスト撮影で気づいた点

ガイド中断中 今回の撮影では、デジタル一眼レフカメラのライブビュー機能を使ってピントを合わせ、ビデオガイドを行いました。この組み合わせならパソコンを使う必要がないため、撮影システムを簡略化できます。パソコンを駆動させるための大きな電源を必要としなくなるのもよい点でしょう。

スターブックTENの画面に映っている星をガイド星に選んだ場合でも、その星が暗い場合にはガイドエラーが起こることがありました。具体的には、ガイドを開始すると、右の画面のように「ガイド中断」と表示され、ガイドが止まっています。確実にビデオガイドを行うためには、ある程度明るい星をガイド星に選ぶ必要がありそうです。

撮影望遠鏡の構図を合わせた後、なるべく明るいガイド星を選ぶために、ガイド鏡を動かして星を探す必要がありました。ガイド鏡を独立して動かすためのガイドマウントは必須と言えるでしょう。

パソコンが必要ない魅力的なオートガイドシステムですが、アドバンスユニットの他にCCDビデオカメラを用意する必要があります。現在では、比較的安価なオートガイダーが他社から販売されていますので、コストパフォーマンス面での判断は分かれるところです。

アドバンスユニットには、詳しい取扱説明書が付属しています。これまでオートガイド撮影といえば、情報をネットで検索して試行錯誤しながら行うことが多かったのですが、この取扱説明書に沿って行えば、初心者でも比較的容易にガイド撮影を行うことができるでしょう。

CCDビデオカメラの感度を上げるためにフレーム蓄積機能を使うと、ガイドが不安定になることがありました。取扱説明書にも記載されているとおり、ビデオガイド時にはCCDビデオカメラのフレーム蓄積機能はOFFにした方が良さそうです。

パソコンを使ったオートガイドシステムでは、感度の高いデジタルタイプのCCDカメラ(LodeStarやST-i等)が人気があります。アドバンスユニットにはUSB端子も装備されていますので、今後、こうしたデジタル機器にも対応できるようになれば、より優れたオートガイダーになるでしょう。


まとめ

今回のテスト撮影を通じて、アドバンスユニットは、オートガイダーとして大変使い易くできていると感じました。オートガイドの各種パラメーターやデジカメのリモートコントロールなど、必要な機能は網羅されており、ユーザーの立場に立って開発されたという印象を持ちました。

一方、アドバンスユニットに使えるカメラが、アナログタイプに限られているのは非常に残念です。ガイド星の極限等級は、CCDカメラの感度に依存しますので、感度の高いデジタルCCDカメラを使えるようにして欲しいところです。今後のアップデートでそのようなCCDカメラを使えるようになれば、ハイアマチュアからも支持されるオートガイドシステムとなるでしょう。

とは言いつつも、これからオートガイド撮影にチャレンジする人にとって、メーカー純正のオートガイドシステムが出ているのは魅力です。また、パソコンを使う必要がないのは大きな利点で、この点だけでも、アドバンスユニットを購入するメリットはあるかもしれません。今後のアップデートにも注目したいビクセンの新製品です。

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SXP赤道儀

ビクセン SXP赤道儀 定価¥399,000→KYOEI特価¥338,000(※プレートホルダーSXは別売です。)

SXD赤道儀下取りの場合 通常特価338,800円-100,000円→238,000円
SXD赤道儀+三脚下取りの場合 通常特価338,800円-110,000円→228,000円
ビクセン SXP赤道儀 セット品 ビクセン SXP-R200SS KYOEI特価504,000円(定価593,250円) ビクセン SXP-VC200L KYOEI特価538,000円(定価633,150円)
ビクセン SXP-ED103S KYOEI特価577,000円(定価679,350円) ビクセン SXP-ED115S KYOEI特価653,000円(定価768,600円) ビクセン SXP-AX103S KYOEI特価702,000円(定価826,350円)

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Explore Scientific ED127 インプレッション

Explore Scientific ED127 インプレッション

Explore Scientific Carbon Fiber ED127 f/7.5

Explore Scientific社は、リーズナブルな超広角アイピースで注目を集める天体機器メーカーです。このExplore Scientific社から、口径127mmの大口径屈折望遠鏡が登場しました。EDレンズを採用した大口径3枚玉アポクロマートにも関わらず、価格は20万円台半ばとリーズナブルです。今回、この天体望遠鏡を試用する機会を得られたので、撮影した画像もご紹介しながら、印象をまとめてみました。


Explore Scientific ED127の外観

今回使用したのは、カーボン鏡筒モデルです。大きな専用トランクケースを開けると、ED127鏡筒本体の他、50mm×8倍の照明付正立ファインダー、2インチ天頂ミラーが入っていました。鏡筒には専用の鏡筒バンドが付いており、バンド上部には取っ手も付いているので簡単に持ち上げることができます。鏡筒バンド底面には、ビクセン規格のアリガタが取り付けられているので、ビクセンのSX赤道儀などにそのまま搭載することができます。

ED127専用ケース

ED127鏡筒の第一印象は、口径12.7センチの屈折望遠鏡にしては軽いということです。仕様によれば、鏡筒重量は8.16キロということですので、それほど軽いわけではありませんが、取っ手がついて持ちやすくなっているため、そのように感じたのでしょう。

ED127鏡筒は口径の割に細く、鏡筒径は130ミリとなっています。黒いカーボン鏡筒ということもあってか、かなりスリムに見えますが、鏡筒自体はしっかりしています。また、編み込まれたカーボン繊維が、黒いボディをより一層引き締めています。

ED127のレンズセル ED127望遠鏡のフードは脱着式で、専用ケースには、フードが逆さまに取り付けられた状態で入っています。このフードを外すと、3枚玉レンズを入れたレンズセルが姿を現します。レンズセル部分は、鏡筒部分よりも一段太くなっていて、セルの外側には光軸修正用のネジが設けられています。

レンズセルの外側には薄いフェルトが巻かれており、フードの固定ネジがここに当たってフードを固定するようになっています。フードの固定力には問題ありませんが、金属製のネジがフェルトに当たるので、フェルトがすぐに禿げてしまいそうです。実際、手元に届いた製品でも、ネジが当たっていた部分のフェルトが一部はげていました。

アイピースなどを取り付ける鏡筒の接眼部は、クレイフォード式のフォーカサーとなっています。この接眼装置には、減速比1:10の減速装置が付けられているので、細かなピント合わせも容易に行うことができます。差し込み口は2インチスリーブとなっています。


観望に使って見て

ED127直焦点で撮影した月面 Explore ScientificED127望遠鏡を赤道儀に載せて、月や恒星を観望してみました。まず低倍率のアイピースを使い、視野に上弦を過ぎた月全景を入れてみたところ、非常に明るく、口径10センチの望遠鏡とは光量が違うと感じました。コントラストは良好で、背景は黒く締まっています。月と背景の境目部分に注目してみましたが、気流が乱れたときに若干の色のにじみが見える程度で、気になるような色収差は感じられませんでした。

さらにアイピースを変えて、約200倍で月面クレーターを観望しました。屈折望遠鏡らしいコントラストの高い像で、クレーターの凹凸がよく分かります。月の欠け際を見ると、緑色~青色の色収差が若干感じられましたが、それほど目立ちません。豊富な光量と相まって、快適な月面観望を楽しめました。

次に、ED127望遠鏡の恒星像を確認しました。明るい星を視野中央に入れ、ピントを合わして恒星をよく見ると、輝星の周りに少し青ハロが感じられました。フォーカスをずらして恒星像を見ると、焦点の内側では、青っぽいハロが緑色の中心像を取り巻くように輝き、焦点の外側では、逆に緑色のハロが青色の中心部を取り巻いています。EDレンズを使った3枚玉アポクロマートということですが、若干の色収差は残っているようです。ただその量は僅かですので、通常の観望用途ではアクロマートのような色収差が気になることはないと思われます。また、対物レンズの光軸も合っていました。

なお、今回のテストでは付属の天頂ミラーは使わずに焦点像を確認しましたが、この望遠鏡は天頂ミラーを使わないとドロチューブ長が足りず、フォーカスが合いません。そのため、今回はタカハシの2インチスリーブを介して、接眼レンズを取り付けました。普段の観望では天頂ミラーを使うので問題ないと思いますが、直視する場合はアダプターなどが別途必要です。


月面クレーターを撮影

デジタル一眼レフカメラEOSKissX3をED127望遠鏡に取り付けて、月面を拡大撮影してみました。メーカー純正の拡大撮影アダプターは用意されていないので、タカハシの拡大アダプターを使用しました。接眼部が2インチスリーブなので、他社製のアダプター類を汎用できるのは便利です。下がその撮影画像で、その下にティコクレーターの部分を切り抜いた画像を載せています。

ED127で撮影した月面クレーター

月面クレーターティコ

拡大した画像を見ると、欠け際に緑色の色収差が若干発生しているのがわかりますが、なかなかシャープな像が得られました。気流の良い日を選んでじっくり撮影すれば、より鮮明な写真が得られると思います。なお、掲載した撮影画像にはシャープ処理等はかけていません。大きな画像はこちらからご覧いただけます。


直焦点で撮影

今度は星の綺麗な郊外で、直焦点撮影を行いました。今回の撮影で使用した赤道儀は、ビクセンSXP赤道儀です。カメラはAstro60Dを使用し、SBIG社ST-iオートガイダーでガイド補正を行いました。また、撮影用の補正レンズとして、笠井トレーディングから発売されているED屈折用0.8xレデューサーを使用しました。このレデューサーは、2インチスリーブに差し込む形式なので、ED127望遠鏡にも簡単に取り付けることができます。

下がこの組み合わせで撮影したアンドロメダ大銀河の写真です。写り具合がよくわかるように、画像処理は行わず、カラーバランスを合わせただけの画像です。その下には、各点のピクセル等倍画像を載せています。大きな画像はこちらからご覧いただけます。

ED127直焦点で撮影したM31

現地で撮影画像をデジカメの液晶モニターで確認したところ、星像は十分シャープで、周辺像もそれほど悪くないという印象を受けました。上の拡大画像を見ると、その印象通りの結果が得られているのがわかります。なお、画像が荒れているのは、天候不順で雲間からの撮影となったので、カメラのISO感度を3200に上げ、120秒露出で撮影した1枚画像のためです。ISO感度を下げ、露出時間を延ばし、複数コマ撮影してコンポジットすれば、もっと滑らかな画像になるでしょう。

次に、ペガサス座の球状星団M15を撮影しました。こちらもアンドロメダ大銀河と同じ条件で撮影し、画像処理は行っていません。全体の画像の下に、中央部のピクセル等倍画像を載せています。大きな画像はこちらです。

ED127直焦点で撮影した球状星団

実際にED127を直焦点撮影に使った印象は、星像はなかなかシャープでこれなら星雲や星団の撮影にも使用できると感じました。色収差は少なく、周辺星像もよいので、時間をかければもっと綺麗な写真が撮れると思います。

ただ、ED127を使って直焦点撮影を行う場合、鏡筒、焦点距離が共に長いので、ブレなどには十分注意した方がよいでしょう。今回も強めの風が時折吹いたため、星が若干流れてしまいました。標準装備の鏡筒バンドのままでは支持幅が狭いので、バンド幅を広げるなど、安定して撮影できるようにするための改良も必要です。また、もう少し明るいレデューサーを使用すれば、よりよい写真が得られるでしょう。


今回のテストで気づいた点

ED127のフードとレンズセル 対物レンズのキャップは、レンズセルに直接ねじ込むタイプなので、キャップの取り外しの度にフードを外す必要があります。また、レンズ直前のフィルターネジにねじ込むため、キャップ着脱の際にはレンズを傷つけてしまわないか冷や冷やしました。フード外側から覆うフタのような形式に変更して欲しいところです。

脱着式のフードにもカーボンが編み込まれ、精巧な作りになっていますが、フードとしては少々重すぎる気がします。取り外しを考えると、フードはもう少し簡素な作りでもいいのではないでしょうか。また前述したとおり、フードの固定ネジでレンズセルのフェルトが禿げてしまうので、この点も改善して欲しいところです。

天体望遠鏡本体に専用トランクケースが付属するのは良い点です。他社製品のように別途アルミケース等を購入する必要がないので、お買い得感があります。また、望遠鏡に取っ手が付けられているのは、持ち運び時に本当に助かります。この取っ手にはスリットが設けられているので、下からねじ込んでガイド鏡などを載せることも可能でしょう。

ED127直焦点で撮影した月面 フォーカサーの動きはスムーズで、重いAstro60Dカメラを取り付けても垂れ下がることはありませんでした。フォーカサーの裏には、ドロチューブの固定ネジが設けられており、これを締めることでドロチューブを固定できます。ただ、このネジを締めるとドロチューブが大きく動いてしまうので、せっかく合わせたピントがずれてしまうのが難点です。そこで今回の撮影では、このネジは使わずに撮影を行いました。固定ネジを締めなくてもある程度のテンションはあるので、デジタル一眼レフカメラなら保持できるでしょう。フォーカサーに標準装備された10:1の減速装置は、滑ることもなく快適に操作できました。なお、ドロチューブの繰り出し量は右写真のように110mm前後あります。

メーカーからは補正レンズなどは用意されておらず、どちらかといえば観望用の大口径屈折望遠鏡ですが、直焦点撮影でもなかなかよい印象を与えてくれました。若干の改造が必要かもしれませんが、BORG等から販売されている明るいレデューサーと組み合わせて、撮影鏡筒として使っても面白いと思います。ただ本格的な撮影の際には、鏡筒バンドを強度の高い製品に変更するなど、若干の改良が必要でしょう。

今回の撮影は、ビクセンのSXP赤道儀に載せて行いました。一般的に13センチクラスの望遠鏡は大きく重いので、撮影には大型の赤道儀が必要になりますが、ED127は軽く、SXP赤道儀でも安定して撮影することができました。遠征撮影派にとって、軽量の大口径屈折望遠鏡は大変ありがたいです。

ED127望遠鏡の対物レンズは、EDレンズを使った分離式3枚玉アポクロ―マートということで、同じく3枚玉のタカハシTOA130と同程度の色消し性能があるかと期待しましたが、残念ながらこの点ではTOA130に及びませんでした。しかし、価格差も大きいので致し方ないところだと思います。

レンズフードを外すとレンズセルがむき出しになるため、光軸ずれを心配しましたが、移動撮影後にチェックしても光軸のずれは発生していませんでした。この製品には、ユーザー登録すれば5年の製品保証が付くため、万一光軸ズレが起こった場合でも、メーカーに調整を頼めるでしょう。


まとめ

今回初めてExplore Scientific社の製品を使用しましたが、 ED127望遠鏡は様々な用途に使えるコストパフォーマンスの高い望遠鏡だと感じました。光学性能という面では国産の高級機には劣るものの、全体的に上手くまとめられています。

観望用途だけでなく、撮影に使っても好印象で、メーカーから純正の補正レンズが用意されていないのが残念な程です。F値が5前後になるレデューサーがあれば、星雲星団撮影用の鏡筒としても使えそうな気がします。

専用トランクケースに付属アクセサリー、軽量で細身の持ちやすい鏡筒など、ED127は大口径にも関わらず、使い易く作られています。タカハシTOA130のような完璧な色消し性能を求める方にはお勧めできませんが、大口径の屈折望遠鏡で手軽に観望・撮影を楽しみたいという方には、ED127は有効な選択肢の一つになると思います。

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ビクセンSXP赤道儀 インプレッションVol.04

ビクセンSXP赤道儀 インプレッション Vol.04 「ビクセンアドバンスユニット その2」

天体望遠鏡

スターブックTENコントローラーのアドバンスユニットは、ビデオガイド機能があることで天体写真ファンに人気があります。今回は、前回使用したビクセン製のカラーCCDカメラC0014-3Mに代えて、より感度の高いWATEC製のカメラWAT-100Nを使ってみました。そのレポートをお届けします。


アドバンスユニットについて

CCDビデオカメラ 前回のアドバンスユニットのレポートでご紹介したとおり、 この拡張ユニットをビクセンのスターブックTENコントローラーに挿入すると、オートガイド撮影(ビデオガイド撮影)が可能になります。 他のオートガイダーと異なりパソコンが不要なため、本格的な天体撮影を手軽に楽しむことができ、 特に天体写真ファンに人気のある機能です。

アドバンスユニットのビデオガイド機能を使うには、ガイド星の動きを監視するアナログビデオカメラが別途必要となります。 このカメラの感度によって、ガイドに使用できる星の数が変わってくるので、 できるだけ感度の高いカメラを使うと快適にビデオガイドを楽しめます。 前回使用したビクセン製のカラーCCDカメラC0014-3Mに代えて、今回、より感度の高いWATEC製のカメラWAT-100Nを使用したのはそのためです。


WATEC製カメラの感度

メーカーの仕様によれば、WATEC製WAT-100Nの最低被写体照度は0.001ルクス(lux)。一方、前回使用したビクセンのカラーCCDカメラは、0.012luxとなっています。単純に数値を比べると、WAT-100Nの方が数段優れているように見えますが、最低被写体照度の測定方法は、メーカーによってばらつきがあるという意見もあります。そこで、星の写り具合を実際に撮り比べてみました。

テストに使用した望遠鏡は、口径76mmの屈折望遠鏡ボーグ76EDです。これにそれぞれのCCDカメラを取り付け、はくちょう座γ星付近を自宅から撮影してみました。下の画像がその結果ですが、WAT-100Nの方が暗い星まで写っていることがわかります。カメラの機能が異なるので、シャッター速度以外は全く同じ設定にすることはできなかったものの、設定をいろいろ変えて試しても、WAT-100Nの方がより暗い星まで認識できることがわかりました。なお、CCDチップは1/2インチセンサーを持つWAT-100Nの方が広いので、全く同じ写野でないことはご了承ください。

ガイド星の様子ガイド星の様子

(※画像をクリックすると拡大画像で星の等級をご覧になれます。)


WATEC製WAT-100Nを使って撮影

撮影システム このWAT-100Nをガイドカメラに用い、アドバンスユニットを使って実際に星空を撮影してみました。今回の撮影に使用した全体の天体望遠鏡システムは、右写真の通りです。

ビクセンSXP赤道儀マルチプレートDXを取り付け、その上に撮影鏡筒のビクセンED103S望遠鏡とガイド鏡のボーグ76EDを載せています。ガイド鏡はガイド星を探す時に独立して動かす必要があるため、低重心ガイドマウントを介してプレートに取り付けています。撮影に使用したカメラはAstro60Dです。こちらは、ビクセンED103S望遠鏡にレデューサーを介して取り付けています。

撮影対象として、アンドロメダ大銀河を選びました。アンドロメダ大銀河の近くで輝くアンドロメダ座のν星でキャリブレーションを行った後、赤道儀を動かしてアンドロメダ大銀河を構図の中央に導入します。この後にガイドマウントを使ってガイド星を探しましたが、WAT-100Nは感度が高いのでガイドマウントを少し動かしただけで適当なガイド星を見つけることができました。

下が今回のシステムで撮影したアンドロメダ大銀河の写真です。当初600秒露出の予定が、途中で雲が出てきたため515秒露出となってしまいましたが、淡い渦巻まで綺麗に写ってくれました。全体画像の下に中央の切り抜き拡大画像を載せましたが、こちらをご覧いただくと、ガイドが良好だったことがおわかりいただけると思います。

アンドロメダ大銀河

中央部拡大


撮影の手順

ビクセンアドバンスユニットを使ってガイド撮影する際に、私が実際に行っている手順をご紹介します。
一つの例としてご参考いただければ幸いです。

(1)機材の準備を整え、いつでも撮影可能の状態にします。極軸を合わせ、赤道儀のアライメントも行っておきます。
(2)ガイド鏡にまず低倍率アイピースを取り付けます。
(3)赤道儀を動かして、撮影用望遠鏡のカメラファインダー中央に明るい星を導入します。
(4)ガイドマウントを動かして、それと同じ星がガイド鏡の視野中央に入るようにします。 これにより、ガイド鏡と撮影鏡筒を同じ方向に向けることができます。
(5)ガイド鏡のアイピースを取り外して、CCDビデオカメラを取り付けます。
(6)CCDビデオカメラのピントを合わせます。
(7)撮影対象の近くにある明るい星を選んで、スターブックTENで自動導入します。
(8)その星がCCDビデオカメラに写ったら、アドバンスユニットのキャリブレーションを行います。
(9)赤道儀を動かして撮影天体を導入し、コントローラーを使って撮影望遠鏡の構図を合わせます。
(10)構図が合ったら、ガイドマウントを動かして、撮影対象付近の明るめの星をCCDビデオカメラの画面に表示させます。
(11)その星を選んでビデオガイドを開始します。
(12)ビデオガイド開始後しばらくしてガイドが安定するのを待って、静かにカメラのシャッターを切り撮影を開始します。

毎回同じ機材で撮影する場合は、全ての撮影が終了した後に(4)の作業を行って、撮影鏡筒とガイド鏡が同じ方向を向くようにしておけば、次回撮影するときに(1)から(4)の手順を省略することができます。また、CCDビデオカメラのピント位置をガイド鏡にマークしておくと、次回のピント合わせが楽になるでしょう。


まとめ

前回、カラーCCDビデオカメラを使ってガイド撮影を行ったときは、ガイド星を探すのを面倒に感じましたが、WATEC製のWAT-100Nカメラに代えるとガイド星を捜す作業がかなり楽になりました。ハイビットで感度の高い冷却CCDタイプのオートガイダーには敵わないと思いますが、これなら都会の空でもアドバンスユニットを使ったガイド撮影を手軽に楽しめるでしょう。

今回使用したWATEC製のモノクロタイプのCCDビデオカメラは、以前より高感度のアナログカメラとして広く知られています。しかし、純正の安心感を求めるユーザーも多いと思いますので、ビクセンからもアドバンスユニットに適した高感度CCDビデオカメラを是非発売して欲しいところです。パソコンいらずの内蔵型オートガイダーは、これから本格的に天体撮影を楽しもうと考えている人にとって大きな魅力があります。新しいSXD2赤道儀も発売されましたので、より使い易く進化していって欲しいですね。

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ビクセンGP2追尾撮影スターターセットのインプレッション

ビクセンGP2追尾撮影スターターセットのインプレッション

ビクセンGP2追尾撮影スターターセット

協栄産業から、ビクセンGP2赤道儀に三脚などを組み合わせた、KYOEIオリジナルGP2追尾撮影スターターセットの発売が開始されました。このオリジナルセットは、これから天体写真を始めてみようと考えている方を対象とした機材で、追尾撮影に必要なパーツが一通りセットになっています。今回はこのオリジナルセットをフィールドに持ち出して、実際に星空を撮影し、その能力を探ってみました。


KYOEIオリジナルセットについて

ビクセンGP2赤道儀 オリジナルセットの中心となるのは、ビクセンのGP2赤道儀です。GP2赤道儀は、ビクセン社が入門者向けに製造している赤道儀で、これから天体撮影を始めてみようという方に適した一台と言えます。赤道儀の本体重量は4キロ程度と軽く、手軽に持ち運ぶことができます。

GP2赤道儀を載せる三脚として、ビクセンSXG-HAL130がオリジナルセットに付属します。この三脚は剛性が優れているため、天体写真ファンに人気のあるモデルです。将来、赤道儀をビクセン社の上位機種(SXP赤道儀など)に買い替えた場合でも、この三脚を引き続き使用することができるでしょう。

ビクセンGP2赤道儀はモーターが別売りのため、電動で赤道儀を動かすにはモーターを別途購入しなければなりません。しかし、KYOEIのオリジナルセットには、赤経モーターとそれを制御するビクセンDD-3コントローラーが付属しています。赤緯モーターはオプションとなりますが、まずは赤経モーターだけで天体撮影を楽しむことができるでしょう。また、赤道儀を正確に天の北極に向けるためのGP極軸望遠鏡も付属しています。

オリジナルセットには、カメラをGP2赤道儀に取り付けるためのKYOEIオリジナルの汎用アリミゾプレートDXと、各種ネジも付属します。また、初心者の方でも分かりやすいよう、GP2赤道儀の説明書に加えて、各種マニュアルも付いています。デジタル一眼レフカメラとレンズがあれば、天体撮影をすぐに始められる組み合わせになっています。


KYOEIオリジナルセットのセットアップ

赤道儀の赤経モーター 商品が届いてから赤道儀を追尾撮影用にセットアップするまでの手順を簡単にご紹介しましょう。

KYOEIオリジナルセットを注文すると、商品は数個の段ボールに分かれて届きます。内容物を確認した後、まず赤経モーターと極軸望遠鏡を、取扱説明書を参照しながら赤道儀に取り付けましょう。その際、赤経モーターにコントローラーを繋いで試験運転し、ギアのかみ合わせに問題がないか確認しておきましょう。

次に、撮影場所に移動して三脚に赤道儀を載せます。三脚架台の突起部をおおよそ北の方向に向け、GP2赤道儀をその上に載せて、下のネジでしっかり固定します。さらに、バランスウェイトシャフトを取り付け、ウェイトをシャフトに通してロックします。最後にデジタルカメラを赤道儀のヘッド部分に取り付けて、赤道儀のセットアップ完了です。

デジタルカメラの取付には、KYOEIオリジナルの汎用アリミゾプレートDXと付属のネジを使うとよいでしょう。カメラの固定方法が分からない場合は、販売店に相談してみると良い方法を教えてくれると思います。

※赤経モーターと極軸望遠鏡の取付には少々手間がかかりますので、撮影に出かける前に行っておくことをお勧めします。


撮影準備

バランスを合わせる デジタルカメラをGP2赤道儀に載せて赤道儀のセットアップが終了したら、いよいよ撮影です。まず撮影までの手順について、順を追って説明します。

(1)赤経のクランプを緩めて、赤経軸回りのバランスが合っているか確認します。 右写真のようにすると左右のバランスが分かりやすいでしょう。 どちらかが重い場合は、バランスウェイトを移動させて、左右が釣り合うように調整します。

(2)次に、GP2赤道儀の極軸合わせのために、架台の水平出しが必要になります。 赤道儀の根元に付いている水準器を目安にして水平を合わましょう。 高さの調整は、三脚の各脚の長さを調整して行います。

(3)赤道儀の水平が合ったら、極軸望遠鏡を覗いて北極星を視野内に導入します。 GP2赤道儀の極軸望遠鏡は、時間と日付を合わせると北極星の導入位置が表示されるタイプです。 取扱説明書を見ながら、慎重に導入しましょう。 視野内のスケールが暗くて見えにくい場合には、GP極軸望遠鏡セットに付属している照明装置を使うとよいでしょう。

(4)最後に、DD-3モーターコントローラーのケーブルを繋ぎます。

後は撮影したい天体をカメラの視野内に導入して、モーターのスイッチを押せば追尾撮影開始です。文章にすると煩雑に思うかもしれませんが、慣れれば数分で準備できるでしょう。焦らず、1つずつ確実に行いましょう。


撮影の実際

KYOEIオリジナルセットにキヤノンEF200mmF2L IS USMレンズAstro60D(キヤノンEOS60D天体用改造モデル)を載せて、夏の星空を撮影してみました。撮影対象には、夏の天の川の中で輝く干潟星雲(M8)と三裂星雲(M20)を選びました。

今回はオートガイダーを使わないノータッチ追尾撮影ですので、露出時間を短くした方が追尾エラーの影響を減らすことが出来ます。そこでデジタル一眼レフカメラのISO感度を1600、レンズの絞りをF2.5に設定し、120秒露出で撮影を行いました。5枚連続で撮影したところ、拡大表示すると若干星像が伸びている画像もありましたが、ガイドエラーはほとんど目立ちませんでした。

下に撮影した画像の一部分を拡大した画像を表示します。画像はそれぞれの写真のM20の部分を拡大したもので、左から撮影した順番に並べています。5コマ目をよく見ると星が若干左右に流れているのがわかりますが、それ以外の画像では星はほぼ円形を保っています。

拡大画像

5コマ目の画像を除いた4枚の画像を、パソコン上でコンポジット合成したのが下の写真です。夏の天の川銀河のハイライトとも言える、M8とM20星雲が浮かび上がりました。

M8とM20

ビクセンGP2赤道儀は、比較的安価な初級者向けの赤道儀ですが、120秒露出程度なら200ミリ望遠レンズで撮影できる精度があることがわかりました。ただ時折ガイドエラーが大きく出ることもあるため、実際の撮影では枚数を多めに撮り、ガイドエラーが大きく出たものを除いて合成すると、よりよい結果が得られるでしょう。


彗星を撮ってみよう

今年の秋にはアイソン彗星が地球に近づく予定です。アイソン彗星は非常に明るくなると予想されていて、今から天文ファンの注目を集めています。彗星が予想通り明るくなれば、絶好の被写体となるでしょう。今回のKYOEIオリジナルセットは、このアイソン彗星の撮影にも活躍すると思います。

アイソン彗星はまだ暗くて見えませんので、今年の春、話題になったパンスターズ彗星をオリジナルセットを使って撮影しました。撮影機材はM8とM20の時と同様で、露出時間は180秒で撮影しました。今回も5コマ撮影し、ガイドエラーの大きかった1コマを除いた4枚を合成しています。下がそのパンスターズ彗星の写真です。彗星の核から長く伸びた尾が写っています。

パンスターズ彗星

明るくなった彗星は太陽に近い位置にあるため、夕暮れ時や明け方の僅かな時間を狙って撮影することになります。限られた時間で失敗せずに撮影するには、機材をある程度使いこなしておかなければなりません。夏の天体の撮影を楽しみながら、アイソン彗星の撮影の練習をしてはいかがでしょうか。


撮影の失敗を減らすコツ

赤道儀の使い始めは、誰でも失敗がつきものです。慣れてくると徐々にコツが分かってきて、同じ機材でも上手く撮れるようになります。ビクセンGP2赤道儀を使って、上手に撮影するコツをいくつかご紹介しましょう。

(1)赤道儀の三脚は、なるべく水平でしっかりした地面の上に置く。

(2)三脚の脚を伸ばしすぎると不安定になるので、なるべく短い状態で使用する。

(3)機材を全てセッティングしてから極軸を合わせる。

(4)レンズの方向を変えるときには、赤道儀の軸に沿ってゆっくりと動かす(合わせた極軸をずらさないようにする)。

(5)構図が決まったら、赤経・赤緯のクランプを確実に締める。

(6)GP2赤道儀のモーターは振動が大きいので、モーターの電源を入れてしばらくしてから撮影を開始する(モーターがジジッと大きく鳴っている間は撮影しない)。

(7)露出時間中は赤道儀に触らない。

(8)露出時間中は赤道儀の周りで大きな振動を立てない。

(9)赤道儀に身体等が当たって揺らしてしまったら、面倒でも極軸が合っているか再確認する。

以上のような点に注意すれば、きっと綺麗な星空の写真を撮ることができると思います。


まとめ

ビクセンと言えば、スターブックTENの付いた高機能赤道儀に人気が集まっていますが、GP2赤道儀は手ごろな価格とシンプルさで魅力のある機材です。今回、KYOEIオリジナルセットが発売されたのをきっかけにGP2赤道儀を使って撮影してみたところ、中望遠のカメラレンズなら十二分に撮影を楽しめることがわかりました。

GP2赤道儀は拡張性がある点も良いところです。オプションで赤緯モーターが用意されているので、この赤緯モーターとオートガイダーを用意すれば、焦点距離の長いレンズや天体望遠鏡を使った撮影にも対応することができます。まずは手頃な機材で天体撮影を始めてみたいという方にお勧めのセットでしょう。

GP2赤道儀は生産終了しました。後継機はAP赤道儀になります。

KYOEIオリジナル AP-WM追尾撮影スターターセット

レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

コーワ PROMINAR 500mm F5.6 FLのインプレッション

コーワ PROMINAR 500mm F5.6 FLのインプレッション

コーワ PROMINAR 500mm F5.6 FLとビクセンSXP赤道儀

興和(コーワ)のプロミナー(PROMINAR)シリーズは、高性能なスポッティングスコープや双眼鏡でよく知られたブランドです。どちらか言えば星空観望や野鳥観察のための機材が多かったコーワですが、今回ご紹介する「コーワ PROMINAR 500mm F5.6 FL」は、デジタル一眼レフカメラと組み合わせて使う撮影用テレフォトレンズとして登場しました。今回、このコーワPROMINAR 500mm F5.6 FLをフィールドに持ち出して、実際に星空を撮影し、その天体撮影における能力を探ってみました。


コーワ PROMINAR 500mm F5.6 FLのシステムについて

コーワ PROMINAR 500mm F5.6 FL コーワ PROMINAR 500mm F5.6 FLの撮影システムは、マスターレンズと呼ばれる本体部分とマウントアダプター部分の二つに大きく分かれます(右写真参照)。マスターレンズ本体のみでは焦点を合わせることは出来ず、マウントアダプターを介してデジタル一眼レフカメラに取り付ける仕様になっています。

マウントアダプターは、焦点距離に応じて3種類のタイプが用意されています。 標準キットに付属するのはマウントアダプター「TX10」で、これをマスターレンズに取り付けると、全体が焦点距離500mmF5.6の光学系になります。これがコーワPROMINAR 500mm F5.6 FLの基本形です。

焦点距離を短くするコンバーションレンズとして、マウントアダプター「TX07」が用意されています。これを使用すると、焦点距離は350mmに短縮され、F値も4まで明るくなります。適度な焦点距離と明るいF値で、天体写真撮影に使い易い組み合わせでしょう。

さらにエクステンダーレンズが入った、マウントアダプター「TX17」があります。こちらを使えば、焦点距離850mmでF9.6の光学系として使用できます。F値はかなり暗くなりますが、視直径の小さな明るい系外銀河の撮影などに活躍しそうです。

これらのマウントアダプターは、ニコン、キャノン、ペンタックス、ソニー、それにマイクロフォーサーズに対応した製品が用意されています。マスターレンズとマウントアダプターの接続部分はバヨネット式になっており、カメラレンズを取り替えるような感覚で手軽にマウントアダプターを交換することができます。なお、このマウントアダプターの代わりにプリズムユニットを装着すれば、通常のスポッティングスコープのように使用することも可能です。

つまり、マスターレンズ一本あれば、マウントアダプターを変更することによって様々な焦点距離で撮影を楽しむことができ、これがこのPROMINAR 500mm F5.6 FLの大きな魅力といえるでしょう。


コーワ PROMINAR 500mm F5.6 FLの概要と各部説明

コーワ PROMINAR 500mm F5.6 FL コーワ PROMINAR 500mm F5.6 FLの光学系には、フローライトレンズ1枚と、XDレンズと名付けられた特殊低分散レンズが2枚が用いられており、これにより色収差を良好に補正しています。実際に撮影したところ、輝星の周りに青にじみなどの問題は発生せず、すっきりとした星像が得られました。

フォーカスリングにはデュアルフォーカサーが採用されています。通常のカメラレンズと同じ幅広のフォーカスリングに加え、より細かいピント調整が可能なファインフォーカスリングが設けられています。ピント合わせがシビアな天体写真撮影では大変便利な機能ですが、ファインフォーカスリングの減速率が低いため、残念ながら期待していたほど有用ではありませんでした。とは言え、通常のフォーカスリングだけでピントを合わせるよりは楽でしたし、最後のピントの追い込み時はこのリングが役立ちました。なお、このPROMINAR 500mm F5.6 FLは、マニュアルフォーカスのみのテレフォトレンズです。

また、天体撮影では使用する機会が少ないかもしれませんが、コーワ PROMINAR 500mm F5.6 FLには円形絞りが採用されています。絞りリングはフォーカスリングの手前にあり、カメラレンズのような感覚で操作し、被写界深度を変更した撮影を楽しむことが出来ます。

PROMINAR 500mm F5.6 FLには、レンズフードが付属します。このレンズフードは、軽量ですが懐が深く、迷光防止効果も高いものです。またマスターレンズには防塵防滴加工がされていて、夜露が多い天体撮影にも安心して使用できる構造になっています。

さらに三脚台座も付属しています。この三脚台座には、マンフロットやジッツォ製雲台に直接取り付けられるシュープレートが付いています。一般撮影には便利な三脚台座ですが、長時間露出する天体撮影用としては強度に少々不安が残ります。そこで今回の撮影では、K-ASTEC製のPROMINAR500mm F5.6FL専用バンドを使用しました。

PROMINAR 500mm F5.6 FLに標準マウントアダプターTX10を取り付けたときの重量は、約2キロです。同程度のスペックを持つ天体望遠鏡、タカハシFSQ-85EDの重さが3キロ前後あることを考えると、コーワ PROMINAR 500mm F5.6 FLは大変軽いことがわかります。これならガイド鏡を載せても、小型赤道儀に十分搭載できるでしょう。また、マウントアダプターを外すとコンパクトになり、持ち運びも大変便利です。


撮影結果より

マウントアダプターTX07で撮影

今回はコーワ PROMINAR 500mm F5.6 FLに、SBIG製の冷却CCDカメラ、STL-11000Mを組み合わせて撮影を行いました。赤道儀にはビクセンSXP赤道儀を使用しています。まず、マウントアダプターTX07を用いて、焦点距離350ミリ、絞り開放(F4)で、はくちょう座で輝く北アメリカ星雲を狙ってみました。下がその撮影画像です。なお、このSTL-11000Mカメラはモノクロ冷却カメラですので、LRGB各フィルターを通して撮影を行い、ステライメージ7を使ってカラー画像にしています。

北アメリカ星雲

撮影した印象としては、色収差は感じられず、星像も四隅までシャープでした。屈折望遠鏡らしいコントラストの良さも印象的でした。上の画像だけでは星像のシャープさが分かりづらいので、各部分のピクセル等倍画像を以下に載せています。

各部分のピクセル等倍画像

このピクセル等倍画像を見ると、四隅でも星の形がほぼ円形を保っていることがわかります。STL11000Mカメラは35ミリフルサイズカメラですので、APS-Cサイズのデジタル一眼レフカメラなら、画面最四隅まで点像を保ってくれるでしょう。

マウントアダプターTX10で撮影

次にマウントアダプターを標準キットTX10に替えて撮影を行いました。カメラや赤道儀は、TX07での撮影時と同じです。TX10に変更すると、コーワPROMINAR 500mm F5.6 FLは焦点距離500ミリF5.6の光学系になります。この組み合わせで、秋の夜空に輝くアンドロメダ大銀河を撮影しました。

アンドロメダ大銀河

マウントアダプターTX10を使用すると、TX07に比べて若干F値が暗くなりますが、アンドロメダ銀河のような天体を撮影するには、ちょうどよい画角になります。気になる星像は、TX07を使用したときの方が若干シャープな印象を持ちましたが、それでも十分な性能と言えるでしょう。下に各部のピクセル画像を載せましたので、ご覧下さい。

各部分のピクセル等倍画像

上のピクセル等倍画像を見ると、色収差は少なく、四隅でも星の形がそれほど崩れていないことがわかります。なお、左上画像に線のようなものが2本斜めに写っていますが、これは撮影中に通過した人工衛星の軌跡です。


撮影後の印象

コーワ PROMINAR 500mm F5.6 FL 今回、コーワPROMINAR 500mm F5.6 FLを使用した印象を、以下に箇条書きでまとめてみました。

・色収差が少なく、星像もとてもシャープ。特にマウントアダプターTX07を使用したときの性能は素晴らしく、35ミリフルサイズ四隅でもほぼ点像を保った。

・マウントアダプター取り付け部がバヨネットマウントのため、撮影中にガタが起きないかが心配していたが、今回の撮影では特に問題は発生しなかった。ただマウントアダプターTX10を使ったピクセル等倍画像を詳細に観察すると、四隅で星の流れ方が若干異なっているので、多少の影響はあったのかもしれない。

・鏡筒が約2キロと非常に軽く、コンパクトなため、持ち運びが大変便利。一本で3種類の焦点距離が楽しむことができ、重量制限が厳しい海外遠征に適した機材だろう。

・ファインフォーカスリングの減速率が低いのが残念。また、ファインフォーカスリングはカメラから一番遠く、手が届きにくいため、通常のフォーカスリングと位置を反対にして欲しかった。

・鏡筒はしっかりとした造りで、防塵防滴加工もされており、信頼感がある。鏡胴は写真レンズのように細い造りで、ブラックに赤ラインというデザインも引き締まった印象を与える。懐の深いフードが付属するのも迷光対策に有効。


まとめ

プロミナーと言えば、高性能なフィールドスコープや双眼鏡のイメージがあり、 天体撮影とは無縁のものという先入観がありましたが、今回、コーワPROMINAR 500mm F5.6 FLを使ってみて、そのイメージは180度変わりました。

色収差が良好に補正されているので、青ハロも気にならず、周辺の星像も絞り開放時からシャープです。軽量のテレフォトレンズなので、小さな赤道儀にも搭載可能で、撮影地に着いたら、素早くセッティングして撮影を始めることができます。

天体望遠鏡とは異なり、あくまでテレフォトレンズなので、AFやAE機能はありませんが、一般撮影用の望遠レンズとしても使用することができます。アダプターをプリズムユニットに替えれば、野鳥や月などの観察も可能とマルチパーパスになっています。手軽に超望遠の世界を楽しみたい方や、本格的に天体撮影に挑みたい方まで、様々なユーザーの希望を叶えてくれる一本ではないでしょうか。

コーワ Telephoto TX07/10セット

コーワ PROMINAR 500mm F5.6 FL

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天体写真撮影用フィルターの効果比較

天体写真撮影用フィルターの効果比較

Astro60Dとアイダス製フィルター

アイダス(IDAS)は、天体写真撮影用フィルターの分野でよく知られたブランドで、様々な特性を持ったフィルターを製造販売しています。中でも、光害カットフィルターのLPS-P2シリーズは、銀塩フィルムの頃から人気のあるフィルターで、多くの天文ファンが愛用しています。今回、このLPS-P2フィルターが、デジタル機材により適した、LPS-D1フィルターとして生まれ変わりました。そこで、このLPS-D1フィルターと、天体写真ファンの間の中で注目を集めているHEUIB-IIの効果の違いを試写によって確認してみました。


光害カットフィルターについて

アイダスLPS-D1フィルタ 光害カットフィルターは、光害の基となる水銀灯やナトリウム灯の波長の光だけをカットするように設計されたフィルターです。以下のLPS-D1LPS-P2フィルターの特性曲線を見ると、水銀やナトリウム灯の波長の部分だけ透過率が低くなり、星雲や銀河が発する波長の光は透過する設計であることがわかります。

光害の元となる光をカットしてくれるため、光害カットフィルターを使用すれば、光害の影響のある天体観測地でも、通常より長い露出時間をかけて天体を写し出すことができます。ただ、実際の光害は、水銀灯やナトリウム灯によるものだけでなく、蛍光灯などの全波長による照明の影響も大きいため、すべての光害をカットできるわけではありません。ある程度の光害をカットし、コントラストを高めてくれるフィルターと考えた方が良いでしょう。

なお、メーカーによると、今回新しくなったLPS-D1フィルターは、以前のLPS-P2フィルターよりも長波長側の光をシャープにカットし、赤カブリを抑えた設計になっているとのことです。

アイダスLPS-D1の特性


HEUIB-IIフィルターについて

アイダスHEUIB-IIフィルタ HEUIB-IIフィルターは、光害をカットするためのフィルターではなく、Hα光で輝く散光星雲のコントラストを強調するフィルターです。IRカットフィルターのように、波長700nmからの近赤外と紫外域の光をブロックしつつ、波長600nm~650nm前後の光もカットしています。これにより、天文用IRカットフィルターに見られる赤カブリをある程度低減し、星雲のコントラストを強調してくれます。

天体写真撮影用のフィルターに換装したデジタル一眼レフカメラで星空を撮影すると、夜空が赤被りして写ることがありますが、HEUIB-IIフィルターは、この赤カブリを低減しつつ、赤く輝く散光星雲のコントラストを向上してくれるフィルターと考えるとよいでしょう。


試写の結果

この2種類のフィルターをASTRO60Dに装着して、冬の夜空で輝くバラ星雲を撮影してみました。撮影光学系には、コーワ PROMINAR500mm F5.6 FL(マウントアダプター TX07使用, 350mm F4)を用いて、ビクセンSXP赤道儀で追尾撮影を行いました。

なお、これらのフィルターは、アイダスのEOS-MFAアダプターを用いて、ASTRO60Dのカメラマウント内に装着しました。このEOS-MFAアダプターを用いると、レンズと撮像素子の間に37mm径のフィルターを装着することができるので、フィルターが使用できるレンズの種類が広がります。また、光学系ごとに径の異なるフィルターを用意する必要がなくなりますので、経済的です。

では、撮影画像を見ていきましょう。下がそれぞれのフィルターを使用したときのバラ星雲の写真です。撮影の際、カメラのホワイトバランスを太陽光にセットしています。撮影後の加工は一切行っていない未処理画像です。なお、この画像の撮影は、若干光害の影響があるものの、5等星までは見える郊外(岡山県備前市)で撮影しました。

フィルターの比較画像

一番左は、フィルター未装着のASTRO60Dで撮影した写真です。ASTRO60D内に装着された天体撮影用IRカットフィルターの影響で、全体に赤かぶりしているのがわかります。

中央は、光害カットフィルターLPS-D1を、ASTRO60Dのマウント内に装着して撮影した写真です。フィルター無しの画像と比べると、赤かぶりが低減していますが、背景が若干青味かかった仕上がりです。また、光害をブロックする影響で、露出がアンダーになるので、他の2枚より露出時間を長くしています。

右側の写真は、HEUIB-IIフィルターを用いて撮影したものです。背景はニュートラルグレーに最も近い仕上がりで、星雲のコントラストもフィルター無しと比べて良好です。露出時間はフィルター無しと同様ですが、若干暗めの仕上がりとなりました。


強調処理後の比較

星雲の写り具合の違いを比べるため、各画像を画像処理ソフトウェアを使って強調してみました。画像処理では、背景のカラーバランスをニュートラルグレーに近づけ、背景の明るさがほぼ同じ明度になるように調整した後、レベル補正コマンドを使用して同じ量だけ強調処理を行いました。その処理後の画像が下になります。

フィルターの比較画像

画像処理後の画像を比べると、LPS-D1フィルターを用いた画像が、ばら星雲の淡い部分まで、最もコントラスト良く写っているのがわかります。これは、夜空に残る光害の光をカットして、露出時間を他のフィルターより延ばせたためでしょう。

続いて星雲のコントラストが高いのは、HEUIB-IIフィルターの画像です。こちらは、元画像自体がニュートラルグレーに近かったので、カラーバランスの調整は最小限で済みました。星雲自体の色合いもフィルター無しのものに近く、好感の持てるナチュラルな仕上がりになっています。

フィルター未装着の画像は、ホワイトバランスを合わせることにより、赤かぶりが取れてナチュラルな背景になりましたが、他の2つの画像と比べると、星雲のコントラストは弱くなっています。なお画像の中に斜めに走っている線は、人工衛星の軌跡です。


まとめ

今回、新しく発売されたフィルターをテストしてみたところ、最も好印象を受けたのは、HEUIB-IIフィルターでした。これは撮影を行った場所が、光害の影響は若干あるものの、天の川が薄く見えている環境だったことも影響していると思います。より光害の影響の大きい都市部周辺で撮影すれば、LPS-D1フィルターの方が効果を発揮したかもしれません。

天体写真撮影を始めたばかりの方が天文用フィルターに換装したデジタルカメラを使うと、カラーバランスが狂ってしまうのに悩まされることがあります。そのようなときにHEUIB-IIフィルターを使用すれば、カラーバランスを改善しつつ、星雲のコントラストも強調してくれるので、後の画像処理も行いやすく感じられるでしょう。HEUIB-IIフィルターは、散光星雲を撮影する際の常用フィルターとして活用できそうですね。

一方、天体写真のベテランの方なら、カラーバランスの崩れは画像処理で補正することとして、LPS-D1フィルターの光害カット特性を生かして長時間露出し、淡い星雲の描出を狙うことが可能でしょう。これら二つのフィルターは、モデルチェンジ以前から天体写真ファンの間で人気がありましたが、改めて優れた天体写真適正を持っていることが確認できました。撮影したい天体やシチュエーションに合わせてフィルターを使いこなすことができれば、より素晴らしい作品を生み出せるのではないでしょうか。

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Central DS Astro6Dのインプレッション

Central DS Astro6Dのインプレッション

Central DS Astro6D

Central DS Astro6Dは、キヤノンEOS6Dのフィルターを天体撮影用に換装し、 冷却機構を追加した35ミリフルサイズのデジタルカメラです。 今回、 Astro6D(Clearフィルター仕様)を使用して、実際に天体を撮影する機会を得ましたので、 カメラの印象や使用感をまとめてみました。


Astro6Dの概要

従来の冷却改造モデルと異なり、 Astro6Dではイメージセンサーをカメラボディから取り外し、 ボディ前面に取り付けた冷却ユニットの中にセンサーを固定しています。 放熱のためのヒートシンクが円形のため、一見、冷却CCDカメラのように見えるかもしれません。 カメラの底部には、着脱可能な外付クーラー「EXcooler」が固定されています。

標準仕様の Astro6Dは、EOSマウント仕様になっていますが、 付属のアダプターリングを使用すれば、Tネジ(M42)仕様の望遠鏡や、 M48ネジの鏡筒にも接続可能です。 また、アダプターリングの他にも、電圧変換モジュールや電源コードをはじめとするオプションが付属しています。 付属品の量が多くて戸惑うかもしれませんが、ユーザーの目的に合わせて、ベストな組み合わせを選択できるのは便利です。 また、後から必要な部品を買い足す必要もないでしょう。

Central DS Astro6D

Astro6Dのボディキャップを外すと、上の写真のように、35ミリフルサイズセンサーをクリアフィルタ越し見ることができます。 センサーはボディから取り外されているので、シャッターユニットは存在しません。 ミラーボックスがないため、センサー周囲は十分に広く、ケラレや周辺減光の影響を回避することができます。 大きなフルサイズセンサーは、高品質な天体画像を期待させてくれます。

Astro6Dを初めて手に持ったとき、ボディの大きさと共にずっしりとした重さを感じました。 EXcooler取付時の Astro6Dの重量は約1390gですので、約755gのEOS6Dボディの約2倍の重量になっています。 天体撮影時は、できるだけ接眼部がしっかりした天体望遠鏡に取り付けたいところです。


Astro6Dの冷却機構

Astro6Dの冷却は、冷却ユニット(TECクーラー)に入力する電圧によって、 「パッシブモード(Passive Cooling)」と「アクティブモード(Active Cooling)」の2種類のモードでの動作が可能です。

Central DS Astro6D

EXcoolerを使わず、付属の「DC4V電源変換コード冷却用(PS1204)」を用いて、 冷却ユニットに直接、電気を供給すると、 Astro6Dはパッシブモードで冷却されます。 パッシブモードでは、センサー温度は外気温に比べて約8度ほど下がります。 パッシブモードの消費電流は、約0.8A(DC12V)と大変小さく、 小型の電源でも使用可能な消費電流となっています。

一方、アクティブモードは、 Astro6Dの機能をフルに生かせる、より実践的なモードです。 冷却ユニットには、EXcoolerからDC8.5Vの電流が供給され、センサー温度を外気温から約18度下げます。 この時、EXcoolerは、放熱効果を高めるファンとしてだけではなく、電源集中管理ユニットとしても機能します。 EXcoolerにDC12Vの電源を入力すれば、冷却ユニットに必要なDC8.5Vに加えて、 EOS6Dボディのバッテリー電源DC8Vも得ることができます。


冷却の効果とノイズの比較

実際に Astro6Dをアクティブモードとパッシブモードで動作させ、 冷却ユニットの能力とノイズ発生量を比較検証しました。 なお、撮影条件は、外気温が約22度、撮影時の感度はISO1600、露出時間は600秒で統一し、 センサー温度の測定には、 Astro6D付属の温度計を用いました。

Central DS Astro6D

上の画像は、冷却OFF時と各モードでの冷却時の温度です。 一番左の冷却OFFの時と比べると、パッシブモードでは約10度センサー温度が下がっています。 EXcoolerを用いたアクティブモードの場合は、約20度下がり、センサー温度は2.4度になりました。 次に、各モード時のノイズ発生量を見てみましょう。

Central DS Astro6D

上の画像は、 Astro6Dで撮影したダークフレームのピクセル等倍画像です。 ノイズの発生量がわかりやすいように、元画像とレベル補正を使って強調した画像を各モードごとに並べました。 強調後の画像をご覧いただくと、冷却OFF時と比べ、パッシブ、アクティブモード共にノイズが少ないことがよくわかります。 また、パッシブモードとアクティブモードを比べると、アクティブモードの方がややノイズ発生量が少ないように感じられます。 キヤノンEOS6Dは、もともと長時間ノイズの少ないデジタル一眼レフカメラですが、 冷却ユニットの追加によって、より低ノイズのカメラになったことがわかります。


ミラーケラレと周辺減光

デジタル一眼レフカメラを使った天体撮影では、天体望遠鏡からの光がミラーボックス内で遮られ、 画像の片側が暗くなるミラーケラレという現象が起きます。 特にフルサイズセンサーは面積が大きいため、この現象が顕著ですが、 Astro6Dでは、センサーをボディから外し、前に持ってくるという大胆な改造を行ったことにより、 ミラーボックスによるケラレが発生しなくなりました。 実際にどの程度違うのか、EOS5DMarkIIで撮影したフラットフレーム画像と比較してみました。

Central DS Astro6D

上がフラットフレームの比較画像です。 フラットフレームの撮影には、タカハシε-180ED鏡筒を用い、 減光フィルムを貼ったELシートを鏡筒先にかざして撮影を行いました。 周辺減光の様子が分かりやすいように、ステライメージ7のレベル補正を用いて強調したモノクロ画像を表示しています。

画像を見比べると、右側のEOS5DMarkIIのフラット画像は、ミラーボックスのケラレにより、 上側と下側が黒くなってしまっていますが、 Astro6Dの画像ではそのような現象は見当たりません。 また、 Astro6Dの方が画像の中心から端の方に向かってなだらかに減光しており、全体的に周辺減光が少ないことがわかります。 センサーをミラーボックスから出したおかげでしょう。 天体写真の画像処理では、周辺減光の補正が重要なポイントですので、 この特性は天体写真の仕上げに有利に働きます。

Central DS Astro6D

また、 Astro6Dにはフィルターボックスが装備されています。 ドロップインタイプなので、カメラを光学系から外さずにフィルターを交換することが可能です。 フィルターボックスは、48ミリと52ミリのフィルターに対応しています。 径の大きなフィルターを使用できるので、周辺減光の点でも有利でしょう。


Astro6DとM-GENでオートガイド撮影

次に、 Astro6Dをフィールドに持ち出し、実際に天体を撮影してみました。 今回、使用した機材は、焦点距離500ミリのε-180ED望遠鏡とタカハシNJP赤道儀です。 追尾状況を監視するオートガイダーには、M-GENスーパーガイダーを用いました。 撮影対象は、北天で輝く秋の大型の散光星雲です。 赤い星雲をコントラスト良く捉えるため、 フィルター径52ミリのIDAS HEIUB-IIフィルターAstro6Dのフィルターボックスに取り付けて撮影しました。 また、撮影時の現地の気温は約20度でした。

Central DS Astro6D

今回のテストで確認したかったのは、撮影時の Astro6Dの使い勝手です。 Astro6Dには光学ファインダーは使用できないため、ピントや構図はライブビュー機能を使って合わせました。 通常のデジタル一眼レフカメラを使う場合でも、天体撮影時には光学ファインダーは使用せず、 ライブビューで画像を確認するので、ファインダーが使えないという点は特に問題ではないでしょう。 カメラのシャッターは、M-GENスーパーガイダーのシャッターコントロールを使って切りました。

見た目は冷却CCDカメラのようですが、使用感としては、 通常のキヤノンEOSデジタルと同じ感覚で使用することができました。 また、カメラ本体の電源はTECクーラーから供給され、 DC12Vの電源を用意すれば、カメラ本体のバッテリー切れを心配することなく、 撮影を続けることができ、便利だと感じました。

Central DS Astro6D

上は、以上の組み合わせで撮影したカリフォルニア星雲の元画像(ISO1600で4分露出)です。 ダーク補正を行っていないにも関わらず、拡大画像でもノイズは感じられません。 また、ミラーボックスによるケラレも発生しておらず、滑らかな周辺減光です。

この元画像を仕上げたのが、下の完成画像です。 撮影画像の周辺減光を、薄明の空を利用したフラットフレームでフラット補正し、 4枚コンポジットした後にコントラスト強調処理を行いました。 合計撮影時間わずか16分の画像ですが、冷却による低ノイズのおかげで滑らかな仕上がりになりました。

Central DS Astro6D


Astro6Dの印象

Astro6Dを使用した印象や、上記で記載できなかった内容を箇条書きで列挙しました。

・ノイズが少ないことで定評のあるキヤノンEOS6Dカメラを冷却改造しているため、 Astro6Dの冷却ユニット動作時のノイズは非常に少なく、ダークフレーム減算処理も必要ないと思えるほどだった。

・従来の冷却改造と異なり、センサーを前に移動するという大きな構造変更をしているため、 レンズの絞り値の制御や機械式シャッターの使用はできない。 速いシャッターが切れないため、昼間の被写体を撮影をすることは難しく、 天体望遠鏡を使った直焦点撮影専用のデジタルカメラと言える。

・Astro60Dのファンと比べて、 Astro6Dに用いられているEXcoolerファンは非常に静かで、 動作時でもほとんど音が聞こえない。 消費電流も少ないので、容量の小さな電源でも使用可能だろう。

・EXcooler部分で撮影時に必要な電源を集中管理でき、この端子にDC12Vの主電源を入れると、 冷却装置とカメラ本体に電気を供給できる点は大変便利だと感じた。

・冷却ユニットはEOS6Dボディ本体にしっかり取り付けられていてガタなどは感じられず、 ボディの剛性が高い印象を受けた。 また、外観も一体感があり、冷却装置の外付け感はそれほど感じられない。

・ミラーボックスの影響によるケラレがなくなったので、周辺減光の発生が均一になり、 フラット補正を行いやすかった。また、フラットフレームを撮影しなくても、画像処理ソフトウェアのコマンドを使って、 ある程度の周辺減光補正が可能だった。


まとめ

今回のテスト撮影を通じて、 Astro6Dは、冷却機構を使った低ノイズ特性に加え、 センサーをミラーボックスから外した独自の構造により、より進化した天体撮影用の改造デジタルカメラになっているという 印象を受けました。

冷却機構による低ノイズ特性は、気温が高い夏場のノイズの発生を防いでくれます。 また、ミラーボックスのケラレを回避できるので、周辺減光補正を行いやすく、 強い画像処理にも耐えられます。 どちらも、高品質な天体写真を得る上で、重要な特性です。

カメラの一部の機能が使えなくなってしまった点は残念ですが、 Astro6Dは、天体撮影専用カメラとして、すぐれたカメラだと言えるでしょう。 ハイレベルな天体写真を目指すベテランや、 APS-Cサイズのデジタルカメラからステップアップする天体写真ファンにもお勧めできる天体撮影用カメラだと思います。

レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

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